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98 第四回公式イベント

Tips

募集主にブラックリストに入れられると、その募集には申請できない。

 朝のあれこれを済ませてログイン。

 ……おや、メッセージが来ていますね。セシルさんですか。


 忘れてて私が寝た後に掲示板に出した情報ですか。

 魔法伯から貴族と関わりを持つなら、ダンスはできた方が良い……と。ダンス系のスキルに心当たりはないか……ですか。なるほど。


 《舞踏》と《舞踊》がそれですが、あれは《足捌き》の2次スキルであり、別にダンスをする為のスキル……では無いはずです。

 ゲーム内でダンスしたことないので、やれば何かしら生えそうですが……ダンスを教えて貰えるようなコネが必要ですか。フレンドの中でその可能性が高い私の方に来たと。

 エリーやアビー達と社交ダンスも良いですが……どうせならまずは宰相ですかね。ニャル様の方は……奴のことです、確実に踊れるでしょう。無貌の神は多才である。……しかし私の背筋がゾワゾワしそうなので、やめましょう。ニャル様とダンスとか、不幸とダンスしそうですからね……。

 深淵は……そもそも姿があれなのが多いので、『不思議な踊り』になるでしょう。


 そとなるものは ふしぎなおどりを おどった!

 ○○は しょうきどを うしなった!


 堪りませんね。

 アホなこと考えてないで、まずは宰相に会いに行きましょうか。


「さいしょー」

「なんですかな?」

「宰相踊れます?」

「はて……多分覚えているかと。しかし、表とは確実に違いますぞ?」

「あー……」


 時代も違えば国による違いもあるでしょうし……ん? そう言えば地上の身分制度を把握していない?

 ステルーラ様の領域である冥界――冥府と奈落、深淵を指す――は把握しています。深淵では下っ端なのでちょっと怪しいですけど。


「立場的に踊れない……と言うのは少々情けないですね。断るにしても、踊れるけど地上と違うから……という理由が使えた方が良いですか」

「地上にサイアーを踊りに誘える者はいないと思いますぞ? 知りたいと仰るのなら教えるのは構いませぬが」


 イベントは午後からなので、しばらく教えてもらいましょう。

 離宮でやるようなのでそちらへ移動し、離宮にいる侍女を捕まえて使用していない部屋でレッツダンス。

 まずは教わったようにステップ。……これ動作アシスト効いてますね? 《絢爛舞踏》も効果出てるんでしょうか、かなり楽。

 ダンスの経験はリアルでもあるので、基本中の基本であるステップの確認はあっさり終了。それが終われば次は宰相と組み、連れてきた侍女に確認してもらいつつ流します。



〈今までの行動により《ダンス》が解放されました〉



 おや……既に2時間ほど経ちましたか。ちょっと休憩して確認ですね。


《ダンス》

 王侯貴族の嗜みだが、派生も多いので注意が必要。

 王侯貴族とのコネを求めるなら、社交ダンスはできた方が良いだろう。


 冒険者にそこまで求めるかは分かりませんが、きっかけにはなるのでしょうね。

 まずは冒険者ランクを上げ、依頼だなんだと名を知ってもらい、それからダンスができるかどうかなどで夜会への招待……でしょうか? そして夜会から更に別の貴族なんかとのコネを……と。


 消費SPは3……一応取っておきますか。


《ダンス》

 【ダンス:不死者】


 ……多分宰相から教わったので不死者。つまり種族ごとにダンスがある? となると人類だけでなく、国の確認されているフェイや天使系もありそうですね。

 そして《識別》のようにスキルレベルがありません。アーツとして知ってる踊り方を表示するだけでしょうか?

 再び宰相に少し付き合って貰いまして検証した結果、スキルの効果は視界に動きが出ますね。最悪これ見ながら踊れるでしょう。


 付き合ってくれた宰相と侍女にお礼を言いまして、セシルさんにメールを送っておきます。どうせこの後のイベントで会うでしょうけど。



 お昼はイベントに合わせるとして……後3時間無いぐらいですか。1時間ぐらいはお昼に余裕持たせるとして、どうしましょうかね。

 そう言えば今回のイベントはアイテムが持ち込み可能でしたね。失敗しましたか。ゲーム内加速があるので、食材を買っておけば良かったですね……。いや、料理人がやりますか。おっと、蜂蜜をインベに移しておきましょう。


