子爵公子
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ 第93話公開です。
子爵公子
――驚いた。
まさかミリアちゃんが結婚することになっているだなんて、一四歳の少女が結婚という事につい違和感を覚えてしまうのは私が現代日本で生まれ育ったからだろう。
特に晩婚化の進む日本で法律上は一六歳で女性は結婚できるけど、実際にするものはほとんど居なかったのだから。
実際に周りに居たわけでもなく、あくまで私の憶測ではあるけれど、一六歳の幼な妻を娶った相手は、やれロリコンだ犯罪だと周囲は騒ぎ立てるだろう。
商業化が進み、都市化が進んでこのかたどんどん下がる自給自足の割合は、事あるごとについて回る現金の必要性を増加させ、結果的に会社員という、企業に雇用されるという人が、いつの間にか自営業者を大きく上回るようになった。
以前社会科の授業の中で、その逆転が起きたのは割と近年であることを知った時は、結構な衝撃を受けたのだった。
女性の社会進出が遅れていると、度々問題に上げる自称『女性の味方』を騙る人たちは、平等と公正をはき違えるあまりに社会に出ていく女性たちの中から貴重な時間を搾取した。
中途からの採用や、結婚や育児でブランクが開いた際、なかなか復帰することの難しい日本の企業では、大きな仕事を任される様になるまでに、延々と我が身を顧みず、仕事に打ち込む必要があるのだから。
実際に社会に出ている女性の多い国では、そもそもの発想が違う。
若いうちに結婚をして、出産と育児を済ませれば、子供の手が掛からなくなるのも早いから、いい恋をして、若いうちに早く結婚したい。
そして子供がある程度大きくなったら、バリバリと働きたいわ。
なんて話を当たり前のように話す留学生たちの言葉を受けて、当時の私は随分と考えさせられたのだ。
ただ一つ言えるのは、彼女彼らの国では、比較的そういった風潮が受け入れられており、企業側も率先して、仕事に割と集中できる環境の中年層の雇用に対して寛容であった。
それに比べると日本の企業は、ずっと継続しなければ認めないという風潮もあり、たとえ育児を早めに切り上げ三〇代もそこそこに職業復帰しようとする人に対し、非常に冷遇する傾向が強かった。
仮に就職できたとして、そのブランクを理由に大きな仕事を任せるようなことはせず、向上心も労働意欲もそぎ落としていくような雇用がどうしても多いらしい。
話が飛躍してしまったけれど、とにかくそう言った状況が結婚や出産といったタイミングを後回しにさせていたために、ふと気が付いたときには手遅れだったなんて話はいくらでもあったのだ。
少し時代を遡れば、日本でも一〇代での結婚は当たり前に行われていたことを考えれば、成人まで約半年のミリアちゃんが結婚するという話は、やっぱり驚くべきことでもないのかも知れなかった。
――……ス様
「エリス様? どうかされましたか?」
「あ、リーリカ。ごめんね、少し考え事をしていたの」
「そうですか、それならば良いのですが、何度呼んでもお返事がなかったので、心配致しました」
「えっと、結納の贈り物の話でしたね?」
現実に戻った私の前には、フレバー子爵公子が座っており、既にフレバー子爵は退席していた。
「そうです。先程もお話したように、父が宝石商を手配してくれましたのでその時に、何点か贈り物の候補を購入したいと考えているのですが、最近のミリアお嬢様を知るお二人に、その相談に乗って頂けると、大変助かるのです」
贈り物くらいスパッと決めて欲しいと思う反面で、ミリアちゃんの為に、彼女が喜びそうなものを贈りたいというその真摯な姿勢は、決して悪い印象を与えるものではなく、好意のもてる考えだった。
「ミリアちゃんは小柄だから……あまり大きな宝石のついたものは、なんだか浮いてしまうかもしれないわね。数年経てばあのグローリー男爵とロゼッタさんの娘だから、凄く美人になるだろうけど、現状……」
――現状ゴスロリ少女が一番しっくりとくる彼女の容姿を思い浮かべながら、間違ってもそんな事を口にしないように――いや、したけど。しそうになったけど。
とにかく彼女にどんなものが似合うのか、私は必死にイメージを膨らませた。
そんな時、ふとあの光景を思い出し
「髪留め、なんかはどうかしら?」
「髪留めですか。それは全く考えもしませんでした。他にも何かないですか?」
「ミリアお嬢様の髪は綺麗ですから、多少派手な物でも似合う筈です」
それぞれの考えを口にして、更にイメージを膨らませる。
やっぱり、大事な人から貰うのは、指輪は外せないってイメージが強いのよね。
でもサイズとかわかるのかしら?
なんて考えていると
「やっぱり指輪も最低一点は抑えておくべきですね。どうせ今回用意した品は、結納の儀のあとに贈られるつもりなのでしょう? なによりも好きな方から貰った指輪は、とても嬉しいものなのです!」
以前私が贈った指輪がはめられた、左手の指をチラチラと気にしながらそんな事を言い、そんな視線に気が付かないハッカーさんは――
「はい、そのつもりです。ですが指輪ですか。今からサイズなどを聞いて間に合うでしょうか?」
なんて言っていた。
「そこについては、結納の儀まではまだ時間があるのですよね? 直せると思いますが」
「それが……実はあまりその……時間が無いのですよ。ああ、このことはあとでお話するつもりなので今はまず、候補を一緒に考えて頂けると助かるのですが」
「それでしたら、多少値段は張りますがエリス様にお願いすればいいでしょう」
「それは一体どういうことでしょうか?」
「あの、私洋服やアクセサリーの装備化を行えるんです。今私やリーリカが着ているものも、すべてが装備品となっています」
貴族とあっても、それには流石に驚いたようだったけど、そこは切り替えが早いらしく
「でしたら各種の装飾品を用意するのも良さそうですね」
なんてすべての装飾品を装備化するのを前提のような、気前の良いことを言いだした。
逆に驚く私の視線には気が付いた彼は
「随分と贅沢な物になるのは判っています。ですが、年の差をおして、若くしてこの田舎町へと嫁いでくれる彼女に、せめて出来ることをして差し上げたいのです。領民の方たちには申し訳ないが、この領地の将来の為、きっと許してもらえると思っています」
なんて、ちょっとカッコイイこと言ってるけど、そういうのはいっそ本人に言ってあげたらいいのに。んあて私は思ってみたり。そういうのは嫌! って人もいるとはおもうけど、少なくとも私はストレートにその思いをぶつけてくれる方が好きだった。
想いって、口に出さないと、案外伝わらないものだもんね。
そんな父親譲りの真面目さを持つ青年に、私とリーリカはあーじゃない、こーじゃないと、暫く彼に贈り物の心得などをレクチャーしたのだった。
こんにちは。
味醂です。
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