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鹿肉と、武器

 鹿肉のステーキも、シチューも美味しかった。

牛肉に似た味わいがあって、脂身が少ないから、ヘルシーだ。

 懸念していた臭みも少なくて、満足。牛乳につけておいたのがよかったのかな?


 角の方は、武器として使えるように加工した。

 反り返っているから扱いは大変かもしれないけど、すごく切れ味が良い。まともに戦えるように頑張ろう。

 私は盾は使っていないので、鹿角の剣を両手で持つ。

 片手剣位の長さだし、練習すれば扱えそう。攻撃は最大の防御っていうし。

 何しろアーマードボアの皮がスパッと切れたのだ。

 そう考えるとブレードディアは怖い魔物なんだなと思うけど、頭で攻撃した時だけ気をつければモコでも問題ない。


 鹿も素早いけど、レベルの上がったモコの方が素早いし、ダンジョンの壁を上手く利用して急所を狙って攻撃していた。

 アーマードボアが強すぎたっていうのもあるかも。

 ただ、単体で出てくるので、みんなでやれば怖くない。

 しかも猪突猛進の言葉通り、まっすぐ突っ込んでくるだけ。見切りのスキルがなくても対応出来る。


 11階層が割と余裕だったので、早めに12階層に行きたいな。

 12階層はどうせ食べられる物が出てこないから、13階層に行きたい。

 それにしても、一年前まで一階層のビッグコッコに苦労してたなんて、今の自分を考えると信じられないな。

 まあ、従魔達のお陰でもあるし、私一人だったらとっくに死んでいたかも。


 あの時、ヒールをせめて反対側から取れば落ちなかったのかな。

 今更だよね。まあ、今の生活も気に入っているし。


 暑くてだらだらしてたらフレイが湖に誘ってくれた。

 今まで行った事はなかったけど、地図が頭の中に入っているので分かる。

 今日はエメルもいるので、一緒に行く事にした。

 

 ブレードディアの角で作った剣は、反り返っているので、両手で持って構えるとカマキリみたいだ。

 両手持ちで練習してその辺の魔物を相手にしていたら、双剣のスキルが取れた。

 スキルってこんな簡単に取れる物なの?まあ、熟練には遠く及ばないんだけどね。

 

 スキルを習熟させる為には同じ武器で戦った方がいいんだろうけど、何も分からない今から決める必要はないよね。


 私の脳内地図によると、この森の奥に湖があるようだ。

(みんな、湖に行ってみない?)

(いや…あそこはやめた方がいい)

(どうして?ムーン)

(あの湖は、私達魔物にとっては居心地の悪い場所。北の霊山から流れてくる水が、魔物を遠ざける)

(それって結界石みたいな物かな?)


「違いましゅよユーリしゃん。聖域から流れる水には、聖水と同じ効果があるんでしゅよ」

(聖水?…ええと、教会で清められた水で、一定時間魔物を寄せ付けないっていう?)

「そうでしゅ。私達妖精にとっては居心地の良い場所でしゅけど」

 そっか…涼みに行くのにいいかなと思ったんだけどな。

「世界にはそんな場所が幾つかありましゅ。錬金術の材料にもなるので、教会で買うよりは安くすみましゅけど」


 うん…今の私に扱える素材じゃないし、要らないかな。

「因みにその源泉には、聖獣や神獣の類がいるので、普通の人は行っちゃだめでしゅよ?」

「そうなんだ。それって常識?」

「大人が子供に聞かせるお話には大概出てきましゅね」

(じゃあそれは、フレイがユーリに話してあげなきゃ。よく中身は大人って言ってるけど、この世界には落ちてきたんだから、その辺知らないと思うし)

「そうでしゅね」


 落ち人の私にとっては担当妖精が親みたいなものになるのか。

 親にはどう頑張っても見えないけど、強いて言えば物知りエメルはお姉さんぽい。

 でもエメルは自分をもう大人だと言っていた。亀にすればきっと大人なんだろうな。


(ねえ、ユーリは武器も作るのよね?私にもそのブレードディアの角を利用した武器が作れないかしら?)

(ええー。どうかな?)

 エメルの手で、どうやって武器を持つのだろう…エメルはそもそも魔法の方が得意だし、爪でも攻撃するけど、うーん…手に嵌めて?

(考えてみるよ)

(ならボクも!)

 皆欲しいらしい。無くてもムーンやチャチャはかなり強いと思うんだけど。


 溶けて小さくなった氷はムーンが噛み砕いて食べてしまったので、新しい氷を作り、ユーリは色々と考えてみる事にした。



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