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ポッポ

熱々の麺を持ったセリカさんがこちらに歩いてくる。

何かにつまづいたセリカさんがお盆をひっくり返した。

おかしな動きをした時点で一緒にいた部屋のみんなにも結界をかけた。

「痛い!…あなたのせいで給食をこぼしてしまったじゃないの!どうしてくれるのよ!」

「よろけたのが見えたから結界を張ったんだけど?」

「違うわよ!物理障壁にぶつかったのよ!」

いや、結界だけど。


「まずは、片付けないと」

「そうだね」

影からモチを出してやると、喜んでうどんを食べた。

「ありがとう、モチ」

その後でドライとクリーンもかけて、終了。


「ユーリに綺麗にしてもらったのに礼の一つもないのか?」

セリカさんのお付きのメイドさんが頭を下げてくれるけど、本人は私を睨むばかり。

「まあ、どっちが先かなんて水掛け論になるだけだし、嫌な気分になるのはお互いに嫌でしょ?」

というか、いい加減面倒。モコは心配そうに見てくるけど、テッドは見もしない。心底どうでもいいのだろう。


「ぶつかるように障壁をかけられたんですのよ?」

「だから、もうこの話はおしまい。お昼冷めちゃうし」

ミアはもう慣れたのか、構わずお箸を動かしている。


ちょっと間違ったら相手に火傷させるとかも考えないのかな。そうなったとしても私は治せるけど。


というか、折角好意持ってくれてる男の子もそれで引いてる所あるんだから、止めればいいのに…

今更引っ込みがつかないのか、本命がテッドかモコなのか。モコは駄目だよ?私の大切なもふもふなんだから!

テッドはまあ、本人次第だけど、面倒って言ってたし。


男の子達に自分に壁をぶつけられたみたいな話してるけど、あんまり親身になってる人はいないな。夏休み前の反応とはまた違う。


(級長としてちゃんと言った方がいいんじゃないか?)

(ここで責めたら私が悪者にされるだけだよ。それは望ましくない)

(子爵に言ってやろうか?)

(ううん。それはいい。親が出ると拗らせるだけだと思う)

私が気をつけていればいいだけだし、子爵のダンジョン調査の仕事が終わったら転校していくかもしれないし。

それに真実は言えない。だからこのままの方がいいんだ。


最近の週末は、寮のメンバーにモコを加えた5人で依頼を受ける事が多い。

大概常設依頼だけど、今回はそれとポッポ鳥の捕獲依頼も受ける事にした。

というのもペットとして人気のある鳥で、生け捕りが条件だ。テイム能力のない人にこなすのは難しい依頼になるから、ギルド職員がテイマーに直接依頼をお願いしているそうだ。

綺麗な羽根の鳥で、テイムなんてしたら私が手放したくなくなりそうだけど、欲しがっている人がいるんだから我慢しないとね。


「テイムってすごいよね」

「ウチのコッコのインプリンティングとは違うんだろうな」

「え?コッコってインプリンティングで懐くの?」

「卵から孵す時は両親のどっちかが付いてるから、そうなんだと思う。でも私にも結構懐くかな」


「卵生の魔物はテイムのスキルがなくても懐かせられるんだ」

モコの場合は、また別だと思うけどね。ちゃんとテイムしたと思うし。


「今日のポッポ鳥は成鳥だよ。巣がどこにあるかも分からないし」

そしてみんなは常設依頼の方をやって貰わないと。

まあ、失敗してもペナルティはない依頼だけど、可愛い鳥だからもふもふしてみたい。


鳩位の大きさで、羽根は鮮やかな緑色。木に止まっていたら保護色で見つけられないだろうけど、私には3Dホログラムがある。

そういえば、普通のテイムってどうやるんだっけ?

とりあえずパン屑を撒いてみた。


レーダーの範囲内にはいないな。とりあえず他のテイマーも受けてる依頼だから、私じゃなくてもいいけど。

目撃情報ってこの辺だけど、視野を広げてみるか。

久しぶりに使った超感覚。魔力がガンガン減る。でも、見つけた。

途中見かけたコレットに一言言って、見えた場所に行く。


おー。絵で見たより綺麗な鳥だ。よし!蔓の罠!

「よーし。とりあえず名前はポッポね。ご主人様が変わるから」

罠を解いて抱っこする。もふもふだ。


先にギルドに納品に行くと、立派な鳥籠が用意されていた。

「捕まえられたんですね?良かった」

「じゃあ、籠に入って」

大人しく入ったけど、私をじっと見上げる瞳に罪悪感を感じる。

「ごめんなさい…契約は解除するね…いいご主人様だといいね」


鳥の従魔も、いたらいいな…でもご飯の問題もあるし、眷属達にも申し訳ない気がする。


モコ達の所に戻って、とりあえずホーンラビットが二匹狩れた事に安堵する。

「ユーリの方は終わったの?」

「うん。ゴブリンは?」

あ、丁度イリーナがバットで殴った、ら、一撃で逝った。首があらぬ方向に曲がっている。

「今ので3匹目だよ。今日は少ないな」

珍しい。一匹見かけたら30匹はいるという、Gのような魔物なのに。


「同じクラスの子達も見かけたし、先に倒されたのかもしれないな」

早い者勝ちだし、仕方ないよね。

「まだ明るいし、もう少し粘ってみようよ」

「そうだな。もう少し稼ぎたい所だ」


索敵スキルで探すと、双尾鳥が飛んでくるのが見えた。ユーリは投げナイフを放った。首を切られた双尾鳥を拾い、首を落として血抜きする。

「…相変わらずだな。ユーリは」

「それよりミア、後ろにゴブリン!」

ミアの蹴りで、ゴブリンはやられた。

「規定数クリアだね!この双尾鳥は美味しいけど、依頼にまわした方がいいよね」


「焼き鳥も捨てがたいけど、今はチームで動いているからね」

「寮に戻る前に、屋台を覗いて行こう」

「いいね!」


ギルドに行くと、まだポッポの鳥籠があった。もう契約は切ったから何の反応も示さない。

強引に目を逸らして依頼を終わらせた。


「あのポッポ鳥、ユーリが捕まえたの?」

「うん…でもいいんだ。私にはモチもいるし」

「どんな魔物をテイムできるかは、テイマーの器によるそうだ。シールドトータスもテイムしているんだろう?なら、無理はするべきではない。テイムする魔物はきちんと選ぶべきだ」

そうなのか…器って魂のだよね?アリエール様の加護できっと大きくなっているから、みんなを眷属にしていられるのかもしれないな。



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