右目
スマホのバッテリーが消えてまた書き直し…ぐすん
シジミーの味噌汁。身に歯応えがあって、目を閉じて飲むと本物のシジミ汁みたいだ。
オルニチンは入っているのだろうか?まあ、そんな事はどうでもいい。
「はぁ…懐かしい味」
「上の世界にもシジミーいるの?」
「魚じゃなくて貝だけどね」
「そうなの…不思議ね」
亜空間を出てびっくり。雪が積もっている。これなら昨日の冒険者もいないかな?
余程低ランクの冒険者じゃない限り雪が積もったら冒険者も休業だ。ただ、雪狼のように雪が降ると活発に活動する魔物もいるから仕事がない訳じゃない。
スコルになったムーンだけど、以前の特性も残っているから、寒さには強い。モコは飛天虎になってから寒さにも強くなったけど、炬燵は大好きみたいだ。
そういう私も炬燵の呪いに囚われている。大きめに作った炬燵には羊毛布団がかかっていて、柔らかいラビットの皮を上掛けにしている。もふもふだ。
モコが縮小化のスキルまで使って炬燵に入り込んでいるから、あんまり入り過ぎるとカサカサになっちゃうよと脅しておいた。
今日は六階層からだ。シジミーは勿論欲しいけど、昨日たくさん捕まえられたからまだあるし、この時期に素足で沼地に入るのも厳しい。
「ぎゃー!」
骸骨だ!前みたいに魚の骨じゃない、人骨だ!心臓付近にある魔石が不気味に輝いていた。
「只のスケルトンだろ?」
チャチャが殴るとスケルトンはバラバラになるけど、倒した事にはなっていないみたいだ。てか、合体してるし!
いきなり再生持ちの魔物が出るの?
鑑定 スケルトン 衝撃を与えるとバラバラになるが、放っておくと組み立てられる。光、聖魔法が弱点
「痛っ…!!」
右目が痛い。何事?
痛みに耐えていると、何かが割れたような感覚がした。封印の一部が破られたような。
「大丈夫か!ユーリ?」
『スキル 鑑定が看破に進化しました』
今更?今までもスキルが進化した事はあったけど、鑑定はかなり使っているスキルだ。
ああ…でも前にテッドがアリエール様から伝言を貰っていたっけ。
「平気…右目の封印の一部が解けて鑑定が看破に進化したんだよ」
「ああ、中二的なアレか」
「断じて違う!…多少のオタクは認めるけど、そこまで病んでないよ」
看破 ダンジョン産スケルトン 通常の攻撃では通じない。骨自体を破壊して魔石を抜くか、光、聖魔法で倒すしかない
お。何か説明が詳しくなったな。
試しに足の骨を狙って骨折させると、立てなくなった。
あばら骨を砕いて魔石を抜くと、消滅した。
「まあ、変な効果が付かなくて良かったな」
まあ、確かに。見ただけで命を奪うようなスキルなんて要らない。
看破は説明が詳しくなる上に、見抜けない物はない。通常の鑑定なら弾かれるような物も、見抜いてしまう。
だからって他人のステータスを覗くような真似はしないけど。個人情報だもんね。
モコの杖の一振でスケルトンは消えていく。
「モコ、魔力は大丈夫?」
「進化してから魔力も精神も上がっているから大丈夫だよ?」
そうやって倒されたスケルトンはたまにしか魔石を残さないけど、別にいい。
「あ、ホーリーを覚えた」
「ええー?ユーリだけじゃなくてモコにも先越されたのか…」
そりゃ、モコはこの前までクイーンキャットだったからね。あっという間に並んだな。聖獣になったから、聖属性の魔法は前以上に得意になったのかな?
