シノアダンジョン
シノアダンジョンに行く前に、昔使っていた槍を出した。
他の冒険者が結構持っていたのを見て、槍で届くならと出した。
石もたくさん拾ったから、充分な気もするけど。
中途半端な時間だから町に行った。屋台ではやっぱり鶏肉の料理が多い。
「ジャンプして攻撃は、あり?」
その度合いにもよるんだよね。
「人目のある所では空中の足場は無しで。みんなもね?」
「ボク達も今から投擲のスキル取れるかな?」
「まあ、程々でいいよ」
何なら1日一階層で、魔法だけで攻撃してもいいのだ。
まあ、広さがどれ位か分からないから、何とも言えない。
亜空間に戻って、今日はネギトロ丼だ。
「海苔はまだあるのか?」
「んー。減ってるね。またそのうち作らないと」
亜空間内でも干せるから、材料だけあればいい。
ご飯を食べ終わったら味噌作りの準備。たっぷりの水魔法の水で洗いながらクリーンもかける。急ぎだとここで半日分のエイジングをかける。
「大豆が一気に膨らんだな」
「魔法様々だね」
圧力鍋が無くても魔法で圧力もかけられる。
「忘れてた。圧力鍋、上で買ってくれば良かった」
「どうせ出さなきゃいいんだから、色々と買えばいいのに」
「私の事だからさ、うっかり収納庫に入れて出しそうなんだよね」
「あー。だな」
そして、フードプロセッサーの魔道具を作ってから随分楽になった、潰す作業。
「味噌玉作るの手伝って」
エメルにチャチャ。今回は珍しくテッドも手伝ってくれた。
「俺にも作れるかな?」
「今実際に作って見せたじゃん?森羅万象があるんだから、知識としても分かるはずだし」
急ぎならここでまた魔法を使うけど、味噌はまだ残っているから、今回は置いておく。
「テッドも作りたいなら、材料はあるよ?」
実践した方がいいと思うし。
まあ、今日はもう遅いし、明日からはダンジョンだから、休んだ方がいい。
シノアダンジョンの上層は虫が多い。まあ、確かに飛ぶ魔物だ。やっと鳥系魔物が出たと思ったら、4階層のチャボだ。コッコよりも小さく、確かに飛ぶ。
これを飛ぶと言ってもいいのなら、私の方が上手く飛べる。
まあ、小さいけどやっと鶏肉が貰えたんだから、文句はないかな。
5階層まで来て、やっと多数の冒険者が見られた。
ひらひらと、目の前を白い蝶が飛んでいく。私を追い越してチャチャが殴りかかるけど、ひらりと躱す。
チャチャも手加減した攻撃だったから、いつもの速度で当てにいくと、蝶がハラリと落ちた。
ドロップアイテムは、白い粉。それだけだと危険な感じがするからちゃんと看破した。
看破 ダンジョン産ホワイトフラワーの粉末
肌を綺麗に見せるための化粧品。ダンジョン産は質が良く、高額で取引される。
「これ…花なんだ」
確かに同名の花は栽培されていて、それが魔化すると飛ぶみたいだ。
「というか、冒険者じゃなくても捕まえられそうだよね?」
冒険者達が虫取り網を振り回している姿はため息をつきたくなる。
ここまでは双剣だけで対応できた。槍は熟練度が低いから、双剣で行けるなら嬉しい。
決して素早く動く訳でもないのに、こちらの動きを読んでいるかのようにひらりと躱す。
他の冒険者達も苦労しているみたいだ。
6階層はフライスネイク。一応毒持ちだけど、動きが単純だから、私達には余裕。
皮は値段は安いけど、一応拾っておく。
あまりにもあっさり進んでしまったけど、それなりに疲れてはいる。
ムーンなんかは物足りないみたいだけど、まあ、明日に期待しよう。
それなりに広いけど、昨日すんなり行けたのはなんとなく勘が働いたからだ。
そんな日もあるのかな?
今日は7階層からだ。魔物はポッポ。懐かしい。ギルド依頼でテイムした事があったな。
小さいけど魔石を拾えた。
「もう8階層か。フロアーは狭いように感じないんだけど、もしかして最短距離で行ってないか?」
「んー。…そうみたい?」
3Dマップで確認すると、ほぼ最短コースだ。
「あ…直感なんてスキルが増えてたよ」
「ユーリのせいか」
「せいって何。お陰でしょ?」
「ある程度になったら先頭交代な?じゃないとダンジョンの楽しみも減るし」
そう言われればそうなんだけど、ちょっと悔しい。
9階層はシャドーバット。天井に貼り付く姿を見て、槍に持ち変えた。
「あれ?届かない!」
他の冒険者は槍で突いているのに。分かってる。身長差だ。
悔しいけど、まあ仕方ない。収納庫にたくさん拾っておいた石を投げて仕留める。
毎回じゃないけど、片手位のコウモリの羽根が拾える。
「一応食べられるみたいだね。珍味って出てるし」
「エールを飲みながら食べてる人を見かけたわね?」
おつまみか。なら、拾おう。
「あっという間に10階層か」
「全然平気だよね?」
頷くみんなに一応リフレッシュをかけて、進んだ。
「鳥の骨が空を飛んでるよ!」
「鳥のアンデットもいるんだな」
言いながら、テッドは聖魔法を使う。
「張り合いないな。てか、どうやって飛んでたんだろうな?」
「それを考え始めたら、切りがないよ」
呆気なく倒せたのも聖魔法のお陰だし。
11階層はホワイトホークス。やっとまともな鶏肉が拾える階層に来た。氷のブレスを使うけど、動きを鈍らせる効果位しかない。それに体内の魔力を意識的に動かして暖めてやればすぐに回復してしまう。
うん…まあ、魔力操作が苦手な人はちょっと苦労するかも?ポーションで治る類いの症状じゃないし。
「ユーリ、焼き鳥作ってくれよ」
「はいはい。ならさくさく倒してね?武器で倒せているのはテッドとムーンだけなんだから」
槍は早々に諦めた。私とチャチャはダークソードを使っているし、エメルは守りに徹している。モコだってたまに魔法も使うけど、支援魔法に切り替えている。
石で倒せない事もないけど、魔法の方が確実かな?
「ユーリ、やっぱり後衛」
12階層に着くなりテッドが言った。確かに折角活躍出来る階層だったのに、サクッと階段を見つけちゃったからね。
いや、ここはきっと長居するよ?だってキラービーだもん。
なんとなく行きたい方とはわざと違う方に行ってるし。
蜂蜜はここじゃなくても集められるけど、たくさんあってもいいし。
冒険者もたくさんいる。きっとみんな甘い物が好きなんだね。
「13階層はシャドーオウルか。まあ、後でだね」
明日はアリエール様の所に行かないと。
ホワイトホークスの焼き鳥。
それと具沢山のあら汁だ。こっちは数が揃わない魚を適当に入れた。
「うっ…骨が残ってた」
こういうのがあるから面倒。
「ムーン、ボクのねぎまと交換してよ」
「モコは塩味の方が好き?」
「今日は塩の気分なんだ」
私も焼き鳥は塩の方が好き。丼にして食べるならタレの方がいいけど。
コウモリの羽根も焼いてみた。パリッとしてお煎餅みたいな感じ。
「ふふっ。今日は少し飲もうかしら?」
「明日は休みだからムーンも飲んだら?」
「うむ…そうだな。これは酒に合いそうだ」
大人組はまだ眠らないみたい。私は朝から出掛けるから、モコにもふもふしながら寝た。




