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亜空間移動とシノアダンジョン

アリエール様と書類仕事…とはいえ、実際に紙には残さない。全て森羅万象の中だ。

「もう私の仕事の半分位は覚えたかしらね?昨日は久しぶりにゆっくり寝たわ」

神様は眠る必要がない。だけど私が来るようになって、かなり余裕が出たみたいで、必要がなくても眠る事が出来たのだろう。

「私も、たまには何もしないでもふもふだけしてようかな…」

「ユーリはいつも何かしらしてるものね」


確かに、ときめきの時間ともふもふタイム以外はやる事も多いし。

でも錬金術は半ば趣味にもなっている。


「そういえば、一つ聞きたかったんですけど、私が副神にならなかったらテッドがなってました?」

「確かに良さそうな魂はキープしてたけど、どうかしらね?」

「悪に染まったりしなければ、ですか?」

「ええ。今までも失敗したり、そこまでに至らなかったりもしたわ」

「どのみちテッドはまだまだですよね?」

「そうだけど、数年なんてあっという間よ?その時、ユーリはどうするの?」

「え…私が決めるんですか?」

「逆に私が適当に決めちゃってもいいの?」

「正直、分からないです。眷属達の方が大切だし」

「運命共同体だものね。分かるわ」


「ただいま」

空間固定してある亜空間に入ると、もふもふ姿のモコがすり寄ってくる。

「あれ?テッドは?」

(亜空間移動覚えたみたいで、今あちこち行ってる)

やっと覚えたか。いや、11歳で覚えるのは充分早いけど。


「ユーリ、ご飯の用意が出来てるの」

モチは、言葉は流暢になったけど、喋り方がちょっと変。男女どちらの言葉を話したらいいか分からないみたいだ。

性別はないから好きに喋っていいよとは言ったんだけど。


「あ、ぶた玉だね」

「ボクがカシオブツを削ったんだよ!」

「モコは削るより食べてる方が多い」

まあ、それもいつもの事だね。


テッドが帰って来たみたいだ。

「ユーリ!聞いてくれよ、俺」

「亜空間移動でしょ?良かったね」

「おう…なんだ。知ってたのか」

「あとは、テッドが行きたい所で、ゲートを開いてない所に行くよ?」

「ええと…モコモコが沢山いた平原かな」

「うん。ジンギスカンは重要だよね」

「食べ物というより…あとはお茶の産地かな」

「産地で買った方が安いしね」

「まあ、そんなもんかな」


「これで、いつ私がいなくなっても大丈夫だね?」

「っ!」

「まあ…眷属達も私と一緒だから、戦力はがた落ちになっちゃうけど、眷属達にたまに行ってもらってもいいし。すぐにじゃないけど、私が見習いじゃなくなったら来られなくなるし」


「え…通って仕事するんじゃないのか?」

「何かね、見習いじゃなくなると普通に神様になるみたいだから、今度はまた、魂の所在地が変わるんだって。聖地になら降りられるみたいだけど。ここに居たままだと影響が心配?みたい」


