30
ゲーム半分、リアル半分。
宿題がSDカード的なチップで配られると、宿題の量が分からないよね。
夕食やらお風呂やらを済ませ、ゲームにログインします。
ひとまず目標は達したので、のんびりと《死霊秘法》の確認をしましょう。
「あ、おかえりー」
「ただいまニフリートさん」
「エルツはご飯に行ったよ」
「食事時ですからね」
そこへパタパタとプリムラさんがやって来ました。
「おっす! おらプリムラ!」
「はいごきげんよう」
「やっほー」
手慣れた手付きでせっせと露店を出し始めました。するとお店の少し横に列ができ、プリムラさんが対応していきます。修理の列のようですね。
《死霊秘法》
【暗黒儀式】
敵の死体を取り込み、設計図または骨肉を入手する。
【死霊召喚】
手に入れた骨肉を使用し、設計図から体を作り、死霊を宿らせる。
私? 私はUIと睨めっこですよ。アーツの確認に加え、メニューに《死霊秘法》用のUIがあるんですよね。使役系にある管理用です。目につくのはキャパシティ0/500万。AIレベル1/101。召喚数0/1でしょうか。現状一回でどのぐらいキャパシティが手に入るのか分かりませんから、多いのか少ないのか判断できません。AIレベルはデフォルト100の、《アンデッド統括》により101なのでしょう。召喚数は純粋にスキルレベルかと。
更にテンプレートと言う枠もあるのですが、今は何もないのでよく分かりません。そしてカスタマイズのUIには、職業カスタマイズと素体カスタマイズの2つが。これもまた何もないので不明。
まあつまり、現状殆ど分からんという事ですね。とりあえず兎さんとウルフを暗黒儀式しましょうか?
「うん……とりあえず少々出かけてきますね」
「てらー」
「いってらっしゃーい」
プリムラさんとニフリートさんと別れ、近い南門へ向かいます。兎さんとウルフは全域ですからどこでも良いので、3日後に来る二陣で溢れる前に済ませましょう。
逃げる奴は兎さんだ。逃げない奴はよく訓練された兎さんだ。つまり兎さんのAIは2種類あり、逃げる奴と逃げない奴がいる。逃げる兎さんを追うのは面倒なので、突っ込んできた兎さんをレイピアではたき落とします。
おや……えっと、重複している機能がありますとか言われてしまいました。《死霊秘法》の死体残しは無効化して……《解体》に従うようにして下さいね。これで良いでしょう。
レイピアを兎さんの成れの果てに向けつつ、【暗黒儀式】で取り込みます。
地面に黒い? 影の? 魔法陣が出て、魔法陣から手が大量に出てきて引きずり込んでいきました……。こりゃ素材残りませんわ。
〈【暗黒儀式】により『ラビット』の素体を入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『1』入手しました〉
確認する前にウルフも取り込んでしまいましょう。
……微妙に【暗黒儀式】って引きずり込むのに時間かかりますね。
〈【暗黒儀式】により『ウルフ』の素体を入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『1』入手しました〉
キャパシティの確認も込めて、もう1体倒しましょう。ついでに儀式中に少し離れてみます。検証検証。
【暗黒儀式】中に一定距離離れると、失敗する挙げ句に死体が消滅する……と。中々あれですね。この取り込み速度がスキルレベルなどの影響で上がるのかどうか気になりますが、現状で検証は無理ですか。取り込み時間をメモして気になった時にまた確認してみましょう。では次。
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『1』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『1』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『1』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『1』入手しました〉
