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　朝起きたらモゾモゾとＶＲ機器を付けて、まずは商業組合へ。

　委託を見た感じ土はともかく、追憶の水は出回っているようですね。入れ物持って死んだら、汲んで帰れば多少はお金になると。

　でもこれ、プレイヤーは《調合》組か、もしかしたら《料理》組が買うぐらいです。しかも取り行くのは楽ですからね。

　冥府品はプレイヤーより、住人に売った方が高く買ってくれるでしょう。多分それに気づいている人は黙ってるでしょうけど。

　プレイヤー達が行動できる冥府の端っこより、私の家……つまり常夜の城周辺で採れる物の方が、品質が高いというのが分かりました。

　品質Ｃは出回りますが、それ以上の品質は……試練イベントをクリアした不死者組に頼む必要があると。

　そして料理系もそこそこ出回っているようです。前ほど稼げそうにありませんね。予定通り《錬金》系にシフトしましょう。

　見るものは見たので、昨日作った物を委託に並べてから一旦ログアウトです。

　朝食など、朝の行動を済ましてログイン。

「あ！　ターシャです！」

「ごきげんよう、アビー」

「ごきげんよう！　やたら高い魔粘土があったです！」

「もう買っちゃった？」

「まだです！」

「ならもう少し見送って？　もっと品質上げたいから」

　あの環境でC+は残念すぎるので、せめてＢ級に乗せて……できればＡ級に乗せたいところです。

　でもあれ《錬金》系統だけでなく、《魔法技能》系も必要そうですよね。【魔力操作】がそっちですから。

　少しアビーと話してお別れです。楽しんでいるようですね。ドリーさんも付いていますし、特に心配する事も無いでしょう。

　見送ってから銀の鍵にて、北のウェルシュテットへ飛びます。

　ここから北へ道沿いに進み、分かれ道を右へ行くと町がある。エリアマップ的には北東の３－２エリアへ斜めに侵入する感じですね。

　左で北西に進むとベラフォントへ。エリア番号は時計回りなので、３－１６がそうです。

　旧大神殿エリアである２－２を囲うように町があるようですが、あのマップを突っ切るのはかなり厳しいので、斜めに抜けると。

　道がある通り、それが正規ルートですね。

　ワイバーンを召喚して、道沿いに飛ばします。このエリアに飛行はいないので、安全ですね。さっさと第三エリアへ向かいましょう。

　色合いは相変わらず緑ではなく、茶色が多いですね。地形も緩やかに登ったり下ったりと、馬車が大変そうな道です。正確には馬車を牽く馬が……ですけど。

　ワイバーン云々の前に、下僕を使用している私には関係ありませんけどね。スタミナと言う概念がないので、疲れませんから。

　そんな事より、いい加減鞍(くら)を作って貰いましょうか。《騎乗》系スキルでもなんとかなりますが、道具があった方がより良いですから。ダンテルさんがログインしたらお願いしますかね。

　空中戦は辛いので、一号に低空飛行をさせます。地上は鉄がゴロゴロしていますが、勿論敵です。敵じゃないならとっくに持って行ってるでしょう。

　アイアントータス、アイアンゴーレム。ついにゴーレムが通常の敵として出現ですか。そして空はアシッドホーク。

　アシッドホークからタゲが来ない事を祈って進みましょう。

　ゴーレムと戦っているＰＴがいますね。……あれ、ゴーレムから鉄の採取ができるんですか？　めっちゃツルハシ振ってますけど……。

　えっと、掲示板検索……アイアンゴーレム。ゴーレムはツルハシで攻撃すると、一定数鉄インゴがドロップする。トータスは討伐時に鉄鉱石のドロップ……ですか。

　戦闘ついでに鉄インゴが採れるわけですね。鉄は鋼になり、鋼はコバルトハイスに必要なので、消費量はかなりのもの。金策にもなるので悪くはないですか。《採掘》系が不要なようですね。

　戦ってる人達を見つつも、真っ直ぐ中央広場の立像へ向かい、ポータルの開放をします。

〈フェルフォージのポータルが開放されました〉

〈復活地点に設定できます。Yes/No〉

　勿論Ｎｏです。

　これで転移が可能になったので、早速……の前に収納買うのが先ですね。商店へ行き、鉱物収納と宝石箱の特大を確認。組合で１２万下ろして購入します。貯金が５０万になってしまいました。お金稼がないとですね。

　購入した商店の人に鉱山を聞いて、いざゆかん。

　鉱山から鉱石を掘るための穴……つまり坑道ですね。プレイヤーが使う坑道は既に住人が大体掘った後であり、現在使用されていない破棄されたところです。

　鉄だなんだは国として必要ですから、確実に管理下に入っているでしょう。『予算的にもこれ以上はマイナスになりそうだな……』となったらその坑道は破棄。新しい場所を掘り始めます。