この辺は実は良く分かっていない。聖地化するとか、魔物に影響あるとか。

「とにかくすぐじゃないんだよな?あと少しなんだ、隼が完成するの。そうしたら後ろに乗せてやるから」

「それは…すごく嫌。昔さ、おばあちゃんがカブっていうバイクに乗ってて、小学校の頃、後ろに乗せてもらったら落ちたんだよね」

あれはちょっとしたトラウマだ。教習所の原付教習でもバイクに落とされたし。

「は?それ、ちやんと掴まってなかったからだろ?」

「まあ、とにかくバイクには私、嫌われてると思うから乗りたくない」


「そ…そうか」

しかし…玩具じやないバイク、出来るのか。鍛冶スキルを持っていないテッドが作ったのは、正直凄い。乗りたくはないけど。


「とにかくさ、明日はまたダンジョン攻略だし、早めに休もう」


シノアダンジョン13階層。シャドーオウルは前にもダンジョンで戦っている。

ドロップアイテムは、魔石だ。闇の中を飛び回る所に攻撃を充てないといけないけど、夜目は割と一般的なスキルだ。

テッドの武器も充分射程圏内だし、魔石は値崩れしない。

私にとっては錬金術や付与に使う物だから売ったりしないけど。


「よし!サクサク行こうか」

14階層はラウンドトータス。普段は歩くけど、攻撃の瞬間に高く飛んで硬い甲羅で突進してくる。

飛ぶ前にひっくり返してしまえば問題なく倒せる。

ドロップアイテムは肉か甲羅。


あっという間に15階層。欲しい素材が採れる階層とそうでない階層に差がありすぎる。

ここは一面草原のようなステージだ。魔物はジュエルフライ。

的が小さい上に素早く、魔法を当てても必ずしも宝石をドロップするとは限らない。

それでも冒険者が多いのは、宝石が出れば高く売れるからだろう。


「武器を当てるの難しい?」

「そりゃ、小さいからな」

それでもテッドは拾えている方だと思う。私は石を当てて落としている。正直宝石にはあまり魅力を感じない。もうみんなのアクセサリーは作ったから、売るだけだ。

それにしてもここは危険だ。うかうかしてると他の冒険者の攻撃に当たる。それにジュエルフライは目を狙ってくるから、気が抜けない。もしかすると目も治るかもしれないけど痛いのも嫌だし、目は怖い。


16階層はフレイムビー。15階層よりも的は大きいし、放つ攻撃は炎の玉。

人にとって炎は脅威でもあるけど、ここで攻略を進める冒険者は大概炎熱軽減の付与が付いた防具を使っている。

私達の防具にも属性攻撃無効の付与が付いている。オーガのボディスーツは他の人にはちょっと教えられない位優秀だから、鑑定阻害の付与も付けてある。


そしてフレイムビーの落とす魔石は質もいい。順調に稼ぎたいなら16階層の方がいいな。

「稼げそうなのに意外と少ないね?」

「まあ、炎は怖いだろう」

防具に付与を付けるのは結構お金がかかるからね。


「多めに魔石を確保しておくか?」

「ん。あるからまだいい。次に行こう」


17階層は、え…竜?

「ワイバーンの亜種だな。竜までは行かない」

確かに、ワイバーン程大きくはないけど、炎のブレスを吐いてくる。

空飛ぶトカゲが火を吹いている。そんな感じだ。

硬いけど、ムーンの使うオリハルコンの剣には勝てない。

ドロップアイテムは鱗。これを防具に混ぜれば付与を付けなくても炎耐性が付くだろう。加えて防御力上昇も期待出来る。


素材として売ってもいい値段が付きそうだ。普通の弓だと貫通出来ないかもしれないけど、目を狙えば倒せるかな?


テッドはこの階層、辛そうだな。少しは傷つけられるけど、どうしても倒すまで至らない。

「戻ろうか」

「そう…だな」

護符を作る用と実験用。これだけ集めればいいかな。


亜空間に戻って、今日はワイバーンカツだ。卵でとじてご飯に乗せながら食べる。

「オーク肉よりも味が濃いな」

「旨味がしっかりと閉じ込められているって感じだね」

いつも多めに作ってあとでパンに挟んだりするんだけど、美味しいから無くなりそうだ。

とろみを付けた野菜スープも美味しい。


「さて、ちょっと実験したいから、みんなは寝てていいよ」

鱗は魔力を通す事で効果が変わる。魔力を通す前は簡単に加工できても、魔力を通すとミスリルでも加工が難しくなる。


暗器使いのテッドは、動きを阻害するような鎧を装備できない。

オーガのボディスーツと簡単な部分鎧だけでは不安があるし、ボディスーツはともかく、付属で着けている方はもう少し何とかしたい。


いっそのことチャチャのライトアーマーみたく最初は作って後から削るか。

うん。そうしよう。鱗も勿論融合させて。


うん。いい感じ。鱗の分他の付与を付けられるし。

状態異常はテッドにも効かないから、耐性系を強化しよう。


結構遅くなってしまった。眠くはないけど、もふもふの中でならすぐに眠れる。


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