正気ですか? 兎さんもウルフも1固定? いや、まあ……所詮最初の敵ですか。
重要なのは召喚するのに使用するキャパシティですね。少し戻りUIを……いえ、ここで良いですかね。敵が来たらキャパシティ増えますし? 強いていうなら、兎さんとウルフのお肉は割りと欲しいところですが。
さて、テンプレートにはラビットゾンビとスケルトンラビット、ウルフゾンビとスケルトンウルフの名前が並んでいますね。んんー……? ふんふん……なるほど。
召喚の初期コストは『(進化するレベルx10)xサイズ』と決まっていると。ラビットやウルフは進化してない初期なので、『(1x10)xサイズ』ですね。
サイズは下僕の大きさであり『極小x1、小x2、中x4、大x6、特大x8』とこれも決まっている。ラビットやウルフは両方x1なので極小判定ですか。
つまりラビットやウルフの初期コストは『(1x10)x1=10』ですね。
この初期コストにカスタムと上乗せ召喚が追加される……と。
続いて、そのカスタムと上乗せですが……。
カスタム職業……させてくれませんね。ラビットやウルフなのがダメなのか、レベルが足りない的なあれなのか分かりませんが、現状不明と。
カスタム素体……一覧からある程度選んでカスタムできるようですね。腕を増やしたりなどができるようですが、ヤバい絵面に。最大で4箇所可能な模様。コストがヤバいですね。『1箇所x2、2箇所x4、3箇所x6、4箇所x8』です。
今のところ分かった召喚コストは『(進化するレベルx10)xサイズxカスタム素体x上乗せ召喚』です。
つまり、恐らく『(進化するレベルx10)xサイズxカスタム職業xカスタム素体x上乗せ召喚』これが計算式でしょう。
現状カスタム職業の倍率が不明です。
では現状で分かる初期コストと最大コストは……と言うと。
初期コストはさっき言った10です。
最大は上のに当てはめ『(1x10)x1x8x3=240』となりますね。
カスタム職業の倍率が分かれば更に増えるわけですね。少なくとも2倍は増えるのではないでしょうか。480ですね。兎さんとウルフでやるなら480体取り込めと……。MMO感が出てきましたね!
とりあえず……あれ、一度カタコンベ帰りましょうか。素体の取り込みは形状……多分『科』判定のようですからね。人型が欲しいのでゾンビ取り込みましょう。是非取り込みましょう。そう言えば人型なら装備用意できるのでしょうか。
まあ、取り込めば分かります。確認中に突っ込んできた5体を取り込んでから行きましょう。
お久しぶりですね、実家。遠いのが難点です。騎乗できる素体も欲しいですね。欲がどんどん出てきますが、MMOでの物欲はモチベーションを保つには必要です。ただ、物欲センサーはさようなら。奴は本当に強敵ですからねぇ……。
こんにちは、ゾンビさん……サヨナラ!
〈【暗黒儀式】により『ゾンビ』の素体を入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
お、キャパシティが多い。良いですね。ついでに検証です。2階3階と倒して確認しましょう。
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
〈【暗黒儀式】によりキャパシティを『3』入手しました〉
2階3階で各5体ずつ倒しましたが、素体の入手は無しでキャパシティのみ。そして入手量は3固定ですね。キャパシティ量はレベルとか関係なくサイズでしょうか? 光系統であっさり逝ってくれますから、キャパシティ集めには良いのでは?
