117 公式イベント告知
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Tips
※トレイン
電車。モンスターにターゲットされた状態で走ること。
基本的に複数の敵からターゲットされた状態で走ることで、プレイヤーを先頭に敵が並んで追ってくるのを列車に例えて。
そのまま別のプレイヤーとすれ違うように走り、そのプレイヤーに敵をなすりつける事で、そのプレイヤーを殺せる。下のMPK。
トレインのなすりつけはそれなりに難しい行為だが、システム的にはレッドプレイヤーにならない抜け道。普通に迷惑行為なので、通報されたらOHANASI。
※MPK
モンスタープレイヤーキル。
プレイヤーがプレイヤーを倒すのはPK。PKができないシステムのゲームやエリアで、意図的に対象プレイヤーを殺すにはどうするか。敵に倒してもらえば良い。
モンスターをプレイヤーにぶつけてPKする。MPK。
※NDK
ねえねえ、今、どんな気持ち? ただの煽り。
117 公式イベント告知 月曜ー金曜
むむ……結構キツくなって来ましたね。そろそろ下着を変えるべきか。あとでアビーにお願いするとして、まずは学校へ行く準備をしましょう。
「お姉ちゃん今日2人と行くからー」
「ん、分かった」
妹の言う2人は柳瀬さんと松兼さんですね。私はエリーとアビーの2人と行きます。
妹を見送り、少しゆっくりしてから家を出ます。エリーとアビーは車で来るので、時間を見計らい外に出ます。来たら乗って話しているだけで学校です。
楽で良いですね!
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
「ごきげんようです!」
運転手さんは当たり前として、当然のようにいるレティさんとドリーさんにも挨拶し、エリーと私でアビーを挟むようにして座ります。
「ところでアビー、新しい下着が欲しいのですが」
「デザインどうするです?」
「今回はサイズも少し」
「……まだ大きくなってるです?」
「私もそろそろ変えたいわね」
エリーもサイズ上げるようですね。アビーがなんとも言い難い顔をしていますが、そこはアビー。切り替えが早い。
エリーの左胸と私の右胸を持ち上げてご機嫌。
「フフフ……両手にメロンです」
「ちょっと、はしたなくてよ?」
「まあアビーですし」
「……そうね」
「どういう意味です? まあ、伝えておくです」
「「よろしく」」
会話をしているとあっという間に到着するので、知り合いに挨拶しつつ教室へ。
さて、授業です。
「お、ついにイベント情報が来たか」
お昼に食堂で集まっている時、智大がコネクトボードを見ながら言いました。
今月の公式イベント情報が出たのでしょう。見ますか。
第五回公式イベント開催のお知らせ。
『探せ! 今年のプレゼントを宝物庫に置いてきた!』
難攻不落、スロークタンサー城の宝物庫には膨大な数のプレゼントがあるそう。
全員で協力して城塞を攻略し、沢山のプレゼントを手に入れよう!
……つまり、今回は大規模な城攻めイベントです!
今回は様々な人に活躍して貰うため、拠点作りからどうぞ。
戦闘組はお城を攻めて、生産組は拠点を作り、食材も忘れてはいけません。
採取組は城外は勿論、城内にも採取ポイントが存在します。
11月第三土曜日13時より開始致します。
今回のイベントは時間加速あり。
同じフィールドを複数用意し人数を振り分けますので、当日PTを組むのを忘れないようにお願い致します。
一部以外は持ち込みができず、全サーバー共通の支給物資が存在します。
持ち込めるアイテムの詳細は以下をご覧ください。
※イベントサーバー移動時に、所持品から選択する事になります。
「スロークタンサー城……サンタクロースじゃねぇか!」
傑が突っ込んでいますが、サンタクロースを逆にして伸ばすところを弄っただけですね。
しかし城攻めですか。拠点作りからとなるとかなりの規模になりますね?
「城攻めの拠点となると……天幕か?」
「攻城兵器が必要? 頑張って作ってね! ってこと!?」
智大、妹が声を上げていますが、これを見る限りそうなりますね?
「攻城兵器となると……破城槌とか、投石器でしたか。あ、バリスタも?」
「個人飛行できる種族もいるのだし、根本的に違うのではなくて?」
「《魔巧技師》もあるです!」
確かに。
ジャイアントとかゴーレムが岩を投擲するだけで、かなりの威力になりそうです。
インバムント防衛戦にあった爆雷も作って投石器で飛ばせれば……。まあ、上から落とすだけでも十分な制圧力だとは思いますが。
「大体お城には結界張られてるのが定番だよね」
「物理と魔法に転移妨害だね!」
柳瀬さんと松兼さんの言うように、そこは定番どころですね。遠距離攻撃で城ごと吹っ飛ばされたり、城内に転移されての暗殺を防ぐための結界。必須級です。
「現状じゃ何も決められないわよね」
「結局できることはレベルとスキル上げです!」
まあそうなんですけど。
持ち込めるアイテムは基本的に身に着けている装備品。あとは生産キットと、HPとMPポーション各10本ずつですか。
「とりあえず普段の装備で、使える最大のポーション持ち込めば良いんだよね?」
「そうなりますね。サーバー移動時に選択式らしいので、当日に手持ち10個足りないなんてことにならないように……ですかね」
「今のうちにイベントに持ち込む用は別に取っておくべきかな……」
「当日は勿論、前日の夜とかも厳しそうですから、その方が確実かと」
委員長の瑠璃さんもすっかり嵌っているようですね。
私もイベント前にアクセを更新しましょうかね? 裏庭で採掘した宝石を持ち込みで、ニフリートさんのお店ですかね。
イベントでレベルが上がるのは確定しているので、イベント後でも良いんですけど、さすがに放置しすぎな気もします。メインが勝手に強化されてくGo装備なので、アクセを忘れがちなんですよね。
「うん? 年末イベント『人類VS人外』に関して……だと……?」
「え、なにそれ」
年末に行われる第六回公式イベント、その一部のご案内です。
『人類VS人外』
ゲーム内で人類に分類される種族、人間・獣人・エルフ・ドワーフ・ジャイアント・マシンナリーVSその他種族によるお祭りPVPイベントを予定しております。
第五回公式イベント終了後から、このページまたはゲーム内でエントリーが可能になります。
参加人数によって大きく変わる事が予想されますが、現時点でのイベント内容。
人外側は数が少ない種族と多い種族が極端です。そのためエントリーされた人を見て割り振ります。
人類種は複数のレイド、またはユニオンやウォーに分け、人外種の待ち構えるボスラッシュ……的な物にできたら良いなーと思っております。
