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暗黒魔法の魅了。禁忌の魔法と呼ばれてて、人に使うのは禁止。見つかったら厳罰に処されるそうだ。

それとは別に、スキルにも魅了という物がある。

こっちは代償を払わなければならないような恐ろしいスキルだ。

どっちも聖魔法で解除出来るけど、そもそも光魔法自体が扱える人が少ないので、その上位に当たる聖魔法のチャームロックを扱える術者は少ない。

極希にダンジョンの宝箱から効果を打ち消す魔道具が出たりすると、権力者が手に入れる。


呪文を覚えたから作れるんだけど、私には絶対必要ないし。

逆に魅了魔法を使ってまで気を引きたい男の子もいない。

上の世界でろくでなしなあの人と付き合って酷い目にあった私は、出来れば恋愛もしたくないし。というか、まだ7歳にもなっていない私には縁遠い魔法だ。

普通はそんな年齢で覚える事はないのかもしれないけど、加護のおかげもあるのかな。


でも、もふもふを魅了したらもふもふし放題に…なんて、私にはムーンもモコもいるから充分なんだけど。

チャチャの毛はもふもふするにはちょっと固いんだよね。

でもチャチャの事も大好きだから、ブラッシングもしてあげるし、みんな平等に接しているつもりだ。

スーパーもふもふのムーンは、飛翔スキルで空を駆ける狼になった。

エメルと一緒に鳥系魔物を狩ってくれる。


スコルになったムーンは馬位大きい。私が大きくなっても乗せてくれそうだ。

あ、私を乗せて飛ぶのは丁重に断った。エメルに乗って飛んだ時に懲りた。

飛翔魔法で自力で飛ぶのが一番いいよね。

モコは空間固定で足場を作って器用に渡るけど、チャチャは体重が重いせいもあってか空中戦は上手くいかない。


聖魔法に特化したクイーンキャットのモコは、もうそろそろ私に呪文の習得が追い付きそうだ。実は密かにモコがディスペルを先に習得するかもしれないと思っている。


魅了だけど、私はもふもふの魅了にかかっているし、従魔のみんなも主の私に魅了されているようなもんじゃないかって気がしている。

つい最近、主として負けてられないなと思ったばかりなのに、みんなが私を甘えさせるからか、威厳も何もあったもんじゃない。


同時に怖くもある。こんなんじゃいつか見限られてしまうんじゃないかって。

好意を疑った事はないけど、それと努力しない事は別物だと思う。


ダンジョン24階で、ムーンが人の姿で戦えるようになりたいと言い出したので、みんなで付いて来た。

人化するとソルレーザーは封じられてしまうけど、ムーンは弱点である心臓を狙って大剣を振るう。

僅かに軌道が逸れて再生してしまうけど、モコの支援魔法で怪力が更にパワーアップしているムーンは、もう一度斬りかかる。

やった!ハイオーガの姿が消えて、皮が残る。

このパターンは初めてだな。集めれば再生能力付きの皮鎧が作れるかもしれない。


私も双剣では短いリーチを補う為に先にダークソードを発動させて、ソルレーザー無しでハイオーガに挑む。

攻撃はエメルが防いでくれる。チャチャは牽制の為にガントレットでハイオーガを殴る。

空を蹴って剣を降り下ろす。

「やった?」

モコ、それはフラグだから言っちゃだめだよ?


やっぱり、ダンジョンの魔物でも出血が多くなると再生のスピードが落ちる。

やっと止めを刺して角を拾う。

「腕を上げたな、ユーリ」

「まだまだだよ。みんなに助けてもらえなかったら、私はやられていたもん」

人型の魔物なので、レイシアさんに習った技も役に立っている。

「まだ24階層は早いね。もう少し23階層で腕を鍛えるよ」

それにソルジャーオークの肉も美味しいし。


モコのリフレッシュが、私を癒してくれる。

星晶の杖の影響もあるのかもしれないけど、モコの聖魔法の使い方は綺麗だ。

魔力の無駄が全くなく、発動される。

「ユーリ?ボクの杖貸そうか?」

「ううん、いい」

魔女っ子仕様の杖は持ち手を選ぶからね。


私だって、魔力操作が精密魔力操作に進化しているんだから、杖が無くても余剰魔力が外に出ないように呪文を使えるはずだ。

魔力視でモコを見ていると、魔石があると思われる心臓の辺りから腕に魔力が行き、そこで属性が付く。

人も腕辺りで属性が付くから一緒だな。でもそれならどうして使える属性とかが出来るんだろう?最初は同じ魔力なのに。

「えへへ。あんまり見られると恥ずかしいな」

わお。美少女の照れ顔は破壊力抜群だ!


ダンジョンの後は、その辺の魔物に魅了をかけてそれをわざと聖魔法で解除した。

ホーンラビットのもふもふも素敵だ。

「ユーリ?魔法の練習だよね?」

「そ、そうだよ?流石にこれ以上は従魔はいらないし…あはは」

「ユーリは絶対にもふもふを楽しんでいたわよね?」

「ん。私達には足りないから、悔しい」


う、ばれてる。

「もふもふじゃなくても、みんな同じ位大好きなんだから」

「その言葉は本当だと思うけど、私達は魅了なんてなくてもユーリの為に色々してあげたいのよ…私も、海産物以外でも役に立ちたいし」

「ユーリ、私も、ユーリが強くなりたいなら、手伝うから」

「うん…あんまり私が弱いと、主として失格かなって、不安になる。本によると、テイマーは従えるだけの強さがないと、従魔は主を見限って反抗したり、離れたりするものだって」


「主は我等が誇れる主人だから、我等から離れる事などない」

「そうだよ!みんなユーリが大好きなんだよ?」

「強さって、剣や魔法の腕前だけじゃないと思うわ。上手く言えないけど、ユーリが持つ強さは、優しさもあるのよ」

「大切にしてくれるから、それに応えたい。それはきっと大切な事」


「嬉しいよ…みんな」

愛しい気持ちが溢れてくる。変な誤解してごめんね。

みんな大切な…私の家族。血の繋がりはないけど、それよりも強固な絆がある。

側にいたモコをぎゅっと抱き締める。


『クイーンキャットのモコが眷属になりました』


…え?


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