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エーファさんとすき焼き

夏休みも終わり、リロルに戻ってきた。収納庫の中の余分な物を売って、久しぶりに町を散策した。

何気なく教会に立ち寄って、お祈りした。

フッと身体が浮き上がる感覚。目を開けたらテーブルの向かい側にアリエール様がいた。

テーブルの上にはお茶とお煎餅まである。


「事前に言っていれば心構えも出来たのかもしれないけど、言わずにいてごめんなさいね」

「いえ…びっくりはしましたけど、颯太は私の事は覚えてないですよね」

「ユーリが落ちた時にユーリの存在は完璧に消えているから。ただ、それなりに親しかった人だと、ふとした拍子に思い出す事もあるわ」

「今の私は髪の色も目の色も違うし、こんなに小さくなっちゃったし」

「そうね。姿を見ただけでは思い出せないと思うわ。というか、しっかり根を下ろせてない人は、界を越えやすいのよ。あ、ユーリは不安定にはなっていたけど、ちゃんと上の世界に根付いていたわよ?」


あの頃は大変だった。別れ話にお母さんの突然死。そうしたら手の平を返して…。

「本来なら零れる事はなかった魂。でも、元が強いから私の世界にもすっかり馴染んでしまったわね」

「そう…なのかな」

「ふふっ、これまでのユーリの活躍、主神としてとても嬉しいわ」

「活躍?…私、何かしました?」


「シラコメの活用にたくさんの料理を作ってくれたじゃない。広まる事はなくても、それでこの世界にはあることになるのよ。それと、冬場の道路が雪に埋もれないようにしてくれた」

「あー…別に世界の為とかは考えてなかったですけど」

「それでいいのよ。お礼に私の加護をもう一つ付けてあげる。ルーンも喜んでいたわよ?」

加護って二つ付くものなんだ…。

「加護を一人に二つ付けたのは初めてだけど。これからも楽しみに見させてもらうわ。またね!ユーリ」


はっと目を開けると、さっきの教会だ。そして、ステータスには主神アリエールの加護×2になっている。

これは頭に付箋どころかアドバルーンでも付いてそうだ。

いやいや、私見ててもそんなに面白くはないと思うけど?


特に誰かに見られているような視線は感じない。強いていえば眷属達が見てる位。

寮に入るのは明日なので、のんびり買い物をしていたら、テッドから念話が届いた。


(ユーリ、今こっちにエーファ兄さんが来てるんだ。何か旨い物作ってくれよ)

