34 アップデート 二陣参戦
メンテ中なのを良いことに、起きてから宿題を進めること数時間。もうすぐお昼という時に妹がやって来ました。
「お姉ちゃん! FLFOの公式がお昼から生放送するって!」
「へー……メンテ中に?」
「タイトルが『山本一徹の暇潰し放送』になってるね」
「……纏めるのが仕事とか言ってたから、作業中は逆に暇なのかな?」
「かな?」
メンテが終わるまでは宿題する予定だったのですが……やりながら見ましょうか。
『山本さん、始まりましたよ?』
『あ、やっぱ間に合わなかったか』
お昼になって画面に映ったのは……食堂で食事中な山本さんでした。
『やあ、皆! 偉い人だよ!』
『緩いっすねぇ……』
『個人的な放送だし。ご飯食べたら公開されたはずのパッチノートに関して、つまり今日のアプデに関して触れるので、それまでおっさんの食事風景でも見てて』
『罰ゲームか何か?』
放送を横目に私達も昼食です。今日はそうめんですね。楽でいいですよ。
「なになに……パッチノート……日間クエスト、週間クエスト、月間クエスト、半年間クエストの追加? 肉のドロップ数の変更……後はギルドとかか」
「デイリー系が追加されるの?」
「そうみたい」
「お肉のドロップ数も気になるね……」
サービス開始後初のアップデートですから、そこそこ大型のようですね。新しいものの追加とバグの修正、仕様の変更ですか。
山本さんはカツ丼定食を食べてるらしいですよ。カツ丼に御御御付、漬け物のセットのようで。がっつりお昼ですね。
『ごちそうさまっと。さて、戻ってアプデについて触れようか』
食事を終えた山本さんは食堂から移動して部屋に入り、パッドを弄り始めました。
『まず今回の一番は二陣解放。プレイヤーの総数が約2万人から約6万人になる予定です。続いて日間クエスト。ログインボーナスやデイリーにあたるものを追加しますよ。日間クエストは報酬がお小遣い程度のお金。週間クエストはちょっと嬉しいかもしれない消耗品。月間は週間のちょっと豪華版。半年間のクエストはなんとSP10だ』
毎日ログインしないと初期化される……とかではなく、日間クエストの累計達成数だそうです。半年分達成すれば確実に貰えるようですね。出張でしばらくできなくても、累計なので安心して欲しいと。
『ゲームタイトルにあるようにLifeだから、あの世界で半年も暮せば……新しいスキルぐらい覚えそうでしょう?』
日間クエストの内容は様々で、その日にやりたい事を日間クエストの中から選んでそれをすれば良いのだとか。『デイリーやらなきゃ……』感はできる限り無くしたようですね。
『◯面の畑を耕す』や『◯個の野菜を収穫する』とかだったり、『◯個のポーションを作成する』とか『◯体の魔物を討伐する』などなど。『本を◯冊読む』とかもあるようですね。
『俺のプレイスタイルに合うデイリーがねぇ! とかなったら、要望出してみて。大体は実装されると思うから』
週間クエストで貰える消耗品は、以前不具合報告した時に選べたあれら……SP以外から選べるようですね。戦闘消耗品セット(ポーションなど)。生産消耗品セット(素材など)。1時間取得スキル経験値UPチケット(使用期限7日)。
『ちなみに経験値アップに関しては……1次スキルだと結構上がる。2次スキルだとまあ、多少楽かな? 3次スキルだと空気ぐらいの調整』
ポーションや素材は使用者のレベルにあった物が出てくると。
月間クエストは多少のお金に加え、週間クエストと同じラインナップから選んで、週間より貰える個数が多いと。
ちなみにこれらは1日でゲーム内4日過ぎるから、リアルタイム判定だそうで。夜に帰ってくる社会人や急用なども考えて、朝4時に切り替わるそうです。
『次は……あれか、始まりの街にダンジョンを作る!』
「まじか! ダンジョン!」
『さて、騙して悪いが……テンションの上がった一陣には用のない場所だ』
「oh...no...」
妹のテンションがだだ下がりですね。つまりあれでしょう。混雑対策では?
