ユーリの仕事?
夕食後の一時間はときめきタイム。私だけが魔法で見られる大画面でのビデオ鑑賞。
「なあモコ、あいつはどんな物にはまってるんだ?」
「んー?絵に描いた人、かな?」
「アニメか。意外…でもないか」
妙な拘りがあるっぽいもんな…モコも可哀想に。
だからって…かわりない、な。
「ユーリはそのときめき?が大好きだけど、ボク達がユーリにとって一番に大切だって分かってるからいいんだ」
「眷属って、そういう物なのか」
「良く分からない。ボクはユーリの魔力から生まれたし、従魔の頃から大好きだけど、眷属にしてもらってからは、自分より大切だよ」
それは羨ましい、な。
「終わり!さ、みんな寝よう?」
ときめきタイムの後はもふりタイム。今の私、凄く充実してる。
「ね、ユーリ。ユーリにとってテッドは何番目に好き?」
「何?モコ…んー。六番目かな?」
つまりはモチの下だ。モコが微妙な表情してるけど、どうしたのかな?
さて、今日はどうしよう?
「俺がいない間に行ったダンジョンでお勧めの所あるか?」
「あるよー?果物がいっぱい採れるダンジョン」
「なるほど…ユーリにとっては神ダンジョンだな」
「どうする?行く?」
「行きたい。ユーリ達は何階層まで進んでいるんだ?」
「21階層だよ。メロンが採れるんだよ」
「今日は俺だけで行っていいか?ユーリ達はメロン採りたいだろ?」
「まあ…テッドの武器は中距離だけど、魔法もあるしね」
「それに借りてる魔晶石もある」
「そう?なら、迷子札」
「嫌な名前だな。ユーリのオリジナルの魔道具だろ」
「何で分かったの?」
そんなの、ネーミングセンスに決まっている。
雷バチバチのフロアーまでは一日じゃ辿り着けないし、問題はないと思う。
「夕食までには戻る」
私達は21階層だ。人の気配はない。
「私、人化を解いて戦っていい?」
「いいよ。これだけ広い通路なら、つっかえて通れなくなる事もないだろうし」
元の姿で戦える所も少ないだろうから。
エメル、無双。どっしりとした姿からは想像出来ない位、素早く動けている。
みんなも負けじと人化を解く。私はただ後ろを歩いてメロンを回収するだけだ。
楽に22階層まで来てしまった。魔物はブラッディーウルフ。
シタールダンジョンにも出たな。落とすのはやっぱりもふもふの毛皮。
もふもふの毛皮で作った犬のぬいぐるみはもうあるし、売却でいいな。
やっぱりみんな無双してたけど、私も戦わせてもらった。
(強くなったな…ユーリ)
(森羅万象のスキルを手に入れたら、思考速度そのものが上がったんだ。だからかな?レベルで上がっているスピードがちゃんと活かせているせいだと思う)
(スピード重視のモコと遜色ない動きだ)
(いつまでも守られてばかりじゃ、嫌だもん)
まあ、力では敵わない所があるから、魔法も併用する。
今の私達なら、ミノタウロスキングも怖くないかも?
23階層は、ボス部屋みたいだ。
オーガキングとオーガクィーン。三匹のハイオーガ。
ハイオーガを先に倒し、二手に別れて向かっていく。私は自然とエメルの方に行く。じゃないとエメルが私の方に来て、戦力バランスが崩れるからだ。
大剣を持ったキングの攻撃を避けつつ双剣の先、両方にホーリーソードを出して、エメルがホーリーアローで撹乱させたキングに切りかかる。
人型の魔物だから足を狙ってバランスを崩させ、穴をあける。
元がホーリーだから、消滅効果は抜群だ。クィーンの方もムーンがホーリーブレスで倒した。
宝箱だ。中にはマンゴーが5個。それと、手紙?
ユーリ、やっと落ち着いたから教会に来てね?
ああ…そういえば来てって言われてた。上の世界に旅行するので忙しくて忘れてた。
てか、私以外が宝箱を開けたらどうするんだろう。
階段が無い。じゃあここが最終階層?あ、コア発見!
触れて、魔力を流すとコアが消えて、階段が現れた。
「マジか…最終階層が増えるとかあるんだ」
まあ、今は魔力が怪しいから先には進まないけどさ。
とりあえず魔宝石を出して魔力を補充して、戻る事にした。
夕方のギルドは混んでいる。若い冒険者もいない訳じゃないけど、みんなさっさと納品を済ませて、飲みたいのだろう。圧が凄い。
「後にするか?ユーリ」
「うん。先に教会に行ってくるね」
大通りにある屋台からは、いい匂いが漂ってくる。ご飯を食べてからでも良かったかな?
教会は、開いているけど、無人だ。丁度いい。
(えっと…)
引っ張られる感覚。まだ何も言ってないのに。
「もう、やっと来た!まず、謝っておくわね?不完全体でも強かったでしょ?本来なら私達が対処しなきゃならない案件だったわ」
「何か特別な魔物だったんですか?」
「異世界の邪神が、ここに転移してきたみたい。魂の状態で転移してきたから、私達も気がつかなくて。強い魔物が出たな、位で、ユーリがたまたま近くにいたから頼んじゃったのよ」
まあ、その時点でどうなのかは分からないけど、ミルドラ所属の女神?だし。
「てか、何で私、女神なんですか?」
「神格を得たからよ。まあ…私が二つも加護を与えたせいでもあるんだけど。そこで相談なんだけど、ユーリ、私の仕事を手伝ってくれない?」
「え…」
「知ってると思うけど、色々な仕事があるからだけど、部署ごとに分けたせいで連携も取れないせいで、私が忙しくなっちゃったのよね」
縦割り社会?
「そこに来てみんな自分の能力に自信がある個性派揃い…ねぇユーリ?私、可哀想でしょ?」
「はぁ…」
つまりは私に中間管理職になれと。
アリエール様の力になれるのはまあ、いい事だし、嬉しくも思う。
「でも…私に出来るかな?」
「ユーリには頼りになる眷属もいるから、本人がちょっとうっかりさんでも問題ないわ!」
「アリエール様の眷属様には頼まないんですか?」
「様とかもういいから。特に眷属達よりユーリの方が立場的に上なんだから」
「私が教えを乞う立場だし…見習いのうちから大きな顔出来ませんて」
「そうよね。いきなり一人前には出来ないわ。確かに。まだ小さいし」
あれ?今胸を見て言われたような?
確かにまだ微妙で、胸用の下着は必要ないけど!
「それにモチはここに連れて来られないものね」
「モチは進化…しますかね?」
「一番に焦っているのはモチだもの。ユーリも少しずつでいいの。森羅万象を得たなら理解は速いと思うけど、人生を犠牲にしてまでとは言えないものね」
うん…アリエール様は胸じゃなくて私の内面を見たのかな。
そうか…小さいっていうのは子供って事か。
只の子供じゃない。そのまま上にいたら三十代後半か…あはは。まだ独身でいたかも。
恋愛とか今の私には考えられないけど、眷属大好きな私には必要ないかな。
それに私、見習い女神になったみたいだから、これから仕事を覚えなきゃならない。
うん…忙しくなりそう。