問題はそれをするとベースレベルが上がり、《閃光魔法》と《高等魔法技能》ばかり上がって、他は上がらない状況になるわけですね。
これの何が心配って、あるらしいダンジョンですよ。どんな仕様か分かりませんが、ベースレベルとスキルレベルのバランスが悪かった場合碌な事にならない気がしますからね。
とりあえず、一度帰りましょう。雑貨屋のお婆ちゃんのところにも行かなければなりませんからね。帰りながらゾンビのチェックです。
ゾンビとスケルトンが追加されており、どちらも職業カスタマイズが可能ですね。ファイターやアーチャーなどにできる……と。コストは2倍。職業カスタマイズをするとステータスがそちら方面に寄る……ようですね。ふむぅ……。
そしてゾンビ。ちゃんと装備が可能なようです。用意する必要が出てきました。北の町に鉱石掘りに行く日も近いですかねぇ? 問題はAIレベル低いと装備を使いこなせない気がしてならない事ですか。
カスタマイズだ、装備だ、スキルだと設定した物をテンプレートに保存し、召喚をする……と。
問題はスキルですか。ある程度カスタマイズできるようですが、強制なスキルもあるようで。ゾンビは《腐乱体》という嫌な物が見えるんですよね。
スケルトンがメインになりそうですが……メイン盾として扱うには打撃に弱いスケルトンは正直不向きです。周りに誰もいないソロならゾンビでも良いんですけどね。同業者な私に《腐乱体》は効果ありませんし。
ちゃんと武装したスケルトンがどのぐらい粘れるか……ですかね。ちなみにゾンビとスケルトンはサイズ小判定。2倍ですね。
《不死者の王族》で移せるのは種族スキルのみですかー……。そして現状1個までですね。……おや? 《高位不死者》は直接無理でも、これが持つ効果は移せるんですね? 浄化耐性を移せると!? ……ああ、でも現状移すのは《HP超回復》一択ですね。じゃないと昼間に出した瞬間お日様に召されてキャパシティが減る。何たる罠か。私は一度自分が召されているので、同じミスはしませんよ。……スキル強化で召されそうになりましたけどね。
事故を無くすため、先に《HP超回復》をセットしておきます。《HP自動回復》は無駄になるので別のに入れ替えましょう。……この種族スキル、ちゃっかり私と共有していますね? 初期の頃《物理無効》や《魔法耐性》取れなかったはずなのに、この子達取れるのですが……まあいいか。
安定の《物理無効》でしょうか……。《魔法耐性》取ったところでどうせ溶けるのでしょう? 《物理耐性 Lv1》《物理無効 Lv1》《低位アンデッド》《腐乱体》《HP超回復 Lv11》でしょうか。スケルトン系は《腐乱体》が《骨の体》ですね。
あ、別に迷う必要無かったですね。付け替えできるじゃないですか。ある程度狩場に合わせる事ができそうですね。その狩場に合わせたテンプレートを作り、セット名『◯◯マップ用』などで保存しておけという事でしょうか。親切ですね。
スキルレベルやスキルの進化は《死霊秘法》のスキルレベル依存……つまり? SP関係なくスキルを上げれば勝手に上がる。その代り後半全然上がらなそうですね。
さて、帰ってきましたが……寝ますか! 実家は遠い。
雑貨屋に顔出すのは明日でいいでしょう。学校大掃除して終わりですから。宿を取ってストレッチしてログアウト。
「今日はデートしてくるから、お昼はこれで好きなの食べるように!」
「夜はー?」
「夜は買い物して帰ってくるよ」
「ふぁーい」
お母さんとお父さんは今日1日デートですか。昨日のお昼はモアバーガーでしたからねぇ? 今日はどうしましょうか。お寿司?
「回らない寿司or回る寿司」
「んー……掃除してからのお昼だから回る寿司! 量食べたい」
「ん、じゃあ今日のお昼は回る方ね」
「焼き肉でもいいよ?」
「回る方より帰ってくるの時間かかるよ?」
「むむむ……」
きっと妹の中では肉vs魚vsゲームする時間が戦っている事でしょう。三つ巴ですね。どうせ帰ってきたらシャワー浴びるので、私はどっちでもいい。
