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劣等人の魔剣使い スキルボードを駆使して最強に至る(WEB連載版)  作者: 萩鵜アキ
4章 神代戦争、再び

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オニのオカシラ

 鬼のカシラは見た。


 ――ニンゲン二人の戦闘を。

 ――その二人のうち片方の小僧の、神もかくやという快進撃を。


『ええい、かかれかかれ!』


 鬼は従えるものたちを、一斉に人間にけしかける。

 いま飛びかかったのは、村二番の力持ちだ。彼ならばひとたび組み付けば、胴体が離ればなれになるまで決して離れないだろう。


『やったか!?』


 カシラは快哉を上げる。しかし、力持ちの鬼は組み付く間もなく、脳天に矢を受け絶命した。

 恐るべき早業。鬼のカシラにすら、小僧が弓を構えて放つ姿が残像でしか捉えられなかった。


『誰か、なんとか出来ぬのか!?』


 カシラの問いに、しかし部下は誰一人答えられない。あの小僧を止める術が、まるで思い浮かばないのだ。

 ニンゲンは鬼よりも圧倒的に格下の存在だ。非常に狩り易い手合いにも拘わらず、鬼たちでは思いも付かない優れた道具をたくさん持っている。


 狩り易く、必ず宝を持っている。発見したならば、狩らない手はない生物だ。

 だから集落からニンゲンの姿が見えた時、鬼の一部がニンゲンに襲いかかったのは自然なことだった。


 しかしまさか、そのニンゲンにここまで攻め入られるとは、誰も予想だにしていなかった。

 この場所は、居を構えるには絶好の場所だった。なぜならばこの近くにある木の枝に、小さく可愛い鳥たちが羽休めに集まってくるからだ。


 この小鳥たちを密かに愛でるのが、オーガ一族の生きがいだった。


『ここを渡せば、小鳥ちゃんたちを愛でられなくなるぞッ!!』

『『『おうっ!!』』』


『お前たち、小鳥ちゃんたちが愛でられなくても良いのか!?』

『『『嫌ですっ!!』』』


『ならば死守せよ! オーガなら、命を賭けろ野郎どもッッ!!』

『『『はッッ!!』』』


『ニンゲンを殺せ!』

『『『殺せ! 殺せ! 殺せ!』』』


 そこには、決して負けられない戦いがあった。小鳥を愛でるために、絶対に引くことは許されない。しかし、意地を張れば張るほど被害が拡大していった。

 カシラは苦肉の策をひねり出す。


『――小娘だ!!』


 小僧に比べ、小娘の身体能力は劣っている。

 おまけに――涙を流し続けているではないかッ!!


『あの小娘は一族の腕力に心底怯えているに違いない!』


 あれならば皆で囲めば容易く組み伏せられよう。


『小娘を優先して片付けろ!!』

『出来ません!』

『何故だ!?』

『全然、接近出来んのです!!』


 見れば、確かに部下たちは必死に小娘に攻撃を加えている。

 しかし小娘は鬼たちの攻撃を――宙空を蹴りながら、ひらりひらりと縦横無尽に回避していた。


『なん、だ、あれは……』


 それは、初めて見る挙動だった。あのような移動が、人間に可能なはずがない。カシラが呆けているあいだも、小娘は宙空を飛び回り、小僧は部下を切り刻んでいく。


 ――このままでは全滅だ。


(何故、こうなったのだ……)


 原因は二つある。


 一つは興味本位でニンゲンに手を出してしまったこと。

 もう一つは、反撃にあった時に徹底抗戦してしまったことだ。


 もしあのとき、ニンゲンに手を出していなければ。あるいは徹底抗戦せずに逃げていれば……。慚愧の念に顔が歪む。しかし今更後悔しても遅い。

 出来ることはもはや、命を賭す覚悟を固めるのみ。


『……ワシが出る』

『カシラが動いた!? ならばこの我も動かねばなるまいッ!』

『ヒャッハー! 頭が出ればニンゲンは終わりだ!』

『オレ、この戦いが終わったら一日中小鳥ちゃんを見守るんだッ!』


 皆の士気が、頭の参戦で一気に上がった。


『ガァァァァ!!』


 気合いの声とともに、カシラは巨大な丸太を放り投げた。

 噴石もかくやという速度で、丸太が小僧に迫る。

 これを受け止めるのは、鬼にすら不可能だ。かといって躱せるような速度ではない。


『やったか!』


 確信した、次の瞬間だった。

 小僧が目にもとまらぬ速度で剣を振るい、


 ――スコーン。


 巨大な丸太があらぬ方向に打ち返されてしまったではないか!

 その丸太が、小鳥たちの住処に突っ込み――爆散。


 ――チチチチチ。


 難を逃れた小鳥たちが、その場から一斉に逃げ出した。

 見るも無惨な姿になった止まり木が後に残った。ここにはもう、小鳥たちは訪れることはあるまい……。


『ぐぬぬ……。小僧め、よくもやりおったなぁぁぁ!!』

『えっ、今のはカシラが悪いんじゃ――』

『ああん!?』

『い、いえ、なんでもありません』


 側近の鋭い突っ込みを、凄んで黙らせる。

 今のは自分が悪いのではない。丸太を受けずにたたき返したのが悪いのだ!

 カシラは全身に怒りを漲らせ、小僧へと近づいていく。


『よくもやってくれたな小僧、そして小娘』

「ん? なんか話しかけられてる気がする」

「とと、トール。そいつはエリート・オーガではないか!? Aランクに近い魔物だぞ!」

「そうなんだ?」

「今すぐ逃げるのだ!!」


 カシラにニンゲンの言葉はわからないが、動揺した雰囲気は感じた。


(くっくっく。ワシの姿を見て怯えておるわ……!)


 カシラは唇を曲げながら、拳に力を込め、高らかに言い放つ。


『刮目せよ、ワシの力を! 後悔せよ、小鳥ちゃんたちの住処を破壊したことを! そして死――』

「よいしょっと」

『あへっ?』


 小僧の残像が見えた気がした。

 次の瞬間、視界が真横にずれた。


『ことり……ちゃん……どうか……ぶじで……』


 視界はみるみる地面に落下近づき、そしてカシラの意識は闇の底へと消えていったのだった。

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