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稲刈り

今日は稲刈りだ。ダンジョンはやっぱり17階層で止まってしまった。

一応結界を張って行くとか色々考えたけど、エメルに乗って越えるのは、私の事を公表しないとならない為、見送られた。


「僕は空間固定を持っているけど、慣れないと歩かせるのは不安だからね」

確かに、ちょっと力を込めただけで抜けるから。それに、術者以外に歩かせるのは維持も不安だ。私も自分以外は乗せた事ないし。


稲は穂を垂れて、風に揺れている。

「じゃあテッド、私の稲刈りの仕方を良く見ててね?」

手作りの鎌を渡した。

「はあ…やんなきゃだめか?」

「テッドが受けてる依頼でしょ?私が農家の人に教えたら意味ないじゃん」

教えたけど、かなり危なっかしい。

「もしかして、草刈りとかもやった事ないの?」

「前世でもないよ」

うーん。先ずは柔らかい草で練習した方がいいな。怪我しても治せるとはいえ、痛いのは嫌だろうし。


「魔法でやったらだめなのか?」

「農家の人が風魔法持ってなかったらどうするの?」

「テッド、元はといえばあなたが米を作りたいから始めた事なんだから」

「けど、農家の人なら刈り方は知ってるだろ?」

「あ、それもそうか。でも苦労して収穫した方が新米も美味しく食べられるよ?」


「新米…!」

実はダンジョン産の米と味は変わらないけど、テッドは俄然やる気になったみたいだし、いいことだよね。


そのうちシーナさんやレイシアさんもやりたいと言い出して、レイシアさんが一番上手になってしまったのは、お約束みたいなものだ。


「刈ったら、こんな風に干すんだけど、ドライでも水分は抜けるよ」

「なるほどな。ダンジョンの米は?」

「ドロップアイテムになった時には既に乾燥した状態。で、来年用の種籾を選別するのは、こんな感じの、なるべく粒が大きいのを選ぶんだよ」


テッドは、メモを取りながら聞いている。感心感心。

「藁から外すのはこれね。これは脱穀っていう作業だよ」

セットしてハンドルを回すとプチプチと音を立てて離れる。


籾摺りと精米に関しては魔法だけど、魔道具を作って欲しいと頼まれた。

「うーん。まあ、何とかなると思う」

色々作っているうちに、私も魔道具作りに慣れたから、多分大丈夫。

でもテッドも、自分で籾摺りと、精米を魔法で出来るように魔法で試行錯誤していた。


「結構難しいな」

「テッドは上の世界でも精米してあるお米しか見たことないんじゃないの?」

「袋に入っているのしか見たことないな」

「取り敢えず籾から玄米には出来てるから、表面を削るイメージだよ」


「テッド…そんなに削って吟醸酒でも作るの?」

「え?…うわ!勿体ない」

「あとは慣れるしかないんじゃないかな?」

私も初めの頃は結構失敗した。

まあ、地道にゴリゴリと手作業でやってもいいんだけど、自分のぶんだけでも結構大変だし、テッドじゃ続かない気がする。


「炊飯器は、出来たのよね?」

「あ、作りましたよ?籾摺りと精米は別々の魔道具になるかもしれませんけど」

糠も使えるから、後で紙にまとめて書いて渡してもいいかな。


「でも、これだけ手間がかかっても、みんな食べれば産業として定着するかもしれないわね」

「そうなれば私としても嬉しいですけど」

パンも麺類も好きだけど、毎日は嫌だな。


「それが出来たら、そろそろ家に戻るわね」

「私も図書館に行きたいので、一緒に山は越えましょう!」

「そうね。学校の手続きもあるし、そのままコーベットにいたら?」

…あ。全然考えてなかった。

「私達は国への報告があるからしばらくいなくなるけど、テッドは置いていくつもりだし」

「えー!俺も王都に行きたい!それに、落ち人の様子も知りたいし」


「そこは母さんに任せて。それに、コーベットに作った田んぼの事もあるし。家令のキースに後は任せるから大丈夫よ」

キースさんは、先代の頃から仕えていたというナイスミドルなおじ様だ。


てことは、アルフレッドさんも行くのかな?


「さすがに年明けまでには戻れると思うけど、テッドもユーリちゃんもモコちゃんも、年が明けたら学校よ?色々準備もあるし」

「ボクも?うわ…勉強は苦手だけど、大丈夫かな?」


「そうね。自分の名前が書けて、字が読めれば最初は大丈夫よ」

「最初は…か」

「それにモコちゃんはある程度剣も扱えるし、何より魔法も使えるから問題ないわ!」


一緒に行けるのは嬉しいけど、魔物だとばれたら大変だな。

「モコ、しっかりユーリを守って」

「勿論!任せてよ!」

学校の中には危険はないんじゃ?


「新米最高!」

季節的には早いが、豚汁も作った。


「あーあ。結局俺はオーク止まりだったな」

それでも、モーモー相手に苦戦していた頃から比べたら格段の進歩だ。

「まあ、魔鉄も手に入れたし、バイク作りも一歩前進かな」

「ガソリンはどうするの?」

「そこは…魔法で何とか」

「魔法で移動するなら、バイクは要らなくない?」

「うるさいな!バイクは男のロマンなんだ!」

よく分からないけど、移動手段てだけじゃないみたいだ。


あれかな?私は車は単なる移動手段としか考えてなかったけど、ピカピカに磨きあげて、エンジンがどうのとか言ってた近所のおじさんみたいなものか。

「また訳分からない事を言ってるのね、この子は。車輪が二つで馬にもひかせない乗り物なんて、作れるはずないじゃない」

「作る!」


シーナさんはため息ついているけど、好きにさせてるみたいだ。

上の世界の乗り物だと知って、奇妙な行動にも納得がいったのだろう。


知ってる私としては、動くはずないと思っているけど。





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