　つまりゲームの設定としてはですね……。

『町として掘るには微妙だけど、個人で使う分にはまだ採れるよ。ただし、魔物が住み着いているだろうし、明かりもないよ。それでも良いならどうぞ』

　という事です。

　管理してないから魔物が住み着いてる場合もあるだろうし、明かりだってただではないのだから撤去してるよ？　という実に納得な理由ですね。

　私達プレイヤーを含む意味での冒険者達が掘りに行く事で、管理していない坑道から魔物が溢れてくる事はない。町としても多少楽できるわけですね。

　まあその辺の設定はともかく、暗視を持っている私に光源は不要ですし、むしろ暗い方がステータスが上がるので、特に準備はせずツルハシだけ担いで行きます。

　結局はゲームなので、結構そこらに採掘ポイントがあるんですけどね。

　カン、カン、カンと響かせながら掘り、壁からコロコロと足元に転がった鉱石はワーカーに拾って貰います。いちいち拾う作業って結構億劫ですよね。実に便利。

　同行者はアーマーとウルフ、そしてワーカーです。

　敵が来たらワーカーに掘らせつつ私も戦えば良いのですが、敵がいないなら自分で掘りましょう。暇ですからね。

　掘ったら拾ってもらい、掘り終わったら受け取ります。カバン系アイテム持たせるの忘れてましたね……。鞍と一緒に発注しましょうか。お金足りますかね？

　昨日で瀕死になった青銅ツルハシを速攻でへし折りつつ、新しく買った鋼ツルハシで掘っていきます。

　モリブデンやバナジウムばかりですね。マギアイアンはどこでしょう。今まで見つかってなかったという事は、浅い部分では出ませんか。

　……ん？　魔力を含んだ鉄の鉱石でしたか。マナ濃度に影響される鉱石の可能性は？　この鉱山では出てこない可能性がありますね。

　……残念ですが、メインは《採掘》のスキル上げなので良しとしましょう。

　お、敵ですか。ゴブリンマイナーとゴブリンボマーですね。

　ヘルメットとツルハシ装備のマイナーを下僕達に。丸い爆弾を持ってるボマーは私が相手します。

　採掘はワーカーに任せます。生産や採取スキルは私と共通であり、スキル経験値もリンクされてますからね。

　ボマーに魔法を撃ち込み、タゲを取ります。マイナーは一号が【アピール】で寄せます。

　山なりに飛んできた爆弾は勿論反射します。できれば直撃、または至近弾を狙いたいですね。直撃させるかどこかに当たるかで爆発。つまり衝撃を与えればいいと。

　爆弾は一応範囲攻撃のようですね。範囲はかなり狭めですが、至近距離に落とせばダメージは入ります。直撃の方がダメージが高いのは言うまでもないですが。

　とは言えですね、反射の合間に撃つ魔法で撃沈。遠距離系の敵は楽でいいですね。

　マイナーの方に【バインド】をかけ、タコ殴りにされるのを見ながらボマーを取り込み。マイナーも死んだのでそっちも取り込みます。

　そしたらワーカーから鉱石を受け取り次へ。

　近くに採取ポイントが複数見えたら、ワーカーにアーマーを付け、私の方にウルフで別れて掘ります。

　効率が全てとは言いませんが、効率化できるところはするべきでしょう。リスクが無いなら余計に。

　浅いところはゴブリンマイナーとボマーらしいので、余裕なはずです。レベルが３０台とは言え、支配級にならないと所詮ゴブリンはゴブリンである……。

　掘りながらどんどん奥を目指しましょう。

　おや、銀だ。お、金も出るんですね。これらは住人に売った方が良さそうですね。普通なら金や銀は掘り尽くすと思いますが……まあ、ゲームです。

　んー……スキルが上がる上がる。ツルハシの消耗を見なかったことにすればいい感じですね。徐々に消耗も減っていきますし、どんどん掘りましょう。

　この辺りは全て換金ですかねぇ……。ハウジングでガッツリ貯金が無くなったので、是非ともお金に変わって欲しいところです。

　魔物は取り込んでしまうので、ドロップ品を売れないんですよね。とは言え、キャパシティは大事。できれば上乗せ召喚分は確保したいところです。

　しかし、マイナーもボマーも通常ゴブリンサイズなので、増えるのは３。少々悲しいですね……。

　ゴブリンはドロップもしょぼいので取り込んだ方がマシですけど。

　カンカンしているとウルフの二号が戦闘態勢になり、アーマーの一号も戦闘態勢へ。私もアサメイに切り替え、ワーカーが続きを掘ります。

　ああ、いますね。マーダーマンティス。姿と音を消し、忍び寄ってきて首を狩る黒いカマキリです。

　掘るのに集中してると不意打ちや弱点部位による強制クリティカルにより、ビルド次第では即死する場合があるようですね。

　私は《直感》や《危険感知》でそもそも不意打ちを受けないビルドですが、スキルレベルが低いと対応できない場合もあるので、過信ができないんですよね。

　《野生の勘》や《弱肉強食》でそれらを強化しているので、今のところ困ってはいませんが。

　マーダーマンティスに関してはもう、最初の不意打ちさえ防げばただ大きいカマキリですね。私が最初に魔法撃って姿出せばフルボッコです。

　戦闘スタイル的にも１体で来るようなので、近づかれる前に発見できるかどうかが全てですね。気づければ大したことはありません。

　一番厄介なのは他のと戦闘中に来た場合でしょうね。

　マンティスの他にはプレーグマウス。毒と衰弱にしてくるようですね。強くはないですがマンティスと違い、最低でも４体以上の集団で来るようです。

　つまり本体の攻撃によるダメージではなく、状態異常によって削られる面倒なやつ。毒は猛毒などに比べると減る速度は緩やかですが、ＨＰ自体はしっかり持っていきます。それこそ状態異常強度次第では猛毒より持っていきます。

