モコの言いたい事
相変わらず暑い。この世界は夏が長いのかな?というか、1年が365日とも限らないけど。
モコは氷を張った壺に張り付いている。あー。エアコン欲しい。
風魔法の風では、魔力が尽きたら終わりだ。
お風呂用の部屋の方が涼しいので、肝心の風呂桶作りはちょっと中断。
「に…にゃ?」
(ユーリ?)
(モコ!念話を覚えたの?)
(やったにゃー!ユーリ、毛刈りして!)
(え?…刈っちゃっていいの?)
(必要なら生やせるし、ボクはずっとそれが言いたかったんだ!)
そうだったのか。
ユーリは早速ショッピングで毛刈りハサミを買った。
ちょっと錆びていたので、錬成で錆びを取って、シェービングで切れ味を上げた。
大量のもふもふに、冬への期待が高まる。
(毛生えはいつでも使えるの?)
(魔力を使うから、そう頻繁には嫌だよ?ボクは魔力が少ないから)
まあ、それは大体分かるよ。レベルはたいして変わらないのに、私の方は加護のおかげもあって、かなり使える。
それがなくてもモコの魔力は少ない気がするけどね。
チャチャは、すっかり家族の一員になっている。私の方も愛着が湧いたから、大人になったら解放してあげる約束は、…まあ、チャチャがどうしても望むなら。
モコと違って、チャチャは働き者だ。マジックバッグはまだ作れないけど、二足歩行出来るチャチャは、バッグを要求してきたので、作ってあげたら、木の実やキノコなどを取ってきてくれるようになった。
凄く嬉しい。もう手放せない位に。
ただ、獲物を狩ってきても私に料理を要求する姿は、もう野生が感じられない。
暑いせいか、最近だらけ過ぎていると思う。
特に使うマジックポーションの材料になるリース草は普通にも生えているけど、畑の片隅で栽培もしている。
今日はポーション作りするか。
川の水でも出来るけど、水魔法の水の方が効果が高い。
トロトロに煮込んで、冷めてから瓶に移す。
(どうしたの?チャチャ、ポーション作りが珍しい?)
あー。鍋で煮込んでたから、何か料理と勘違いしたようだ。
(お腹空いた?串焼きならあるよ)
チャチャに出してやると、モコも来た。
(毛刈りで少し涼しくなったから、狩りに行こうよ!)
エメルが帰ってくればダンジョンに行ってモーモーと戦いたいな。牛肉食べたい。
(ね、ビッグコッコを狩りに行こうよ!)
チャチャの方がレベルが低いのに強いのは、種族の差かな?チャチャの爪攻撃は力強い。
モコも余裕だな。私も頑張ろう!
動くと余計暑いけど、ここに来れば食べ物に困る事はない。
チャチャが体が大きい分食べるから、その分も多めに集めよう。何よりここで採れた肉は解体が要らないから楽だ。
欲を言えば、これだけ大きな鶏なんだから、もっと大振りな肉が欲しい。
それに卵ばかり余ってしまう。茹でたり焼いたりすればそれなりに消費出来るけど、肉の方が嬉しいよね。
家に戻ると、スラミーともう一匹のスライムが待っていた。
契約している訳じゃないのに、何故か居着いてしまった。
スラミーは経験値シェアでレベルは上がっているけど、強くなった様子はない。ただ、新しく分裂したスライムよりも皮のなめし速度が早いようだ。
そう考えるとやっぱり契約した方がいいのかなとも思うけど、代表のスラミーだけでいいかな。スラミーの教育の賜物なのか、こちらの言いたい事は、伝わっているみたいだ。
親子丼を作る傍らで、チャチャが集めてきてくれたリコッタというリンゴを酸っぱくしたような果物でジャムを作ってみた。
砂糖少なめで少し酸味が残っているけど、美味しく出来たと思う。
これは明日チャチャに場所を聞いてもっと採りに行きたいな。
水を含ませて気化熱で冷やすのは、暑過ぎるとあんまり効かない。
無いよりはましなので、水を含ませてから、パリッと凍らせている。
アイスは買えないから、というか廃棄されて溶けたアイスなんて食べたくない。
それならと、かき氷を作ろうと思った。
シロップは買えなかったけど、何故か練乳は買えた。この世界にもある物なのだろう。
氷を砕くのは…というか、細かい氷は現状では出せそうもない。
風魔法で削るようにやったけど、ふわふわのかき氷は無理かな。
それでもお手製のジャムと練乳をかけて、モコとチャチャにもあげた。
あはは。二人とも頭がキーンってなってる。
「二人とも、ゆっくり食べるんだよ」
(早く言ってよ!)
(ごめんごめん。でもちょっと面白かった)
(ひどいや。ユーリ)
(でも、冷たくて美味しいでしょ?)
(そーだね)
まだちょっと不機嫌だ。食べ終わったので、羽根を糸できつく縛った物を出して、モコの目の前で振ってやると、すぐに乗ってくる。
「あはは!もうご機嫌だね!」
(こ、これは本能に従った行動だもん!)
悔しいけどノリノリなんだね。