 私が優先すべきは……《錬金》か。蘇生薬に……聖水? 生産施設の使える今のうちに、蒸留水を量産しておくのも良いですね。あれ面倒なので。

 追憶の水は湧き出る水筒に入れていますし……清浄の土か。聖水を作るのに使っている入れ物の土を新しくして、インベに入れておけば良いでしょう。

 蘇生薬用にクリスタルロータスとホーリープニカが必要ですね。集めてもらいつつ……お昼までは生産しましょうか。




 妹とリビングでご飯。


「お姉ちゃんPTは?」

「いつも通りかな。双子がどうかってところじゃない?」


 アルフさんにスケさんはいつも通りとして、鯖振り分けもするようなので、アメさんとトリンさんがどうなるか……ですね。

 あの双子は入れて欲しければ向こうから来ると思うので、来たら入れてあげれば良いでしょう。


「今回はどんなのかなー?」

「シティ系だし、お使いがメインじゃないかな」

「それはあんまり嬉しくない……」


 お使いクエストを喜ぶ人はそういないと思いますが、AIにより受け答えが優秀なこのゲームはだいぶマシですかね。話の流れからしれっとお使いさせられるので、断りづらいとか。

 私は今のところ、お使いクエストがご無沙汰ですね。立場的にあれか。


「お姉ちゃん今何レベ?」

「今は46だったかな? 上がらなくなってきたね」

「だよねー。ペース落ちたしそろそろ寄り道しだすかな?」

「ひたすらダンジョンでレベル上げは飽きるからね。クロニクルとワールドクエストの存在もあるし、他にも目を向け始めるかも?」

「クロニクルはともかく、ワールドクエストがまだ始まりの町だけなんだよね。他も探したいけど、1PTでやってもなー……」

「ゴブリンを考えるとちょっとね……」


 ゴブリンは恐らく討伐数ですが、他は条件すら不明。1PTでは無謀ですね。それするぐらいならダンジョン潜って黙々と狩りした方がマシでしょう。

 私は気分転換で生産があるんですけどね。


「そう言えば、今回はアイテム持ち込み可能だから、蘇生薬の材料とか持ってく」

「ああー……あれは現地調達無理そうだね」

「お肉は手持ちがあるし現地調達もできるだろうけど、軍隊魔戦蜂の蜂蜜は倉庫からインベに移した。蘇生薬と聖水はさっきまで作ってたのと、素材で持ってく」

「蘇生薬あるなら多少無理できるか。対アンデッドがあればお姉ちゃんから聖水を買おう。……そう言えばお姉ちゃん、魔法は3次スキル入った?」

「技能、光、闇、空間が入ってるよ。《本》は取るの遅かったからもう少しかかりそうかな」


 《閃光魔法》は《極光魔法》になり、《暗黒魔法》は《混沌魔法》になりました。覚えた魔法は【セラスグラディウス】と【ハオスグラディウス】のグラディウス系ですね。

 イベント前に上げられて何よりですよ。


「使った?」

「勿論。派手になったし、範囲もかなり広いね」

「ねー! 掲示板では範囲魔法の上として、広域魔法って呼ぶことにしたらしい」

「広域魔法ね。見た目的には使っていきたいけど、MP効率的にはなんとも言えないかな……」

「どこかで見たような魔法でかっこいいよね!」


 使用した属性の剣が降ってきて地面に突き刺さり、その後に剣が収縮して爆発します。爆発のエフェクトとしては範囲の広がったバースト系ですね。……私も元ネタがチラつきましたが、気にしない事にしました。

 消費MPや詠唱速度を考えると、6体ぐらいは巻き込みたいところです。


「MP効率的に範囲は3体から、広域は5体ぐらいから使っても良いかなーぐらいだって」

「やっぱそのぐらいか。でもそんな釣るとタンクがねー……」

「だよねー。普通に1PTでの狩りだとタンク落とすよねー」

「そんな固まってる事もないだろうし、ある程度トレインが必要になるけど……」

「かなり無理する事になるだろうね。主な出番は虫系とか防衛戦だよねー」

「そうなるだろうね。単体魔法に期待かな」


 グラディウス系は1レベの魔法ですから、今まで通り行くなら後8個ぐらいは覚えるでしょう。



 妹と話しながらモグモグして、午後のログインです。

 蘇生薬に聖水の素材をインベントリに放り込み、インベントリを確認してから……どうしましょうかね。

 イベントがあるから皆集まってるはず……つまりアピール時! 一号を肉塊で召喚して、上に座ってから始まりの町へ行きましょうか。


 転移したら少し上に避難して、イベント待機!

