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日差しが暖かくなり、やっと春を実感出来るようになった。

建物の外での戦闘訓練もして、いよいよ町の外で魔物を狩る事になった。

護衛の人も付くけど、自力で魔物を一匹狩るのが目的だ。

この辺は殆ど魔物はいない。ゴブリンが強敵になる位だから、いるとすれば虫系の魔物位だ。


「ユーリ、副級長と協力して、クラスの見回りをしてくれ」

「私達は魔物狩らなくてもいいんですか?」

「お前達は充分強いから大丈夫だ」


ユーリはクラスを纏めていたテッドに伝える。

「なんだよ…やっと実戦出来るかと思ったら、俺達は雑用か」

「危険がないように見回るんだから、大切な仕事だよ」

「テッド様、守って下さいまし」


「俺はクラス全部を見なきゃならないんだから、離れてくれ」

絡められた腕から逃れて、逃げるテッドと、追いかけるエリーゼ。

いつもの光景だから、誰も気にしていない。

まあ、国内だけでなく南のローナンとも取り引きのある位大きな商会の娘だから、誰も何とも言わない。

ボルドとも取り敢えず普通に話しているみたいだし、クラスを纏めるのはテッドの方が向いていると思う。


アースアントがいる。キラーアントよりはるかに小さくて、モグラに蟻の甲殻を付けたような奴だ。

群れで出る魔物だから、みんなを呼んで戦ってもらう。

剣が当たらない。魔法も相手を見ないから外す。幸い、たいした攻撃力はないからクラスの子が怪我をする心配はあまりないけど…軌道を外して他の子に当たりそうな魔法はマジックブレイクで打ち消す。

「戦う相手は良く見なきゃだめだよ?」

「でも、気持ち悪いわ」

「でも、こんな弱い魔物ばかりじゃないから、ちゃんと戦わないと、死んじゃうよ?」

「それは、嫌だけど…」


「慣れれば何ともないよ」

初めは私も怖かったし気持ち悪かった。慣れというより、感覚が麻痺したのかな?

動物と違って、躊躇えば殺されて食べられるのは自分だからね。


「あと、魔物を狩れていない人は?」

特に反応はなかった。エリーゼとボルドはアースアントの所に来なかったけど、テッドが見ていただろうし、大丈夫だろう。

「…本当にいいのか?エリーゼ」

「そういう野蛮な事は、従者に任せればいいんですの」

「自分は…先程バッタを倒しました」

「ああ。踏んでいたな。けど、いざとなれば領主代行として、戦闘もこなせなければならない事は覚えていた方がいい」

「勿論です。テッド様」


草影からホーンラビットが出てきたが、敢えてテッドは無視した。

咄嗟の事に動けない二人を一応結界で攻撃を弾き、二人を観察する。

怖がってばかりで魔法さえ使わないエリーゼと、目を瞑って攻撃するボルドにため息をついて、鋼糸で首を跳ねるテッド。

「今後の課題だな」

「…はい」


「私は、守ってもらう立場ですもの。ね?テッド様!」

「いや…俺、お前の護衛じゃないんだけど」

「違いますわ。将来の奥様が傷物になったら大変でしょう?」

「…いや、それ言ってるのお前とその家族だけだろ?」

貴族の結婚は家同士で決める場合も多いけど、俺は家を継ぐ立場にないんだから、関係ないだろうが。てか、女子とか面倒だ。

前世でも結婚はしなかったし、まあ、仕事が忙しくて付き合っても長続きしなかっただけなんだけど、…なんていうか、それに慣れたら別にどうでもよくなった。


「テッド、ユーリが呼んでる」

「ああ。こっちも片付いた。行こう、モコ」

「テッド様!獣混じりと…」

「そういう差別は、現王が廃止しただろう?それとも、モールス家は人族至上主義なのか?それならそうと、父さんに言っておくけど」

「!いえ…領主様に不満はありません!」

どうだかな。ボルドは平気で差別用語使っているし。


「ユーリ!」

学校に戻る道すがら、ルームメイト達が集まってきた。

「みんな平気?」

「問題ない。ゴブリンが来たが、私達だけで対処した」

「イリーナも凄かったんだぞ?バットで殴ったら、即死だったな」

「うん…それ位できないと、採取のお仕事もできないから」

コレットは普通に強いし、ミアは身体強化を使わなくても素早い。

イリーナもこの辺なら敵なしだろうから、心配はしていない。


「コレットは騎士を目指しているの?」

「そうだな。女性にしかできない事も多いから、

女性騎士も増えてきているし、剣の腕を鍛える事は好きだからな」

「いいなー。あたしなんて、鍛えてもコッコの世話をやるしかないし」

「いいじゃん。コッコはもふもふだよ?可愛いし、卵も産んでくれる」


「もふもふで喜ぶのは、ユーリ位だろ!」

「そんな事ないよ!もふもふは正義なの!イリーナは何をしたいとか決めてる?」

「特にはないかな。そもそも、孤児の私でも受け入れてくれる所じゃないと」

「それなら、ウチに来ないか?イリーナは光魔法を扱えるんだから、大歓迎だよ!」

「そうね。クリーンでコッコ達を綺麗にしてあげられるし、いいかも」


「光魔法の用途を家畜にするなど。教会やギルドの治療施設で働いた方が人々の役に立つのではないか?」

「うん…魔力にも限界があるから、少し迷っているの。私、そんなにレベルは高くないと思うし、魔力量もそんなにないと思うから…それにまだ、クリーンとヒールしか使えないから」

それでも光魔法に適性のある人は少ないんだから、いいんじゃないかな?イリーナに足りないのは、自信かな。


一応自己申告で倒した魔物を伝えた。聞いていると、アースアントも倒せてなかった子がいた。見逃したかな。

先生は気にする風もなく、次は頑張るようにと皆に言った。

「ユーリ、初回で九割の生徒が魔物を狩れたのはいい感じだ。次も頼むな」


「でも先生、今回はアースアントがいたから良かったんだと思いますけど?」

「いや、まだ気温も低いから、魔物も活発に活動していないだけだ。それに大多数の生徒がまだ魔物を怖がっている。生きる為には、身を守る術を覚えていかなければな」


暖かくなってきたらこの辺にどれ位の魔物が出るか分からない。

「今の時点だと探すより、ユーリ達にも守ってもらわなければならないかもしれないな。まあ、ユーリなら大丈夫だろう」

「そう…ですかね?」

「ギルドで聞いたが、お父さんはランクは低いが、有名な冒険者らしいじゃないか。そのお父さんの教えがいいんだろうな。今年は優秀な子が多いから楽でいいな」

ムーンが優秀なのは認める。私もムーンを見習って強くなろう。


モチには勝てるけど、従える魔物より自分の方が強くないとテイマーとしては失格だ。ムーン達が私を倒して契約を切ろうとするとは思えないけど、守られてばかりはいいことじゃないから、頑張ろう。







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