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冬休み

冬休みはそう長くない。学校側の新入生受け入れ準備の為に休みがあるようなものだ。

そうして、ポート子爵一家は雪が降る前に、引っ越していった。

年が明けたからといって特に行事もない。家庭内でちょっとしたご馳走を食べたりする程度だ。


ユーリ達はお雑煮と伊達巻を作った。白身魚が余っていて良かった。

それと蟹鍋。今年の野菜は全部買った。まあ、学校に行ってる間は仕方ない。

炬燵でのんびりと秋のうちに作っておいた干しいもを食べる。

「何かさー、こうまったりした時間も悪くはないけど、魔物としてダメになっていく気がするねー?」

「モコは元々、魔物らしくない」

「今はみんな、野性味がないよね」

「それは仕方ないわ」


その方がいいんだけどね。宿屋に住んでるみんなは、それ程人との関わり合いがないとはいえ、人じゃないと疑われたら困る。

「何度か護衛依頼を頼まれたのだが、学校に行ってる間なら問題ないか?」

その話は聞いている。今なら亜空間も繋がるし、いいかもしれない。

「色々行けばゲートが開けるからいいかも?私の側にはモコもいるし」

「そうだな。毎回断るのも難しいと考えていた所だ。チャチャがゲートを開けば行動範囲も広がる。長い休みの時以外は出る事にする」


ランクも上がったから、色々出来た方がいいよね。

私は10歳にならないと護衛依頼は受けられないけど、ムーン達と行くなら大丈夫らしい。

私には学校があるからあと一年は無理なんだけどね。


私は常設依頼の狩りと薬草採取で細々とやっていればいいかな。

稼ぎはムーン達が依頼を受けてくれるお陰で充分やっていけてる。

もっと休みを入れてもいいのに真面目過ぎて、私が言わないと休まない位だ。


そうだ。やってみたい事があったんだ。

収納庫から魔鉄を取り出して、整形するイメージを固める。二次元を三次元にするのは少し難しいけど、昨日3Dホログラムで見てたから、細部まで思い出せる。

「それは、誰だ?」

「えへへ。私の好きな人」

「テッド君…じゃないみたい。大人なの?」

「なんでテッドの名前が出てくるの?これは実際にはいない人なんだ」

「上の世界の人?」

「…まあ、そうともいう」

ただし二次元だけど。

うん。我ながら良く出来てる。


「凄いね!ならボク達のも作ってよ!」

モコをじっと見て、イメージを固める。

「ちょっと!ボクこんなヒラヒラの服着てないよ!杖はボクのだけど」

魔女っ子風だ。

「可愛い」

「チャチャもそう思うよね?」


「人族としては…ね?私はシールドトータスの姿で作って欲しいわ」

結局みんな、魔物姿で作った。モチはただのボールになってる。

「ユーリはボク達は人の姿の方がいいの?」

「ううん。もふもふは嬉しいよ?」


「それにしても、整形をする時はイメージの力が大切だけど、ユーリのイメージ力は凄いのね…だから魔法も凄いのね!」

魔法は妄想…じゃなくて、想像力だからね。

だけどロングハンドをイメージして魔法を使っても、触手にしかならないんだよね…似た魔法を覚えると、他の魔法は習得できないのかな?…名前がアレだけど、効果は高いからいいとも言えるんだけど。


もう一つ、やりたい事があったんだ。ちょっと高かったけど、大きめの紙を多めに買って、繋げてそこに脳内地図を書き込んでいく。

図書館で調べた国の大まかな位置を書き込んで、勿論フレイと仕事した所とか、毒々ダンジョンの位置も書き込む。

「あら?前に私が毒を受けて休んでいた島はチェック入れないの?」

「あの時はまだ亜空間覚えてなかったから、ゲートを開いてないから。もし来年、護衛依頼なんかでリロルを離れたら、ゲートを開いた位置を書き込んで欲しいんだ」


「私が飛んで行って、色々な場所にゲートを開いていく?」

「無理はしなくていいよ。ついででいいの」

あとは冒険者として本格的に活動を始めてからでも遅くない。


(もしもしユーリ、魔鉄が足りなくなった。取りに行きたい)