 これだけ存在感あれば、双子も見つけやすいでしょう。まあ、私にWhis飛ばした方が早いんですけど。


「姫様めっちゃ目立つやん」

「ごきげんよう、フェアエレンさん」

「おっすおっす!」

「どうですこのアピール力」

「完全に悪役なんだけど、上に座ってるのが目隠しシスターでなんとも言えない」

「おーい姫様ー! PTくれー!」

「アルフとスケさんだ」


 フェアエレンさんと話していたら、下からアルフさんが声をかけてきました。2人にPTを飛ばしておきます。


「フェアエレンさんPTは?」

「今回もミード達と組むー」

「となると、クレメンティアさんもですか」

「そうよー。それと駄犬」


 そう言えば最近どちらもお会いしていませんね。


「モヒカンさんは?」

「奴は今回別ー」

「「姫様いた!」」


 おや、双子が来ましたね。


「ごきげんよう」

「「ご機嫌麗しゅう姫様!」」

「おや……」

「「むふー」」


 多少調べたのを実行したんでしょうけど、最後でドヤ顔しちゃってるのであれですね。まあ、可愛いですけど。


「「PT空いてる? 空いてる?」」

「ちょっと待ってくださいね。一応確認取るので」

「「あいさー」」


 PTにいるアルフさんとスケさんに確認を取ってから、双子をPTに誘います。


「姫様今回のPT名は?」

「PT名ですか? 『泣くまでいびろうホトトギス』……ですが」

「つまり血を吐くまで泣かす……と、無慈悲!」


 フェアエレンさんの質問に答えつつ、PT欄を見ると……中々早いですね?


「もうすぐ40ですか。早いですね」

「「経験値増加あるから!」」

「ああ、そう言えばそうでしたね」


 この2人の装備が経験値微増効果持ちでした。そのためPTにいてくれた方が美味しい。

 普段から私達と組むには少々問題があり、2人が2陣のため私達より遅れている。PT組むとあまり差が縮まらないので、ある程度頑張ってもらう必要があります。

 このゲームに限らず、基本的にレベル差のあるPTはよろしくありません。何かしらにデメリットが付きます。しかし……ベース的にはもう組めるレベルですね?

 このゲームは10レベ差までは特になにもありませんが、プレイヤー間での推奨は5レベぐらいです。

 それはなぜかというと、持ってるスキルとそのレベルが重要だから。ベースレベルがそのレベルなら、スキルはこのぐらいだろう……という目安にしかなりません。


「2人とも、今1番高いスキルレベルはいくつですか?」

「「えっとねー……43!」」

「高いね。ベースは40手前ぐらいじゃない?」

「「そだよー!」」


 フェアエレンさんの様に大体察せる訳ですね。ベースが40手前で、大体2次の40ちょっと。ベースが40後半で、3次突入ぐらいです。2次のキャップが60と考えると、上がりづらくなってますね。

 貰える経験値は自分と敵のベースレベル依存。自分より下は下がっていき、上だと増えていく。ある程度上になるとボーナス量も減っていくので、程々の格上が1番美味しい訳ですね。

 ベースはPT組んで近くにいれば経験値が入りますが、スキル経験値は使用しないと経験値が入りません。つまりパワーレベリングをしてしまうと、後半が地獄。

 まあ、このゲームは1人1キャラなので、パワーレベリングする必要があまり無いのですが。


「今回のイベントでどのぐらい貰えるか分かりませんが、今後はダンジョンとかのレベル上げでもPT組めそうですね」

「「頑張る!」」

「スキルレベル考えると今でも十分じゃない? 確か11以上は減衰かかるけど誤差レベルだったよね?」

「11~15は5%とか10%でしたね。16から無視できない数値になった気がします」

「だよねー。まあ、差があると戦闘が辛いからね……」


 この場合、狩場は私達の場所に行くでしょうから、双子は大体10レベ上と戦う事に。レベリングは連戦なので、集中力が保たないでしょう。


 前回と同じく、始まりの町上空に主張の激しいカウントダウンが表示されていますが、10分前になりますね。恐らくもうすぐ転移可能になるでしょう。



〈イベントフィールドへの転移が可能になりました〉



「お、開いた! じゃあまた会おう姫様!」

「また後で」


 私達もUIからイベントフィールドへ転移するとしましょう。



〈イベントサーバーへ接続……順番待ち……完了〉

〈イベントに必要な情報を取得中……完了。第一サーバーに決定〉

〈イベントフィールドへ転移準備中……〉



 そう言えばサーバー分けすると言っていましたね。割り振りを決めてから転移なので、少し変わったんですか。

 UIにカウントダウンが表示され、0になると転移されました。


 ……平原? プレイヤーが沢山転移してきますけど、範囲内に人工物が見えませんね。私の視界の仕様のせいだと思いますが。

 そして夜ですか。夜明け後少ししてイベント開始……でしょうか?