蘇生を覚えるのはモコの方が早いかも…
「私もやる」
まあ、チャチャは未だに光魔法だからね。元から持ってた闇魔法は暗黒魔法に進化したけど。
けど、チャチャは魔力量がそんなにない。それは亜空間の広さにも出てる。
「無理しないでいいよ?チャチャは力では勝っているんだから」
まあ、魔晶石も持っているし、大丈夫だとは思うけど。
聖魔法を覚えてからは、私も光魔法は殆ど使ってない。大体全部聖魔法で事足りちゃうし、同じ位の魔力量なら聖魔法を使った方が性能がいいからだ。精々フラッシュとかライト位かな。
うーん、ライト位の光魔法じゃ一撃で倒すまでに至らないんだ。
色々実験しながら進んでいたらチャチャに怒られた。自分で倒したかったんだろう。
「ごめんね?チャチャ」
「…いい。ただユーリは最初怖がっていたから」
そうだけど、何故かスケルトンより弱いゴーストとかの方が怖いんだよね。グールなんかだったら完全に誰かの後ろに隠れちゃう。
ライトの下でなら、骨格標本に見えなくもないから?
階段を見つけた。次は蛙か…ただ、グリーフロッグみたいに大きくない。50センチ程度だ。
「っ!気を付けろ…酸を吐くようだ」
ムーンの手を少し溶かしたようだ。モコがすかさず治してあげてる。
アシッドフロッグ。まあ、素早さはそんなにないから吐き出す酸にさえ気を付ければ大丈夫だろう。
酸は拾っても仕方ないので、実験用に二つだけ拾って後は放置だ。
さて…次は何かな?
8階層は…おお!小豆だ!
枝豆よりも鞘の中に入っている数が多いから、気をつけなきゃならない。
鞘ごと飛んでくる時もあるし。切り裂くと手に入るのはやっぱり小豆。
テングサはあるから羊羮にしてもいいし、あんパンも作れる。甘い物だからシーナさんに日頃のお礼として持って行ってもいい。そうだ。甘い物好きなピヨちゃんにも。
そういえばもうしばらく行ってないな。あの素晴らしきもふもふを堪能させてもらう為にも新しい甘味を持って行こう!
ニヤニヤしながらもちゃんと戦えてるんだよな…ユーリは。まあ、小豆だし、羊羮とかあんパンなんかの事でも考えているんだろうな。
9階層はエテル。何とダンジョンの壁を使って立体機動してる。
根性?そりゃ、ボコボコはしてるけど、木の枝を利用して動くよね?
まあ…何でもいい。皮がドロップアイテムだけど、高くはないだろうな。
皮はごわごわしてるし、食肉にもならないから、罠用の餌にしてた位だ。
今の所テッドはちゃんと戦えてる。
「次はボスだと思うから、その前に休憩しておこうね?」
じゃがいもを螺旋状に切って串に差し、揚げて塩胡椒した屋台なんかで売ってるやつと、定番の肉串。動く前に満腹にするのはまずいからね。
みんなにリフレッシュをかけて、10階層の扉を開けた。
なんだ…オークか。そんなに身構える必要はなかったな。
ドロップアイテムも肉だし。
「ユーリ、これはベーコンにして欲しい」
そういえばそういう保存食関係をしばらく作っていなかった。少ししか残っていないな。旅とダンジョン攻略で色々と忙しかったからな。
11階層はレッドハウンドか…初見の相手だからちょっと戦ってみたけど、そんなに強くはないかな。
夕飯の仕度をするにはいい時間だし、きりのいい所で戻ろう。
朝よりも積もっている。そんな中をイタチに似た魔物が走り抜けていく。
…と思ったら、後ろから雪狐に襲われた、
…あれ…右目が疼く。と、思ったら雪狐が目の前でお座りした。
「ん?テイムしたのか?」
『魅了の魔眼を覚えました。魔眼に統一されます』
「違う!…今度は魅了?!…はあ、暗黒魔法で手に入れたから今更だけど、本当にこの右目は…無駄に高性能だからな」
「はあ?!…それって学校にいたセリカの目と一緒か?」
「いや…スキルだから使おうと思わなければ使えないよ?」
「まあ…人には使うなよ?」
「使わないよ!犯罪だもん」
まあ、私の事だからもふもふを楽しむ為に使う位なのさ。
勿論雪狐はスキルを解除したら襲ってきたから返り討ちにしたけどね。