『元々始まりの街はかなり広くしてるけど、狩場はポップ的にね? という事で、インスタンスダンジョンになってるから、人多すぎて狩れねぇ……ってなったらそっち行ってくれたまえ』
ボスなどはいないし、本当にただの混雑対策用だそうです。
出てくる敵は北の山、東の森、西の森、南の森、街周辺の5択。出てくる敵が選べたりする以外は、ダンジョンの仕様は大体共通とのこと。一陣も試しに行ってみるのはありだけど、特に利点はない。兎さんのお肉やウルフのお肉を取り行く時に使いそうですね。
マップは入るたびに変わるタイプで、ベースは平原、洞窟、森の3エリアだそうです。
そしてそこそこ長く存在する予定だと。二陣の次は三陣もあるでしょうし?
『じゃあ次は――』
他にも追加するものを簡単に説明していきます。アイスやお菓子を食べながら。アカウントも個人のやつなので、本当に個人的な放送なのでしょう。FLFOの公式トレーラーなどを上げているアカウントとは違うんですよね。
放送開始してから5時間近く。もうすぐメンテが終わるはずの時間ですね。
『山本さーん』
『なんだー』
『予定通り問題なし』
『じゃあ告知通り17時解放で』
『りょうかーい』
『という事で、パッチはもうダウンロードしたな? ログインする準備はおーけー? きっと始まりの街に初心者装備がいっぱい来るぞ!』
しばらく大混雑しそうですね……。避けたいところですが、エルツさんに用があるんですよこれが。エリーやアビーも来るでしょうから、どう足掻いても無理。そもそも昨日、始まりの街でログアウトしましたね私。
さて、だいぶ宿題は進みました。今日はもういいでしょう。放送も終わりましたし、ログイン待機でもしましょうかね。
さて、ログイン――
〈ログイン待機中です。しばらくお待ち下さい。残り1052番目〉
――あ、はい。車線規制のような状態ですね。大体1分後にログインできました。
視界の右端で光ってるアイコンは……日間クエストですか。今日は何しましょうかね……。えー……所持スキルから絞り込み。……料理アイテムを作る。錬金を使用してアイテムを作る。採取を使用してアイテムを得る……かなり沢山ありますね。
戦闘……生産……採取……その他……あ、本を読むがありますね。《言語学》でしょうか。
よし、料理にしましょう。エルツさんはまだいないので、ジャーキー作って委託に流すとしましょうか。宿屋の庭を借りましょう。
燻製用の液体……水に塩と砂糖を溶かしたソミュール液を作り、ウルフのお肉をスライスして漬けます。そしたら【反応促進】を……MPが足りませんと。《インベントリ拡張》を解除し、回復を待ってから使用します。
2日分飛ばしたらお肉を取り出し、軽く塩抜き。そしたら【加湿乾燥】で乾かして、燻製器へ放り込みます。
終わったら取り出して、1日置き完成ですね。
これをそうですね……5回繰り返しましょう。お肉1個でジャーキーは60個。満腹度的に1人複数食べるので、大体12人分です。5個使って300個ですね。
MPの回復を待ちながら作っているとエルツさんもログインしてきました。作り終わったら商業組合に寄って委託を出してから、いつもの場所へ向かいましょう。
日間クエストの達成……報酬金1000。……お小遣い過ぎると思うんですよ。まあ、エルツさんのところへ行きますか。
宿の人にお礼を言って外へ出ると、わらわら同じ格好をした人達がいますね……視界内に金髪ツインドリルはいないので、エルツさんのところへ行きましょうか。会う時はリアルで連絡取り合えばいいですからね。
歩くのにも苦労しそうだと思いきや、わざわざ道を開けてくれるなんて嬉しいですね。堂々と歩かせてもらいましょう。そのまま真っ直ぐエルツさんのところへ。
