護衛依頼
さすが王都!
王都は様々な人々が行き来するだけあって、冒険者ギルドの仕事も色々とある。
高レベル高ランクの冒険者も多くいるためか、周辺にはあまり強い魔獣はいないか、現れても瞬く間に解決するが、その分低レベル冒険者が活躍できる場所も多く、C級D級冒険者だと、そういった冒険者たちの引率や指導の依頼なんかもあったりする。
そうなると俺のようなインベントリ持ちは、小規模といえども引っ張りだこだ。
低レベル魔獣って数を狩って稼ごうとするとかさばるもんな。
こういう仕事は報奨金こそ少なめだけど、ギルドに対する貢献度が高いとされてランク上げに有利に働くらしい。
あくまでらしい、ってだけだから、実際のところどうかはわからないけど、上がれるものならB級冒険者になって尊敬なんてされてみたいよな。
そういや『惑う深紅』の面々って、ランクはどのくらいだったんだろ。
レベルの方は一番レベルが低いエリーさんで3桁越え、あとの二人が200半ばくらいだっけ。
そこまで行くと化け物かよ、って領域だけど、そんな高レベルでまさかB級止まりってことはないよな。
A級……いや、各国に数人しかいないと言われているS級の可能性もあるぞ。
だったら、多少の奇行も見てみない振りされるよなぁ……。
「お、この依頼いいな」
俺が目を付けたのは、護衛依頼だ。
依頼主は個人で、このフレメミア王国が誇る王都フレムダンジュからおよそ5日とほど近い都市、衣料都市ファラネーサまでの護衛だ。
衣料都市と言われるだけあって、ファラネーサはフレメミア王国のドレス市場を一手に担っていると言ってもいい、らしい。
興味が湧かないから詳しくは知らないが、最新のドレスはファラネーサで作られるとか何とか……ドレスって服じゃん?
腐るわけでもないし改良しなきゃいけないわけでもないだろうに最新もくそもあるのかよ。
でも、ファラネーサには行ったことがない。
ドレスを作ってるってからには、可愛い女の子がいっぱいいるのかな?
いい出会いがあったりして……。
「うん、この依頼受けよう」
それに依頼主は個人だけれど、移動には他の商隊も一緒で、そちらにも護衛がつくって話だから安全性も高そうだ。
俺は依頼表を剥がし、依頼主との面会に臨んだ。
「俺、キース。どーもよろしくー。いやぁ、行くのは一緒で構わないから自分用にも護衛をつけろって言われてさー」
軽いノリでひらッと手を振った男は、俺とそんなに年が変わらなさそうだった。
ピンと立ち上がった短めの髪が左右で白黒半々に染め分けられているのは、やっぱり染めているのだろうか。
だとしたら、どっちが地の色なんだろう。
「どうも、D級冒険者のアディです。よろしくお願いします」
差し出された手を取って握手すると、キースはにぃっと笑った。
「あらぁ、イイ手! こいつは真面目に鍛練をするやつの手だな。今回は拾いモノかもな!」
「そういうの、わかるもんなんです?」
思わぬ評価に聞き返すと、キースは楽しそうにべしべしと俺の肩や腕を叩き、それから距離を取って、俺の全身を確認した。
「あんたいくつよ。俺は18なんだけど、そんな歳変わらねえだろ? 見たとこ、ひとっつかふたっつか下ぐらい? そんで、メインの武器は両手剣……から片手剣に移行中、って感じかな? どう? 当たってる?」
「えぇ……なんでそんなことわかるの……」
怒涛の勢いで質問されて呆気に取られていると、キースは指を立てて、ふふん、と自慢そうに言った。
「俺さぁ、これでも服飾師なんだよね! だから、人体の癖を見るのは得意なんだ。だって、その人の癖がわからなくちゃいい服は作れないだろ?」
「……癖?」
「例えば、君みたいによく訓練をする成長期の剣士なら、利き腕の方にゆとりを持たせてつくらないと、すぐに腕がきつくなるとか、そういうこと」
「なるほど、戦闘中に相手の挙動を見てどこにダメージが大きいかわかる、みたいなものか」
「そーそー! そういう感じ! なんか君とは仲良くなれそうだし、今回は短い道程だけどよろしく頼むよ」
そんな感じで、すぐに契約は決まった。




