ギルドの仕事とエーファ
今日は少し考えて、私も食肉採取の依頼を受けることにした。
今のFランクでもそれ位は普通らしいし、ホーンラビット程度なら、一般人でも倒せるレベルだ。
常設依頼だから、受付を通さずに受けられるから、同じランクフリーのゴブリン退治も併せて受けよう。
「ユーリ、また草むしりか?」
「今日はホーンラビットとかゴブリン狙いかな。テッドは薬草?」
「むー。西門の方でなら、ゴブリン退治位なら受けていい事になったんだぜ」
西門の辺りは一番魔物も弱い。私も薬草採取は、西門か北門て決めている。
見てると、教会の孤児達も西門付近で薬草を摘んでいるのをよく見かける。
「よし!どっちがゴブリンを多く倒せるか勝負だ!ユーリ!」
「えー。また?」
ゴブリンは安いから、小遣い程度にしかならない。それならホーンラビットを狙った方が稼げるのだ。
「どうせなら、レイシアさんと勝負したいな」
「へえ。あの人と戦ったんだ。てか、何でだ?」
「詳しくは分からないけど、怪しいと思われたのかな?」
「確かに。で、負けただろ?」
「そりゃ、勝てないよ。てか、怪しくないってば!」
「充分怪しい」
「もう!私は北門行くから付いてこないでね!」
「ふーん。まあ、取り合いになるよりいいか。門が閉まるまでには帰れよ!ギルドで待っててやるからな!」
全く、偉そうに!勝負なんて子供っぽい事私はしたくないのに。
まあ、ゴブリンが減れば暮らしやすくなるし、薬草採取の子供達の為にもなる。
勿論、ホーンラビットも狩るけどね。
北門から少し行くと、森がある。そこはコーベットに住む人にとって、山菜等を採取できる生活に欠かせない狩り場になっている。
そう大きな森ではないので、強い魔物もいない。
ゴブリンはあんまり触りたくないので魔法で倒し、右耳を切り落として、ホーンラビットは首を狙って一撃で仕留める。
因みにムーン達の狩り場は東門から出て山付近だ。
その辺にはオークやウォーターバッフアロー等、お肉として美味しい物が狩れるから、冬場の備え的にも丁度いい。
Cランク推奨の狩り場だけど、ムーン達の実力なら問題ない。
だから、ムーン達はEランクに上がったけど、別に焦っていない。
どうせ10歳まではCランクまでしか上げられないのだ。
「おっと!」
森に入った所でイエローバイパーが落ちてきた。落ちきる前に、首を落とした。
気配は察知していたけど、落ちてくるとは思わなかった。
食べられる物だから買い取ってもらえるだろう。
ウサギ肉は、美味しいジビエ料理。私は汁物にするのが好きだな。
攻撃もただ一直線に突っ込んでくるだけだから、あっさり殺られてくれる。
おお!栗発見!
これはもう、狩りどころじゃない。あんまり残ってないけど、石を拾って当てて落とした。
ゴブリンも何匹か倒したし、負けても別に悔しくない。
(栗ってチャチャが持ってきてくれる物よね?簡単に採れるのに、どうしてチャチャはユーリを連れて行ってくれないのかしらね?)
(まあ、別にいいよ。もしかしたら場所が危険なのかもしれないし)
結構森には探検に行っているから、そのうち見つけるかもしれないし。
そろそろ日が暮れる。夜には門が閉まるから、その前に帰らないと。
ゴブリンの数では負けたけど、たくさんのホーンラビットやイエローバイパーを出すと、悔しがっていた。
「けど、ゴブリンでは俺の方が勝ってるからな!」
「はいはい」
どうでもいいってば。
ドアが開いて若いエルフが入ってきた。
「!エーファ兄さん」
「ああ、テッド。奇遇だね。依頼を受けていたのかな?」
「ゴブリン退治!俺、勝負に勝ったんだ!」
アルフレッドさん似だね。テッドはシーナさんに似てるけど。
そういえばお母さんは違うんだっけ。
「勝負?」
「コイツ。ユーリとの勝負」
「1日の稼ぎでは随分勝ってるもん」
イエローバイパーが、高く売れた。人気の肉らしい。
「そんなの負け惜しみだ!勝負はゴブリンの数だからな」
そんな弟の様子を微笑ましく見ながらエーファは受付で手続きを済ませた。
「転入手続きみたいなのがあるんですか?」
「バーカ。高ランク冒険者が拠点を変える時は、ギルドに申請が必要なんだよ。そんな事も知らねーの?」
「うっさいなー!春に入会したてで分かる訳ないし!テッドだって置いてあるギルドの決まり、全部ちゃんと読んだ訳?」
「そんなの、母さんが色々教えてくれるから必要ないし」
「それ全然威張れないじゃん!」
「はは。仲良しだね。Cランクまでは必要ないからあんまり覚えている人はいないよ」
この状態のどこを見て仲良しとか言うのか分からないけど、Bランク以上の冒険者はぐっと数が減るらしい。
ん…あれ?気のせいかな?
光の粒々が、漂っている?いや別に、エーファさんが美形だから、妄想から見える訳ではないよね?
『スキル 精霊視を覚えました。魔眼に統一されます』
おっと。じゃあ微精霊ってやつかな?
アルフレッドさんみたいに精霊魔法とか使えるんだろうな。
「あ!ムーン、チャチャ、モコ!」
「ただいま。ユーリ、お腹空いた」
あの時使っていたのは私専用のマジックバッグなので、なるべく似せて作ったのをみんなに渡している。
勿論それぞれに作ったマジックバッグは、人前では普通のバッグに見せるよう頼んである。
買い取りカウンターに、ムーンが肉と素材を出している。
けどきっと、モコの亜空間収納には私達用の肉も入っているはずだ。
「ご家族の方?…初めまして。テッドの兄のエーファです」
みんなもそれぞれ自己紹介するけど、ちょっとだけエーファさんが不思議そうな顔をした。
似てないから?整った顔立ちだけど強面のムーンと、美女と美少女。顔が似てないのは仕方ない。
「兄さん、俺もお腹空いたよ。旅の話も聞きたいな!」
テッドがエーファさんを連れ出してくれてほっと一息つく。
エルフは精霊に好かれるっていうけど、本当だね。てか、テッドの周りとか何で私の周りにもいるのかな?フレイがいるからかな?
フレイはエーファさんが入って来る前に、私の影に入ってきた。
フレイを見られる訳にはいかないからいいんだけど、そういう時は素早いんだね。
ちょっとおっとりした所のあるフレイだけど、良かった。