「……なんかモーセ? モーゼ? みたいになってんな……」
「なぜか道開けてくれるんですよね。おかげで真っ直ぐ来れました。読みは確か言語の違いなので、どっちでも良いんじゃないでしょうか? それより鉱石取ってきたので、買い取りと作成を頼みたいのですが……」
「おう、構わないが何作るんだ?」
「片手槌、片手剣、両手剣、小盾、大盾……でしょうか」
「結構いるな。《死霊魔法》用だな?」
「ええ、そうなります」
弓とか扱えるんでしょうか? どの道頼むならプリムラさんですけど。
「いくらになります?」
「そうだなぁ……今の一番で作るなら85万ぐらいで、1個下げるなら60万ぐらいか。プラマイ品質と素材ってとこだな」
「一番上で鉄ですか?」
「いや、鋼になった。今は品質上げるコツを探してるところだな。Cで良いなら作り置きがあるが」
「んんー……今どこまで出来てるのです?」
「今はBってところだなぁ。でもBで揃えると100万超えるぞ?」
「そこはまあ、問題ありません。大会の時に稼いだので」
「ああ、あれな。そうだな……今あるB以上は片手剣、両手剣、大盾だな」
片手剣と両手剣は基本かつ人気だからよく作るらしいですね。大盾はたまたまらしいですが。残りはB以上ができ次第連絡を貰いましょう。
「これで漸く店買えそうだな!」
「お、遂にですか」
「100万入れば十分だな。という事でピッタリでどうだ? そうだな……内訳は片手剣が23。両手剣と大盾が25。小盾が15の槌が12だ」
片手は人気商品、両手剣は人気かつ材料、大盾は材料。小盾と槌は少し値引きだそうです。特に問題は無いのでそれでお願いしましょうか。
ああ、そうそう。解体ナイフの修理にツルハシ2本ほど購入しましょう。引き出しに行く前に、リストから鉱石と蟻素材を買い取って貰います。これで約9万の収入。
そしたら一度組合へ行き残りの65万ほど下ろして鋼シリーズの片手剣、両手剣、大盾、鋼ツルハシ2個を受け取ります。武器で73万、修理とツルハシで4200ですね。
「おう、まいど! 片手槌と小盾はもう少し待ってくれ。片手槌の種類は何か希望あるか?」
「メイスで構いません。複雑過ぎてもうちの子が扱えなくなる可能性があるので」
「シンプル一番だな。任せろ」
「ああ、そうだ。防衛戦ドロップの鉄装備買い取りとかしてます?」
「潰せるから買い取りしてるぞ。値段は装備によるけどな」
鉄の剣、槍、斧、短剣、グレートソードを買い取ってもらいましょう。9000になりました。片手槌のメイスだけは残しておきます。小盾も店売りのですし、鉄ではないのでキープですね。まだ替わりもありませんから。
受け取った鋼装備を《死霊秘法》の方へ突っ込んでおきましょう。
「あー、そういやあれだ。あまりステータスと離れすぎてる装備持つと、ちゃっかりペナルティがあるらしいが大丈夫なのか?」
「…………召喚、スケルトン」
実際に試した方が早いですね。片手剣と大盾、両手剣の2人召喚します。
「お、骨だ」
「一号、新しい装備は問題ありませんか?」
2人ともしばらく動いた後カクンと頷いたので、大丈夫そうですね。下僕にはその辺り無いのでしょうか? それともスキルによってブーストされているかですね。
「大丈夫そうです」
「そうか、そりゃ良かった。まだこの辺りのペナルティはよく分かって無くてな」
「二号が両手剣振れるんですから、ステータスは結構あるんじゃないですかね?」
「筋力低い純魔法だと持ち上がりすらしないからなー」
「第二エリアで戦えるので、今の二陣よりは強いのではないでしょうか? 《光魔法》飛んできたら知りませんが」
「《死霊魔法》強いのか?」
「どうでしょう。私が持ってる固有バフが複数彼らにも乗りますから……」
「ああ、なるほどな」
