シタールダンジョンと、鰻
シタールダンジョン12階層。テッドも一緒に探索だ。
雨が降っているのは相変わらず。カエルを倒しながらゴムになる皮を集める。
正直要らないけど、需要が多い。ゴムの代わりなんだから、使われる所はたくさんある。
部屋の隅に若干紫がかったカエルがいる。
「怪しいよね、あれ」
「かなりあからさまだな」
「とりあえず毒だけは気をつけて」
普通のカエルでも毒はあるけど、より毒々しい。
なるべく距離は取るけど、接近戦で戦うチャチャが毒を受けた。
「痺れる」
麻痺毒か。上位種が混じってるのかな?通常フロアでそういう事が起きるのは珍しいけど、ダンジョンだからな。
モチの技、超音波ブレードを飛ばして倒した。ドロップアイテムは同じたけど、丁度遮られていた壁に階段があった。
13階層は、ブレードラビットと出た。角がかなり鋭くて、素早い。
ドロップアイテムは、肉か鋭い角。ただこの角は、煎じると薬になる。カルシウムみたいな物で、ハイポーションに合成すると、時間は多少かかるけど、骨折も治してくれる。
ちゃんと固定すれば2~3日で治る。
その代わり肉はラビットの肉と同じ味で少々残念だ。
私もモコもハイキュアを使えるから骨が折れても即座に治る。
錬金術の練習の為に集めるけど。特にテッドは魔道具ばかりだから、たまには薬も作った方がいい。
14階層は、…鑑定したくない…巨大なカマドウマに見える。実はかなり嫌い。エアーカッターを放つと、青緑の血が出た…嫌過ぎる。
「エメル、私この階は無理」
「いいわよ?私の後ろに隠れてて」
たまに魔石を落とすけど、クリーンをかけてからでないと、触りたくない。
「虫系の魔物は、人族は嫌いな人が多いわね?」
「俺は平気だぞ?この血はちょっと嫌だけど」
とりあえず死体は残らない。それだけでも救われる。
「階段はまだ?」
「お前な…まだ探索始めたばかりだろうが」
目を瞑って歩くのはエメルに掴まっていてもかなり怖いな。
ましてやここはダンジョン。下は結構デコボコしている。
でもここで超感覚を使ったら、見たくない物まで見えてしまう。
私が見るのは地面だけ。みんながちゃんと倒してくれるから、他は見ない。
時間がやけに長く感じる。まだかな…
音だけは聞こえる。聞くと想像しちゃうけど、それ位は耐えなきゃ。
「おー。あったぞ」
眷属達からもほっとしたような感覚を感じたので、ユーリも目を開けた。
「ふぎゃ?!」
まだダンジョンに飲み込まれる前の死体を見てしまった。
気を取り直して15階層。
あれ?また水…でも気配はいっぱいある。黒く細長い生き物で、ヌメヌメしてる。
鑑定 ヌメヌメウナギ ぬめりで攻撃が通じにくい。美味
鰻っ!!
倒すと、切り身かヌメヌメ成分が残った。これはお肌の保湿にいいらしい。化粧水と乳液の合体したような物かな?
化粧をする前に塗ると、お肌のケアをしつつ、化粧ののりを良くしてくれる、人気商品。
どうりで冒険者の数が多い訳だ。みんな網を手に、捕まえる事に必死だ。
胴回りが10センチ位あって、長さが2メートル位あるからみんな苦労しているみたい。槍で刺そうとしても、つるりと滑ってしまう。
木魔法で作った罠を投げて捕まえ、引き上げて頭を重力魔法で潰す。
ヌメヌメはあんまり要らないけど、実験用に幾つか残してあとは売却予定。
それよりは鰻!残るのは10センチ位の切り身だけど、いっぱい採る!
テッドも鑑定したのだろう。目を輝かせて採りまくっている。
雷魔法も効くんだ。岸に上げてモコが使っているし、他の冒険者も使っている人がいる。
なるほど。ここでマジックポーションを使うから、足りなくなるのか。
ヌメヌメだから、物理攻撃はなかなか通らない。盾で潰そうとしてもぬるんと抜けてしまう。なんとも厄介だけど、それでもここの冒険者が多いのは鰻とヌメヌメのせいか。
見た目は大きいけど普通の鰻。でもこれだけヌメヌメが出ると、ヌタウナギの場合もある。
まあ、食感で分かるかな?ヌタウナギの姿はちょっと食欲なくすよね。まあ、美味しいから食べるけど。
大人になったらヌメヌメウナギの液に私もお世話になるのかな?
(ユーリ、階段を探さなくていいのか?)
(今日はいいや。鰻をたくさん集めたいからね)
(うむ。なかなかとどめをさしにくいが、努力する)
スコルの姿ならきっと噛みつき攻撃でやられるだろうけど、ここでは無理だもんね。それに火魔法だと消えちゃうし。
でも元々の得意魔法、氷魔法でやっつけている。
「鰻~!蒲焼き白焼き鰻丼鰻重ひつまぶし!」
楽しみ!
亜空間に戻って、早速調理する。柔らかい食感。普通の鰻の方だな。けど、ヌタウナギの味わいも微妙に感じる。
「鰻重がいいな」
「重箱がないから鰻丼だよ。まあ、味は一緒だから」
味を調節しながら多めに作る。たくさん集めたからね。米もいっぱいあるし。
緑茶がないからハーブティーだけど、お腹いっぱい食べて満足だ。
また鰻たくさん集めよう。




