ソイズダンジョン終了
ロシアン餃子。普通のもあるけど、納豆やチーズポテトなんてものもある。
皮はちょっと厚めに作ってモチモチ感を出した。
「これは外れなの?」
「違うよ!納豆は美味しい物なんだよ?」
チャチャとエメルに手伝ってもらいながら餃子を作る。
「みんな!中に何が入っていても食べるんだよ?」
「は?…なんだよそれ。激辛のとかあんのか?」
「私が食べるんだからそういうの入れてるはずないじゃん?」
「うにゃ…臭い納豆」
「む…これは梅干しか。まあ、ご飯には合うな」
はあ…流石に果物は合わないか。果物は美味しいけど…微妙。
「あ、俺の所にも納豆来たな」
テッドは平然と食べている。…納豆好きだったのか。
次の日。また15階層からやり直しだ。階段を見つけてなかったから仕方ないけど、香辛料が採れるから、チャチャは密かに喜んでいた。
ユーリも納豆を採りつつ、階段を探す。
はあ…今日もピュアを使いまくってるな…聖魔法は昨日極めちゃったけど、未使用な魔法も多い。てか、蘇生なんて使う事態にならないように注意しないとな。
そういえば、ダークソードとか魔法で切れば、粘って切れなくなる事もないかも?
今更だけど、大正解。気がついたチャチャが自分のガントレットにもダークソードを使っている。
「ユーリ、余ってる片手剣ないか?」
「ダークソードなら、ナイフでも出せるよ?」
というか、お箸でも出せる。私が使っているお箸はトレント製だからね。
テッドは自分の収納庫から魔鋼製の解体ナイフを出した。
ダークソードは、術者の手を離れると、ほんの数秒で効果は消えてしまうから、モコ達に貸す事は出来ない。
「階段だな」
「おお。やっと見つかった」
階段を登ったみんなに念入りにピュアをかけてやる。
さて、次の魔物は何かな?…イタチ?
看破 ダンジョン産ホワイトイタチ 神経毒を使う。牙や爪に毒があり、同種の魔法は効きにくい。
「麻痺毒に注意してね!」
イタチだから肉はドロップしないな。てか、素早くて攻撃が当たりにくい。
うん。やっぱり毒瓶だな。もふっとした尻尾も落とした。これは嬉しい。
しかも骨は抜けているし、そのまま飾りとしても使えそうだ。あとはたくさん集めて襟巻きとか、コートとか…
「もう、ユーリ!もふもふの事ばかり考えてないで、階段を見つけたよ!」
まあ、眷属達に私の気持ちが筒抜けなのは仕方ない。
さて、17階層の魔物は何かな?…おー。キラーグリズリーか。一気に強い魔物になったな。
4本腕の熊は、昔は怖かったけど、今の私達には全然平気だ。チャチャのモノクロームと比べても、チャチャの方が種族的にもレベルでも勝っている。
それに単体でしか出て来ないから、却って物足りなく感じる。
階段もすぐに見つけてしまったし、サクサク行こう。
警戒しながら階段を昇るけど、次の魔物はホワイトホークだ。
氷のブレスを吐くけど、氷の粒ではたいした怪我はしない。
ダンジョンは階層が進むと大概魔物が強くなるけどたまにこういう例外もある。
ドロップアイテムは鳥肉だし、久しぶりに焼き鳥が食べたいな。
少し進むと、採掘ポイントを見つけた。初心者パーティーではここに辿り着けないだろうな…おお!銀が採れるみたいだ。
アオさんにはたくさん貰ったけど、あって困る物じゃないし、ミスリルに加工すればいい武器や防具になる。
魔道具には必須のアイテムだし、たくさん採っておこう。
「私達で守るから、気にしないで採掘してていいわよ?」
「うん。じゃあテッドも」
テッドにもシャベルを渡して、採掘する。
テッドも魔道具は作るから、黙って集めている。
テッドがこの前作った魔道具のオーブントースターは驚いたな。どの位の出力になるか計算して、家電と変わらない性能に仕上げていた。お陰でパンをトーストしたり、クッキーを焼くのが楽になった。
ピザなんかは石窯で焼いた方が美味しいからそっちを使っているけど、気軽に使うならオーブントースターだ。
私は適当に作って実験しながら調整するけど、テッドはきっちりしてるな。こういう所にも性格が出るんだろうな。
まだミスリルの作成にも成功してないテッドだけど、案を出せば単一の物ならテッドの方が上手く発動基盤を書くかも。
うん。結構採れたな。ダンジョンで採掘する時は雪の日がいいね。
採掘している間にムーンが階段を見つけてくれた。
19階層はオーガだ。私達はいいけどテッドは大丈夫かな?
うん…テッドは次のボス戦には連れて行けないかな。
「テッド。ボスは次の機会にした方がいいね。少なくとも私達だけで先に魔物の種類を調べてからじゃないと」
「…俺がいたら足手まといか?」
「どんな魔物かにもよるよ。でも、ここにいるオーガより弱いって事はないと思うんだ」
「…分かった。ダンジョンの外に出てるよ。自分の亜空間にいる」
珍しくあっさり引き下がったな。もっとごねるかと思ったけど。
テッドは魔法石に触れて転移した。
「みんなは平気?魔力は?」
リフレッシュをかけて、階段を昇った。
20階層。ボスはクリスタルゴーレムだ。こいつ…強い!
みんなも早々に人化を解いている。
硬すぎるからか、攻撃はダメージになっているか分からない。
私はエメルに守られながらホーリーを打ち込む。
当たると砕けるからダメージは入っていると思うけど、血も出ないからな。
「ムーンもホーリーブレス、お願い!」
(承知)
チャチャやモコに牽制してもらいながら、魔法を撃ち込む。
それでも抵抗して動けるんだから凄い!腕の一本はもぎ取ったけど、まだ生きてる。
ムーンのホーリーブレスはかなりの魔力を使う。魔晶石から魔力を吸いだしても、もう一度撃てるか?
(ムーン、足りなかったら私の魔力を使って!)
私も自分の魔晶石を出して魔力を吸いだす。…あれ?思ったより回復しないな…
攻撃はエメルが受け止めてくれる。チャチャとモコがもう一度ゴーレムを牽制する。
息を合わせた全力のホーリー!10本の指全てから、それを収縮して放つ。
やっとゴーレムは崩れ去った。
天井から緑色の巨大な魔法石が降りてくる。
看破 ダンジョンコア
って、それだけ?これを取るとダンジョンがなくなるとかないのかな?
何となく惹かれて触れた。…何かが流れ込んで来る…身体が熱い!
『ダンジョンの支配権限の一部を手に入れました。現在オートモードです』
「オート続行。魔力譲渡」
私はダンジョンに残存魔力のギリギリまで渡した。
何故か?…なんとなくそうしなければいけない気がしたから。
当然ここは最終階層のようだ。山の高さを考えたらそれでもおかしい高さだけど、ある意味物理法則の通用しない世界だからな。
不思議だ…ダンジョンは、ダンジョンというシステムは、統一されている。
ダンジョンの管理者という者も存在するという事が、漠然と分かった。
「ユーリ…大丈夫か?」
魔力不足でまともに歩けない私を、ムーンが抱っこしてくれる。
「ん…眠い」
抱っこしてもらいながら、ムーンはやっぱりもふもふがいいな…なんて益体もない事を考えてしまった。