比較対象がいないのでなんとも言えません。AIレベルで見ると私のベースより高いですが、これはステータスに影響は無いはずですからね。
「そう言えば何か料理ないか? 売ってくれ」
「んー……ベアスープならありますね」
「あれか、それでいいぞ」
「何個いります?」
「6個ぐらいいいか?」
「構いませんよ。1個800なので4800ですね」
「おう」
殆ど大会の時に売り捌いてしまいましたので、手持ちがほぼありませんね……。おかげでインベはソコソコ空いているのですが。残り9枠をソコソコ空いてると言って良いのか怪しいですけど。
料理……しましょうか? ランプステーキとサンドイッチでも作りましょうか。パンはバゲット切って挟めば良いでしょう。
「おっす!」
「おう」
「ごきげんようプリムラさん」
プリムラさんが人混みをスルスル抜けてきて、せっせとエルツさんの横に露店を展開します。私はいつも通り、その少し後ろのスペースに料理キットを展開。
ランプステーキを焼きながら、バゲットを同時進行しましょうか。具体的には【反応促進】に使うMP回復待ち中にステーキを焼きます。挟むものは普通にキャベツですかね。レタスとか無いですし? 後はハムの代わりにローストビーフで。ローストビーフも石窯使うので、先にパンをやりましょう。
アーツを駆使して天然酵母から元種を作り、コネコネして寝かせたりしつつMPが無くなるまで量産します。
MPが無くなったら今度はステーキの準備をしてから、できたパン生地を石窯へ放り込みます。そしてすぐに牛脂を入れ、ニンニクも入れ、お肉を焼く。両面焼いたらブランデーを投入してフランベ。火を消したらお皿に移して保温。その後すぐにパンを回転。そしたらお肉を2枚目焼いて、パンを取り出す。
これがこのゲームだと丁度いい感じの時間なんですよね。
「一週間振りの飯テロだ!」
「ステーキはズルいね! 売ってー!」
「良いですよ」
「俺も」
「1000……いくらだっけー?」
「1200です。バフは品質次第ですね……まあ、もう少し待って下さい」
「ほい」
お肉を焼き、パンを取り出したら一旦料理を止めて、2人に売りましょうか。……お、バフ付いた。パンを回収して、メモしておきます。ランプ、ニンニク、ブランデー、ステーキで……器用っと。
「品質B+で器用が付きましたよ。5時間器用5%、3000ですかね」
「「買う!」」
「……ダイスロールのお時間です」
リアルタイムで5時間。ゲーム内一日はリアル6時間なので、生産者からしたら色んな意味で美味しいバフ料理ですね。
1D100で高い方に買う権利を。2人共メニューからダイスロールを選び、種類を選ぶと空中にアイテム化。子供が抱えるぐらいの大きさありますね。
「「いざ勝負!」」
おりゃ! どりゃ! とダイスが投げられ止まるのを待ちます。ダイスは当たり判定無いんですね。蹴飛ばしたりとかできないようです。他のプレイヤーを素通り。
止まったダイスの上にポップアップが出て数字が表示されます。それと投げたプレイヤーの頭上にも。
「ふぅううう!」
「ぬわあああ!」
プリムラさんの勝ちでしたよっと。
では再び料理に戻りましょう。次器用ができたらエルツさんに売ります。
焼き立てバゲットを取り出し、パンを3等分ぐらいにして横に切れ込みを。そこへキャベツ……細かくしましょうか。千切りキャベツを敷き、ローストビーフも敷き、炒めた千切りタマネギを載せてからグレイビーソースをかけて……完成。
そう言えばまだ揚げ物作ってないですね? 挟むなら唐揚げよりチキンカツ……ですかね。牛カツでも良いですが……。小麦粉も片栗粉もあるので問題はない。強いて言うなら、フランスパンではなくふんわりパンも作らないとですね?
