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強制転生 〜二日後に死ぬ俺、異世界で生き直す~  作者: 宵宮


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3/3

#3 転生したら目の前に美少女がいました

「悪いけど、それは転生前には教えられないんだ」


 死神はかぶりを振ると、懐から何やら黒い石のようなものを取り出した。端から見ればただのゴミ石だが、何を企んでいるというのか。


「何する気だ」

「君を僕の世界に連れて行く。君は選ばれたんだ。特別な存在だよ」

「は、何だよ……っておい!」

「予定が数日早まっただけじゃないか。この世では何も得られなかった君でも、何度も失敗すれば学習できるさ」


 酷ぇ。俺の承諾はなしかよ。


「死ぬのは確定。異世界に連れて行かれる理由も不明……」


 訳分からん。でも。


「お前が言うミッション……成功すれば俺は現世に戻れるんだな?」

「ああ。死神に二言はないよ。約束しよう」

「……俺を使う理由も言えないのに信じられる訳が」


 その瞬間、俺の視界は暗転した。


 目が覚めると。


 グワングワンと揺れる視界を何とかもとに戻し、俺は立ち上がる。


「……頭痛ぇ」

「よし。転生成功、っと。ここで脱落しちゃう人もいるんだけど、流石は選ばれし勇者ってところかな」

「色々と分からんところはあるが、一応計画通りみたいでご苦労なこった……あと、転生なら全部リセットで異世界でも最強!とかじゃないのか? これじゃただの転移だろ。俺が現世で死んだ意味がない」

「んなご都合主義はこの世界にはないんだよね、残念だけど」


 はぁ。お先真っ暗だが、そう言い切られては仕方ない。段々とこの訳のわからない謎の死神のペースにも慣れてきたような、まだ慣れないような。


 真下に出来上がっていた水たまりに顔を映してみても、異世界に転生したからといって特段イケメンになったとかそういう有難い仕様はない。ごくごく普通の会社員時代から何も変わっていない、特徴のない幸薄な顔があるだけだ。


 辺りを見回すと、ファンタジー風のよくある世界。耳の長いエルフらしき金髪少女が前を通り過ぎていく。


 カンカンと熱心に金槌を打っているのはドワーフか。あと、あそこで買い物をしているのはオークか?


 小さい頃にゲームで遊んだような世界が、今目の前にある。未だに現実味がないが、こうなっては信じるしかないのだろう。回らない頭をどうにか動かし、俺は死神に問う。


「で、ここで俺はどうすればいいんだ」

「ごめんごめん。ざっと説明するよ。僕は死神だから、何回でも君は失敗できる。選択を間違えたとしても心配しなくていい」

「つまり、死んでトライアンドエラーってのは言葉通りって訳だな」

「そう。君は失敗すればするだけ強くなれる。具体的に言えば、死ねば死ぬほど強くなれる。ただ……」

「ただ?」

「気をつけて。あんまり死にすぎると、"大事なもの"を失ったりもするみたいだから。死ぬ事に関しては僕がいる限りは大丈夫なんだけど。精神か何かが耐えられなくなっちゃうみたいなんだよね。死の負債っていうのかな」


 ……は?


「それって……」

「何事にも得るには代償が必要なのだよ、少年」

「いやいや、おかしいだろ」


 大事なものってなんだよ。


 何やら格言らしく胸を張って死神は言うが、申し訳ないことに全くもって響かない。


 俺はいつでもないないづくしなのに、守らないといけないもんなんてあったか?


「そうだ、魔法とかこの世界は使えるのか?」

「いいや? そんな便利なもんは種族的に無理だね。君は稀人種(ララ)だから。稀人種はそのまま、稀な能力を持つ人だよ。魔法の代わりに君には特殊な能力である失敗者(ルーザー)ってのが使えるってわけさ」

「何もねぇじゃねぇか……」

「そんな可哀想な君のためにこの世界でのお金とか生活とかは困らない様にしたよ。ご安心を」

「それ現実でどうにかならんかったのか」


 その能力さえあれば今頃俺は億万長者に……。


「無理。現実世界をいじれば僕は即消されるから」

「使えねぇ奴……」


 ボソリとつぶやいた俺の呟きを、死神は地獄耳でも持ちやがっているのか聞き逃さない。


「よし、いっぺん死ぬか〜」

「命は大事しなさいって義務教育で習わなかったか?」

「僕は死神だからね」


 ボケもいちいち面倒くせぇな……。


「それよりも、今後どうすればいいんだよ。俺がこの世界に飛ばされた理由をこれっぽちも聞いてないんだが」

「ああ……それは今から分かるよ」

「は? 今から?」


 こういう出会いを、一目惚れ、と言うのだろう。


「貴方……誰?」


 鈴の音のような可憐な声と共に、そこに立っていたのは。


「めっちゃ美人じゃねぇか……」

「……え、え? 何?」


 その姿は、冬の月夜に舞い降りた幻が如く。奥に星が瞬くような綺麗な銀の瞳に、特徴的な濃藍の髪。すらりと伸びる腕は瞳の色と同じく雪色で、日焼け一つない姿は、妖精のようだ。


「……この人は誰なの? アウロラ」

「ああ、ごめんごめん。紹介してなかったね」


 二人は関係者同士らしいが、今の俺にとってはそんな事はどうでも良かった。ズボンの裾が擦りきれるのも構わずに俺は全力の土下座をかます。


「祭理。俺、弾祭理って言います。謎の美少女さん、一生のお願いです。マジで、一生のお願いです。……結婚してください」

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