「お昼までに決めといてね」
「あい」
結局登校しても悩んでいたので、任せましょう。お昼までに決まらなければ私が決めます。と言うかそこまで壮絶な闘いがおきているのでしょうか……。
「あ、おはよー」
「おはよー琴姉さん」
「おはようございます」
ニュアンスがおかしいのはもういつもの事なので、華麗にスルー。
雑談していると智大と傑もやって来て、更に少しすると先生がやって来ました。
「おらー出席取るぞー」
学校は当然広い。しかし普段から掃除の人がいますし、先生が生徒に掃除する場所を伝えてそれぞれ分かれ、話しながらパパっと掃除して終わりです。
終わり次第教室に集合。他の場所を掃除していた人達もぞろぞろ帰ってきます。
少ししたら何やら機嫌が良さそうに智大がやって来ました。
「なあ、琴音」
「んー?」
「今度デートをしよう」
「どこに行くの?」
「海!」
「それはちょっと……」
「ああ、いや。南のインバムント」
「ん……ああ、なるほど。安全地帯?」
「あれだけリアルだし、綺麗だし、のんびりするのも良いんじゃないかと。お金もかからない、保護者の用意もしなくていい、日焼けの心配もない」
「水着を用意しないと」
「素材は集めた。水着はダンテルさんに頼む予定なんだけど、どんなのが良い?」
「んー……ではビキニで……パレオでしょうか」
「腰に巻くやつだっけか。色は?」
「色はなんでも」
「色や細かいデザインはダンテルさんに投げるか。どうせ張り切るだろ。ゲームだからスリーサイズはいらないしな!」
用意してくれると言うので、大人しく受け取りましょう。私は食事……サンドイッチでも用意しておきましょうかね。
「ああ、それとあれ。デートとは別にバーベキューとかする? PTとか呼んで」
「んー……まあ食材などの用意はできるけど……肝心のタレとか機材が無い」
料理キットの炭火ではバーベキューするには少々狭いですね。鉄板なども用意してませんし……何よりバーベキューソースとかがありません。塩胡椒でも美味しそうではありますが……。
「ふむ……そもそもあれか、スキル的に焼くの琴音だけになる可能性?」
「あー……可能性は高いね」
「じゃあダメだな。1人だけにやらせる訳にもいかない」
4人だけなら別に構いませんが、流石にPTとなると10人超えますからね。
プルプルとコネクトボードが揺れたので、チェックします。
「ん、エリーだ。んー……?」
「エリーてっと……エリザベスさんだったか」
「『もうお昼食べた?』って送る人間違えたんでしょうか」
「そりゃ……間違えてそうだね」
まだ食べてないけど、送る人間違えてない? と返しましょうか。
「『じゃあご飯持っていくね!』……いや、ちょっと良く分からないですね」
エリーのメッセージに困惑していると先生がやって来ました。
「おう、ご苦労! 掃除を頑張った君達に餞別だ!」
「ジュースの奢り!」
「ハッハ……ほら、宿題のデータだ」
「『えぇー!』」
「渡すって昨日言ったろ」
言ってましたねぇ……。
「わざわざ言わなくても分かってるだろうが、宿題がどのぐらい出てるか確認してスケジュール組めよ。じゃあ解散! 明日遅れんなよー」
お昼少し前ですか。妹はお昼決められましたかねぇ?
で、エリー。どういう事ですか? いっそ電話してやりましょうか。英語になりますが、私が英語話せる事なんて皆知っているでしょう。
『ごきげんよう、ターシャ』
「ごきげんよう、エリー。メッセージ読んだけどどういう事ですか?」
『そのままの意味よ。今どこに?』
「学校です。これから食事して帰る予定ですが……」
『じゃあ真っ直ぐ帰って。12時には着くと思うの』
「……こちらにいるのですね?」
『アビーもいるわよ』
「……つまり、お父さんの嫌な予感が当たったわけだ」
『流石ね! ちなみに何を食べる予定だったの?』
「妹が朝からお寿司か焼き肉かで悩んでいますよ」