恐らく人類VS天使、人類VS悪魔、人類VS妖精、人類VS混合は確定というのがイベント運営チームの予想です。
弱点のはっきりしている人外種でこれをやるとサックリ終わるでしょうから、人外種の皆様にはステータスの上昇やイベント限定スキルの追加を予定しております。上手くご活用下さい。
人外種の方には数日前に運営から、当日共に戦うプレイヤーと付与されるステータスと限定スキル、どういったフィールドでどのような演出をするかなど連絡を入れる予定です。該当プレイヤー以外へのネタバラシはご遠慮下さい。
演出部分に関しては、ある程度要望を聞く予定です。RP勢のご参加も歓迎しておりますが、演出規模によっては不可能な事もありますのでご了承ください。
基本的には運営の想定したギミックなどを設定し、AIが誰にそのギミック系スキルを持たせるか判断します。そのため、どう考えても不一致では?と思われた方は運営にご連絡下さい。よろしくお願いします。
人類種の方は人数が多く、事前打ち合わせなどは無理だろうと予想されるため、イベント当日をお楽しみ下さい。
※このイベント開催日時は○○の13時を予定しております。
エントリーの締切は△△までです。
このイベントはお祭りです。特に報酬などは予定しておりません。勝敗など気にせず楽しんで頂けると幸いです。
皆様のエントリーお待ちしております。
「うひゃー! 絶対やる!」
「「人外種プレイヤーを相手にしたボスラッシュかー」」
「この中だと私とドリーとターシャだけです!」
「お姉ちゃんがヤバだよ」
「「どうせラスボスだろ知ってる」」
「正直私もそんな気がしますね」
不死者組を取り巻きにしたボスキャラですかね? キャラの立ち位置的にもその方が自然です。となると私は統率系を持った支配級と言われるポジションですかね。
私の本体VS他だったら笑うしかありませんが。
エントリーは第五回が終わってからですし、楽しみにしていましょう。
次のイベントに思いを馳せつつ、午後の授業……からの帰宅。
少しゆっくりしてから、ログイン!
エリアノーラといつものやり取りをした後、離宮の裏にある大鉱脈の採掘をし、《古今無双》の型稽古をする。それがテンプレと言うか日課ですね。たまにそこに生産が入りますが、今日はとりあえず無しで。
さて……今の55レベで使用できる宝石を使用したアクセはなんですかね。ハウジングの倉庫を漁っても良いですが、多分検証班のWikiに纏められていると思うので、そちらの一覧を見た方が早い気がします。
今は器用・知力・精神を2個ずつで、セレスタイト3個とヘマタイト3個の6個。この指輪なん……ああ、ボスドロップの器用が上がる指輪ですか。精妙な指輪とかありましたね。さすがにもう変え時でしょう。
私はアクセ枠の半分である7枠は固定なので、残り7枠の更新が必要です。同じ光と闇の魔法強化で考えると、宝石はセレナイトとモリオン。
ステータスも決めないといけませんが、精神と知力は必須として、残りをどうするか。いや、精神と知力3個のパリィ用の敏捷1で良い気がします。もしくは精神3の知力と敏捷2ですね。
筋力・器用・体力は特に強化せずとも問題は無いので、知力・精神・敏捷の強化を優先して良いでしょう。その方が火力と継続戦闘、生存能力に直結します。
とはいえ、ニフリートさんがまだいないので……どうしましょうかね。
そうだ、たまには図書館へ行かないと。何かしらの条件を達成して、解放されている何かがあるかもしれませんからね。
ケラエノ図書館へ行きますか。図書館へ行く場合は、一応メモ用のペンと紙を持って行きます。
鍵転移で直通です!
……円錐状の何かがいますね。まあケラエノ図書館管理生物なんですけど。挨拶してから練り歩きます。何かあると良いのですが。
基本的にデータのある本は極一部で、それ以外は飾りであり、中身は真っ白ですからね。何らかのスキルでデータありを探すのが現実的ですが、一応総当たりするという選択肢も無くはありません。……正気とは思えませんけど。
大まかに言えば世界設定の書いてある本、スキル関係がありますね。絵本なんかが世界設定と《言語学》スキルのための両方を担っています。
それにしてもここのBGM、改めて聞くと落ち着きませんね……。
冥府も奈落も深淵も、BGMが似通っています。まあ、ステルーラ様の領域である冥界ですからね。基本的にゴシック系というか、ダークファンタジー系のちょっと暗めの曲です。
冥府の町はちょっと明るめで、城はピアノ主体のゆったり。奈落はちょっとテンポ速めで戦闘曲寄り。深淵が笛主体で幻想的、城は厳かに。そしてこのケラエノ図書館……ちょくちょくテンポを外してきます。やけに不安にさせてきますね。
そういえばステルーラ様のところ、BGM無かったような。その分色々なSEだけが、ランダムな場所から聞こえてきてましたっけ……。時空間だからですかね?
ん、反応している本を発見!
さて、中身を拝見。
〈根源と錬金術を、所持している言語スキル《古代神語学》で解読を開始します〉
……なに?
錬金術と言っている以上、錬金術関係だと思うのですが、なんでしょうね。
解読が完了するまで少し待ち……。
〈特定の条件を満たしたため、ハウジングアイテムが追加されました〉
〈魔導書:錬金手帳を手に入れました。詳しくはヘルプを御覧ください〉
ハウ……ジング……?
この間改良型にしたばかりなのに、もう嫌な予感がしますね。
生産設備は嫌だ生産設備は嫌だ生産設備は嫌だ――
[家具] 錬金窯 レア:Ep 品質:C 価格:600万
錬金術を使用するための、太古から蓄積された英知の結晶。
大規模設備でありとてもお金がかかるので、錬成陣に敗れた。
ただし、錬成陣に比べ優れた錬成が可能となる。
[家具] 大型錬金窯 レア:Ep 品質:C 価格:800万
とても大きな錬金窯であり、複数の接続口がある超大規模錬金設備。
異なる術を異なる素材で同時に扱えるが、慣れと知識と技術が必要となる。
その分不純物が入る確率が低いため、非常に高品質にできる。
[家具] 小型錬金窯 レア:Ep 品質:C 価格:400万
比較的小型の錬金窯で、パイプを使用して別設備と接続が可能。
他の物と接続する事が前提として作られているため、単体使用はできない。
[家具] 錬金窯用パイプ レア:Ep 品質:C 価格:5万
大型錬金窯と小型錬金窯、もしくは小型錬金窯と小型錬金窯の連結に使用する。
窯と窯を接続する際、距離を気にする必要は無く、パイプをどう引くか設定可能。
いくらでも取り外しは可能だが耐久値があり、修理か新品が必要。
――はいっダメっ!
