果物ダンジョン17階層
家族が濃厚接触者に!…持病を持っている私がコロナに罹ったら、多分死にます…気を付けてはいますが、連載が止まったらそういう事だと思って下さい。
果物ダンジョン15階層。米ナスの和風ステーキや、チーズ乗せ焼きが凄く美味しかったから、また作りたいのと、違うレシピにも挑戦してみたい。
上の世界では食べた事なかったんだよね。実は。
長ナスと同じような物だろうと思ってたけど、全然違う。
美味しい物パーティーの時に焼きナスにして驚いた。
前回はそんなに夢中になってなかったから、あっという間に食べ尽くしてしまった。
でも今日は甘芋が多いな。まあ、焼き芋にしたり干し芋も作りたいからたくさんあってもいいよね!
勿論苺の収穫も忘れない。上の世界のものより酸っぱいけど、ちょっと酸っぱい位の方が甘いケーキに乗せたり挟むのには丁度いいよね。
苺ジャムも作りたい。
「ユーリ?階段あったけど、どうする?」
「今日は15階層でいい?」
勿論魔法石には触れておく。
ムーンの火魔法も上達したな。植物が相手だから効果的だし、広範囲を一網打尽にできる。
エメルも自分の動きを確認しつつ体を慣らしている。
(人化してても感覚が変わるの?)
(結構変わるわね。元の姿の方が変わるけど、そっちの方が慣れるのは早いわ)
そういう物なんだ。私には分からない感覚だね。
モコとチャチャも今日はスキルを伸ばす事にしてるみたいだ。
冒険者が全くいない訳じゃないから人の姿だけど、それでも伸ばせるスキルは多い。
私はといえば時空魔法を伸ばしている。だって上の世界に行けると分かったら、頑張りたくなるよね?
籍もないし、この姿だと誰に会っても無意味だし、記憶もない。
お金もないけど、前に採掘した金が結局使わないで残っている。
身分証明書も当然ないけど、少し位安く買い叩かれても構わない。
上の世界に住む訳じゃないし、ちょっとお墓参りに行くのに交通費と、懐かしい食べ物を買える位あればいい。
それに上の世界に長期間留まる事はどのみちだめな事だ。
少し行く位なら問題はないけど、もう私の魂の所在地はミルドラだ。
テッドも行きたがるかな?リナさんやケンゴさん、マイクさんも。
あー、でもマイクさんはアメリカの出身だ。頑張れば不可能じゃないけど、太平洋を飛んで渡るのは大変だ。
颯太は…うん。止めておこう。もう関わらないと決めたし、自分でも頑張れば不可能じゃない訳だし。
まあ、勇者になりたい奴だから帰りたくないかもしれないしね。
上位魔法は上がりにくい。聖魔法はモコの影響で上がりやすくなってたから極められたけど、そこまで真剣に上げてなかったし。
重力魔法の訓練は控えてその分時空魔法を頑張ろう。
時空属性を使う魔道具を作っても上がると知って驚いた。
しかも魔法を使うよりも効率がいい。でもその為にはダンジョンで戦ってたらだめだし…かといって、リナさんに教えてもらったアンデットばかりのダンジョンには行く気にはならない。
空飛ぶ魚の骨でも倒しまくろうかな…あれなら怖くないし。
地道に上げていくしかないよね。
次の日は16階層からだ。
出てくる魔物はコカトリス。護符もあるし、万一の時もすぐに治せる。
ドロップアイテムは魔石だ。丁度いい。ここで魔石を乱獲しておこう。
時止めの魔法も覚えたからマジックバッグも時間停止の物を作れるけど、作ったとしても売れない。
例え私に時空妖精の加護がなかったとしても、10歳で時空魔法の時止めまで使えると知られたら、どうなるか分からない。時間遅延効果ならそこまで問題にはならないから、作ったら売ってもいいけど。
ここの魔石はそこそこいい物だし、今後の為にも集めておこう。
なんて思ってたけど、あっさりと階段を見付けてしまった。
まあ、後でも来られるし、次の果物も気になるし!
魔物はレッドパンサーだ。レッドと言いつつオレンジ色の毛並みだ。
ドロップアイテムは…柿だ!毛皮や牙もたまに落とすけど、それなりの値段で売れた筈だ。他の冒険者もいるみたい。きっとみんな柿が好きなんだね!