『じゃあお寿司にしましょう。私も食べたいわ。お肉は夜にしましょう?』
「あー、うちの親に連絡してませんよね?」
『勿論!』
「でしょうね。今デートとか言って出かけているので、夕食買ってこないでいいと言っておく必要がありますね」
『あら、留守なのね? 残念お父様、今いないんだって。驚かせられないわ』
やっぱ驚かせるのが目的だったわけですか。それはそうとお昼少し前……シャワー浴びる時間は怪しいですね。さっさと帰りましょうか。
と言うか『持っていくね』とか言っていましたが、結局出前じゃないですか。
「智大、帰りましょう」
「あいよ。傑ー! 帰るぞー」
「おうよ」
さっさと門へ向かい、妹達と合流します。
「お姉ちゃん! お肉にしよう!」
「誠に残念ながら、お肉は夕食になりました」
「……えっ!? Why!?」
「エリーとアビーが来てるらしいので、真っ直ぐ帰ります。襲撃ですよ」
「お嬢様軍団襲撃!? ……ってっと、社長組もか」
「食事の選択肢が無くなりましたが、食事のグレードがゴリっと上がります」
「よし、許す! 帰ろう!」
昨日と同じメンバーで家に向かって歩いていると、明らかに場違いな車が2台私達の横を走っていきました。あ、少し前で停まりましたね。特徴的な服装をした女性が1人降りてきました。
「「……メイドさんだ!?」」
「あれ、2人見たこと無いんだ?」
「そう言えば2人は知らないね」
智大に言われてみると、柳瀬さんと松兼さんは会ったこと無いんでしたっけ。2人が来るタイミングではいませんでしたね。
「お久しぶりです皆さん。お二人は初めまして……ですよね? コレットとお呼び下さい」
「柳瀬です」
「松兼です」
「皆さんお乗りになりますか?」
「「えっ?」」
とりあえず車の方へ向かいます。そこまで道広い訳ではありませんからね。
別れれば全員乗れますが、柳瀬さんと松兼さんだけで乗せるのも酷ですね。後ろはアビーですか。妹がそっちですね。
「じゃあ私が2人とアビちゃんの方乗るね?」
「それが良いでしょう。智大と傑は前で」
「あいよ」
「おう」
智大と傑は何回か会っていますから、大丈夫でしょう。さっさと乗り込み、さっさと車を出します。涼しいですね!
乗っているのは優しい感じのおじさまと、ワンピースで軽装なエリザベスことエリーです。後は運転手さんと、さっき降りてきたコレットさん。こっちの人達がアメリカ系で、母関係。後ろの車がイギリス系で父関係ですね。
「やあ、相変わらず綺麗だね!」
「ありがとうございます。お元気そうで何よりです」
「元気だとも! まあ、相変わらずこの時期の日本は暑いね……」
それには同意します。ええ、本当に暑い。
少し話してると車なので、あっという間に家に。車を入れるため門を開けます。智大に家の鍵を渡して妹の方へ行きます。
「『君達もお昼食べて行くかい? 勿論お金はこっちで持つよ』だそうですよ?」
「じゃあ2人も食べてこ」
「「えっ!?」」
妹にズリズリと引きずられていく柳瀬さんと松兼さんの後を追って家に。2人ともガチガチでしたね。一般人でもひと目で分かる高級車、リムジンの破壊力。
これから美味しいの食べるわけですが、味分かるでしょうかあの2人。あそこまで緊張してると怪しいですね。
何やら今日1日いるようなので、出前を頼んでからシャワーです。さっぱりしてからのんびりしましょう。
エリーは長身で、私と同い年。アビーが低身長で妹と同い年です。2人共美女ですが、クール系と可愛い系ですね。ツンデレ系お嬢様と小動物系お嬢様と言えば分かりやすいでしょうか。いえ、別にエリーはツンデレではありませんが、一番分かりやすいイメージですね。悪役令嬢とヒロインという例えも……。
「アビー、お久しぶりですね」
「お久しぶりですターシャ! 相変わらず羨ましいおっぱいです!」
私の知り合いの年下な女の子はやたら抱きついてきますね。妹も含め。
それはそうと、何やら大きい袋が2つほど部屋の隅に置かれているのですが、何でしょうかね?