「おっす姫様!」

「さっきぶりですね、フェアエレンさん」

「見覚えあるのが多いから、1陣が纏められたかな?」

「ゲーム開始時による割り振りですか?」

「多分?」

「双子連れてきちゃいましたが……シティイベントなら大丈夫ですかね……」

「大丈夫でしょ。想定してないとは思えないし」


 それもそうですね。

 1陣にアピールしても仕方ない……というか今更な気がするので、降りましょうか。一号を送還して《座標浮遊》で地上へ。

 そして触手を座れるようにして、堂々と座りましょう。


「マジ裏ボス」

「これの問題はですね。一号の触手と違って時間で強制送還されてしまう事です」

「つまりずっと座ってるとひっくり返る」

「はい」


 流石に残しておくのはあれですから仕方ないのでしょうが。

 かと言って、キメ顔で座っている時に触手が消えてひっくり返るのは少々……どころではなく、圧倒的ダサさなので避けねばなりません。


「お姉ちゃんおった!」

「リーナも同じ鯖なのね」

「モヒカンさんもおったよ」


 やっぱり纏められたんでしょうか。まあ、ゲームは同じぐらいの人と遊ぶのが1番面白いですからね。その方がバランス調整簡単でしょうし。


「はーはっはっは! 俺だぁ!」

「おはようございます。三武です」

「10分前行動の君達に早速説明をしよう!」


 イベントで毎度おなじみ、八塚さんと三武さんですね。

 10分前に鯖が開いたので、既に8分前ぐらいですけど。


「今回のイベントは告知していた通り、町中がメインのイベントになります。この町はイベント用に作られた町で、イベント終了後に行き来はできなくなります。設定は表……普段のゲームサーバーと同じなので、職業や立場といったものは同じ効果を発揮します」

「勿論町だけじゃなく、町で住む住人達もイベント専用だ! 表へのフィードバックは考えないでいいぞ!」


 逆に言えば、普段ならフィードバックを考えるレベルの何かが起きるのでは?


「今回のイベントは少し前にあった防衛戦と同じ、サーバー分けがされています。基本的には第1陣や2陣といった分け方がされているので、見覚えある人が大半でしょう。例外は混合のPTですね。それと掲示板も同様の処理をします」

「番号が若いほど人数が減るが、その分長くやっている者達! 番号が大きくなると人数は増えるが、始めてそんな経ってない者達だ! サーバー番号による難易度の差は無い……が!」

「今回のイベントは大元が複数あり、サーバーごとにこの後ランダムで選ばれます。現状住人のAIは全て停止状態であり、開始2分前に大元が選ばれ、住人達が動き始めます」

「何が選ばれるかは俺達も分からんから楽しみだ! 大元に選ばれなかったものも情報が消えず、ミスリードとなるから頑張ってくれよな!」

「シティイベントは情報が全てです。積極的にエリアの探索、組合の依頼で狩りや採取、住人からの依頼を進めましょう」

「今回総隊長とかは無いから、ユニオン組むなり好きにしてくれ! 得た情報はイベントUIで、全員に自動的に共有される親切設計だ! 逆に言えば自動共有されないものはミスリードですら無い関係ない情報だ!」

「事前情報はこのぐらいになります。後は試行錯誤しながら楽しんでください」

「イベントが終わり次第、全鯖の掲示板を見れるようにするぞ! 動画は編集が終わり次第公開していく予定だ!」


 重要なのは……鯖番号による有利不利は無いが、この後選ばれるイベント次第で鯖ごとに難易度は変わる……と。

 1番参加人数が少ないのが今いる第一サーバーだが、大半が1陣なのでステータス的には1番高い。

 情報収集は大体人数が肝なので、その辺りは割とキツイですね。長くゲームしてる奴らなので、上手くやれという事なのでしょうけど。何かしら役職に就いている人がいる可能性が高いので、そちら方面でも情報入手が期待できるはずです。

 今回総隊長とかは無く、イベント関係の情報を手に入れたら強制的に共有される。ただし中にはミスリード情報あり。

 このぐらいですかね。


 1人の女性が『はいはーい!』と手を挙げて……あ、ゆらさんですねあれ。


「ゆらさんですね。どうしました?」

「私2陣でソロなんですが……」

「えっと……上位何割かは上の鯖に入る事もあるようですね。2陣のゆらさんは1陣と。3陣の上位層は2陣と……といった具合です」

「そのランキングの基準はなんですか?」

「基本的にベースとスキルレベルですね」


 それぞれのトップ層は追いついてる感じですかね?