ある意味お約束と言える錬金窯ですか。「そうはならんやろ」「なっとるやろがい!」を地で行く錬金窯。今まで錬成陣でしたからね……。
しかし値段ですよ。正気ですか? さすがに金策しないと買えません。
錬成陣はぶっちゃけたところ、布に錬成陣が描かれただけですからね。それに比べ錬金窯は金属製の窯でしょうから、高くなるのは分かりますが……高すぎるんですよ。
何より気になってしょうがないのは、大型錬金窯と小型錬金窯、そして錬金窯用パイプ。新しいのが気にならないわけないじゃないですか。
ただの窯ですら6Mなのに、これ実質12Mですよね? パイプの5万とか誤差です。
そして魔導書の錬金手帳。これは装備でもなんでもなく、ただのレシピ帳です。UI一体型。まあつまりシステム演出の一部。
レシピ表示機能は元からありましたが、今回でさらにタブが増えました。前からあった各種錬成陣のタブから、錬成陣、錬金窯、多段式錬金窯の大タブが3つ。それから小さいタブに分かれています。
錬金窯一つで全ての事ができるわけですね。【合成】も【分解】も【加湿乾燥】だってできる不思議窯。
今までは薬草と蒸留水を用意して【合成】で初級ポーション。高品質にする場合は、薬草を【状態変化】してから蒸留水と【合成】。
ところが大型になると一気にできることが広がりますね。使うのは同じく薬草と水。薬草を入れた小型錬金窯で【抽出選入】を使用し薬効を選択すると、それがパイプで繋がっている大型錬金窯へ。水を入れた小型錬金窯で【抽出選入】を使用し水を選択すると、それがパイプで繋がっている大型錬金窯へ。これで薬効と水が大型錬金窯で合流し、【合成】することで高品質の初級ポーションができる……と。
私が既に所持している生産レシピを見る感じ、小型で何かしらして送られた先の小型で更に何かして……というのもできるようです。
薬草をいきなり【抽出選入】するより、【状態変化】で液状化してから【抽出選入】をした方が良い可能性も。もしくは液状化より蒸留水のように気体化?
……ま、さっき見た初級ポーションの高品質化だけでも大型の8M、小型2個で8M、パイプ2本で10万必要なんですけど! 1610万ですよ。酷い話です。
しばらく日課の生産を、スキル上げから金策の生産に切り替えましょう。確実にこの生産設備を買ってからの方が、スキルレベルは上げやすいはずです。品質が上がれば売値も上がりますし、ポーションの補充以外は金策で良いでしょう。
今の錬金設備はどうしましょうか。部屋自体は正直余っているので、錬成陣の部屋と錬金窯の部屋、どちらも用意することは可能です。
ただメインで使うのは錬金窯になると思うので、その場合は今の錬成陣の部屋を移動して、錬金窯を置きたいですね。近い方が使いやすい。
まあ資金ができたら考えるとして。
さて後は、この本の内容を紙に写して……っと?
〈魔導書や特定の言語で書かれた物は、翻訳などによって正しく効果を発揮しない場合や、内容によっては良くないことが起きる可能性もあります〉
〈どの言語で本の内容を書き写すか、会得している言語から選択してください〉
……なるほど、自動で書き写してくれるようで何よりです。
検証班の情報ありませんかね。検証班Wikiで、えー……言語スキルか、図書館ですかね。図書館でWiki内検索。
うん、さすが検証班。やってますね。やってますが……言語系スキルを持っていない状態や理解度が途中の場合、写しの内容が穴あきになったり、内容が飛んでいたりする……と。
現状魔導書で試せる機会が無いでしょうし、《古代神語学》なんて持っているのは今のところ私ぐらいですか?とは言え、穴あきや内容が飛ぶというのは恐らく共通の現象でしょう。それを魔導書でやった場合などは大体察せますし、試す必要もありませんか。というか、既に言語は取得済みなので試せないが正しいですが。
これは錬金窯の技術本ですし、共通語で書き出して師匠へ持ち込みで良い……はずです。恐らくクロニクルが発生す……いや、改良型錬成陣も広まったタイミングでしたか。完了状態で出てきましたから、同じタイミングですかね。
ケラエノ図書館管理生物に挨拶してから、持って行きましょう。
突撃師匠のお店。
「ししょー」
「お前さんかい」
「これ、お届けに参りました」
「……ほう? 興味深いさね。広めるのかい?」
「そうですね。ただ、それを使う人がどれ程いるか」
「ほぼ居ないだろうさ。どれほどの者が買えるか」
錬金窯は金属の塊で高く、なにより住人のお店が取り扱っている品質は、C統一ですからね……。
主な理由はゲーム的なものでしょう。普通に高品質品が買えるなら生産職は不要です。そのため住人達制作の高品質品は、騎士団とかにでも納品されているということで、お店には出ていないのでしょう。
調合をしているサルーテさんのお店に、住人の冒険者が買いに来る事もあるようですからね。鍛冶のエルツさんや木工のプリムラさんとかも、住人が買いに来るようですし。
私の家は特殊過ぎてお店とか不可能です。現世に別荘が必要でしょう。作る予定はありませんけど。
「ま、広めておくさね。少し待ちな」
「ええ、お願いします」
これでそのうち、他のプレイヤー達にもハウジングが追加されるはずです。
錬金窯のフレーバーと師匠の反応からして、錬金窯を正規ルートで開放するのはかなり苦労しそうですね。もう開放したので関係ありませんけど!
