表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/226

自称勇者の正体

いつかは書かなければと思っていた話です…でも重すぎる話を書くには文章力が足りなかったみたいです。


いよいよ夏休みだ。テッドは一旦家に戻り、ユーリは田んぼを見て回った。

特に今年から始めた田んぼを見たけど、前年度に米作りをした人達と上手く連携してやれたようで、特に何か質問される事もなかった。

コーベットの米の噂を聞いて、買い付けに来る商人も増えたという。

もう去年の在庫はなく、食料は小麦のみだ。今の所、ダンジョンから米が持ち込まれる事はないそうで、テッドはがっかりしていた。


キースさんに、また来年は作付面積を増やす事になりそうだと言われた。

うん…井戸作りは頑張るよ?

忘れていたけど、不完全な精米の魔道具も改良しないと。

時空魔法もレベルが上がっているから、時間操作を組み込めば、ちゃんとしたのが作れるかもしれない。夏休みの間の課題だな。


「よし!ユーリ、行くぞ!」

「ちょっと待ってよ…トマトとか、まとめ買いしておきたいんだから」

王都でも買えるかもしれないけど、コーベットで買った方が絶対新鮮だし。

ジト目で見てくるけど、トマトがないとテッドが大好きなピザだって、ミートソースだって食べられないんだからね?


それにそんなに焦らなくても亜空間移動は一瞬で出来るんだから。


王都から少し離れた所にゲートを開いた。どこの町でも検問はやっているからだけど、テッドは門の方には進まず、反対側の森に向かって進んだ。

「テッド、どこ行くの?」

(シッ…俺のセンサーがこっちって言ってる)

そういえばテッドは落ち人の位置が分かるんだっけ。

兵士の姿がちらほらと見える。私達は気配隠蔽して進んでいるけど、熟練者に隠せるものではない。


「えっ……」

思わず声が漏れてしまった。

嘘…こんな所にいるわけない。けど、出会った頃のあいつと…似てる。

(ユーリ?あいつだ。確か名前はソータって…おい!ユーリ!)


私は、森の外に向かって走った。似てるだけかもしれない…私だって顔も多少変わったし、髪や目の色も。

可能性は、なくはない。それにあいつなら、無理してでも聖剣を買って勇者を名乗りそうだ。


私の事は分かる訳ない。こんなに小さくなってしまったし、落ちたのは私が先…という事は、あいつの記憶からも私の事は消えているはず。


眷属達は、突然気持ちが乱れた私にどうしていいか分からないみたいだ。

黙って側にいてくれる。それはとてもありがたかった。


しばらくした後にテッドが戻って来た。

「なんか良く分かんない奴だったな。本当に自分は勇者になるって信じてて、奴隷紋の事も分かってないみたいだった」


「ごめん…テッド」

「いいけどさ。知り合いだったりするのか?」

「…元恋人。ろくでなしの人」

「元って事は別れた後に落ちたのか?」

「そう…だね。もしかしたらアリエール様は分かってたから止めたのかな」

「かもな…どのみちユーリの事は覚えてないだろうし、思い出す事もない。だから泣くな」

「泣いてなんて…!」

「とりあえず、亜空間開いてくれよ。訓練終わって戻って来た所に鉢合わせしたくないだろ?」


亜空間を開いたら、エメルがハーブティーを淹れてくれた。

チャチャもクッキーを持ってきてくれて、ムーンは元に戻って、背中に寄り添ってくれる。


少しずつ、昔の事を話した。定職に就かず、たまにしか仕事しない。

いつも夢を見てるような人だった。そういえば、人の話も聞いてなかったな。

今思うと何であんな人と何年も付き合っていたんだろう。

とりあえず暴力は振るわれなかったけど、口だけは上手かったな。


(ねえテッド、どうしたらいいかな?ボク達にはこういう時、どうしたらいいか分からないよ)

(あー。俺だって恋愛経験値は低いし、女の気持ち察するとかそういう高度な技はな…)


「てか、ちゃんと別れた奴なんだろ?何年も前だし、やっぱり今でも好きとかあるのか?」

「ない…よ。解放は望まないって事でいいのかな?」

「いや…もう一回ちゃんと自分の頭で考えてみろ!…って言ってきた。どのみち俺にはまだディスペルは使えないし」

「多分…殆ど働いてないのと一緒でしょ?なら、自分からそこを抜けて自立するなんて考えないと思う」

「ああ…そういう奴か。まあ、亜空間移動覚えても、即戦争になりそうな国はないし」

「努力が嫌になったら逃げ出すかもしれないけどね」


だからってもう、私に颯太の世話をしなきゃならない義理はない。

てか、今から恋人とか、非常に犯罪くさい。

私の性格だから、すぐに忘れる事は無理だけど、今の私には大切な眷属がいる。一人じゃないから大丈夫。


「教会に行った方がいいかな?」

「…とりあえず時間を置いて、また来てみようと思う。…そん時は馬車を使ってもいいし」

「亜空間移動を覚えるとは言わないんだね?」

「そっ…それは、まだ亜空間すら無理だし」


「それは、きっかけみたいなのもあると思うよ?収納庫だってそうだったでしょ?フレイはもう、テッドは覚える熟練度に達しているって見抜いていたよ?」

「あー。俺も欲しいな、界の妖精の加護」

「ルーン様の加護があるんだから贅沢言わないの!」

それにフレイは祝福しか付けられないし、…今でも私に祝福を付けるのは無理なのかな?

本人気にしてるから、こっちからは言えないけどさ。


私にとっては半分転生したようなものだし、今度は気をつける。まあ、今の私には恋愛なんてまだ早いけどね!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あらら。助ける? 助けなくてよくない? 元グズ彼。口だけ勇者。 ユーリちゃん接近禁止魔法とか 編み出さないかしら。 助けたとしてもそれ作ってから。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