 ん、モヒカンさんと美月さんだ。もう1人女性が……いや、システムが男だと言っていますね……。モヒカンさん1人でも濃いというのに、あのPTの濃さ。

 ヒャッハー、チャイナのオネエ、ワンピースの……青年というべきか。3人とも似合っているのがまたなんとも。


 1陣と2陣の上位層が纏められたという事は、私のフレンドは全員いるんですかね。フレンドリストに接続鯖は……出てますね。全員第一なのでどこかにいる。

 とりあえず……PTメンバーと合流ですかね。


「やあやあ二人とも」

「ごきげんよう、セシルさん」

「おっすー」

「総隊長云々はともかく、ユニオンよろしく!」

「あ、はい」


 ユニオン名何にしましょうかね……。んー……シティイベントですから……。

 よし、パラノイアですね。これだと2文字オーバーですか。これで……入りますね。募集コメントはいつも通りで良いでしょう。

『Sランククリアのためなら努力と協力を惜しまない人用。ユニオンメンバーの悪意ある妨害は、できればPT追放前に動画を付けてリーダーに。複数のPTリーダーで確認後、ユニオン追放とブラックリスト入り』

 これでよし……っと。ではいつものメンバー……まずはフレンドPTを入れましょう。


「作りましたよ。『市民の幸福は義務です、トラブルシューター』」

「あの町はアルファコンプレックスだった……?」

「ちゃんと協力できるか怪しいユニオン名してるね」

「なにか不満ですかトラブルシューター」

「「滅相もない!」」


 フェアエレンさんとセシルさんのPTを入れ、フレンドが入ったら自動許可に変えてっと……。


 ユニオンに入ったことでマップで場所が分かるため、ぞろぞろと集まっているうちに2分前になりました。


「お、住人が動き出したな! そう言えばイベント開始後だと、直接町中の立像に転移するぞ!」

「俺らはポータルの開放が必要かー?」

「不要だぞ!」


 現状開園前の入口みたいな状態になっていますからね。


「では楽しんでくれたまえ!」

「我々は一旦下がります」


 GMの2人が溶けるように消え、約1分半の開始待ち。


「方針どうする?」

「とりあえず自由行動でござらんか?」

「それで良いだろ。UIに共有されるような情報が入り次第、そっち優先で」


 合流したこたつさん、ムササビさん、ルゼバラムさんですね。私もそれでいいと思うので、特に何も言いません。

 自由行動にしてもPT単位での移動でしょうか。うちのPTは冥府組として動けるので……私が微妙に違いますが、間違ってはいません。冥府だけではないというだけで。


「ヒャハハハ! 良いイベント日和だなぁ!」

「ようモヒカン」

「セシルちゃん今日も美しいわぁ~。皆もお久しぶりぃ~」

「え、ええ。美月さんも相変わらず美しく……」


 セシルさん、標準搭載の笑顔を引き攣らせつつも律儀に返すんですよね。挨拶されてるだけだし、強引に来ることはないので無下にはしづらいのでしょうが。そのうち……慣れるでしょう。

 先程も見かけましたが、モヒカンさんPTのもう1人の男性。中性的な顔立ちをしていますね。体格も小柄気味なので、特に違和感がありません。

 ん、リーナとトモスグPTも来ましたか。


「紹介しとくぜぇー? 2陣の歩だ。歩くの漢字であゆむ」

「この格好の理由は私とは少し違った方向ねぇ~」

「コンプレックスとまで行くかはあれですが、この顔でこの体格なので……良くからかわれまして。文化祭とか特に。それで美月さんを見て、ゲーム内だしいっそ……というわけです。よろしくお願いします」

「『ああー……文化祭な、うん。よく分かるノリだ』」


 男性陣はとても良く分かるようで、頷いていますね。

 私も別の意味でよく分かりますが。


「生まれ持ったものはどうにもなりませんからね……。いかにポジティブに捉え、逆に武器として利用するか……が肝でしょう」

「お姉ちゃんはもう越えたところだねー。おっす!」

「そうね。私の場合は特に武器にしやすかったのもあるけど、こればかりは本人の捉え方と性格の問題だろうから……」

「流れで無理に言う必要も無いのよぉ~?」

「問題ありませんよ? 過ぎた事ですから。お母さんは日本人でお父さんがイギリス人。私がお父さんの、妹がお母さんの……とガッツリ別れたんですよ。ゲーム内で黒髪なのは、私がリアルで黒ではないので新鮮だったんですよね」


