釣りと妄想魔法
冬支度も大分整った。
(今日はみんな、ゆっくり過ごそう)
(ユーリはどこに行くの?)
(釣り。だからのんびりするよ)
(俺も、釣りを教えてくれないか?)
(釣りに興味があるの?ムーン)
(俺は料理等の細かい仕事には向かないが、木を持って水面を眺めているだけなら出来そうだ。それに、魚は旨い)
(えー。退屈なだけだと思うけどな)
まあ、モコはそうだろうな。
(チャチャはどうする?)
(人化の練習したい)
(そっか。頑張って)
(そうか。人化しながらになるのか)
(そうだね。竿が持てないから)
ショッピングでムーンの分の釣竿も買う。竿にも色々あって値段も全く違うけど、私には良く分からないので、そこそこの値段の物だ。
あれ?糸の先に針がいっぱい付いている。確かテレビで見た事があった。上についてる入れ物に餌を仕込んで釣るんだよね。
まあ、やってみるか。
ムーンには普通の釣竿を渡して、私は新しいのを使ってみようかな?駄目そうだったら先だけ変えればいいし。
川の罠が流されている。やっぱり毎日見に来ないと駄目だよね。
「まずはこう、餌をつけて、適当に竿を振って、あとはひたすら待つ」
「ユーリのそれは?」
「また違う釣りの方法があるんだけど、詳しくは知らない。針は余分に持っているから、適当にやってみるよ」
「む?釣れたか?」
釣れたね。木の枝が。
「良くある事だよ。それだけに魚がかかると嬉しいんだけど」
「しかし…針が」
思いっきり曲がっている。まあ、ムーンの力じゃしょうがないよね、
「新しい針はあるよ。こう…切って結びかえて」
やっぱりちょっと不器用だね。でも、少しずつ慣れてる。
「む。ユーリ、引いている」
よし!…って、ちっちゃ!
「まあ、唐揚げ位にはなるか」
針がたくさんついてるのに、釣れる魚は一匹なんだ。
「あ、ムーンのも釣れてるよ!」
「む?!意外と力強いな」
「無理にリールを巻かないで、引く力が弱い時に巻くんだよ!」
「難しいな…!釣れた!」
凄く嬉しそうだ。私も初めて釣れた時は嬉しかったな。
「ふむ…こんなに小さいのに、引く力は凄いんだな」
「だからって無理にやったら糸が切れたりしちゃうんだよ。単純なようで奥が深い」
しばらく忙しかったから、たまにはのんびりした日も悪くないな。
悪くはないんだけど、ムーンは休めているのかな?人化が解けてムッとしてる。
そういえばチャチャも人化を頑張るって言ってたし、二人とも真面目だからな。
エメルはきっと、秋のうちに海を堪能したいんだろうな。
春にはまた町に行きたいし、ギルドのレベルも上げたい。
2ランク以上離れると一緒のパーティーを組めなくなるから、普通にやっていたら、ムーン達と一緒に仕事ができなくなる。
エメルはどうするんだろう?冒険者にはなるつもりないのかな?
というか、まだ武器も決めてないんだよね。
まあ、夏の間中海に行けなくてずっと我慢してたんだから、冬になるまでは思いっきり遊んでもいい。
町には海の幸はあまり出回っていなかったけど、加工してある品があった。
海からは離れているし、領地に港もないみたいだし。
大きな町もあるみたいだけど、テッド君のお父さんはどうして一番端の町に住んでいるのかな?普通なら大きい所に住むと思うんだけど。
帰りに罠の所に寄ったら、罠を壊そうとしている奴が!
「ザリビー!まさか生き残ってるなんて!」
あの雷撃が、奴には効かなかった?
(……普通に別の個体ではないのか?)
あ…。そっか。そりゃいるよね。はあ。そんな事も思い付かないなんて。
槍は投げたけど、やっぱり逃げられている。踏めば潰れる大きさだから、的が小さ過ぎる。
(うーん。蔓が強くなればいいんだけど、鉄は錆びるから使えないし…蔓自体の強度を考えて…こんな感じ?)
さすがにミスリルの剣では切れるけど、今までの罠より強度は上がっている。
(こんな感じかな)
ふっふっふ。これで簡単には切れまい。餌の持ち逃げは許さない!
翌日エメルが帰って来た。
「ユーリ、今回は大物を仕留めたのよ!」
人化したエメルが、マジックバッグから大きな魚を引っ張り出す。
「!もしかしてマグロ?」
鑑定 メバチ 高速で泳ぐ。美味
「やったー!エメル凄い!マグロを捕まえるなんて!」
「喜んでもらえると嬉しいわ。これも進化のお陰だけど」
「速く泳げるようになったの?」
「そうね。今までとは全然違うわ。攻撃力も、魔法の力も、魔力も」
「魔法の威力も上がったの?」
「そうね。ユーリの魔法イメージを色々と聞いてきたのもあるけど」
私の妄想も、たまには役に立つもんだ。ラノベのお陰でもあるけど。
そういえば、魔法って超能力とも似てるよね。念話なんてテレパシーだし、あと亜空間移動とか。
残念ながらサイコキネシスはないな。…でも重力魔法があるんだから、何か…見えない触手みたいな?ものがあれば浮かせて動かせる?
『補助魔法 触手を覚えました』
その見事なツッコミは勘弁して下さい。