あ、蜂谷柿か。渋いのも落とすんだね。あれ…あの冒険者、渋柿は捨ててるよ。干し柿や樽抜きにすれば美味しいのに、勿体無い。
(ユーリ?他の冒険者が倒した物なんだから、捨ててもそんな恨めしそうな目でみないの)
(ボク達、頑張って集めるからね?)
顔に出る所は治ってないのか…でもポーカーフェイスを練習しても、感情は眷属達には筒抜けなんだよね。
とすると、オレンジはもっと下かな。オレンジよりもみかんの方が嬉しいけど、贅沢は言えないよね。
空間把握でフロアー全体を把握する。ここまで精密な魔力操作が出来るようになったのも、種族名が変わってからだ。
一部に多くの人の気配がある。鉱物が採取出来るのかな?
とりあえず行ってみたら、順番に並んで何かと戦っていた。
石?…爆弾っ!あ…オレンジだ。
太い木から凄い勢いで落ちてきて、上手く切るか、魔法を当てると変わるみたいだ。
通路に並んでるんだけど、レッドパンサーも遠慮なく襲ってくる。
「並ぼう?ね!オレンジ欲しいよ」
一人5分位で一旦攻撃が止まるから、そこで交代になるみたいだ。
爆弾に当たってポーションを使っている人もいる。モチが作ったポーションかもしれないな。
「今日はなかなか出ないな」
「日にもよるからな」
「何か特別な物が出るのか?」
「知らないで並んでいるのか?」
「オレンジが欲しいからな」
「は?…ああ、まあ安いけど売れるよな。じゃなくて、スキル球が出る事もあるんだよ。まあ…毛皮や牙だけの収入になる事が多いけどな」
「ふむ…どのようなスキルが?」
「一度俺は状態異常耐性のスキルを手に入れたぜ?勿論自分で使ったけど、売れば結構な額になったんじゃないかと思うと惜しくもあるんだけど、強くなる為には必要だもんな」
「まあ、殆どが冒険者なら持ってそうなスキルしか出ないけどな。それでも売れるし、はぁ…魔法のスキル球でも出ないかなー?」
「そんなの出たら、暫く遊んで暮らせるかもな!」
ムーンが喋っているのを聞きながら、あれも罠の一環なのだろうなと思った。
私はエメルの前に並んでいる。私達の中では後ろから二番目だ。
レッドパンサーならオレンジを採りながらだって戦えるのに、相変わらず過保護だ。ムーン達が先に行くのも、いつでも私を守れるようにする為だ。
みんなそれなりにオレンジが採れたようだ。なら私も頑張る!
大木の前に立つと、次々と石が飛んでくる。まるでショットガンだ。
下に落ちると石のままでダンジョンに呑み込まれてしまうので、落ちる前に剣を振るう。
意地悪く離れた所に飛んで行く石は、蔓の罠を使って受け止める。多重思考があるから剣を振るいながらだって魔法を扱う事は簡単だ。
周囲の冒険者が驚いてるけど、オレンジを逃すものか!
目の前に飛んで来た最後の一つを切ると、上半分が赤くて下が白い、モンスター…じゃなくて、スキル球が。
へえ…本当に出るんだ。真ん中のボタンを押すと、可愛いもふもふが…出ないけど。
これは…物質創造?魔力で好きな物を作り出せるみたいだ。こんな凄いスキルがあるなんて…しかも材料は魔力!
「使ったのか…何のスキルだったんだ?」
「ええと…ま、魔力増大?」
「おお…。まあ、魔法も使うみたいだし、役に立って良かったな!こんな小さいのに、剣の腕も凄かったし、木魔法を網みたいに使うなんて凄いよな!」
「だって!オレンジいっぱい欲しいし」
小さいは余計だけど。
「果物は買うと高いからな。ほら、やるよ」
「いいんですか?」
「スキル球を手に入れたその運が俺にも来るかもだしな」
運か…下に降りてから私の運も上がっているかもね。数値的な物だけじゃなくて大好きなみんなに囲まれて、好きな事をして暮らしている。
今の幸せが続けばいいな。