 子供は無邪気故に残酷である。蟻の巣に炭酸飲料を流し込む程度には。

 その子供たちが、周りと色の違う私をスルーするわけもなく。まあ……私も大人しくなんてありませんでしたが。周りが子供なら私も子供。当然ですよね。


「ハーフ姉妹だったのか。……それで放送があの英語か!」

「いえーい! 英語圏と日本人の視聴者でうはうは」

「髪と目の色で容易に目立てて、更にこのスタイルと思えば武器にするしか無いでしょう? 勿論努力してこそ今のスタイルですけど」

「良いわね! やっぱりそうじゃないと! 私からすれば大体の悩みは些細なもんだわぁ~! 本人からすりゃ深刻なんでしょうけどぉ~?」


 美月さんが言うとこう……うん。物凄い説得力というか、反論の余地がない。反論する必要も、意味も無いですけどね。

 本人の悩みなど、本人にしか分からないのですから。


「ヒャハハハ! こいつも最近は楽しくなってきてるようだけどなぁ!」

「最近の悩みは出費が嵩む事かな? 戦闘装備は男物で、ファッション系は女性物にしてるから……」

「ウジウジするぐらいなら金策に駆け回ってりゃ良いのよぉ~」

「いっその事ゲーム内で慣れて、次の文化祭で女装ガチ勢すれば良いんですよ。何人か落としましょう? 実に面白い反応してくれると思いますけど」


 良い弱みが握れそうですね……と言ったら引かれました。解せぬ。


「姫様……あんた結構あれねぇ?」

「からかって悩ませた結果ですよ。甘んじて受け入れて貰いましょう。きっと咽び泣いて喜んでくれますよ」

「ま、自業自得でしょ。そろそろ始まるよ」


 あ、セシルさんもなんか思うことありそうですね。ゲーム補正があるとは言え、あの顔ですし。……掘り下げませんけどね。ちょっといつもの笑顔が黒い。


 イベントが始まり皆が町へ突撃していく中、スケさん達とのんびり歩いて向かいます。双子は浮遊ですけどね。


「まずはどうしますか?」

「んー……町の全体像はどうせすぐ分かるだろうから、走り回るのは任せるとして……俺ら的にはまず教会?」

「姫様のあいさつ回りに付いてけばいいべー?」

「「良いよー? おまかせー」」

「ではまずは教会へ行ってみましょうか」


 教会そのものに関する情報は、逆に得づらくなる可能性が地味に高いんですけど。自分の所属する組織の問題を、外なるものに言えるか……という。

 ま、行きますけどね。こっち方面は我々ぐらいしかいないでしょうし。


 町の方へ近づいていくと、畑が見えて来ました。かぼちゃやら作物がなっており、カカシがかぼちゃ顔。よくあるハロウィンイベント仕様ですかね。

 見えてきた町もハロウィン仕様。明かりにくり抜いたカボチャを被せ、マントみたいに布をかけたりしてあります。

 ぞろぞろと町へ入り、とりあえず中央広場を目指します。


「カボチャはハロウィンなんだが、色がハロウィンっぽくないぞー?」

「こっちの世界特有だな?」


 スケさんとアルフさんの言葉につられて色に意識を向けると、飾り付けで使用されているのは橙と黒、青と緑ですか。


「「色って意味あるのー?」」

「あるぞ。何かまでは忘れたが……調べれば出るだろ」


 橙はカボチャ、火、魔除け。

 黒は夜の闇、魔女やコウモリ、黒猫。

 紫は超自然的な力や魔法。

 白はおばけや骸骨。

 赤は血や危険。

 緑は毒や怪物。


「橙と黒はそのままと言えるでしょうけど、青と緑は……ハーヴェンシス様が由来でしょうか?」

「ハロウィンじゃなくて豊饒側の色かー」


 リアルだと白、赤、緑を飾る事は意味合いからして無いでしょうけどね。思いっきり仮装する場合に使う色な気がしますし。


「しかしそう見ると黄色が使われていないのが気になりますね」


 橙はカボチャに火、黒は夜の闇。魔女はこの世界だと薬師ですし、使い魔の黒猫も特に連れていませんでしたからね。

 緑がハーヴェンシス様自身の色……髪や目の色ですね。青は水でしょうけど、土の黄色は?


