海へ
醤油の実は何と、海水で育つらしい。そして、育てる場所も海岸が近い所でないと駄目だとか、予想外過ぎる。
何にせよ種は貰ったので、早速亜空間移動して、種を蒔いた。
(久しぶりの海!ユーリ、行ってきていい?)
(いいよ。海水で育てる物もあるし。それに亜空間移動を覚えたんだから、いつでも移動出来るしね)
私は、海岸にアサリを採る為の罠を仕掛けて、テングサを採る事にした。
(チャチャ達はどうする?)
(クリを採ってくる)
(俺は久しぶりに釣りをしたいな)
(ボクはこの辺で遊んでいるよ)
岩場に生えるテングサを注意しながら採り、そういえば、と思い出して身体にぴったりと結界を纏わせる。うーん。やっぱりズボンが滑り落ちてしまう。
なんとなく恥ずかしいから、ワンピースを出して着た。
(ユーリ?何をするの?)
(ちょっと海に潜ってくる。結界があるから大丈夫だよ)
ユーリは槍を手に、重力魔法と呼吸補助の魔法を使って海に入って行った。
上の世界にいた時も海なし県に住んでいたから海の中は未知の世界だ。ましてやこの世界では魚さえも魔物だ。
却って向こうから向かってきてくれるから、私は槍で突き刺すだけでいい。
色とりどりの海藻や、ワカメもナイフで切って収納庫に入れる。
おー。クリという名前のウニがいる。確かに見た目は似てるけど、それでいいのかクリ。
海底を泳ぐというか、歩いて散策する。最初は考えなしに襲ってきた魚の魔物も、小さいものはこちらを警戒しだした。
それよりも、蟹はどこ?海老でもいいんだけどなー?
いた!岩に擬態しているブラウンガザミを見つけた。
殻は硬いので、力任せに槍で突くと意外とあっさり手に入れられた。
そして、三メートル越えの巨大イセビーも見つけた。
巨大なハサミで攻撃してきて動きも素早い!麻痺の魔法も効きにくいし、結構苦戦した。
最後は槍の先に目一杯伸ばしたダークソードで突き刺し、やっと倒した。
海の中は使える魔法が限られてくるから難しいね。
(ユーリ?もしかして海の中にいるの?)
(うん。魔法の重ねがけも慣れてきた)
(その様子なら大丈夫そうね?でも海は危険だから無理しないで、あんまり沖に出ないでね)
(大丈夫。無理はしない)
ふふふ。蟹も大漁だ。さっき捕まえたタコは、たこ焼きにしたいな。
(ユーリ、そろそろお腹空いた)
うん。お昼はとっくに過ぎているね。そしてムーンの釣果も気になる。
岸に上がり、クリーンとドライをワンピースにかける。
(見て、ユーリ)
モコが自前の罠でアサリをたくさん捕まえていた。
(凄い!嬉しいよ、モコ)
(暇だったし、ユーリが喜ぶと思って)
いっぱいもふもふしていたら、ムーンも木のバケツに入った魚を見せてくれた。
「ありがとう、ムーン」
毒の魚もあるけど、その部分を取れば問題ない。
ムーンもスコルに戻ったって事は、もふもふして欲しいんだな?
(よーし、いっぱいもふもふだよ!)
パスタがにゅーって出てくるのも作ってもらったので、ようやくパスタも試せる。因みにうどんにも応用できるようにした。というか、作ってくれた職人さんは、うどんを作る機械だと思っているだろう。
出てくる先を交換すればいいだけなので、切れ目が入ったペンネ風のマカロニも作れる。
前にテレビで見た事あったけど、マカロニってたくさん種類があるんだよね。
今度、グラタンを作ろう。
海岸で焼き魚を食べて、お昼ご飯にする。
「ね、ユーリ。前に作ってくれたモチ?も焼くと美味しいんじゃないかな」
うーん。モチじゃ、従魔のモチになっちゃう。発想力のない私が名付けたのが悪いんだけど、餅には違いないからな。
呼ばれたと勘違いしたモチが、影の中で自己主張している。
(おいで、モチ)
出してやると、私の残した魚の骨を食べた。
「骨ならボクが食べるのに」
「モチが可哀想。ユーリが食べられない所は、モチにあげるべき」
「身をあげないのが可哀想じゃなくて?」
「スライムはそういう物」
そうかもだけど、モチも私にとってはペットみたいなものだから、家族だ。
器に水魔法の水を入れると、モチは喜んで飲んだ。
普通の食事より、水が一番喜んでいる気がする。
「ムーンはまだ釣りする?」
「ユーリがまた海に行くなら」
「なら、私は山菜採ってくる」
「ボクもチャチャと一緒に行こうかな」
私も上着を脱いで、ワンピースになる。どうせなら、服の上から纏うように結界を張りたいんだけど、上手くいかないんだよね。
結界は、魔力が続く限りは強力な鎧だけど、下が穿けないのが唯一の弱点だ。
まあ、水中に入る時限定だからいいんだけどさ。
結界魔法でこんな事をするなんて私位かも。少なくとも男の人は無理かもね。下が穿けないんじゃ。何しろ靴さえ穿けないんだから。
魔法は妄想!ルーン様にも褒められた?し。面白いって褒め言葉だよね?
さて!また蟹を探そう!




