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海苔と釣り

サロモスダンジョン8階層。芋虫のくせに体も硬い。

ドロップアイテムは、その硬い体のほんの一部。

ただ、これを混ぜ込んで鎧を作れば火耐性を持った鎧が作れる。

なかなか必要量は集まらないけど、チャチャに鎧を作ってあげたかった。

ムーンは種族柄、火には強い。エメルの甲羅は火は通さない。

チャチャは最前線で戦ってくれてるから、優先度は高い。


同じフロアーで戦っている冒険者もいるのだろう。音が聞こえる。

「ここもまた、広いな」

「罠もあるよ!気をつけて」

浅い落とし穴程度だけど、戦いの途中に踏み抜いたら危険だ。


言ってる側からテッドが踏み抜いた。

「これで凄く深かったり、下から槍が出てたりしたら怪我じゃ済まないよ?」

「分かってるよ…」

守られ慣れているから危険察知能力が不足している。それがテッドの弱点でもあるけど、私も考えてみれば守られ慣れている。危険察知能力が高いのは目のおかげもある。これからテッドが独立していくのか、それともこのままパーティーメンバーとしてやっていくのかは分からないけど、死んで欲しくない。


「ダンジョンの魔物は罠にはかからないんだな…」

「それって当然じゃない?」

ダンジョン自体が意思を持って、人を奥へと誘う。魔力を糧にされて死ねば養分にされる。血も同じだろう。

血液には魔力が宿っているらしい。


だとすると、あのダンジョンは私の魔力をかなり吸っているんだな…恐ろしい。

まあ、持ちつ持たれつだよね。米まで出るダンジョンは最高に有難い。


硬いけどミスリルの刃は通るし、動きも遅い。ただ、広過ぎる。

それでもようやく階段を見つけた。


9階層に入る前にみんなで軽くご飯にするつもりだったけど、結構がっつり食べたな。

体を動かすとお腹も空く。まあ、仕方ない。


階層全体が暗い。注意して進もうとした途端、つるりと滑って転んだ。

「海藻…これ!海苔になる海藻だよ!」

ただ、集めていると上から貝に切り刻まれそうになる。

くるくる回りながら飛んできたそれは、大きなホタテだった。

結界で弾いてからとどめを刺すと、幾分縮んだが、上の世界の物より大振りだ。


「バター焼きだな!」

はいはい。海苔も作るから集めてね。

バターは牛乳が簡単に集められるからいつも多めにストックしてある。


「ユーリ…海苔に魔力を吸われている」

「私も…怠いわ」

比較的魔力の少ないエメルとチャチャが辛そうだ。

「今日は戻ろう」

ここの攻略法も考えた方がいいな。普通はマジックポーションを多めに用意して次の階層を目指すんだろうけど、海苔もホタテも欲しいからね。


マジックポーションを作る傍ら、魔晶石も人数分作れた。

自分で魔力を込めないとならないから、使えるにしても数日後かな。

「やっぱすげーな、お前」

テッドは魔晶石に魔力を溜めた。

「ボクはこれ以上は無理かな…」

テッド以外は一回で溜められないみたいだ。

「無理しないで。海苔のせいもあるし」


私は海苔を水洗いしつつ細かく切り、すだれの上に広げる。

「養殖しているのは色付きの海苔か?」

「かもね。黒い海苔はダンジョンで集めた方が早いし」

ドライで水分を飛ばして完成。馴染み深い普通の海苔に仕上がった。


集めたいならば、階段から降りないで網で掬い取ればいい。そうすれば魔力を吸われる事もない。

その場合、ホタテは手に入らないかもしれないけど。


ついでに海苔の佃煮も作った。

「自動回復の速度も速くないか?」

「そうかな?熟練度の違いかも」

ああ…懐かしい味だ。早速ご飯の上に乗せて食べよう。

今日は肉じゃがと海藻ときゅうりの酢の物。モコのリクエストのぶた玉も焼いた。


「9階層は、速攻で階段を探すしかないな」

「私だけで抜けて階段見つけた方が良くない?」

「けど、次はボス部屋だ。魔力不足の状態で挑むのは良くない」

「魔晶石から魔力を吸い上げれば良くない?」

「ユーリならそれで行けそうだな…他の冒険者はどうやってクリアしているのか調べる手もあるけど」

「どの道、明日は大事を取って休みにするつもりだから、それもいいかもね」

「なら俺は、釣りをする」

「いいけど…魔力を回復させる為の休みだからね?」

「釣りに魔力は使わない」


それもそうか。

「なら、私も…」

「エメル?海はだめだよ?まずは魔晶石に魔力を溜める事を考えて」

「…残念。でもユーリの言う通りね」


次の日。ギルドで9階層の事を調べてみた。雪の滑り止めみたいにブーツの上から装着する物があって、針部分が長い。

売ってもいるけど、ギルドで有料で貸し出しもしている。

海苔やホタテを取りに来る事を考えたら買った方がいい。


「これが長ければシャケのエリアも渡れそうね?」

「でも、長いとバランスを取るのが難しいと思う。それにシャケは攻撃してくるから余計に危険だよ」

「そうね?…ね!今日はお買い物でしょう?服を見ない?」


エメルって、自分の服には割と無頓着なのに、私にはお洒落させたがるんだよね。

私は今、成長期なんだから折角買っても冒険に着られない服だと着る機会がなくなる。


だけど、エメルが選んだのはモコの服だった。しかも少し大人っぽい。

「なるほど。多少は年齢を誤魔化せるかもね!身長はどうしようもないけど」

うん。ならチャチャの服も見てみよう。でもチャチャは普段からちょっと大人っぽい服が好きだから、どうなのかな…。


エメルと別れてムーンの所に行った。釣りの道具も随分増えてきた。ムーンが他の釣り人に聞いて集めた物だろう。もう、私よりきっと上手いだろうな。

「凄い。タコがいるね」

「うむ…気味が悪いと言う人もいるが、ユーリの料理では美味しくなるからな」

「私も隣で釣りしてていい?」

「ああ…道具によっても釣れる魚が違うからな。この海岸ではだろうが」


言い方がプロっぽい。釣りの道具は昔に買ったのも含めてムーンが保管している。

竿の振り方も、昔と全然違う。


下の世界でも海岸線は一緒だな。釣れた魚を鳥が狙いに来るのも。

咥え煙草なんてさせたら似合いそうだけど、下の世界には煙草がない。

だから酒場でも空気は綺麗な物だ。お酒臭いけど。


釣果はまあ、そこそこだ。それでも私もムーンも満足だ。

のんびりとした時間て、実はあんまり取れてない気がする。

好奇心のままにみんなを連れ回しているけど、たまには何もしない日も入れるべきだよね。

モコは暇だと割とだらだらしてるけど、他のみんなは働き者だ。頼まなくても食料を調達してくれる。


そのだらだらしているモコをもふもふしながら物作りするのも楽しい。

魔晶石が成功するようになって、私の錬金術の腕も随分上がった気がする。アオさんのお陰で成功率が上がっているのもあるけど、思いもかけず出会ったスキルの管理者。

スキルにレベル表記はないけど、持っているだけじゃスキルはいざという時に役に立たない。

努力は大事。


お店を覗きながら戻ったら、タコが売っていた。

一般的には嫌いな人が多いけど、好きな人もいる。

ムーンは一匹しか釣れてなかったから、これも買って足そうかな。

大タコもあるけど、また食感が違うんだよね。


今日の夕ご飯は何にしようかな…。




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