「あれじゃね? カボチャが橙じゃなくて作物。土の黄色」

「ああ、そういう捉え方ですか」


 橙が火。

 黒が夜の闇。

 青が水。

 黄がカボチャ。

 緑がハーヴェンシス様。


「答え合わせはこれから行く教会ですれば良いでしょう」


 中央広場も当然イベント仕様。ステルーラ様の立像は変わらず鎮座していますが、近くに結構な広さのスペースが取られていますね。

 私……気になります。


「すみません。ここはなんのスペースでしょう」

「木を組んで火を付けるのさ! そろそろ木を組み始めないとな」


 焚き火とかではなく、キャンプファイアー規模ですね。

 捕まえた住人をリリースします。……声かけて聞いただけですけど。


「キャンプファイアーの組み立てクエストありそうだねー」

「筋力系か。確かにありそうだな」

「とりあえず目立つ物は分かったので、教会行きましょうか」

「あれだな。どこの町も教会はすぐに分かるから楽よな」

「「いかにもって見た目!」」


 ということで、始まりの町とかと同じデザインの教会へ。大きな町なら大体テンプレ建物ですね。あくまで一般開放されている礼拝堂区画は……ですけど。

 私を先頭に、アルフさんとスケさんが少し後ろの両サイドに。2人の間の頭上に双子が並び、教会へ向かいます。


「確か異界のお祭りに異人達が興味を持って参加……という設定でしたね」

「ロールプレイヤー向け情報にはそう書いてあったねー」

「その方向で話を進めようと思いますが、構いませんよね?」

「ええぞー」

「「おまかせー!」」


 ではその方向で話を進めるとしましょうか。


「聖職者の身分は刺繍の色で判断してください。赤、緑、灰、金の順です」

「「了解」」

「「喋らないから!」」

「まあ……双子はそれで良いだろ」

「だねー」


 会話は基本的に私が進めるでしょうから、それで良いでしょう。


 チリン……。



〈〈情報が共有されました〉〉



 風鈴の様な音と共にログが流れ、イベントに関係のある情報が共有されたようです。皆走り回っているでしょうから、しばらくはチリンチリン鳴ってそうですね。


「今回の祭りは収穫祭である……だって」

「知ってた。お? 無地のシスターがこっちを二度見して駆け込んでいったな」

「であえであえー」

「それだと敵対するんだが?」


 明らかに不死者な4人が、一見人間の私と歩いてくるんですから、おえらいさんを呼びに駆け込んだのでしょう。

 無地という事は聖職者見習いである修道士モンク修道女シスターですからね。


「恐らく司祭プリースト……いや、町の規模を考えると司教ビショップがいますか。今回のイベントも考えると大司教アーチビショップがいてもおかしくなさそうですね?」


 教会前まで来ると灰色刺繍が出てきました。


「これはこれは、不死者の方々とお見受けしますが……」

「ごきげんよう。異人としてお邪魔させてもらいますので、今回は顔を見せに」

「そうでしたか。今回は賑やかになりますね。大司教が滞在していますが、お呼びしましょうか?」


 やはりいましたか。裏で書類仕事で、司教が現場監督みたいなものでしょう。

 イベント特設マップらしいですが、扱いは表と同じとか言っていましたね。となると……会っておいた方が色々穏便に済みますか。


「裏で書類仕事中ですよね? こちらから行きましょう。スケさん達はどうしますか?」

「んー……姫様が会いに行くならいらんでしょー。周りに話でも聞いてようか」

「立場的に護衛とかいなくても良いもん?」

「支配者……王という事だけで考えると必要ですが、細かな立場や存在的に考えると不要でしょう」


 という事で、1人で行きましょう。司教ビショップに案内してもらい、礼拝堂から奥へ。


「その服装、ネメセイア様ですよね?」

「ええ、そうですよ。アナスタシア・アトロポス・ネメセイアです」

「ビショップ・ベリエスと申します。お会いできて光栄です」


 私が共にいる以上、先に確認しておかないと問題ですか。

 シンプルながらしっかりした作りの扉の前で止まり……。


「ついここまで来てしまいましたが、別の部屋にご案内するべきでしたね……」

「……修羅場ですか?」

「ネメセイア様どころか、お客様を招けるような状態ではなかったような……」


 扉を案内のビショップ・ベリエスがノック。


「どうした?」

「ベリエスです。ネメセイア様をお連れしましたが……部屋、大丈夫ですか?」

「……いや、とてもダメだ。今出る」

「分かりました。……申し訳ありませんネメセイア様」

「構いませんよ。先触れもしませんでしたからね」


 ビショップ・ベリエスがとても申し訳無さそうですが、まあ……絶賛お祭り中ですからね。処理しないといけない書類も多そうです。


 中から金というか、黄色刺繍のローブを身に纏った男性が出てきました。

 扉が開いた時にちらっと中が感知範囲に入りましたが、書類の山が複数できてましたね。


 挨拶は後回しにして、とりあえず場所を移動。無事な一室に移動してから改めて挨拶です


