赤い鳥
翌日、早速テッドに自慢した。
(王都、行って来たんだ!すっごい都会だったよ!)
(!な…いつの間に?昨日は休みだったけど、王都まで馬車で半月はかかるはずだろ?)
(ムーン達が護衛の仕事で行ったんだよ。亜空間さえ開けば、眷属だからそのゲートを利用して亜空間移動できるの)
(…チートめ。てことは自称勇者にもすぐに会えるって事か)
(どこにいるかは知らないから会えなかったけど、そうだね…いつでもいいよ。てか、助けられたとして、またお父さんに頼るの?)
(同じ国の貴族だから噂になったら不味いよな…訓練しているみたいだし、冒険者になるのもありじゃないか?)
(勇者志望だから、ラノベとかも読んでいただろうし、いいかもね)
モコが不満そうに見ている。対個人の念話だから、眷属にも聞こえないんだよ。
(まあ、とにかく話はしたいな。なんか話聞いていると解放を望まない気もするし)
(テッドは王都に行った事あるの?)
(ないよ。てか、東京に住んでたから、少し位都会でも驚かないけどな)
(むう…あっそ)
田舎者で悪かったね!
ムーン達はすぐには帰って来ない。帰っていたらおかしいからだけど、その間にあちこちでゲートを開いてくれるらしい。
ダンジョンもまだあるし、なるべく大きな都市で開いてくれる。
この国にはもう一つダンジョンがあるので、そこに行ってくれる事になっている。
楽しみではあるんだけど、毒々ダンジョンみたいなのもあるからな。
結局あれから行ってない。美味しい思いが出来ないから近くの町も寂れてるのかな。
そういえば、ダンジョンの調査に来た子爵はどこまで進んだんだろう。
結構人数はいたみたいだし。でもさすがに私達よりも先に行ってないよね?期間も…ああ、でも兵士の人達もいたし、レベルが高ければそれなりに行くか。
ダンジョンの中で会った事はないけど、あの甲冑ならシャケのエリアも通れそうだし。
もし27階層以上進んでたら、情報が欲しいな。焦る必要はないけど、29階層はどんな美味しい物があるか分かれば目標になる。
ギルド職員のお姉さんに聞いてみたら、11階層までのマップや罠の有無は提示されたらしい。…えええ。11階層?しかも11階層のマップは不完全だ。
テッドとレイシアさん、エメルの話では12階層まで進んだみたいだけど。
まあ、冬になる前には引き上げたし、そんなもん?
私のマップは一応3Dホログラムに反映できるようになっている。
全ての階層を完璧に歩いた訳じゃないから不完全だけど、11階層まででは特に変わった物は見つかっていない。
春になっても戻って来ないって事は、これ以上の調査は打ち切りなのかも。
まあ、マップが完璧に分かったら探索の楽しみがなくなるよね。
私のマップは特に17階層が埋まっていない。エメルの背中に乗って階段を見つけた所で終了している。
私の腰まで水があるし、スキルを使えば踏破できない事はないけど、そこまでする必要も感じていない。
エメルはシャケを採りに17階層には何度か行ってるけど、特に変わった物があったという話は聞かないし、何もないかも。
採掘ポイントが仮にあったとしても、水の中での採掘は難しいし、なさそう。
17階層のお宝はシャケだよね。
学校が終わってからだと、あんまり時間がない。だからいつもの常設依頼をチェックして、足りていない薬草を調べる。
薬草採取する時には大概イリーナが付いてくる。生活費は自分持ちなので、孤児のイリーナは働くしかない。
「いつも思うんだけど、ユーリって薬草の生えてる場所が分かってるみたい」
まあ、マップ検索できるから、本当に分かるんだけどね。
「少ないね。森に行けばあると思うけど、どうする?」
春になって、仕事のできるようになった冒険者達が生えてきたばかりのを採りつくしてしまったのだろうか。
「そうね。お肉になる魔物もいるかもしれないから、注意しながら行ってみようか」
索敵を使ってみると、ウルフかな?それだと皮なら売れるけど…安いんだよね。
「イリーナ、薬草あったよ!私、向こうのウルフを仕留めてくるね」
ウルフを仕留めてふと視線を感じて上を見ると、赤くて綺麗な鳥と目があった。
何となく仕留める気になれなくて見ていても、攻撃はされなかった。
鑑定をしようとしたが、何故か弾かれた。
うそ…てことはかなりの高レベル?迷っているうちに鳥は飛び去ってしまった。
何だったんだろう…殺気も感じられなかった。
まあ、逃げたなら仕方ない。代わりにグリーンアナコンダを遠くで見つけた。かなりの大物で、ウルフが大好物。
だったら誘き寄せてやる!
収納庫に仕舞ったウルフを出して、地面に置いて、木陰に隠れる。更には弱い風魔法で匂いを送る。
のそのそと這ってきたグリーンアナコンダに、使っていた風魔法を鋭くし、風の鎌を首筋に叩きこんだ。
既にウルフを飲み込んでいたので、お腹を裂いて、ぐちゃぐちゃになったウルフを土魔法で穴掘って埋めた。
これだけの大物だ。少し位食べてもかなりの収入が見込まれる。
イリーナは嫌かもしれないけど、ちょっとつまみ食いしよう。
ハーブ塩で揉み、下味をしっかり付けて、串焼きにする。
丁度お腹が空く時間だから、丁度いいよね。
「いい匂いすると思ったら…え。グリーンアナコンダ?」
頭の部分がそのまま残っていたから速攻ばれた。
「大きいし、ちょっと位いいよね?」
「そんな大物…まさか共同受注にするつもり?」
「だって、私達の間のそれがルールでしょ?」
「…ありがとう。本当にユーリは欲がないんだから」
「食欲はあるよ?グリーンアナコンダは美味しいんだから…ほら、焼けた」
イリーナは嬉しそうに串焼きを食べた。
「本当に、美味しい。自分で狩った時位しか食べられないもんね」
人気の肉は高い。一匹仕留めればかなりの量になるけど、それでもあっという間に売れてしまうのだ。
それにイリーナは育ててもらった恩を今、返している所だ。
さっきの赤い鳥も魔物…だよね?不思議な感じはしたけど。
幸せの赤い鳥…違った。青い鳥か。赤い鳥で思い出すのは中古車…ないって。
まあ、強い魔物だったかもしれないけど、いなくなっちゃったし。
可愛いかったな。もふもふしてそうな羽根の色は殆どが赤で、所々オレンジや黄色も見えた。なんていう魔物かな?また見つけたいな。