さて、ニフリートさんが来るまで金策用の生産でもしますか。メッセージだけ送っておきましょう。ログインすれば見てくれるはずです。
師匠のお店を後にして、離宮へ帰ります。
各種ポーションと蘇生薬に、ジャーキーとバフ料理……ですかね。料理やポーションに関してはライバル沢山ですが、現状蘇生薬に関してはほぼ私の一強です。と言うかこれのS級条件が厳しすぎる。出した瞬間無くなっていきますからね。
あとは錬金で作る中間素材。これも結構いい感じの売れ行きです。まあ大体同じ人が買っていっていると思いますけど。高品質中間素材なんて求める人は限られますからね。
裏で採れた鉱石と宝石は属性金属にしてエルツさん行き。軍隊魔戦蜂の蜜は自分で使う分と少しを残して、委託行き。薬草畑もポーションにして、一定量以上の在庫は委託行きです。
こんなに使わないけど、キリの良い50個とか100個は確保しておくという……分かります? まあ大体売りサボりとかして、だんだんそのキリの良い数字が増えていくんですけど。
まあそんな事より、お金を稼ぐなら蘇生薬とジャーキーですかね。
ただ料理と錬金は生産部屋が違うので、同時進行はできません。時給の計算は面倒ですし、需要のある蘇生薬にしましょうか。ひたすらジャーキーだけ作り続けるのは嫌ですが、錬金なら他の中間素材なども作れます。
宰相の言っていた冥府で行う祭りでの歌を、原曲とカラオケモードで交互に流しているわけですが、《歌》取りますかね? 金策生産とか歌いながらするの、結構ありです。スキル取っておけばスキルレベルも勝手に上がりますし。
《歌》の上昇ステータスってなんですかね。
スタミナ、呼吸ゲージ量、声の通りが良くなる。あと器用微増?
いら……いら……ない……。
器用が上がるなら無駄にはなりませんが、検証班がこの書き方をする程度には微妙な上がりのようですね。
スタミナや呼吸ゲージ量に関してはもう、種族的に完全に死にますからね……。
ただRP的に、声の通りが良くなるのはあり。王族は声が通ってなんぼですよ。現状スキルポイントも余ってはいますし、RP用にも取りましょうか。RP用と言えば、ダンスが足捌き系とは別にあったはずですね。そっちも取りましょう。
えっと……《歌》と《演舞》ですね。
《演舞》《舞踏》《舞踊》の3つがあり、《演舞》は各種ダンスのスキル。《舞踊》は《足捌き》と《重心制御》の統合スキル。私が既に持っている《絢爛舞踏》は《足捌き》と《重心制御》かつ種族の派生である《舞踏》の3次スキル。
《舞踏》と《舞踊》はほぼ同じスキルですが、《演舞》は別物ですね。前者2つの分類は強化・補助スキルですが、《演舞》はその他でしょう。名前が似すぎてとても紛らわしいですね。
とりあえずスキルポイント3ずつなので、どちらも取って引き続き生産。
ふむ……結構作りましたね。
《歌》は随分と上がりやすいようですね。これからも作りながら口ずさんでいれば、勝手に上がっていくでしょう。
それで、肝心のアーツは……。
《歌》
【エクスパンドボイス】【ガイドライン】【スピーカー】
声の届く距離がスキルレベルに応じて広がる。
声の高さを上下で、長さを左右で、強さを濃さで表すゲージを表示する。
カラオケモードが自分以外にも聞こえるようにできる。
改めて《歌》スキルのアーツを見ると、これ一人カラオケ特化スキルのようなものなんですよね。
《歌》の派生である魔法効果のある《呪歌》のルートへ行くと、戦闘などでも役に立つスキルですが、純粋な《歌》ルートは趣味スキルです。
私は派生に必要な《風魔法》が取れないので趣味ルートなわけですが……これが思ったより面白そうで、今度エリーとアビーに見せましょう。最初はスルーしましたが、やってみせれば取る気がします。
2次スキルの《歌唱》で録音データのやり取りが可能になるようなので、データを貰えばデュエット曲など、複数で歌う場合が捗りますね。
つまり趣味スキルとしては大変優秀。ダンスに関してはまあ、そのうち気が向いた時にでも。
それはそうと、素材が揃っているからとノリで作り、完成品を鑑定してちょっと焦ったアイテムがこちら。
[毒薬] 誘魔薬 レア:No 品質:C
メズマグサーノの分泌物を加工した物で、魔物を引き寄せる効果のある薬。
生産・販売・運搬・使用は商業組合に届け出が必要。
国際魔法薬取締法適用物。
状態異常付与(投擲):魔物を引き寄せる状態 Lv3
メズマグサーノ。森のダンジョンにいた芋虫のあいつです。魔物に丸呑みして貰い寄生するという、ちょっとヤバな生態しているあれ。
ドロップした分泌液が必要なぐらいで、他の素材はたいした物ではなく、比較的楽な分類と言えるでしょう。
まあ、見て分かる通り問題なのは国際魔法薬取締法。
検証班のWikiによると、危険物取扱者辺りのものじゃないか?だそうです。科学工場とかガソリンスタンドとかで、働けるようになりますよっていう資格。
国際魔法薬取締法は状態異常にするタイプの魔法薬や、ちゃんとした扱いをしないと大惨事になる誘魔薬などが規制対象のようです。
私の組織体である『破局なる生』に関しては、取締法の適用外です。そもそも出回っていないからでしょう。そうつまり、合法!
