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最後の実習

あと4ヶ月で学校も終わりだ。コレットはこの町を守る兵士の娘なので移動がない限りはリロルにいる。すぐには進級せずに鍛え直してから騎士を目指すと言っていた。

ミアはトトスでコッコの世話。

イリーナは教会で治癒術師として働きながら光魔法を伸ばしていくそうだ。

ダンジョン一階層に出てくるビックコッコの下位種で、つつかれたりはしても、まだビックコッコよりは大人しく、サイズも鶏と変わらない位だ。

小さい頃はビックコッコにお世話になった。トトスに行ったらクリーンでもかけてあげよう。


学校行事では宿泊実習があって、落ちてきた当初にショッピングで買ったワンポールテントが役に立った。

2歳の頃は建てられなかったテントだけど、今はちゃんと建てられる。一人で建てるのは難しくても、友達もいる。このラビット系の皮が裏打ちされた寝袋も懐かしい。


はぐれのオークを超感覚で見つけたので、晩ご飯用に狩ってきたら、何故かため息をつかれた。

「一応聞くが、一人で怖くなかったか?」

「ええと…きゃー、怖い?」

まあ、私もある程度レベルが上がるまでは怖かったな。でも私もランクCの冒険者だ。クラスの副長としても魔物からみんなを守ってあげないとね?


「まあいいか。クラス中の食料が確保出来たし。だが、魔物への警戒は各自怠らないように」

オークは肉と魔石しか売れる所がないので、魔石は当然倒した私の物だ。


ただし、町周辺の弱い魔物の時は私は手出ししない。モコやテッドも控えている。


はぐれのホブゴブリンが近付いてくる。線引きが難しい魔物かな。

何人かのクラスメイトが武器を手に走っていく。コレットも走り出した。

投擲用に作っておいた鉄のつぶてを出し、様子を見守る。

一人じゃ無理だろうけど、5人もいるし何とかなるかな?


ファイヤーボール…外した。怒って振り回した棍棒につぶてを当て、軸足の下を液状化して、バランスを崩させる。

槍の傷は浅いけど、コレットの剣が右肩の関節に入った。

利き手を取ればあとのとどめは簡単。


ユーリはホブゴブリンの魔石を取り、死体を燃やした。

「俺がとどめを刺したけど、それが出来たのはコレットが腕を使えなくしたからだ。だから魔石はコレットの物だ」

「けど、私は到着が遅れた」

「だったらこの魔石を売ったお金で何か美味しい物でも食べたら?」

「あ、それいい!ユーリ、ありがとう」

「みんなで頑張った成果だよ」


最初の実習を見ていた時よりみんな強くなってる。

冒険者を目指す子もそれなりにいるし、最後の実習が役に立てばいいな。


(そっちは問題ないか?)

(平気。そっちこそ、ちゃんと包丁の使い方教えられた?)

テッドには、調理班の方を見て貰っている。そっちにはエリーゼも入っている。

エリーゼはテッドの言う事なら聞くけど、包丁を持つ手はかなり危なっかしい。

(モコ、薪拾いの方はどう?)

(何とかなってるよ。集まりそう)


索敵は常に使っている。端から見れば何もしてないように見えるけど、団体さんには威圧を使って散らしているし、無理だと判断されるような魔物の時は、オークの時みたいに自分で動く。

というより、一雨来そうだな。天気予報なんて物はないので、空を見て判断するしかないけど、雲が厚くなってる。


「あ、降ってきた!」

モコってば真っ先にテントに引っ込んでいる。

濡れるのが嫌なのは分かるけど、薪を置いて逃げるのはダメだね。


仕方ない。拾ってくるか。

ユーリが薪を集めていると、索敵に大きい反応があった。

げ…何あれ、巨大ナメクジ?

雨が降ると巨大化するって本に書いてあったけど、実際見るのは初めてだな。


ヌメヌメしてて、剣も通りにくい。…まあ、でもナメクジっていったら塩だよね。

ナメクジも嫌いだけど、G程じゃない。殺傷能力がないとはいえ、放っておくのも嫌なので、塩をかけてやっつけた。

凄い。みるみるうちに縮んでいく。

どうして雨が降ると巨大化するとか分からないけど、塩に弱いのは上の世界と一緒なんだね。


雨が上がった。綺麗な虹だ。あ!虹結晶!虹が出ている時だけ現れて、放っておくと消えてしまう。消える前に収納庫に仕舞えば、何故か存在が安定するんだよね。

錬金術にも使えるアイテムだから、そのうち使うかもしれない。

元は水滴から出来てるなんて、不思議。収納庫で時間を止める必要があるから時空魔法の使い手しか集められないから、レアアイテムではあるんだよね。


木の上から視線を感じたので見上げると、あの時の赤い鳥だ!

鑑定は、やっぱり失敗。飛んで行っちゃったから間に合わなかったのかもしれないけど、弾かれたのかもしれない。

朱雀…なのかな?けど、ここから聖域はかなり遠い。

まあ、何かの魔物の色違いだろう。あの鳥も鑑定持ちなのかもしれない。

鑑定の上には看破というスキルがあるらしいけど、私はまだ習得していない。目が関わる物の習得は異常な程スキルが取れるのに。

別に、取れなくても不便はないし、看破を取れても相手が隠したい情報を覗き見するつもりはない。


夜。イリーナと一緒に中番をしていて、魔物の気配を感じた。

ブラックハウンドかな?

「イリーナ、ライトの魔法でテントのある範囲を照らして。ブラックハウンドは灯りには近づかないから」

辺りが照らされると、見張りの生徒が集まってきた。先生もいる。

「ブラックハウンドの群れが近づいています。先生、手伝って下さい」

「な…確かに何かの気配。群れだな。ユーリ、手伝って貰えると助かる。他の皆はもし灯りに近づいてくるようなら応戦してくれ」

「ボクもやります!」

「目が覚めたのか。助かる。だが無理はするな。モコには怪我をした時に治して貰いたい」


素早いけど、そこまで強い魔物じゃない。ただ、闇に紛れる黒さなので注意が必要だ。


光を発する魔法だと散ってしまうから、アースランスを広範囲で発動する。

狙った訳じゃないから大分外したな。けど、半分位にはなったかな?あとは接近戦で!

「ユーリ!一人で突っ込むな!」

先生遅い。まあ、おっさんだからね。


モコも戻れば速いけど、そうはいかない。まあ、私だけでも大丈夫。

地面を揺らしてバランスを崩させて斬り込んでいく。


剣で斬り、蹴り飛ばす。痛っ…!噛まれた。先生達も来た!

数は減っている。あともう少し。


よし…終わった。先生も噛まれたみたいで、モコがキュアで治している。

「ユーリは大丈夫なのか?」

そういえば噛まれたっけ…あ。やっぱり治ってるな。

「私も回復魔法使えますから」

生命力が高いなんて…いや、Gじゃないよ?加護のお陰だもんね。

「そうだな。全く。光魔法に適性がある生徒がこのクラスには四人もいるからな。だからといって暗がりに一人で突っ込むな」

まあ、ちょっと今回は数が多かった。


(ユーリ、ちゃんとボクに守らせて?)

(ん、ごめんね?ちゃんと頼りにしてるから)


これでも昔よりは怪我しなくなった。ビックコッコにつつかれて泣いていた頃とは全く違う。でも、いのちだいじに、だよね?


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