危険な秋の味覚。うっかり食べちゃうのはユーリだけ

ちゃんちゃん焼きは、みんな気に入ったみたいだ。

なるべく食事は人化して食べてもらっているけど、エメルが戻っちゃうのは仕方ない。

町の人がお箸を使って食べているのは驚いた。スープはスプーンを使っていたけど、基本的にお箸だ。

なのでみんなもお箸を使えるように特訓中。

器用なモコは、結構すぐに使えるようになった。

チャチャも問題ないかな。意外にもムーンはちょっと不器用。

今年の冬の目標だね。

（ねえユーリ、私は海に行っていい？）

（いいよ。冬に向けて食材は集めておくに越した事はないし）

（ダンジョンの先に進みたいが、ロングスネイクの階の探索もまだしてないしな）

それはどうでもいいかな。てか、何もない気がするし。

（じゃあ、私は山菜集めに行こうかな）

（ボクも！）

（収納庫は…ロープだけなら、マジックバッグだけで充分かな）

（まあ、他の階層にも行くかもしれないが、充分入るだろう）

（じゃあ私がユーリの護衛だね）

（何でさ！ボクにも護衛は務まるよ！）

（モコ、注意力散漫。護衛に向かない）

（ぐっ…）

あ、一応自覚はあったんだね。てか、この辺なら護衛は要らないけど。

（そういえば、そろそろ鰹節…じゃなくて、カシオブツが無くなるね）

（ええっ！大問題じゃないか！すぐに行こう？ね？）

トレントじゃあるまいし、木は逃げないよ。

一度採ったら近くに生える物らしく、チャチャについて行った。

（結構奥に入るね…何か来る！）

大型犬？牙が怖い。

モコがスピードを生かして撹乱して、バラけた所で一匹ずつとどめを刺す。

（これはヘルハウンドだね。普通はもっと奥地にいる魔物なのに）

そうなんだ。因みに肉は硬いらしいので、五匹も狩ったけど、罠用の餌確定かな。

あれ？色違いのエテル？

（エテルの上位種、エテルンバ。ユーリ、気を付けて）

木をひょいひょいと渡ってくるエテルンバは、エテルと同じように立体機動持ちだ。

風魔法で切り裂こうとするけど、ひょいっと避けられる。魔力視も持っているのか。

素早いし、厄介だな。数は三匹。

モコの雷魔法で打たれたエテルンバが落ちてくる。ショートワープで近くに出て、動く前に首を落とす。

エテルンバが、風魔法を使ってくる！すかさずマジックブレイクで防ぐ。

チャチャのダークアローが刺さったエテルンバにとどめを刺して、向かってきた爪を躱すが、かすった！

構わずに双剣で切りつけて、怯んだ所をチャチャがとどめを刺した。

（ユーリ！大丈夫？すぐに治すね！）

（ん。大丈夫。痛くない…え？痛くない？）

服は破けているし、血糊も付いてる。でも傷口が見当たらない。

「ユーリしゃんはダルク様の祝福を得ているので、傷は塞がったのではないでしゅか？」

うわ…それって再生持ちの魔物みたいじゃん。

一応ピュアだけかけた。

複雑な気分だな。これが加護になったらどうなるんだろう？

「結構出血しているみたいでしゅね。加護だったらもっとすぐに治るのかもしれましぇんが」

「ダルク様の祝福を持っている人は多いの？」

「そんなにはいないと思いましゅ。ルーン様の祝福や加護は割といましゅね」

そうなんだ。何故に付けてくれたかは分からないけど、あんまり知られない方が良さそうかな？

「別に落ち人は加護が多い訳じゃないんでしょ？」

「リリアナ様は多いでしゅ。でも基本的に祝福を得るのは農業を頑張っている人や、職人さんなので」

なるほど。神様によっても違いがあるんだね。

しゃべっているうちに、モコが服の破れを直してくれた。

（チャチャ、カシオブツはまだ？）

（モコは食べ過ぎる。ユーリが料理に使うよりも、食べる方が多い）

（だって…あの香りには逆らえない。でもぶた玉の上で踊っているカシオブツも大好きだよ！だからユーリ、またぶた玉作ってね！）

ぶたというか、オークだけど。マヨネーズもモコは大好きだから、お好み焼きが大好きなんだろうな。

大きな木の周りに若木がたくさん生えている。前にチャチャが取ってきてくれたのは若木だ。

モコが興奮して齧りついている。

（大きい木は残した方がいいの？）

（関係ないと思う。前に私が小さい方の木を取ってきたのは、大きさの問題）

とはいえ、一本あればかなり使えるから、…このモコが齧っている中位の木でいいかな。

（ね、もう一本切ってよ。ボクの収納庫に入れておいてもいいでしょ？）

（枝は全部入れてたのに足りない？）

（まだ入るもん！）

（他の獲物が入る余裕は？）

（……そうだね。欲張るのは良くないよね）

（そこで躊躇うって、収納庫の容量少ないの？）

（ユーリみたいに材木を何本も入れたりとか、無理だよ？）

えー？そんなもん？

（獲物一匹は入るように空けてあるつもりだけど、大型のボアなんかはもう無理かな）

「モコしゃん位が普通でしゅよ？精神や魔力が少ない人は、もっと小さいでしゅ」

「フレイはどれ位？」

「亜空間と同じ位でしゅ」

って事は、私の収納庫はあんなに大きい訳？軽くビルとか入りそうなんだけど。

龍姿のアオさんも余裕で入れるね。

まあ、大は小を兼ねるっていうし、大きい分には問題ないよね。

あ、あれ。もしかしてアケビ？やった！秋の甘味だ！

早速一つ食べてみる。

（ユーリ！それは毒！）

…へ？

うわ…舌に残る後味が苦い。

鑑定 ルシルの実 麻痺効果があり、決められた容量を守れば薬にもなる。

毒の類いは私には無効だけど、進んで食べる物じゃないよね。

ていうか、見た目詐欺！

（ユーリ、鑑定もしないで食べちゃだめだよ）

（しっかりしてるように見えて、危なっかしい）

反論できない。

でも落ち人はうっかり食べちゃうと思う。私だけじゃないよね！