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モチの散歩とこれから

テッドは一人で4階層まで進んだみたいだ。

クランベリーとグミをお土産に貰った。

「18階層は普通に通れないから気を付けてね?」

「ああ。雷が凄いって話だな。ユーリ達はどうやって抜けたんだ?」

「結界と魔法」

違うけど、妥当な理由を言った。


「金属は持ち込めないだろうな。まだ、一人で行けるかな?」

「心配ならモコを連れて行ったら?」

「いや…まだいい」

守る必要はないけど、同じパーティーなんだから、遠慮しなくていいのに。

「モチ?…テッド、モチが行きたいって。どうする?」

「いや…俺、テイマーじゃないし」


普通は主以外の命令には従わないけど、モチなら大丈夫だと思う…いや、五階層から先は冒険者も増えるから、違う意味で心配かな。


「モチもたまには外に連れて行ってあげるよ。なるべく人のいない所ね?」

「戦う!強くなる!」

「経験値はシェアされてるけど、たまには外にも行きたいもんね」

となると、元住んでいた所の森の方か。ついでにカシオブツの木も切り倒しておこう。


「その前に、24階層の確認だけしていいかな?」

了承してくれた。モチを撫でて、亜空間から出た。

ダンジョンに近づくと、声が聞こえた。

『ダンジョン管理者権限が増えました。使用しますか?』

権限は、ボス無効。使用すると出現しなくなるみたいだけど、そうすると宝箱もドロップアイテムも出てこない。

それは嫌だな。何が出るか楽しみでもあるのに。


23階層のボス達を倒してまたマンゴーを手に入れた。

新しく出来た階層には何が出るのかな?

魔物はドラゴンホース。竜っぽい馬だ。具体的には鱗が生えている。

怖!ホーリーブレスを吐くよ。仲間が使うと心強いけど、魔物にやられると嫌だな。

驚いたのは、そのホーリーブレスさえもエメルは弾いた。

竜の鱗は魔法が効きにくい。そして硬い。聖魔法に耐性があるみたいだから、みんなが牽制してくれてるうちにブラックホールの魔法を頭を狙って放った。

落ちている鱗を拾い、宝箱を開けると、聖なる炎が出てきた。

収納庫に入れても消えない、魔物を寄せ付けない炎。

結界石より強力で、弱い魔物なら近づくだけで消滅してしまう。


珍しいけど、使い道はないかな…亜空間が使えなくて、テントの前で使うなら役に立つけど。


昨日は結局ギルドに行けなかったから、今日要らない素材を売ろう。

「な…!こ、これはブラッディーウルフの皮!これをどこで?」

買い取りカウンターに置いたら驚かれた。

「そこのダンジョンだよ?22階層」


途端にギルド内がざわつく。

「18階層はどうやって抜けたんだ?」

「結界張って強行突破。どうしても邪魔な時だけ魔法で倒したけど、角は使います」

「とにかくギルドマスターの所へ!その先の情報もお願いします!」

今日はモチの散歩に行きたいんだけどな…まあいいけど、あのフロアーを抜けた人って、誰もいなかったんだ。


「とまあ、こんな感じで」

24階層が増えた事は言わなかった。私だって謎なのだ。信じてもらえないだろうし。

ダンジョンの管理者に会えたら聞いてみよう。

「ふむ…マンゴーは食べた事がないな。果物なんだろう?」

「うん!凄く美味しかった!」


「そりゃ…良かったな。しかしドラゴンホースなんて良く倒せたな」

「まあ、結構大変でしたけど」

「イビルバイパーにドラゴンホース。この実績が複数ギルドマスターに知れたらSランクにもなれるだろう」

「それは却下で」

「はぁ…まあ、無理強いも出来んからな。情報、感謝する」

さて。モチの散歩に行くか。


去年着ていたコートがもう小さくなっている。何年か着た物だから仕方ないけど、また作るようだな。

今日の所はカイロの魔道具を使って耐えよう。


もうすっかり雪景色だ。モチは寒くないのかな?

途中出てきたホーンラビットをモチに任せて、目的のカシオブツの木を切り倒す。

魔物感知に引っ掛かったジャイアントボアを、モチは倒す気満々だ。

まあ、モチなら大丈夫だろう。ぴょんぴょん跳ねて、超音波を放つ。

久しぶりにモツ煮込みでも作ろうかな。

ボアはステーキにしても美味しいんだよね。


町から離れたこのダンジョンは冬は攻略者がいない。

さすがにテントで冬を越すのは無謀だからね。

「ダンジョン、行く」

「少しだけだよ?」

午前中はギルドで時間を取られてしまったから、そろそろ夕方だ。


ビッグコッコを突進したり、押し潰したりしながら無双するモチ。

卵はそんなに要らないかな。肉だけ拾おう。

「そろそろ帰るよ、モチ」


しまった…迷子札の魔道具は亜空間に入られたら使えないらしい。

(テッド?)

(おー。戻ったか)

すぐ側で亜空間の扉が開いて、テッドが出てきた。

繋がりがないって面倒だな…これでテッドが亜空間移動を覚えたら、私には探しようがない。迷子札を付けていれば離れていてもマップと統合してあるから探せるけど、亜空間は位相のずれた空間。マップで把握は無理だ。


自分の亜空間を開くと、みんな戻っていた。

(お帰りー!ボクお腹空いたよ)

足元にすり寄って来たモコが、人化した。

「え…服を着て人化出来るようになったのか?」

「うん。ユーリのお陰でね。もう…むぐっ」

「あははー。何でもないよ?」

(テッドには言わないで!)

「ユーリ、蛇丼」

「ありがとー!チャチャ」


何も言わなくてもちゃんと用意しておいてくれる。それが堪らなく嬉しい。

「むっ…何だこれ?舌の上で蕩ける!」

「ふっふっふ。そんじょそこらの蛇君とは違うからね。ブラッディーバイパーは至高の美味でしょ?」

「え…まさか町で噂になってた大物を倒したパーティーって、ユーリ達が?」

「まあねー?色々とね。その辺は詳しく言えないけど」

「何でだよ」

「乙女の秘密」

「ぶっ…」


ああもう。汚いな。仕方ないじゃん。他の人には蛇君の恐怖で魔物が山から降りて来たって事になってるんだから。


週に1日は休みを入れる事にした。アリエール様に色々と指導して貰うのと、もっと神様達に会って親交を深めて、将来的にアリエール様の補佐が出来るようにする為だ。

「今日はダンジョンも全部休みだよな?買い物でも行くか?」

「んー。モコと行って?私は1日いないから」

「ん?どこに行くんだ?」

「秘密」


「はー?…あ、まさかとは思うが、男に会いに行く、とか?」

「何それ。…あとさ、私、冒険者続けられないかもしれない」

「な…!」

「すぐって訳じゃないけどさ、だからテッドもメンバー考えて欲しいかな」

「錬金術師になるとか?それとも付与術師?」


「ううん…まあ、そのうち話すよ」

野良から見習いになったとはいえ、なんとなく話しづらい。

テッドはエーファさんと冒険すればいいのに。二人だけだとバランス悪いけど、臨時の近距離攻撃の人とパーティー組むとか。

亜空間移動が便利なのは認めるけど、そのうちテッドも覚えるだろうし、…まあ、ムーン達が強いから一緒にいた方が安全なのは確かだ。


まあ、私もまだまだだから焦る必要はない。



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