私は料理人じゃないんだけどな…まあ、エーファさんに会うのも久しぶりだし、いいか。


このお屋敷も久しぶりだ。やっぱりコーベットの方が入りやすいな。

「我々も、いいのか?」

「大丈夫だよ。いるのはエーファさんだし」


今回は止められる事なく通された。おお…ますます輝いているね、エーファさん。

…っと、精霊視がオンになってた。エーファさん達に挨拶をして、精霊のミミにも挨拶して、精霊視を切った。


「久しぶり、ユーリちゃん…妖精は?」

「あー…フレイには役目があるので」

「えっと…じゃあ、これは扱える?」

あ、私が作った指輪だ。精霊文字を刻んでくれたのだろう。

まあ、多分?シャンドラ様の加護は消えてないし。

指輪を嵌めると、やっぱり細かい魔力まで扱えそうだ。

「大丈夫そうだね?」

「はい!ありがとうございました」

「時間かかっちゃってごめんね。精霊文字を刻むのはまた違う技術というか、スキルが必要だから」


「いくらお支払いしたらいいですか?」

「いいよ。僕の弓にも付与してもらったし、テッドの武器も改良してもらったんだよね?」

「ああ。先だけミスリルにしてもらったんだけど、どうせならチェーンごとやって欲しかったんだよな」

「テッド?自分で採掘出来る訳じゃないのに、そういう事を言っちゃだめ」


そうだよね。先の金具よりも途中の方が切れないと。魔鉄だから魔力を通さないって事はないけど。

「テッドにはミスリルの作り方教えたよね?ちゃんと出来た?」

「…いや、まだ成功してない」

まあ、あれはコツを掴む必要があるからね。

負けず嫌いなテッドなら出来てると思ったんだけど。

「じゃあ、それが出来たらいいか?お願いしても」

「お祝いに付与もたっぷり付けてあげるよ出来たらね?」

「くっ…絶対やる!」


「何か、申し訳ないね」

「いえ…色々と助かってる所もありますから」

実際そうなのだ。伯爵家と親しいお陰で色々と助かってる。

そして、テッドも全属性持ちだから、学校でも私一人じゃないし。


「じゃあ、作るけど何かリクエストある?」

「ミノタウロスの肉が食べたいな」

「またテッドは…」

うーん、白菜も豆腐もあるし、葱もある。しらたきがないけど、まあ、仕方ない。


「鍋か?」

「色々話しながら作れるし」

コンロの魔道具を出して、テーブルに置く。

「手伝う」

「ありがとう、チャチャ」

まあ、材料切る位だからたいしてやる事もないんだけどね。


「実は、やっと亜空間を覚えたんだよ。まあ、狭いんだけど」

「エーファ兄さん!俺、入りたい!」

私も入れてもらったけど、狭いって程じゃない。マイクさんの亜空間は壁を取り払っても12畳位だった。

エーファさんはルーン様の祝福も貰ってるから、家一軒は建つ位広い。


ベッドや棚などはあるけどまだ家具が少ない。あとは作業スペースが広く取ってある。

「お風呂は入れないのか?」

「そうだね。いずれは欲しいけど、今はたらいがあれば充分かな」

「いいなー、俺も早く覚えたい」

「テッドの年齢で収納庫を覚えているのは僕からすれば驚くレベルだけど」

「だけど、ユーリは亜空間移動も覚えたんだぜ?」

「そ…!そうなんだ」

「亜空間を開いた所がいずれゲートとして使えるので、目立たない要所に開いておくといいですよ?」

「あ…うん。まあ僕は、気長に頑張るよ」


「なあそれより、作るのってすき焼きか?」

「そうだよ。まあ、夏にはちょっと暑いけど、何だったら亜空間開くし」

「すき焼き?それはどういう料理?」

「似た味の料理って食べた事ないからな。ショーユの実にシロップを入れて、生卵に付けながら食べるんだ。まあ、ユーリの料理だし、旨い物なのは確定だな」

「そうだね。そこは疑ってないよ」

アジタケやハナタケっていう、形が舞茸に似てて味は微妙にえのきっぽいキノコも入っている。そして、育て方は椎茸という何とも微妙なキノコだけど、美味しいので亜空間でも育てている。


「不思議な味だし、生の卵を食べるっていう習慣もないから不思議な感じだけど、本当に美味しいね」

勿論うどんも用意してあるので、完璧だ。


「はあ…満足」

「テッドはもう、ユーリちゃんの料理なしじゃいられないんじゃないかな?」

「…うーん。上の世界の料理を作ってくれる奴は他にいないからな」

「ボクはユーリの料理なしじゃいられないよ。まあ、これからもずーっとボクはユーリと一緒だから、本当に幸せ」

「家族で冒険者としてやっていくんだよね?いいね」


「兄さんはエルフの里に行ってきたんだろ?一緒に冒険してくれる女の子はいなかったの?」

「僕はエルフの中ではまだまだ若輩者だからね。それにエルフは種族的に増えにくいから、難しくてね」


長生き種族だからだろうか?

元々この世界は魔物の被害もあるし、乳幼児の死亡率も高い。


テッドが三人兄弟なのは少ない方だ。まあ、異種族間では子供はもっと出来にくくなるみたいだけど。

子供は労働力でもあり、次代を担うから大切にされる。

それもあるから、重婚は禁止されていない。まあ、独占欲もあるし、嫉妬もあるからなかなか上手くは行かないみたいだけど。


颯太はハーレムを作りそうだな。奴隷の今は無理だろうけど、その思い込みがなくなれば、口は上手いからやりそう。

そうして、女の子達に貢がせるんだろうな。

そうならない為に、侯爵がしっかり管理してくれた方が国の為になるな。

時空魔法が上達しなかったら見捨てられるかな?努力嫌いだし、ありそう。

まあ、そうなってももう、私が颯太を面倒見てやらなきゃならない義理はない。



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