リストラ中フレイ
フレイにハーブティーを出してやるとやっと落ち着いたみたいで、泣き止んだ。
「グスン…ユーリしゃんは、優しいでしゅね」
「普通だよ。正直見かけに騙された気がしないでもないけど」
その年齢なら人生経験?も豊富だろうし、充分に大人だし。
「見た目は産まれた時から変わらないでしゅ。仕事が出来るようになってから数十年しか経ってましぇんし」
「そう…まあいいや。聞きたい事も色々あるし。私がここからスタートなのは、どうして?町に行くのに物凄く遠いと思うんだけど」
「それは…強い魔物がいる所には落とせないでしゅ。町から遠いのは…ごめんなさい」
「遠すぎたって事?」
「…失敗しました」
もう、この子はそういうキャラなんだろうな。本人に悪気はなくても、頑張ってもミスしちゃう子なんだろう。
「まあ、今の生活も気に入っているからいいよ。従魔も増えたし」
「賑やかになりましたね」
「フレイ、別に敬語じゃなくていいよ。フレイの方がずっと年上みたいだし」
「喋り方は気にしないでくだしゃい。癖みたいな物でしゅ」
「あと、ここにはいないけど、エメルもいるし…って、パスみたいなのが繋がってるから、分かるのかな?」
「扱いは、従魔のみんなと同じと思っていいでしゅ…戦闘は出来なくても、魔法なら使えましゅから…ユーリしゃんの魔力で」
「あはは。いいよ。結構魔力って連続して使わなければ、それなりに回復するし」
「多分シャンドラ様のお陰でしゅ」
「ああ…そうなんだ。じゃあこの変な目も?」
「変?」
「何か、この右目のお陰でスキルがいっぱい増えた。魔物が麻痺したり」
「それは…うぅ、今は私からシャンドラ様に会いに行けないでしゅ」
「何か不味い?」
「…不味くなったらシャンドラ様から接触して来ると思うので」
「何か不味いなら、先に報告した方がいいと思うんだけど?」
「多分大丈夫でしゅ。シャンドラ様とユーリしゃんは加護で繋がっているので」
そういうものなのかな?なら、私の側にフレイがいる事も分かるだろうし、フレイにとっても安心だろう。
「夕ご飯作るけど、フレイは何も食べられないの?」
「無理でしゅ。でもユーリしゃんが美味しいと思ったり、嬉しい時の魔力は、私にも美味しく感じるので、ユーリしゃんは幸せになってくだしゃいね」
まあ、色々忙しかったりするけど、充分に幸せだ。
エメルは場所が遠いみたいだから、今日は帰って来ないだろうな。
エメルにとっても久しぶりの海だから、満喫しているのだろう。
うん。久しぶりの魚は美味しい。ちょっと小骨が多いのが難点だけど、私以外は頭から尻尾まで綺麗に無くなっている。
一緒に肉も串焼きしていたので、みんなに渡して骨はスラ達にあげた。
それと、鰹節で出汁を取った大根の味噌汁だ。…はあ。美味しい。
出汁を取ったあとの鰹節は、ご飯にかけて食べるつもりだったけど、モコにとられた。歯応えが違って美味しいとか言ってたけど、ねこまんまも食べたい。
削り器はすぐに作った。幸い魔鉄も作る分はあったし、木は切ってきたのが沢山ある。
多少切れ味が悪くても魔鉄は魔力を通せば切れ味が上がる。
私が削っていたら、モコがやりたがった。どうしてやりたいのかは何となく分かるから、多少のつまみ食いには目を瞑る。
そういえば、魔鉄も残り少ないんだった。明日採りに行こう。
フレイは可愛い。もし私が町に行けるようになった時、攫われたら大変だ。
「フレイは影に入れるの?」
「入れましゅけど、どうしてでしゅか?」
「妖精ってそんなに居なさそうだし、攫われたら大変だと思って」
「普通の人には見えないから大丈夫でしゅよ?ユーリしゃんの担当妖精は私なので、私は見えても他の妖精は見えないと思いましゅ。体を作り直したのは私なので…失敗しましたけど」
「もう、それについてはいいよ。今更だし、大きく作り直す事は無理でしょ?」
「下の世界に落としたら、本当は干渉しちゃだめなのでしゅ。仮令落ち人だとばれて、どこかの権力者に不当に奴隷に堕とされても」
「奴隷か…この世界は、普通にあるみたいだね」
「ユーリしゃんに刷り込んだ知識でしゅけど…変に齟齬があったりとかないでしゅか?」
「どうかな?他人との関わりはまだ一切ないし、でも、強いて言えば1年は何日とか、色々知らないかな?」
「それは、上の世界と同じでしゅ。似ている所もあるけど別の世界なんでしゅ」
それは納得だな。けど、魔物がいたり、魔法が使える時点で私には異世界だけど。
「上の世界でも魔法はあるのでしゅよ?ただ、科学が発達したので必要がないでしゅよ。魔物はいましぇんけど」
いたら怖いね。日本は武器も持ち歩けないし、武術も使える人はごく一部だし。
でも、戦闘スキルじゃないけど、私もスキル持ってたな。
この世界で役に立つかは分からないけどね。




