ソイズダンジョン
ソイズの町近くのダンジョンは、山の麓にある。
ここのダンジョンは、山を登っていく形になるようだけど、外とは繋がっていない。
ずるっこはできない。一階層から順に進むしかないのだ。
一階層にいたのはミニスライム。普通のが拳大位で、ミニスライムは豆粒位しかない。だから服の間から入り込まれて、皮膚を溶かされてしまう危険がある。だからまず広範囲で焼いておいて、リポップする前に通路を抜ける。
スライムに魔石はないのに、たまに本当に小さな魔石をドロップする。
どう考えても付与位しか魔石の使い道がないので捨て置く。
「モチみたいに大きいのもいいけど、ちっちゃいのも可愛いな」
「こう集団で居られると厄介だが、外では通常のスライムより弱い」
「へえ。ちゃんと外にも居るんだ」
まあ、いない方がおかしいか。中にはダンジョンの固有種なんてのも居そうだけど。
「あ、本当に登りの階段なんだね」
そうしてちゃんと魔法石もあるから転移可能だ。
二階層は、えっ…枝豆?豆を飛ばして攻撃してくる。
飛ばされた豆に当たっても痛い位で済むけど、飛ばされた豆はダンジョンがすぐに回収してしまう。なので豆を出し切る前に倒すと、鞘付きの枝豆が手に入る。たまにそれが大豆になってる時もあるけど、どっちでも嬉しい。
こういう食料が手に入るダンジョンは普通の町の人が居てもおかしくないけど、森を突っ切らないと行けないから、それなりに戦える人じゃないと難しい。
大豆なんかはショッピングで買ってもそんなに高くないけど、増える事がないお金だから塵も積もればという奴だ。
きな粉餅にきな粉飴。美味しいよね。
枝豆も、お酒が飲めなくても普通に食べて美味しいし。
枝豆も、素肌に当たると結構痛いな。自動回復で痛みもすぐに消えちゃうけど、なるべく当たらないようにしよう。
豆乳を作って豆乳鍋もいいよね。そして湯葉も!ふふふ。
(何か、ユーリのああいう顔も見慣れてきたな)
(ユーリがああいう顔する時は邪魔しちゃだめなんだよ?テッド)
テッドの念話は聞こえてなかったけど、何となく内容は分かる。
まあ、美味しい物が食べられるんだからいいじゃん?
ここはそんなに広くないな。聖域近くのダンジョンより狭い位かな?
階段を見つけた。もう少し大豆が欲しい所だけど、枝豆がメインのフロアーでもあるし、また採りに来ればいい。
三階層は、ホブゴブリンだ。ゴブリンよりは強いけど、ここにいる誰も負けるレベルじゃない。
ドロップアイテムが腰布って…要らん!たまに魔石も落とすけど、濁っていて品質が悪いな。まあ、ゴブリンの魔石よりはいいか。
という訳で、さっさと階段を探す。
四階層はウルフ。この辺はお馴染みだね。どこにでもいるし、頭数も多い。ドロップアイテムは安定の皮だ。
ウルフの皮はそんなに高く売れない。洞穴に住んでた時は敷物にしていた位だ。
次は五階層。…!!この魚は、やっぱりシジミー!
「みんな!いっぱい採るよ!」
「は?シジミーって…まさか魚なのか?」
「前に一度だけ罠にかかった事があって、ちゃんとシジミの味だったんだよ。釣れないし、素早いから気合い入れて捕まえて!」
「うー、あんまり濡れたくないけど、ユーリのお願いだからボクも頑張るよ」
フロアー全体が沼地だ。あ!初めて他の冒険者を見つけた。網を使って捕まえている。
よし!負けてられない!細かい目の罠を魔法で作り、捕まえていく。
「ユーリ、これは釣れない魚なのか?」
「分かんない。少なくとも私は釣った事はないよ?」
「む…そうか」
「でもダンジョン内には他の冒険者もいるんだから、危ないから釣りはだめだよ?」
「…そう、だな」
沼地が好きな魚なのかな?なら、米が自生していた沼地にならいるかも?
なんて考え事をしていたら、足に何かへばりついた。
「げ…ヒル?」
鑑定 ヨル 素肌に張り付いて血を吸う虫系魔物
はあ…まあ名前に突っ込み入れても仕方ない。剥がして潰すと血が出た。私の血だな。
?!地震…珍しいな。下の世界に来てから初めてかもしれない。
地震に驚いたのか、シジミーがピチピチ跳ねている。よし!全部採ってやる!
「何なんだ!今の揺れは!…ダンジョンの怒りか?」
冒険者が声を震わせているけど、地震位で大げさな。
それより今はシジミーだよ!
「ユーリ!呑気に食欲に走ってる場合かよ!」
「何言ってるの?精々震度1か2位で…てかテッド、ヒルに血を吸われてるよ?」
「馬鹿!ここには地震なんてないんだよ!」
「は?…でも大した事ないじゃん?」
シジミーが増えたのは嬉しいけど、ヒル…じゃなくてヨルも増えてるみたいだ。
もう…気持ち悪いな!とはいえ、この泥の中をブーツを履いたままでは上手く動けないし。
「ユーリ、素足だから血を吸われるんじゃない?」
「これ位平気だよ。毒も持ってないみたいだし…気持ち悪いけど」
それにしても、血を吸われる度にシジミーが増えてる気がするな…何でかな?
「ユーリ、階段がある」
「でも、シジミー」
「ユーリはこの階層、もう来ない方がいい」
「確かに、この湧き方はおかしいわよね…ほら、ユーリは離れて!」
「エメルまで…分かったよ」
階段を登ると、程なく元の静かな沼地に戻った。…私のせい?でも何で?
「ユーリの魔力は美味しいから?」
「そうだな。血を通して魔力は流れるから、美味しくなるだろう」
「怖い事言わないでよ、ムーン」
「ユーリの魔力は私達眷属のもの」
ううう…チャチャまで。
血が甘かったら糖尿病じゃん!…ないよね?甘い物は好きだけど、健康体を買ったし。
うー、私自身には魔力の味なんて分からないしな…はあ。もう夕方だし、帰ろうかな…シジミーの味噌汁でも作って飲もう。
戻ってから自分の水魔法の水と、テッドのを飲み比べてみた。…どっちも同じ、只の水だ。
テッドのもそれなりに美味しいらしいから、分からない。
モチにも水魔法を使ってもらった。…すごく微妙に違うかも?軟水っぽい。ミネラルウォーター?
なんだ。モチの水の方が美味しいじゃん。