……それはそれとして、誘魔薬は師匠に引き取って貰いますかね。素材があったから作ったものの、使い道がありませんし。
自分達の装備に塗って魔物を集めることで、狩り効率を上げる事は可能ですが……細かな調整やらができない限り、使い物にならないんですよね。
まあ、国際魔法薬取締法で縛られるだけの理由はあるわけです。師匠のところへ行きますか。
……雨じゃないですかー! ヤダー! しかも割と土砂降り。即びしょ濡れ。
ゲームに慣れれば慣れるほど、流れるように転移してびしょ濡れになる罠です。……いやまあ、転移マップにお天気マークがしっかりと表示されているので、ちゃんと見なかった私が悪いのであって、罠でも何でもないのですが。
「お、濡れ透け姫様だ。さてはやらかしたな?」
「ふっ、雨に打たれたい気分だったんですよ」
「ほんとかおい」
このゲームに慣れている1陣や2陣ほど嵌まるんですよね。
まあ大きな外套のおかげで、肩から後ろ方向は無事なんですけど前面はアウトです。もう転移するなら、《超高等魔法技能》の【防水結界】を使用する癖を付けた方が良いまである。
とりあえず【防水結界】と【洗浄】を使用します。
「……鍵のせいで特に嵌まりやすいんですよね」
「町中ならどこでも良いんだっけか」
「そうですね。気軽に転移して濡れます」
「立像転移の俺らも濡れるからしゃーなし!」
基本的にプレイヤーは、町の中央にあるステルーラ様の立像から転移します。銀の鍵で関係なく転移する私よりはマシってぐらいですけど。
思考入力のせいで余計にですね。転移する町をタッチでも良いんですけど、町名でも転移できるので、視界に雨マーク出てても『あっ』って思いながら転移して、もれなく濡れます。
さて、居合わせた人と別れて師匠のお店に行きましょう。
「ししょー、これあげます」
「……ああ、作ったかい。本来は最初の方に教えるべきではあるんだが、お前さんはそもそも冥府の存在だからね……」
「気にしなくても構わないのですか?」
「一応推薦状は用意しているさね。商業組合に持っていきな」
住人は試験やらがあるそうですが、異人は無し。プレイヤーはシステムが表示してくれます。フレーバーとしては十分です。さすがにゲーム内で試験勉強までする必要は無いでしょう。
師匠と少し話して商業組合の受付へ。
「国際魔法薬取締法の資格手続きをお願いします」
「はい、お預かりいたします。少々お待ちください」
少しの待ち時間は委託を見ていれば潰せるのが良いですね。ついでに作った物を委託に出しておきます。
あ、できたようですね。
「お待たせいたしました。資格情報は組合カードに記載されております。販売窓口の組合員へ資格の提示をすることで、対応する商品の販売が可能となります。ただし、資格を持つことによって一切の言い訳が通じなくなります」
「……言い訳?」
「はい。違反が判明した時点で『分かっててやったんだろ?』と、問答無用でしょっ引かれます。取り扱いは厳重に」
「分かりました」
「またのお越しをお待ちしております」
〈特定の条件を満たしたため、『称号:国際魔法薬取扱者』を取得しました〉
[国際魔法薬取扱者]
扱いが難しい魔法薬の取り扱い方を知っている者が得る称号。
あなたは魔法薬の効果と、安全な運用方法、対処法を把握している。
国際魔法薬取締法適用物が、商業組合や薬師・錬金術師から購入可能になる。
……受付の女性がプロでしたね。ふらっとやってきた私に一切無反応とは。
さて、国際魔法薬取締法のアイテムを確認してみますか。混んでるしUIからで。
おー……ショップのラインナップが増えていますね。
[毒薬] 誘魔薬 レア:No 品質:C
メズマグサーノの分泌物を加工した物で、魔物を引き寄せる効果のある薬。
生産・販売・運搬・使用は商業組合に届け出が必要。
国際魔法薬取締法適用物。
状態異常付与(投擲):魔物を引き寄せる状態 Lv3
[国際魔法薬取扱者]
必ず薄めて使用すること。
柵や罠に薄めたものを塗っておくことで、近くに来た魔物を引き寄せる。
薄めずに使用すると、周辺の生態系を破壊する可能性があり、極刑もあり得る。
大量の水で流す。燃やす。埋めるが効果的。
ガチなやつだこれ。宇宙猫みたいになるところでした。
罠は分かるとして……柵に塗ることで、作物を漁りに来た魔物を柵に引き寄せるんですかね。時間稼ぎにはなりますし、効果が強すぎると逆効果です。
そして生態系。魔物の大移動……俗に言うスタンピードですね。意図的に引き起こせますし、それによって生態系が変化する。ゲーム的にいうと大規模なMPKが可能なわけで、まあ極刑不可避ですね。トレインより遙かにタチ悪いですし。
麻痺毒なんかも売っていますが、狩人用ですか。睡眠に関しては適用物ではなく、普通に売って……いや、適用物なのもありますね。効果の違いですか。
とはいえこの辺りの、私は使わないんですよね。自前のがありますし。
ショップイベントを終わらせたとしておきましょう。
さて、ニフリートさんに連絡してから夕食やらを済ませますか。
寝る前のログイン。
アクセに関して相談しに行きますか。新調するか、修理してイベント後に新調するか。ステータスも悩ましいものです。とりあえずお店にお邪魔しましょう。
いざ、細工師ニフリートさんのお店へ。宝石と金属を使用したアクセサリーのお店ですから、住人からすると高級店扱いですね。
「いらっしゃい」
「ごきげんようニフリートさん」
「アクセの新調?」
「はい。そろそろ変えようかと思うのですが、次のイベントでどうなるかとも」
「んー……お金あるなら今でも良いけど、どうせならイベント後かな。進化もあるけど……次は60台だから、多分宝石が変わるかなー?」
ええ、分かっていましたとも。お金がないという問題に直撃したことぐらい。
学校とかログイン直後でアクセを新調しようと思っていた時はお金あったんですよ。ええ、あったんですよ。図書館でお高いハウジング設備を見つけるまではね?