あれ?テッドはコーベットに帰っているはずだよね?使っているうちに距離が伸びたのかな?ここはリロルの宿屋だ。まあ、亜空間に籠っているんだけど。

コーベットの外に出る。冷たい風が吹き付けてくる。

主街道の雪は溶けている。温度が低いからまわりまでは溶かさないけど、人が歩く分には充分だ。


そのまま領主の館を訪ねた。

「あら、ユーリちゃん、いらっしゃい。寒いでしょ?中へどうぞ」

「いえ、すぐに出かけるので」

「行くぞ!ユーリ」

いいけど、念話を電話のように使うのはどうかと思う。

「いいけど…いつでも通じるとは思ってないよね?」

「そっか…山の向こうに行かれてたら、通じなかったか。行ってくるよ、母さん」


そうして私はタクシー代わりでもあるのか。むう…まあ、魔鉄はいくらあってもいいけどさ。

ダンジョン前の開けた場所には夏休みの時はテントがたくさんあったけど、さすがに今は一つもない。

「魔鉄が目的なら、ボクだけで護衛は大丈夫だよ」

「そう。なら私はシャケでも採りに行こうかしら」

「ユーリ、欲しい物はあるか?」

「米だけど、それはムーンには向かないから、今日の所は野菜セットお願いしてもいい?」

じゃがいも、人参、玉葱のセットだ。

「私も行く」

チャチャも行ってくれるなら、当分5階層には行かなくて済むな。


「そんなに沢山、何に使うの?」

「カイロだよ。兵士達に配ってやりたくて」

おお。いい所あるじゃん。確かに寒い中、外で見回りするのはきついよね。

「なら作るの手伝うよ」

カイロの魔道具は弱い熱しか発せないように設計されている。回路にわざと無駄を多くしたのだ。そのお陰で低温やけどの心配もない。


「バイクの方はどんな感じ?」

「鍛冶のスキルは持ってないから、難航してる。冬休みの間はコーベットの鍛冶屋に弟子入りして、鍛冶スキルが取れないか頑張ってる」

へえ。

「全属性魔法とかよりも、そっちの方が良かったんじゃない?」

「まあ…でも憧れるだろ?魔法って。まあ、補助魔法とかはあんまり必要なかったかもしれないけど、転生前には分からなかったし」

「転生前に能力を決めたの?」

「ああ。落ち人とは違うな。その辺は」

「加護も?」

「戦神様と農耕神様からは加護は貰えなかったけどな」


そっか…今は私の方が加護をたくさん貰えてるんだ。

変な感じだな。シャンドラ様からはテッドは注目される事はないだろうし。

でも、変わった武器も使っているし、戦神様からは貰えそうな気もする。


魔鉄をたくさん採掘して、テッドは分離、私は錬成する。

「お前のスライム、こんなの食べて大丈夫なのか?」

「私も最初はびっくりしたよ。でもモチは平気みたい。他のスライムもいたんだけど、食べたのはモチだけだったな」

「メタルだからか?」

「かも?モチは眷属には出来なかったし、従魔のパスも他の子より薄くて感情も分かりにくいんだよ」


「スライムって単細胞生物みたいな物だし、他の魔物とはまた違うんじゃないか?」

「うん…寿命も短いみたいだし。モチはもう5年生きてるけど」

お年寄りには見えないけどね。


「兵士さんて、コーベットの兵士さんだけにあげる訳じゃないんでしょ?」

「差別する訳にはいかないだろ。士気に関わるからな」

そうだよね。領全体で何人いるか知らないけど、錬金術の練習にはいいんじゃないかな。まあ、私も手伝うけど。


特に領主の館を守っている兵士さんにはお世話になったし。




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