私の視線に気づいたエリーがハッとしてビシッと仁王立ちし、大きめの声で言いました。
「ターシャ! あなた面白そうなのやってるわね!? 手に入れるのに苦労したのよ! お父様が!」
(お父様がか)
心が1つになった気がします。
妹がスススーと袋に寄り、中身を見ていますね。
「うお、FLFOだ。やるの?」
「やります。金髪ドリルのお嬢様キャラで行きます」
「キャラも何も、本物じゃん」
「流石にリアルであの髪はしないでしょう? ちなみに2人でやります」
「え、アビちゃんも金髪ドリル?」
「はい!」
「あ、そう……でも4個あるけど?」
妹のその言葉に思わず社長2人に目を向けます。
「残念ながら俺達じゃないんだよねー……残念ながら!」
「非常に残念!」
本当に悔しそうですね。となると……。今度はメイドさん組に視線を向けます。
「はい、私達がお供します」
「楽しみですね」
お付のメイドさん。コレットことレティ。ドロシーことドリーの2人ですね。わざわざメイド服なのは2人の趣味。元々あの服お仕事着ですから、色々便利らしいですよ。白と黒のロングスカート。
以前日本の夏で辛くない? と聞いたら、スルッとタオルに包まれた保冷剤が出てきましたね。色々隠せて、しかも分かりづらいのでメイド服は良いと。力説されました。プロの拘りがあるようです。
本物のお嬢様が金髪ドリルにして、プロのメイドが付くんですね。しかもそれが2ペア。
「ちなみにメイド服は手に入りますかね?」
「これじゃないと落ち着かないんですよ」
プロの拘りっていうか、職業病?
「まあ……手に入るとは思いますが……作って貰えば良いですからね」
「ダンテルさんなら喜んで作るだろうよ。問題はトップだからいい値段する事か」
「ドレスはどうかしら?」
「それも喜んで作ってくれるでしょうが、シルクがまだ見つかってませんね」
「シルクがまだ無いのね……。ターシャが着てるのは?」
「あれ俺も気になってたんだよ。ゲーム特有かい?」
「ですね。説明文的にファンタジー素材の金属糸だと思います。金属光沢ですね」
「「なるほど……」」
と言うか、この人達なんで知ってるんでしょうか?
「そりゃ動画見たもの。ターシャだと思って漁ったわ」
「CMとトレーラーも見ました!」
ああ、なるほど。2人にはバッチリバレた訳ですね。
その結果、ゲームも面白そうだとお父さんに突撃して今に至ると。何してんだ。
ピンポーン! と鳴ったので、チェックすると出前が来たようです。
ぞろぞろと出迎え、運び込みます。皆で卓を囲んでいるところを撮って、お父さんに送ってやりましょう。
しばらくしたらお父さん側の社長。ルイスさんのコネクトボードが鳴り出しました。お父さんですね、分かります。
ルイスさんは人を確認してからゲラゲラ笑いながら電話に出ました。私の方にはお母さんからメッセージが来たので返して、夕食について触れておきます。
ちなみに、私達が向こう行った時に同じことやるので、完全にお互い様です。
出前の特上お寿司を食べた後、4人を見送ります。ちゃんと味が分かる程度には落ち着けたようで、あの人達の正体を黙っていて良かったです。後で妹からネタバラシされるでしょう。智大と傑は既に知っていますから、特に心配はしていません。
話の流れから生放送してあげると妹がバタバタ自室に行きました。
リビングのテレビで妹の配信を開きます。
基本的に言語が違くても自動翻訳機能がありますが、本人がその言語を理解しているようなら不要です。たまに誤訳が混じりますからね。妹は英語の自動翻訳を切っているようですね。
エリー達からすると日本語は言葉が多くて自動翻訳が結構怪しいから、結構貴重。それだけで英語圏の視聴者が集まるんじゃない? と。
生放送見ながらのんびりするから、ゲームしてきて良いよとのことなので、私もログインしましょうか。
雑貨屋のお婆ちゃんのところへ行きましょう。
という事で、お嬢様組がリアルで登場。
主人公はゲームしないで残そうかとも思いましたが、文字数とキリの悪さからゲーム行き。
【暗黒儀式】により手に入るキャパシティを3固定に変更しました。
変更しましたと言うか、元々固定だと使役魔法のテキストに書いてあったのに違うところ見てた。