　勿論不死者とアンデッドな私達には関係ありませんので、数が多くて面倒なだけですが。

　衰弱は全ステータスの低下が入りますからね……。そろそろ状態異常にも本格的に対策しろよ……と言っている気がします。

　お、初見鉱石ですね。

[素材]　ハルチウム鉱石　レア：Ra　品質：C+

　産出量は比較的多いが、加工は困難な方であり、設備もそれなりの物が必要。

　ただしアダマンタイトより遥かに楽な事から、よく代用される非常に硬い鉱石。

　なるほど。アダマンがあると言われているのはこれが理由ですか。ハルチウムはアダマンタイトの下位互換なわけですね。

　説明通りアダマンよりは加工が楽で、設備もそこそこで十分。産出量も含めてハルチウムが一般的に使われると。量産に向いているのでしょう。

　まあそんな事より、『装備に使えるか』がプレイヤーにとっては全てです。恐らくコバルトハイスの上だろうと言われていますが。

　問題は、リアルに無い鉱石なので合金が一切不明。鍛冶師達の試行錯誤が始まるでしょう。

　コバルトハイスを飛ばして、下僕の装備はハルチウム製にしましょうかね？　属性金属を使うと言う手もあるのですが……問題は数か。

　属性金属をエルツさんに売って、ハルチウム製装備を買いましょうか。

　とりあえずお昼になるか、ツルハシがへし折れるまで籠もりましょう。

　【リターン】を使って離宮に帰還。

　そのまま裏へ回り、復活してる鉱脈をワーカーと掘ります。ゲーム内２日……つまりリアル半日で復活するようですね。リアル１日で４０回掘れる。

　モリブデンとバナジウムは嫌だ。モリブデンとバナジウムは嫌だ……バナジウム。

　ですよね、知ってました。魔鉄と宝石だけ下さい。宝石もフェルフォージで掘れるので、魔鉄だけでも問題ありませんが。

　ふむ……案外魔鉄が出ましたね。ツルハシが残り１本になってしまったので、売りに行くついでに買わないと。

　さて、まずはログアウトしてお昼ご飯にしましょう。

　たまにはカップラーメンでも良いですね。んー……担々麺。

「ごはーん！」

「選んできな」

「インスタント！　何があるかなー」

　久々に食べますが、何だかんだで美味しいですよね。まあ……美味しくなかったら売ってないと思いますけど。

「そう言えば、お姉ちゃんＰＫ来たんだって？」

「……よく知ってるね？」

「ＰＫＫの人が言ってた」

　ＰＫ達の更に後ろにＰＫＫの人達がいたようで、その人達は録画しながら追跡してたようですね。

　参戦しようにも、私がさっくり返り討ちにしたと。下僕達もいたので下手に近づくとバレるでしょうからね。

　別にＰＫＫならバレても良いとは思いますが……状況的には微妙でしたか。

　それで、その動画が私の個人板の方に貼られたようですね。

「光が弱点じゃなくなったのは聞いたけど、エクスプロージョンをバーストで防げるの？」

「対抗属性なら防げるらしい。冥府の宰相が言ってたから試してみたけど、効果あったと思うよ？」

「へー！　でもあんま使えそうにないか……」

「まあ、状況が限られすぎてるからねぇ」

「だよねー」

　ズルズルとラーメンを啜りながら、ゲームの話。

　共通の話題があるというのは良いことではないでしょうか？

「構え変わってたけどあれは？」

「かなり特殊なレアスキルだね」

「へー！　気になる！」

「んー……まあ、良いか。多分他にも沢山ありそうだし」

　『流派』系のスキルがあることを妹に伝えておきます。レアスキルとは言え、これは得意不得意があるでしょうからね。

「つまり何かしらの道場的な場所に弟子入りすれば、レアスキルが解放される？」

「そうだね。その道場が何かしらの流派であることが条件だけど」

　冥府にだけあるとは思えませんし、地上でも《古今無双》の流派があるようなテキストがあったので、複数あるはずです。教えてしまっても構わないでしょう。