ふぅむ……。
「2人共、サンドイッチってあったら買いますか?」
「まあ、ゲーム内だしな。あれば買うだろうが……戦闘する奴らの方がサンドイッチは嬉しいんじゃないか?」
「食事中に魔物が来て、姫様の料理零したって絶望してた人が案外いたねー」
「案の定『セーフティで食えよ!』って突っ込まれてたけどな」
「ジャーキーうめぇって勝ち誇ってるのもいたね。案外レアだから」
片手で食べながら狩りを継続する人もいるってことですかね。
「セシルんとこは確かジャーキーと料理両方持ってたな。のんびり休憩兼ねて食べる時と、狩り優先の時だったか」
「武闘大会以降、お肉が委託に並ぶようになったみたいでねー。料理板の人達が歓喜しながら作りまくって、まあそこそこ料理を買えるようになったみたい」
お肉は売れる事も、買っても料理を売ればプラスになることも実感したでしょうからね。そのおかげか、料理板の人達も【反応促進】を取得かつ2次になり、多少生産性が上がったようです。多少なのは消費MPのせいですね。
逆に料理の味もホットドッグなどで知ってしまったらしく、消費も増えたので……結局まだまだ追いついていないようですが。
さて、それはともかく揚げ物です。ウルフ……ではなく、柔らかい兎さんを使用しましょうか。後でですけどね! まずはバゲットとステーキを作りましょう。
ステーキは筋力、または器用ができますね……。サンドイッチは体力だけ……と。気になるとすれば、焼き立てのバゲットにバフは付きません。サンドイッチにした瞬間バフが付くことがありますね。シンプルすぎるのでしょうか? クロワッサンとかどうなのでしょう。バターはあるので作れますが……。
クロワッサンは横に置き、作る予定のものをせっせと作ります。その結果、ステーキ50個、バゲット40個が完成。石窯をローストビーフ用に温度を下げてそちらを作りましょう。
[料理] お手製サンドイッチ レア:No 品質:B
ローストビーフとキャベツとタマネギのバゲットサンド。
噛みごたえのあるパンと、柔らかい肉、シャキシャキ野菜を楽しめる。
満腹度+30
追加効果:体力が5%上昇する。
効果時間:4時間30分
調理者:アナスタシア
インベに残ってたバゲットと合わせて123個のサンドイッチができましたね。ローストビーフ少し作りすぎましたか。2個余りましたね。まあ、しまっておきますけど。
「器用のあるならもう2,3個ほど欲しいぞ?」
「欲しいー」
「構いませんよ」
結局2人には4個ずつで8個ほど売りました。バフ料理なので合計2万4000ですね。実に美味しい。
「あ、そうだ。プリムラさん初心者用的な弓持ってませんか?」
「んんー……? 初心者用の1個上なら……あるねー」
「貸してもらえたりします?」
「なにするの?」
「うちの一号に持たせて、使えそうか確認したいんですよね」
「あー、量産型スケさんね。良いよー」
「ありがとうございます」
量産型スケさん……まあ、突っ込むまい。出しっぱなしだった2人を送還して、スキルと装備を変えてから一号を召喚します。
「ちゃんと使えそうですか?」
「カタカタ」
弓はダメと? 何が原因でしょうか。
「ステータスが足りない?」
「カタ?」
これは理解していませんね。
「使い方が分からない」
「カクン」
なるほど、ステータス以前の問題ですね。となると……剣や盾などは普通に使えている事を考えると、AIレベルの不足と思って良さそうですね? 1から教えれば恐らく学習はするでしょうが……うん、面倒ですね。スケルトンアーチャーは見送りで、弓をプリムラさんに返しましょう。
「弓はまだ先になりそうだと分かりました。刺突と遠距離は現状優先度が低いので良いのですが……」
「人型の使役系は装備できるだけに大変だねー?」
「今のところ他の使役系だと人型は無いに等しいからなぁ」
《召喚魔法》と《死霊魔法》では仕様が違うので、同じスケルトンの召喚でもかなり差があるようですね。どっちが良いかは人によるでしょうけど、アンデッドに関しては《死霊秘法》《死霊魔法》《召喚魔法》の順になるでしょう。むしろそうなってくれないと困りますけど。アンデッド限定スキルですからね。
では一度夕食でログアウトをし、食事やお風呂などを済ませた後ログインします。
「良いところに帰ってきたな。メイスと盾できたぞ」
「あれ? もうできたんですね。では下ろしてきます」
「おう、27万な」
商業組合へ行きジャーキーの委託を回収します。手数料引かれて11万ちょっと。それで足りない分を下ろしましょう。えー……10万ですかね。残り340万ちょっと。防具を考えると速攻で無くなりますね……保留で。戻って購入しましょう。
「どうぞ……」
「確かに、まいど!」
一号の装備を鋼のメイスと大盾に変えておきます。二号はとりあえず両手剣のままで良いでしょう。使っていたメイスは二号用に残しておきます。うん、これで良いでしょう。
「やあ諸君!」
「やっほー」
「おう」
「ごきげんよう、ダンテルさん」
ダンテルさんがエルツさんの横、プリムラさんの逆側に露店を展開。サルーテさんとニフリートさんがほぼ同時にやって来て、プリムラさんの隣にサルーテさんが。ダンテルさんの隣にニフリートさんが露店を出します。
5人は集まってお店について話していますね。それぞれなるべく近くで、自分達の希望に合うところを買おうとしているようです。
さて、私は寝るまで何をしましょうかね?