「実は新しい錬金用ハウジング設備を発見してしまいまして……」
「あれ、錬成陣だけじゃないんだ?」
「フレーバーによると、導入にお金がかかりすぎて既に廃れた物らしいです」
「あー、錬成陣にお株を奪われたわけだ」
「そうですね。ただ、お金以外は大変優秀のようで」
「で、いくら?」
「これですよ」
「うわでた錬金窯だ! 値段やっばなにこれ」
「師匠に渡しておいたので、そのうち全プレイヤーに開放されるはずです」
「しかもパイプラインじゃん。とはいえ、この程度じゃたいしたことないか」
「そうですね。工業MODとファク○リオを経験済みの私に隙はありません」
「挙げてるのがガチなんよ。私もやったけど」
このままだと確実に話が脱線するので、話を戻しましょう。
とりあえずアクセの新調は進化後に回すとして、ステータスをどうするかですね。
「アクセによる敏捷の上昇具合ってどんなものでしょうか……」
「あれ、敏捷上げるの?」
「パリィを考えるとあるに越したことはないんですよね」
「あー……ね。でも敏捷に関しては今特殊な状態でしょ?」
「今は装備のセット効果によるものです」
「んー……次の進化、つまり60レベでかなり強化されると思うんだよね。60レベが上級扱いのはずだし」
「なるほど。確かに最近、見た目以外はこれといった変化がありませんでしたね」
魔物の分類は1~29が下級、30~59が中級、60~79が上級、80以上で最上級らしいですからね。下位中位上位最上位という表現の場合もあるようです。
60レベで上級の仲間入りした時、装備の強化や新しい種族スキルの解放があるはずだから、考えるのはその後の方が良いと。
「60以上の敵はかなり勝手が違うようだから、人外組も変わると思うよ」
「では、とりあえず修理だけお願いします」
「あ、まだこれだったんだ。30帯装備じゃん」
35レベぐらいの時に買った装備ですからね。さすがに変えたかったですが、60まで我慢しますか。
「ところで、その装備効果に敏捷の基礎ステって乗るの?」
「一応乗るっぽいですね。レベルアップや種族キャップ解放時に実感はあるので」
「町中やハウジングだと耐久減らないから、敏捷アクセ3個ぐらい貸そうか」
「助かります。ちょっと冥府行ってきますね」
「てらー」
修理は結構サクッと終わるので、割と壊れかけだったアクセを受け取ります。
それと50帯の敏捷アクセを3個受け取りました。
早速お城の訓練場にある戦闘シミュレーターで試すとしましょう。
まず録画をONにして、今の状態で一回、普段通りの設定でやります。
そしたら次は、受け取った敏捷アクセを1個装備して、同じ設定でやります。
これを敏捷アクセ3個装備するまで繰り返し、ニフリートさんのお店へ戻ります。
「戻りました。アクセお返ししますね」
「あれ、早かったね。どうだった?」
「なんとも言えませんでした。一応録画してきたので、これから確認しますが」
ニフリートさんと一緒に、録画してきたそれぞれの映像を見比べます。
「見た感じそれなりに変わってるようだけど?」
「悪くはないのですが、実際の使用感としては微妙というか……」
「物足りない感じかー」
「効果はあるけど、計算式が特殊だと思いますね」
「確かに。セット効果が大きい分、素直に計算されてなさそうだね」
ゲームというのはプログラムです。ステータスなんかも計算です。つまり、この装備やスキルは計算式のどこに入るのかというのがかなり肝心です。足し算なのか引き算なのか、かけ算なのか割り算なのかは当然として、それが計算のどこに来るのか?
例えば防御系の『スキルレベルに応じてダメージを軽減します』ですが、まず重要なのは引き算なのか割り算なのか、はたまた固定値なのか。
固定値軽減スキルは割かしゴミというか、敵の弱い前半は比較的強くて、敵が強くなる後半ではほぼ意味をなさない空気スキルになりやすいんですよね。Dotダメージや環境ダメージまで引いてくれるなら、結構ありのスキルになりますが。
まあそんなわけで、私の装備のセット効果、計算式どうなってるの?という状態ですね。
「特殊装備の宿命ですけど」
「嵌まれば強い分、自由度はどうしてもねー。改善の余地無し」
「方向性は変わらない……はずですし、そうなると敏捷は候補から外すべきか」
「妥協点にすら到達しないなら、素直に長所伸ばすべきかな」
「……器用のアクセをお借りしても?」
「良いよ」
さて、敏捷と同じように試してみるとしましょう。
基本的に精神と知力を上げる事は決定事項です。主力のステータスですからね。私の場合は魔法使いの中でも信仰系なので、メインは精神です。
精神が乗る魔法は本来回復系だけですが、私の場合は特殊なキーワードによる魔法で、攻撃系も精神依存に変更されています。その分発動も遅いんですけど。
敏捷ほど意味はありませんが、録画してお店へ戻ります。
「どうだった?」
「大人しく精神4の知力3で良い気がします」
「求めるレベルまで行かないかー」
アクションゲームにおいて、攻撃力より操作性に振る……というのは結構ありです。敵を倒す火力は必要ですが、『ストレスの無い動きができる』という影響はとても大きい。なぜなら、攻撃できなければ攻撃力など意味をなさないので。
ここで難しいのが、攻撃力と操作性のバランス。人によるとしか言い様がなく、実際にその人が試してみるしかないんですよね。求める操作性は人それぞれであり、プレイスタイルによっても変わりますから。
私の場合は敏捷と器用を上げる魅力を感じませんでした。大人しく知力と精神を上げて魔法火力や最大MPを増やしましょう。
「実は気になってる事があるの」
「なんです?」
「石言葉ってのがあるでしょう? あれらも姫様みたいな立場に合わせたらどうなるのか」
「なるほど。リアルの花言葉は全く根拠など無い、ただ広まって定着しただけのものですが、こちらの世界の花言葉や石言葉は御利益ありそうですね」
「でしょう? 今のところ宝石の色で強化されるステータスが決まってるんだろうな……ぐらいだし。図書館とか聞き込みが必要になるけど、気になるよね」
「多少なりとも効果が増えたり、対住人には影響ありそうですね」
「ま、正直検証ができるとも限らないんだけど!」
住人に対しての何らかの判定に効果あったかどうかは、運営にしか分かりようがありませんからね……。数千とか数万のプレイヤーが協力してくれたら分かるかもしれませんが、そのレベルでしょう。
「まあほら、やらないよりやった方が良いでしょ。プラシーボプラシーボ」
プラシーボと言っている時点で、効果が無いこと前提な気もするんですが。
「しかし石言葉ですか。関係しそうなスキルを持っていないので、図書館で私が探すのは無理そうですね」
「図書館、聞き込み、あとは《鑑定》によるフレーバーテキスト頼りかな? 伝承とかもありか。民族衣装的なので身に着けているやつとか?」
「老舗が売り文句にしているのも一応参考になりそうですね」
「信憑性が怪しくなるけど、調べる取っ掛かりには十分かな。そういえば姫様の髪飾りに付いてる宝石が気になってたんだよ」
クリスタルロータスの髪飾りの下側に連なってる宝石達ですか。それなりの大きさがある金平糖ですからね。
まあ、鑑定して貰いましょうか。私は宝石関係のスキルなど持っていないので、その辺りの情報が出ませんし。
「いざ、鑑定! ……アステロイド?マカバスター?聞き覚えがあるようなないような」
「水晶を立体の星形カットとしたもの……ですかね?」