　弟子入りするのにも何かしらの条件あるでしょうが、そこまでは知りません。

「アーツが型になっててね。動作をトリガーに発動するの。動きを覚える必要があるけど、クールタイムとかがない」

「なるほど……人選びそうだけど楽しそう」

「流派によって得意なのが分かれてるはずだから、まず探すところからだね」

「道場破り的なイベントあるかな？」

「それはどーかなぁ？　世界観的には武闘会よりも闘技場だろうし？」

「殺伐！」

　この流派系スキルの弱点はバインド系でしょう。動けなくなったら型の動作を取れないので潰されます。

　バインド以外にも地形による影響もありそうですね。足場が悪い場合、大きく動くような流派とは相性最悪でしょう。

　地形は位置取りを頑張れとしか言えませんが、バインドが問題ですね。現状バインド対策はひたすら魔法耐性系を上げるしか無いのでは？　これはログインしたら宰相やラーナに相談しておくべきですね。

「お姉ちゃん光等倍？」

「うん」

「等倍で４人からの魔法でしょ……半分以上バーストで打ち消してる？」

「私の精神と装備による魔法防御。後は闇魔法強化補正があるからだろうね」

「お姉ちゃん既にレイドボスでは？」

「遠距離で来たことが敗因だろうね。むしろ近接で囲まれたら普通に死ぬよ？」

　対遠距離は【鏡の型】があるのでかなり楽です。

　でも１陣の近接に前後から挟まれると無理でしょうね。バインド考えると１人は足止めできるでしょうから、３人ですかね。１陣の火力なら削りきれるはずです。バーストも１発は耐えられるでしょうし。

　ゾンビはアーマーに次いで体力が多いですが、実はアーマーと違ってゾンビは弱点武器がない。その代り得意なのもありませんけど。

　アーマーは打撃に弱く他に強い。スケルトンは打撃に弱く刺突に強い。ゾンビは全て等倍。

　とは言え、対近接最強は霊体系でしょうけど。体力自体は少なめですが、斬打突全てに強いのが霊体ですからね。

　サブタンクもできる魔法アタッカーですよ私。遊撃や撤退戦は無理ですけど。

「あ、でもそうか。近接は近接でも、下手したらオーラの即死が発動する」

「……オーラ強化されたの？　即死効果無かったよね」

「進化して《闇のオーラ》から《死を纏うもの》に変わったからね。やってる感じ即死は５％ぐらいかな……？」

「まあ、即死効果はそんなもんだよね」

　即死確率が高すぎるとゲームとしてあれですからね……。クールタイムの長い即死魔法とかならまだしも、オーラ系でそれはダメでしょう。

「そう言えばお姉ちゃん珍しく北にいたね」

「《採掘》上げるためと、下僕達の装備用と、金策の為にね」

「ああ、なるほど。鉱脈もあるしね」

「一応レベルも格上だし、数日北かな？」

「私も武器変えなきゃなぁ……防具はシルク待とうかな？」

「鎧にするとか言ってなかった？」

「そのつもりだったけど、軽装で良いかなーって」

「革系？」

「軍服風ワンピース頼もうかなって。一部に補強付ければ軽装になるはずだから」

「んー……ああ、あれ系ね。マントあり？」

「もち！」

　騎士ではなくそっちにしましたか。多分敏捷の問題でしょう。妹は遊撃ポジですからね。

　名前通り軍服っぽいワンピース。あれにハルバードですか。まあ、良いんじゃないですかね。

　マントはどうせかっこいいからでしょう。住人の冒険者達からしたら結構必須アイテムらしいですけど。主に野宿の寝具や雨具として。

　キャンプイベントの様なものじゃない限り、プレイヤーは基本的に野宿しませんからね。

「さーゲームだ！」

　片付けてバタバタ部屋に行く妹を見送りつつ、少し休んでから私もログイン。

　エルツさんはまだいないでしょうし、先に宰相とラーナにバインド対策ですかね。