「ターシャ発見です!」
「ついに見つけましたわ! ターシャ!」
あ、この声は……と言うか、ターシャと呼ぶ人は限られすぎています。振り返ると案の定2人が……2人が……ふふっ。
「……人の顔見て笑うのは失礼ではなくて?」
「いえ、随分盛りましたね? 実に立派なドリルで」
「良いでしょう?」
そう言って手でふぁさっ……としますが、ゲーム補正ですぐクルンっとドリルに戻ります。エリーはザ・ドリルなクルクル巻き。アビーはツインテールで下の方がロールしていますね。ドリル感は薄めでしょうか?
動作は実に見事にふぁさっ……とするのですが、クルンっとドリルに戻るのがちょっと面白いですね。
「ターシャ! これを見るのです!」
アビーがそう言って、エリーのドリルを下から手のひらで持ち上げ……ポヨポヨさせると、スプリングのようにふよんふよんします。
「ふふふ……」
「楽しいです!」
「ちょっと、人の髪で遊ばないでくださる?」
エリーに半目で見られたアビーが抱きつこうとして……セクシャルガードに弾かれました。愕然としています。限定解除に入れてあげましょう。改めて抱きついてきたのでなでなでしておきます。
「エリーとレティは人間ですね? アビーとドリーは……悪魔ですか?」
「そうよ。天使で人形系するみたいね」
「エリーは何に?」
「鞭にでもしようかと」
「それはまた……見た目重視ですか?」
「そうよ」
「鞭持った瞬間お嬢様から女王様になるので、止めた方が良いと思うんですけどねぇ……」
「失礼な」
突っ込んだレティはやれやれとしています。やると決めたらやりますからね、エリーは。レティは十分分かっているのでしょう。
とりあえず4人とフレンド登録をしておきます。
「ああ、そうだ。エリーにこれを渡しておきます。分けて使って下さい」
「ん……ポーション?」
「ゴミです」
「ちょっと」
「スキル上げ前半にできた品質の低いゴミです。それでも初級よりは回復するので、最初のうちに使っちゃって下さい。品質Cじゃないと住人は買い取ってくれませんし、私は種族的に使えませんからね。どう処分したものかと思っていたのですよ」
「……引っかかる物があるけど、まあ貰っておくわ」
在庫処分! 正直捨てるしか無かったのですが、エリー達ならまだ十分でしょう。ああそれと、丁度いいので紹介しておきましょう。
「ドレスとメイド服ならあの人に頼むといいですよ。トップ裁縫師なので、値段はあれですが」
「ほう? ドレスとメイド服とな? 作った物を着てSS撮らせてくれれば値引きするぞ。他の服も着てモデルしてくれるなら報酬金出しても良いが……その前にシルクはどこだ? あると思うんだがなぁ」
まだ不明ですからね。第二エリアにボスらしきものは見つかっていませんが、純粋に敵が強いのでまだ行けない状況です。暫く先。
ダンテルさん以外の人達も紹介しておきます。エリー達がエルツさん達のお店を利用できるようになるのが、いつになるか分かりませんが。勿論値段的な意味で。武器1個20万前後しましたからね。防具やアクセは装備箇所が多いので余計に。
まあ、紹介はしたのでとりあえずの役目は終えました。後は所持金と相談して下さい。
「そう言えばターシャ、茶葉は無いの?」
「密かに探しているのですが無いんですよね。王侯貴族の世界らしいので、あるとは思うのですが……逆に入手経路がって感じですかね?」
「ふむぅ……。まずはレベル上げしながら慣れるのが先ね」
じゃないと探しにもいけませんからね。
もう少しドレスの色合いが良ければ、直接商会に突撃……という選択肢もあったのですが。茶葉はとりあえず保留にしている案件ですね。
結局会話していたら寝る時間になってしまいました。たまには良いでしょう。ある意味MMOの醍醐味です。




