ダンジョン 2
エメルやチャチャに後ろを守って貰い、モコには掘り出した鉱石をまとめてもらう。
ふう…随分集まった。
モコに集めて貰った鉱石を収納庫にしまい、額の汗を拭う。
不純物がどれだけ含まれているかは分からないけど、充分足りるだろう。
ウルフ相手なら、私の身長でもナイフで戦える。モーモーより小さいからだ。
素早さでは断然ウルフの方が速いけど、動きが見切れる。
『スキル 予見、見切りを覚えました』
っと、びっくりした。どこまでチートなんだか。この右目は。
予見のお陰で、ウルフがどっちに来るかが分かる。そして、見切りのお陰で攻撃を確実に躱す事が出来る。
(ユーリ、いきなり動きが良くなっているわね?何か覚えた?)
(ん。予見と見切りだって)
(…そ、そう…)
ちょっとエメルが引いている。まあ、私自身も引いてる。
首を狙って確実にナイフを振るえるようになったので、かなり余裕をもって戦えるようになった。
5階層に続く階段を見つけたので、とりあえず魔法石に触れた。
(ご飯にしよう?)
お弁当用に多めに作ってあるお好み焼きを出した。ホーンラビットの肉入りだ。
収納庫を覚えてからは手ぶらで歩いているから、こういう時に地面に座る事になってしまっている。
家にある椅子だと高くて持ち運びに不便だ。というか買った時に失敗したと思ったんだよね。明らかに大人用の椅子だ。
だから結局、家の近くの木を切り倒して不格好ながらも身長に合う椅子を作った。テーブルの方は脚を切って短くした。
全部風魔法頼みだけど、私に工作の才能はないな。
土がつくのも嫌だし、木魔法で蔓を出してさっと編んで、簡易座布団を作った。
これは川に仕掛ける罠を作っているから、手慣れたものだ。
(やっぱりユーリの料理は美味しいわね)
(小麦粉は安いからね。多少変動はあるけど、多めに買うようにしてる。野菜もね)
何しろ廃棄分がないと買えないのだ。傷んだ野菜とかじゃなくて、勿論ちゃんと食べられる物が届く。
主には形が悪くて出荷できない物。あとは採れすぎて値崩れを起こさないように廃棄された物だね。
もうキュウリやトマトはたまにしか入っていない。大好きなのに残念だ。
野菜セットの中身は選べない。ただ、100円で5キロ位ランダムに入っているから、買うのも楽しみだ。
手で持って食べるとか、チャチャの仕草は人間みたいだ。ああ。ここでは人族って言うんだっけ。
本当にファンタジーの世界だな。魔法もあるし、獣人族の人に尻尾とか耳をもふもふさせてもらいたいな。
ダンジョンだって、まるでラノベの世界だ。下から1メートル位までが明るくて、上の方は薄暗い。
まあ、私の今の身長は1メートルないから視界は明るいんだけど。
よし!ご飯も終わったから5階層に行こう!次は美味しい物がいいな!
5階層は何故か空が見えて全体的に明るかった。
「凄い、すごーい!」
まるで外にいるみたいだ。しかも迷路状になっていなくて、全体的に植物が生えている。
無警戒に歩き出す私を、チャチャが止めてくれる。
(だめだよユーリ、魔物がいるよ?)
(そうだね。ごめん、モコ、チャチャ)
確かに魔物の気配は感じる。危なかった。意外すぎて忘れる所だった。
明確な気配はないのに、確かに感じる。どこにいるんだろう?
結界魔法で自分達を包み、そろそろと歩き出す。
何か大きな球体の物が飛んできた。
…は?ジャガイモ…じゃなくて、ポテ芋?結界に弾かれて止まってからは、転がったままだ。
ユーリはミスリルのナイフで刺して、中に火魔法を放つ。
嘘?!普通サイズのポテ芋に縮んだ!
今度は1メートル位の棒状の物体が飛んできた。
今度は人参…じゃなくてキャロか。同じ方法で倒すと、やっぱり普通サイズに縮んだ。
(魔化した植物ね。そういうのは、倒せば縮むわよ?)
何て残念なんだ!
こ、今度は何?大きな物が転がってくる。
ワンパターンだけど同じ方法で倒したら、途端に涙が出てきた。
丸葱…つまりはカレーを作れと。
だったらカレールーも出て来なさいよー!