「エドヴァルドと申します。位はアーチビショップになります」

「アナスタシアです。外なるものであり幽世の支配者ですね。お祭りの間この町に滞在する予定なので、顔を見せに来ました」


 立場が上なので内容に気を使う必要がありますが、言葉遣いは雑で良いのが楽ですね。

 軽く雑談をしてお茶をもらい、早々に御暇します。書類、積み上がってましたからね。雑談はビショップ・ベリエスとしましょう。

 礼拝堂へ戻りつつ、気になった事を。


「ビショップ・ベリエス。このお祭りにはどういった意味があるのですか?」

「このお祭りは二つの意味があります。一つは収穫祭であり、ハーヴェンシス様への感謝を。もう一つは地上と異界の境界が曖昧になるため、火を灯すのです」


 収穫祭はそのままに、死者が復活する……を異界との境界としたんですね。


「昔からこの時期はこういった言葉が残っているんですよ」


 光を望むは生者の証。

 闇を望むは死者の証。

 生者は光を求めて火を灯す。

 死者は闇を求めて背を向ける。

 火を指標に光の道を歩むべし。

 影を指標に闇の道を歩むべし。

 曖昧にして強固な境界。

 光と闇は寄り添えど、決して溶け合うことはない。


「この祭りの間、1人での行動はお勧めいたしません」

「……なにか実害でも?」

「小さいのは悪戯から、大きいのは行方不明者でしょうか」

「死者に誘われると……?」

「死者……かは分かりかねますが、色々と不思議なことが起きるのですよ。今日から3日かけて行われますが、段々規模が上がって行くのです」

「では3日目がピークですね?」

「ええ、1番境界が曖昧になるのでしょう」


 チリン……。



〈〈情報が共有されました〉〉



 風鈴の様な音と共にログが流れ、イベントに関係のある情報が共有されたようですね。


「冥府と繋がったところで、冥府の魂達が生者を誘うとは思えませんね。懐かしみはするでしょうが……それぐらいでしょう。となると奈落の魂達か、野良か……」

「生者が死者を忘れられず……という事もあるでしょうね……。そう言えば、行方不明以外にもおかし……いえ、以前よりかなり変わってしまう方もいましたね」

「以前よりかなり変わった……異界……異界? 深淵!? ……ステルーラ様信仰の外なるものを見てしまいましたか?」

「そ、それは……なるほど……」

「断罪でこちらに来た場合ならともかく、向こうを覗き見てしまった場合は……」


 基本的に断罪で地上へ来た場合は、周囲の影響を考えてオーラはしまっていますし、来るのは精々1体です。しかし彼らのホームである深淵を覗き見た場合は……もう事故としか言いようがないですね……。

 なんとも言えない空気になったので、話を変えましょう。


 色について答え合わせしたら合っていました。黄色はカボチャが担当しているようですね。


「お、姫様もう終わった系?」

「ええ、大司教アーチビショップに挨拶は終わりましたよ」

「領主の話を聞いたけど、挨拶は行くかい?」

「領主ですか。立場的には教会以外どうでも良いですかね」


 教会への挨拶も自主的にやっているだけですけど。他に挨拶行くなら王様ぐらいではないですかね……。

 ぶっちゃけた話、あまり下の爵位の人間とコネを持ったところで意味がない。影響力の問題ですね。


「爵位は?」

「クルト・フォーセル伯爵だとさ」

「フォーセル伯爵家ですか」


 情報収集という意味では行った方が良いですかね。しかし面倒なのもまた事実。とは言え、領主から楽に情報を入手できる立場なのは間違いなく。

 ……問題が起き始めてからでも良いですかね。大司教アーチビショップ司教ビショップとは繋ぎとりましたし。


「挨拶回りより、早く探索に出たいですね」

「じゃ、町歩くか。せっかくのイベントだしな!」

「この共有された情報、姫様が出したやつだよねー?」


 おっと、まだ確認してませんでしたね。

 このお祭りの基本情報として共有されたようですね。収穫祭だけではなく、異界との境界が曖昧になるなどの詳細情報まで載りましたか。恐らくこの項目でのこれ以上の更新は無さそうですね……。

 ちなみに町の名前は『ハワード』らしいです。狙ってきてる気がしてなりませんが、マジでがっつりクトゥルフ系のイベントでしょうか。サブタイトルも冒涜ですし……つまりホラーですね。

 楽しめれば何でも構いませんが。


 よし、町に繰り出し探索です!


泣くまでいびろうホトトギス。これほんと好き。


Remnant:From the Ashes 面白いですね。

問題は

・難易度を上げる必要が皆無

・ラスボスがクソ

・日本語がない

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[一言] >「もうすぐ40ですか。早いですね」 「「経験値増加あるから!」」 「ああ、そう言えばそうでしたね」 この会話のあと >「2人とも、今1番高いスキルレベルはいくつですか?」 「「えっとね…
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