名前で検索をかけたところ、そのような感じ物が出てきますね。
「ああそうか、小星形12面体。よく見るのは水晶だったような」
「『マカバ』が古代語で、スターはそのままのようですね」
「六芒星がマカバスターで、六芒星と五芒星がアステロイドだったかな?」
「……結構意味が一致しそうではありますね」
「アステロイドもマカバスターも、安定とか調和方向だったっけ」
「複数サイトの情報を見た感じ、そんな方向性のようですね。マカバが肉体と精神の相互云々とか、アステロイドはより高次元の宇宙エネルギーが何たら書かれています。こちらではどうか分かりませんが、意味はありそうですね」
「ちょっと真面目にこっちの世界の石言葉とか、パワーストーン関係を調べてみるか……。こっちだとより高次元の宇宙エネルギーが軽くプラシーボ超えてきそう」
「まあ、実際ステータスに月明かりとかが影響してきてますし、宇宙空間や亜空間、なんなら神様いますからね」
「それなー」
細工関係はそちら方面に意識を向けた方が、次のランクに行けそうですね。好きな石が身に着けられないジレンマはアバター機能で解決して貰って。
私の髪飾りに付いているものは、大きめのアステロイドが中央に1個、一回り小さいマカバスターが左右に1個ずつで、合計3個の宝石が装飾されています。
「知力3の精神4で光と闇の強化で良いんよね?」
「そうですね。光と闇の強化はどっちが4でも構いません。物理防御耐性や物理防御があっても良いかもしれませんが……」
「物理に弱くなったんだ? でも姫様の場合、火力に振るべきかなー」
「実用性が無い感じですか?」
「いや、複数重ねるタンク用って感じ」
どうやら同じ効果を複数装備する事で、効果が上がるらしいです。複数装備によるボーナスが入っているような感じだとか。そのため1個では勿体無いようですね。
まあ然もありなんという感じではありますが。防御系ってバランスが難しいですからね。
魔法アタッカーな私は無難に火力寄せでいきましょう。
「あ、光に寄せた方が《聖魔法》系も強化されます?」
「そいつ派生なんすわー。効果はあるけど100%じゃない感じかな」
「雷とかってそんな感じなんですっけ?」
「そう。複合系がまだ分かってない。宝石があるのか別のルールがあるのか……」
複数属性からの派生である複合系を強化できるアクセサリーが、未だに作れていないようです。雷とか、岩漿とか、木などですね。
岩漿は火と土の複合魔法ですが、火属性強化と土属性強化で効果はあるものの、《岩漿魔法》の強化率は50%とかそこらだとか。
「火系のルビーと土系のヘリオドールを一つずつ付けてもダメだったし。むしろ効果下がる」
「属性が干渉するとか、そんなあれですかね」
「土台となる金属を属性金属とか色々試してみたりしてるんだけどねー」
「《細工》ってアクセに彫刻できます……よね?」
「勿論。好きなデザインとかあるなら入れるよ。当然のように値段上がるけど」
「ここは定番の魔法効果のある紋様とか……」
「いやまあ、確かに定番だけども。礼拝堂の柱が実は……とかね!」
「つまりアクセサリーにもその技術が……」
「死んじゃう」
とか言いつつ、当然のようにその辺りは調べて検証済み……というより、そんなことはとっくに住人が試しているというのが正しいでしょう。
結論から言ってしまえば無理だそうですね。仮にできたとしても実用性はどうなん? って感じではあるようですが。
「面積を考えると盾とか鎧はありだろうけど、深く考えずとも分かるじゃん」
「一番攻撃を受けるところですからね?」
「傷が入ってダメになるならまだしも、誤作動とかしてみーよ。死ぞ」
「実用性を考えると……せいぜい腕輪とか辺りですか」
「ま、現状身に着けられるサイズで、効果があるのは見つかってないんだけど」
現在確認できる魔法効果のある彫刻は大規模であり、かつ礼拝堂とかの柱などに使われているので、プレイヤーには無関係。そして文字が使われている訳ではないので、私の《古代神語学者》も出番はなさそうですね。
「さすがに『繋ぐ』意味のある彫刻だけを各属性宝石の間に刻んで……とかだと無理過ぎんよ」
「彫刻ではなく、触媒となる別の宝石の可能性もありますね。コア的な感じで」
「あー……そういう? んー……どっちみちヒント無しはしんどい。見つけてないか気づいてないだけの可能性もあるけども」
「ソフィーさんか宰相がワンチャンありそう……」
「確かにワンチャンある。総当たりしようにも宝石はたけーのよ」
「加工も大変ですからね?」
「検証となると品質も合わせたいからね」
宰相は情報が古いか、あ?んなもんねぇよって可能性もあるんですよね。宰相の後の技術とか。そもそも宰相も闇系ですし。
どちらかと言えば、不老の魔女であるソフィーさんの方が可能性ありますか。戦闘は魔法が主体的な感じですし、装備していても不思議ではありません。
「とりあえず60レベに備えて、アクセ用のお金も貯めますか……」
「光と闇3の空間か聖かな?」
「それも良いですね。まあ、確実に空間より聖が無難だと思いますけど」
「ですよねー」
「空間は消費MP減少が一番嬉しいですけど、多少減ったところでという」
「60レベで進化したらもっと減りそうじゃない?」
「確かに。正直空間系に関しては、種族による補正を期待するのが一番ですね」
《空間魔法》やその上位の《時空魔法》は、使い勝手が良いとは言えませんからね。少なくとも現状は攻撃魔法がありませんし。防御や補助、便利系の魔法ですが、消費MPが多すぎて実用性が怪しいんですよね……。
亜空間の認識には《空間魔法》の60が必須ですが、あくまで認識です。亜空間航行ができるかと言われたら否ですし、そもそも亜空間に干渉できません。私は種族や別のスキルのおかげでできているので。
端的に言うと、そんな魔法に装備枠を使うのは勿体無い。うん、とてもお薦めできません。
「とりあえずソフィーさんにでも聞いて来ますね?」
「よろしく!」
一度離宮へ戻りましょう。その場で転移するだけ。
「お帰りなさいませ」
「ソフィーさんはどちらに?」
「ご案内致します」
どこからともなく現れる専属侍女。とても楽です。
一室に通されましたが、どうやらのんびりしているようです。せっかくなので、私も一杯頂きましょう。
「ソフィーさん、複合魔法を強化するアクセサリーの作り方はご存じですか?」
「ん、多少なら……」
さすがソルシエール。知識人。
「とはいえ、詳しくは知らない……。各属性宝石の間に、それなりに貴重な万能属性の宝石を置き、何か……したはず……」
「万能属性……?」
「有名どころではダイヤモンド……」
色で属性が判断できない宝石達……ですかね? それなりに貴重と言っているので、恐らくクォーツとかでは無理なのでしょう。
クォーツは……宝石とは言いませんか。
「ここならムーンネザーライトがあるから珍しくない……」
「あれ万能属性ですか。セレナイトとモリオンの間に挟めば良いのですね?」
「そう……。《細工》系で何か必要で、それがただの装飾品と装備品の差……」
ステータスの無いアクセサリーが装飾品で、効果のあるアクセサリーが装備品と思って良いのでしょう。
王侯貴族の身に着けるアクセサリーは、装備品である必要性は薄いですからね。
まあ、この辺りはニフリートさんがどうにかするでしょう。
「ここで採れるなら闇や死な気もするのですが、万能なのですね」
「それはそう……上を見れば分かる……」
上?
