勇者争奪戦6
「あ、アルラウネか?!」
―まさか、こんな人里近い変哲もない森にアルラウネだと?どうしてここに?いや、そんなことより危機的状況なのは変わってない。だって相手は人を襲う可能性のある人型モンスターじゃねえか。しかもこの状況、どう見ても捕食寸前なんですけど!でもただの食人植物じゃないなら...。
「あのおおお!すいませえええん!聞こえてますかああああ!」
恵一はアルラウネに大声で呼びかける。
「このツタを操っているのあなたですかああああ?良かったらこれを解いてお話しませんかあああ???」
すると恵一の足に絡みついていたツタが引っ張るのを止めて停止する。
―しめた!あのアルラウネは話が通じる!
「いやぁ、引っ張るのを止めていただいて本当にありがとうございます!俺の名はケイイチでして諸事情でこの森をさ迷ってる者です。決して怪しいものではございません!」
恵一は芝居臭い口調と身振りでアルラウネの説得に掛かる。
それをアルラウネは表情を変えずにじっと見ていた。
「あのー、良かったらこのツタを解いてもらえませんか?解いていただければお互いに話が弾むと思うんですよ、ええ」
―よしよし、解いたらタイミングを見てずらかるぞ!
だがアルラウネはツタを緩める気配がない。
それどころか今度はツタが体まで絡まりつくように伸びてきた。
「え、ちょ?!」
ツタはあっという間に恵一の体に巻き付き、体を宙に持ち上げるのだった。
「えええ、待って待って!お願い!た、食べないでください!」
けれどもアルラウネはお構いなしに持ち上げた恵一を巨大なウツボカヅラの上に運んでいく。
やがて逆吊り状態の恵一の頭上に巨大なウツボカヅラが口を開けてスタンバってる状態になった。
万事休すである。
「やばい、ヤバいってこれ!俺食べたら腹壊すって絶対!クソまずいよ俺?やめた方がいいよ、ね?!」
ツタが下がり始めた。
恵一は最後の命乞いをする。
「うあああ、何でも言うこと聞くから食べないでお願い、人の話聞いてえええ!!!」
それを聞いたアルラウネがほんの少しリアクションを取ると、ツタが動きを止め恵一の頭がパックリ空いたウツボカヅラに突っ込んだ状態になる。
「へ?」
ツタは動きを変えて恵一をアルラウネ本人の前に恵一を持っていく。
「...お前、今何でも言うことを聞くといったな?」
「はいはい、何でも聞きます、ハイ!!」
それを聞いたアルラウネはツタを解いて恵一を地面に落とした。
「痛って!」
地面にたたき落された恵一は見上げるようにアルラウネを見た。
「私は見ての通りお前たち人間からアルラウネと呼ばれる者だ。名はない、好きに呼ぶといい」
「は、はぁ」
「今まで出会ってきた人間はいつも私に危害を加えようとする狩猟者ばかりだった。だからこれまでに何人も食らってきたが、お前はどうやらそれらとは違うようだ。だから考えを改め、見逃すことにした」
「あ、ありがとうございます!」
恵一は土下座しながらアルラウネに感謝した。
「そこでだ。お前に頼みごとがあるのだが聞いてはもらえないか?」
―あ、断ったら食べられるパターンだな、これ。
「もちろん断っても構わない。強制はしない。あと、先ほどの無礼も謝る」
「え?」
「当然だ。私はお前に私が人間たちの中に入れてもらえるよう働きかけてほしいんだ。人間が物々交換するのに使うカネというものは持っていないが、何かしらの形で礼はする。これは人間たちの間では取引というのだろう」
―なんだそれ?
「ちなみに事情を聞いても?」
「もちろん。私は孤独なのだ」
「孤独?」
「ああ」
アルラウネは語る。
なんでも彼女は成長の過程で孤独を感じるようになったらしい。
アルラウネという種は幼生期はマンドレイクと呼ばれ同一種なのだとか、初めて知った。
出世魚みたいに名前が変わるらしい。
やがて食虫植物に成長すると虫を、次いで動物を捕食するようになる。
だが魔力というよくわからない力や薬効を求めて魔物や冒険者に襲われるのでここまで成長できるアルラウネは極僅かだとか。
そして襲ってきた人間を始めて捕食すると人の姿を取れるようになりアルラウネと呼ばれる。
同時に知性も備わるという。
しかもここまで成長するとより冒険者に襲われやすくなるので人を食らってより人間らしくなるのだそうな。
なにそれ、めっちゃこわい。
というか、マジで俺を食わないよね、ね?
ここで彼女は人間の知性を得たことで人間としての思考を獲得し、感情が生まれた。
それが人間としていきたいという欲求だった。
彼女の仲間は魔物の巣窟になるような深くて大きな森林地帯やファンタジーな場所に生息し、それに不満を持たずに生きるそうだが例外的に彼女は違ったらしい。
人がよく出入りする森で生まれ、より多くの人を食らったり関わったりしたことで感性がより人間的になったのだ。
しかし、亜人ではなく危険な魔物に分類され彼女は恐れられ、なおかつ人とほとんど出会わない場所に住むため、人間と関係を築くのは極めて困難であった。
しかたなくアルラウネ特有の移動能力を使って今まで各地を転々と移動しては街道や人里近くで機会を伺っていたとか。
レムルス近辺の森にいたのもそれが理由らしい。
そこで出会ったのが俺という訳である。
「事情は分かりました。俺以外まともに取り合ってくれる人が誰もいなくて話も聞いてくれなかったと?」
「そういうことだ。よろしく頼む(キリッ)」
―とは言っても今までに何人も、アレしちゃってるんだろ?俺がマッチングしてもいいのか、この、人?ま、中世の異世界じゃ人を殺めたことがあるなんて奴はざらにいるけど、今まで襲ってきた冒険者も悪人というより単にクエストでやってただけの普通の人なんだろうな。まあ、悪い奴ではなさそうだし聞くだけ聞いてはやるか。
「じゃあ、守って欲しいことがある。まず町に行くにあたってだが俺の指示に従って行動してくれ」
「善処する」
「もう一つ、人は食べないこと、絶対だ。守れるか?」
「朝飯前だ!もともとそれは不本意なことだった」
「よし、じゃあまずは...」
恵一が話している途中だった。
小型の弓矢が足をかすめ、大きな切り傷を作った。
「ぎゃああああ?!」
恵一は四つん這いになり振り返って後ろを見ると例のダークエルフが睨みつける様な眼差しを向けて立っていた。
「見つけたぞ、異世界人」
「で、出たあああ!アルラウネ氏、アレ食っちゃってくれええ!」
「え?食べるなっといっただろう?!」
「前言撤回!アレは悪人、情け無用!!」
「そうか、なら遠慮はしないぞ!」
アルラウネがそう言うと地面から多数のツタや根っこのようなものが突きあがり、ダークエルフめがけて襲い掛かってきた。
しかしダークエルフは焦りもせずそれらを注視しながら呪文を唱えた。
「我、炎の加護を受けたまわん。デフィス・フレイム!」
うーん、北日本軍書きたい
T-72戦車が異世界へくる予定あり
それとゲストでとあるパラレル世界の猫耳国家がティラン5そっくり戦車と10式戦車で異世界に来る予定もある




