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二年生になった。何人か顔ぶれが変わったし、自称ヒロイン様もいなくなったけど、寮のみんなやモコ、テッドは同じクラスだ。

自称テッドのお気に入りのボルド達もいる。礼儀作法の点ではユーリの上を行く。

単に敬語が出来ればいいだけじゃなくて、色々と面倒な決まり事があるみたいだ。


子供とはいえ、伯爵家当主をたこ焼きパーティーなんかに誘ってはいけないらしい。

平民のくせに取り入るような真似をするなとボルドに責められた。


テッドの実力も小学生レベルじゃないので、その辺を理由に今年はテッドに級長になってもらえるように去年のうちから担任と話している。

実力があれば級長をやれるってものでもないし、どのみち校外訓練ではクラスのフォローをするのはどっちもやる事になる。


身分なんて物がある以上、クラスを纏めるのは難しいし、去年末みたいに問題が起こらなければいいのだ。

大商人の娘は偉いのか。爵位は持っていないのに、やっぱり態度が大きい。


まあ、そういう系は今年はテッドに全部押し付けちゃおう。今年は私、副級長だからね。


一般常識の授業に、魔石や魔道具の事も出てきた。先生に魔晶石の事を質問したら、やっぱり宮廷魔導師等が魔法の触媒としたりする物だと教えてくれた。それとは別に、魔宝石なる物もあるらしい。こっちは先生も良く分からないらしく、詳しい話は聞けなかったけど、ちょっと興味がわいた。

ミルドラ辞典で調べてみたら、魔晶石を掛け合わせて希に作られる物で、魔術具や転移装置等に使われるらしい。


転移装置は、使うのに膨大な魔力が必要な物で、特定の場所に転移できるそうだ。

そして、一度使ったら、宮廷魔術師レベルの人が何日もかけて魔力を貯めなおさないとまた使う事が出来ない。

亜空間移動が欲しがられる訳だ。ゲートさえ開いてしまえば、使うのにそんなに魔力は必要ないからね。

習得が難しい魔法だから、界の妖精の加護を持つ落ち人が狙われるんだろう。


テッドもまだ収納庫止まりだし、上位魔法の習得は難しいのだと思う。

フレイの祝福は消えてしまったけど、魔法神様の加護があるから時空断裂まで覚えられたけど、まだ先がありそうだ。

もう一つの重力魔法は、反重力まで覚えた。なかなか楽しい魔法で、宇宙飛行士みたいにふわりと体が浮く。

飛翔を持っているから要らないとも言えるけど、眷属達にかけて遊ばせる事も出来る。


実際、戦いで使うとなると、重力をかけて魔物の動きを阻害する位しか使い道がない。慣性制御をかけて自分を軽くしても、レベルの上がった今では素の状態でも充分速く動ける。

魔法自体を使うのが楽しいから色々使ってるんだけど。


モコは炬燵で丸くなっている。先生に頼まれて校庭の雪を溶かしたら、外での訓練になって、今日は一日中外にいたから、寒かったのだろう。

一応カイロは渡しておいたけど、特にモコは短剣だから、相手も少ない。

「寒くないムーンが羨ましい」


それは私も羨ましいかな。

この炬燵でポカポカになったモコの毛に顔を埋めるのも素敵だけど。


特に寒がりのモコには、私の服と同じように体温を利用できる服を作ってあげた。


今年の冬はいつもよりも快適に過ごせたんじゃないかな?屋根の雪おろしの依頼も減ってきて、小道も普通に歩けるようになった。


こうなってくると、今まで保存食状態の肉しか食べられなかった人々が、新鮮な魔物肉を食べたくなってくる。

でもこの時期は危険でもある。山にいる強めの魔物が餌を求めて麓まで降りてくるからだ。


学校が休みの日、私はギルドの依頼でムーン達と一緒に山の麓に来た。

ギルドに所属してない一般人や低ランクの冒険者達を高レベルの魔物から守る為だ。

山でも滅多に見られない、グレートボアを見付けた。

ビックボアに似てるけど、毛色が濃いし、素早さも高い。

アーマードボアと同じ位の強さだけど、皮は鎧のように硬くなっていない。


重力をかけるけど、元々力が強いからあまり効いていない。

後ろから矢が飛んできた?それを超感覚で見つつ、グレートボアの頭にインパクトキックを叩き込む。

同時に飛んできた矢が刺さり、グレートボアは倒れた。

「おい、ガキ、どけ!」

弓を持った男が解体しようとした私を退ける。

「私が倒したんですけど?」

「俺の毒矢が効いたんだよ!これは俺の獲物だ!」

なんて事!肉に毒矢を使うとか、何考えてるの!


「キュアポイズン…ピュア」

もう死んでるのに毒を治しても意味がない。毒も含めて綺麗にしないと。


違う獲物を狩っていたムーン達が来た。

「どうした?ユーリ」

「獲物を横取りされそうになってる!」

「何…?」

あ、さっきまで強気だった男がムーンを見てびびっている。

「…ちっ、覚えてろ!」

うん。顔は覚えたよ。この時期は稼ぎ時なのは分かるけど、毒は食肉に使っちゃいけないはずだ。

そんな事も分からないなんて、素人かな?


「モツ炒めが食べたい」

「じゃあ、モツだけ取って納品しようか」

ミスリルになって切れ味抜群になった解体ナイフで素早く欲しい所を取る。

私はロース辺りの肉が好きだけど、ダンジョンのアーマードボアの肉も美味しいから、そっちでもいいかな。


ちょっとピリ辛に炒めて、お皿に盛り付ける。二皿に分けても多いので、片方は収納庫に仕舞っておく。

ほぼ大人の歯に生え揃ったので、このぐにぐにした肉もちゃんと噛みきれる。

これ位のピリ辛なら大丈夫になった。一緒に炒めたハーブも美味しい。

「護衛の仕事で、明日王都に向けて旅立つ事になった。亜空間でなら会えるだろうが…」

「こっちは心配ないよ。気をつけて。亜空間は知られない方がいいから」

「そうね。面倒事も嫌だし。でも王都の近くでは亜空間を開くようにするわ」

「うん。お願いね」

王都か…どんな所だろう。このリロル市よりも都会だろうな。


ムーン達はランクBになったから、これからも大物退治とか受けるかもしれないな。私も卒業したら一緒に行動するけど、せっかく春になったのに、当分は一緒にいられないのは淋しいな。


俺とエメルとチャチャ。三人だけでこの商人一行を護衛してこの国の王様がいるという王都に行く事になった。

俺達は主の側にいられればそれだけで満足なのだが、エメルかチャチャが亜空間を開けば主の行動範囲も広がり、喜ぶ。

ずっと人の姿でいる事に問題はないし、もし耐えられないようなら夜の見張りの時にでも亜空間に入ればいい。

そう強い魔物が出るという訳ではないが、商人という者は盗賊に狙われるらしく、春が来て多くの冒険者が山を越えてダンジョンに向かってしまった後らしく、ろくに戦える者が残っていなかったようだ。


学校には危険はないし、モコもいる。俺から見ればモコは戦いという点については問題がある。が、王都に行っている間に主がダンジョンに潜りたいと言わなければ大丈夫だろう。

悔しいが、モコももふもふしているから主が淋しがる事もないだろうし。





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