ソフィーさんが指しているのは、常に浮かんでいる月でした。
「月光は万能属性……。だから全ての魔が活性化する……」
「なるほど……。言われてみればロータスもプニカも、闇などではありませんね」
「ん……。ここは良い環境……作業が捗る……。うちも月を固定したい……」
「擬似的な月の再現とかは無理なのですね?」
「理論上は可能……。実現は不可能……」
万能属性とは、全ての基本6属性を平等に持つ事。
各属性の魔石などを使用し、万能属性化は可能なものの、維持が無理。
魔法での再現はもっと無理。全ての属性を持つ魔法は現時点で存在しない……と。
〈この世界における属性の追加情報を得ました。この情報に則りステータスや識別が更新されます。同胞の者達と情報を共有しますか?〉
久しぶりに見ましたね。
勿論します。
〈〈プレイヤー、アナスタシアがこの世界の属性の追加情報を取得、共有しました。これによりステータスや識別が更新されます。詳しくはヘルプを御覧ください〉〉
ソフィーさんと話しているので、確認は後回し。
「唯一可能性があるのは《時空魔法》……」
「空間系ですか」
「ネメセイアの持つ銀の鍵……。月と繋げてしまえば良い……」
「なるほど。空間を捻じ曲げ月光を直接引き込むのですか」
「空間でただ繋げるだけだと多分死ぬ……」
「確かに。私の使用している亜空間とは違いますから、繋げたら空気が抜けるので、宇宙空間に放り出されるでしょう。呼吸や赤外線、温度変化辺りの対策は必須」
「毎回黄金の蜂蜜酒が必要になるのは面倒だし……その辺りの解決として空間ではなく時空……」
「……月光以外の時間を止めるのですか?」
「ん……部分的に時間を止める……。これが理論上可能、実現不可能な理由……」
「消費魔力ですか」
「魔法制御も恐らく生物には無理……。私もそんな事で死ぬつもりはない……。この空間そのものが神の御業……」
さすがステルーラ様ということですか。
「まともなリッチとも話せたし、良い経験だった……」
「帰りますか?」
「ん……戻る……ルシアンナのところでいい……」
「分かりました」
ソフィーさんを始まりの町の教会へお届け。
離宮へ戻り属性のヘルプを確認。基本属性だけでなく、氷などの派生や竜属性とか万能属性に関しての表記が増えていました。
ニフリートさんにソフィーさんからの情報を送って、今日は寝ましょう。
おやすみなさい。
Tips
※属性とは
生物が生まれ持つ環境適性が属性です。
火山で生まれた生物は火に強く、自らも火を扱う事が多いでしょう。
海で生まれた生物は水に強く、自らも水を扱う事が多いでしょう。
それらを属性と良います。ええ、恐らく。きっとそう。
このゲームに存在する属性は以下の通りです。
基本属性
無属性:主に人類。強いて言うなら特に影響されないのが利点。
火属性:火属性攻撃力と火属性ダメージ軽減ボーナスがあり、水属性に弱い。
水属性:水属性攻撃力と水属性ダメージ軽減ボーナスがあり、土属性に弱い。
風属性:風属性攻撃力と風属性ダメージ軽減ボーナスがあり、火属性に弱い。
土属性:土属性攻撃力と土属性ダメージ軽減ボーナスがあり、風属性に弱い。
光属性:光属性攻撃力と光属性ダメージ軽減ボーナスがあり、闇属性に弱い。
闇属性:闇属性攻撃力と闇属性ダメージ軽減ボーナスがあり、光属性に弱い。
複合・派生属性。
聖属性:光と聖属性を強化し被ダメージを軽減するが、死に弱い。
死属性:闇と死属性を強化し被ダメージを軽減するが、聖に弱い。
氷属性:基本属性の効果と共に、凍傷・凍結・低体温症効果があり、岩漿に弱い。
雷属性:基本属性の効果と共に、麻痺効果があり、木に弱い。
嵐属性:基本属性の効果と共に、濡れ・低体温症効果があり、雷に弱い。
木属性:基本属性の効果と共に、鈍足・転倒効果があり、灼熱に弱い。
灼熱属性:基本属性の効果と共に、火傷・高体温症効果があり、氷に弱い。
岩漿属性:基本属性の効果と共に、火傷・高体温症効果があり、嵐に弱い。
特殊属性
竜属性:竜・万能・虚空属性に弱いが、それ以外に強い。
万能属性:虚空・竜・無属性に弱いが、それ以外の属性、特に基本属性に強い。
虚空属性:万能・竜・無属性に弱いが、それ以外の属性、特に複合・派生属性に強い。
複合属性で基本属性を攻撃した場合。
複合属性の元属性に、弱点属性が含まれていたら弱点攻撃。
基本属性で複合属性を攻撃した場合。
複合属性の元属性に、弱点属性が含まれていたら弱点攻撃。
ただし、攻撃属性の属性も持っていたら少しだけ被ダメージが減る。
複合属性同士の弱点属性。
氷は灼熱に強く、岩漿に弱い。
雷は嵐に強く、木に弱い。
灼熱は木に強く、氷に弱い。
岩漿は氷に強く、嵐に弱い。
嵐は岩漿に強く、雷に弱い。
木は雷に強く、灼熱に弱い。
氷→灼熱→木→雷→嵐→岩漿→氷




