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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第三章 薄亜麻色の地精霊
89/144

湖畔の城下街

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第89話公開です。

湖畔の城下町



「それではお世話になりました」


「エリスお嬢様方をお気をつけて。また近くにお立ち寄りの際は是非おたちよりくだないなぁ」


「「「行ってらっしゃいませ、お嬢様方」」」


コフの山百合支配人のパメラさんはじめ従業員達に見送られ、私たちは馬車へと乗り込みコフの山百合を後にした。

なぜか旅をするだけで、順調にその重みを増す金貨袋はかなりの数になり、およそ60金貨の報酬のうち、20金貨だけを受け取っていく事にした。


私が行く先々の山百合で、装備化を行い稼いだお金はその全てを貰っていくのは色々大変だろうと、余剰分は山百合共通のストックとして蓄えられている。

そんな事情もあり、行く先々に山百合があるのなら、たとえその時所持金がなかったとしても、宿泊をすることができるのだ。


どこの山百合でも、大体1着あたりのおいているドレスの相場は5銀貨ほどで、つまり1着を装備化するたびに、私はおよそ1金貨の報酬が発生していた。大体30~40着のドレスの装備化にプラスして、数点のアクセサリーを装備化する感じに落ち着いており、大体50金貨前後の報酬が発生しているために、1か所巡って約2500万という額を考えてしまえば、その仕組みも納得してもらえるだろうか?


参考までにミーシャには1日あたり1銀貨、一応グローリー男爵家からのお給金も出ているリーリカも、遠く離れている間にお金がないと困るだろうからと同じく1銀貨を渡す様にしていた。

もっとも私の大半の所持金はリーリカに預けてあるので普段の支払いはリーリカが行っているのだけれど。


一応、もしはぐれでもした場合にと持たされている革袋の中には――


白金貨1枚

金貨10枚

銀貨10枚

銅貨10枚


こんな感じにかさばりすぎない程度に持っている。

一見少ないように思うかもしれないけれど、5555万相当の所持金を念の為に持つ金額であるかは、賛否が分かれるどころの騒ぎではないだろう。



この世界のおいて、人の集まる街などの区分は大きくわけて三つある。

王都リオンや、シリウス、ダーハラのように王直轄、もしくは領地を預かる貴族が封入されている――都市

ナラシーや、コフの様に、産業等が発達しているものの、封入が行われていない――街

ツールズ、ナーガ、タミ他沢山ある、小さな集落などの――村


このような区分けの中で、ナラシーを除く街以上の区分けに分類される場所には銀行のような両替商があるのが普通だった。


どこか一か所に定住できれば良いのだろうけれど、今の私たちにはやるべきことがある。

亜麻色の髪もつ地精霊を追い、世界樹をめぐり、崩れようとしているこの世界をその崩壊から守ることこそ、私に課せられた使命なのだろう。



二日の滞在の後、遠く離れる山百合を、リーリカがいつまでも見ていたのが心に残る。

メーテルさんに甘えるリーリカを思い出しながら、彼女が過ごした幼い日々を、私はなんとなく想像してしまったのだった。



◇ ◇ ◇



両側を荒々しい岩壁に囲まれながら、街道は北西へと延びている。

タミの村から上がったような山道ではないものの、この辺りの山は岩山で、尖った岩肌の下には大小さまざまな礫から岩まで転がっている。

そんな岩山の隙間のような場所を抜ければ、今度は周囲を林に囲まれた一本道の街道を緩やかに登ったり、或いは下ったりしながら馬車は湖畔の城下、サイダへと進んでいる。


コフを出てからこれまでの道程は、魔物が出ることもなく不思議に思っていると


「この辺りには野生の狼が結構いますので、おそらくその為でしょう」


そんな事をリーリカが話してくれた。


「ミーシャ大丈夫? 疲れない?」


と、順調すぎる暇な旅路に、することの無くなった私は小窓から様子を見ると、なんと彼女は御者台に座ったまま、居眠りしているようだった。


「ちょ、ミーシャ起きて、さすがに危ないから!」


「うーん。むにゃむにゃ……もうおなかいっぱいニャ」


「夢見てる場合じゃないって、リーリカどうしよう?」


と相談すると、リーリカは謎の黒いオーラをやや発しながら


「エリ、リリ停まりなさい!」


と客車のなかから叫びを上げる。

僅かに(いなな)き速度を落とすエリとリリ、やがて完全に停まったのを確認すると私とリーリカはすっかり熟睡しているミーシャをなんとか客車の中に運び込んだのだった。


「まったく油断も隙もあったもんじゃありませんね、折角エリス様が厚遇してくださっているというのにこの猫ときたら」


「そんなに眠かったのかしら?」


「まぁ、エリもリリも優秀な馬ですから、任せておいても問題はないのですが……」


「でもやっぱり、何かあったときに困るわよね」


「当たり前です。そのための御者なのですから。エリス様がお優しすぎるので、少しばかりきつく言って聞かせないといけないかもしれません」


怒るリーリカの言い分ももっともだろう。

一応名目上は御者として雇っているので、その責任はきちんと果たしてもらわないと困るのだ。

とは思うものの――


猫だしなぁ


と内心で思ってしまうのは、間違って居るのだろうか?


「とにかく、私とリーリカで御者台にあがりましょ。ここで停まっていても仕方ないもの」


「そうですね、途中で日が暮れても厄介です。少し急げば夕方にはサイダに到着するはずですから」


結論が出たところで、私たちは御者台に上がり込み、その狭い御者台にリーリカの温もりを感じながらに旅を続けるのだった。


◇ ◇ ◇




「うわぁ、湖! ねぇ、あそこがサイダかしら?」


「なんとか間に合いそうですね。そうです、あそこがフレバー子爵領、シトラス・フレバー子爵の治めるサイダの街です」


「とっても綺麗な街並みね、湖畔に沿って続いているわ? 山と森と湖畔の街。素敵かも」


「そろそろ人も減るころですが、避暑地として人気の街ではありますね。半面、一度冬になれば春の訪れは結構長く待つことになりますが、この付近で採れる香辛料が非常に質が良いと評判です」


傾く陽の色が湖面に混じり、群青の湖面が俄かに黄金色へと輝きを変える。その黄金色の輝きも、僅かな時がたてば、赤味を増して、さらに紫がかった紫紺と変わり、やがて星々を映す漆黒のスクリーンへと変貌するのだろう。


私は湖面に浮かぶ月を夢想して、夕刻の風が吹く前の、凪ぐ湖面に目を奪われていた。


「湖面に映る月を眺めながら、リーリカと一緒に過ごしたいわ……」


私のそんな呟きに、リーリカは頬を染め――


「い、いきなり何を言い出すのですか。いえ、別にそれが嫌だとかいう訳じゃなく、いや、むしろわたしもそうしたいというか……嗚呼、もう変な事を言わせないでください!?」


慌てるリーリカの胸元に私は寄りかかり、静かに目を閉じれば、ありありとその時の様子が脳裏に浮かぶのだった。


ほどなく到着したサイダの街で、私たちはとんでもない事に巻き込まれるのだけど、それはもう少し後の話。

その時はただ、サイダの山百合目指し、湖畔の並木道をゆっくりと馬車で進むのだった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第89話をお読みいただきありがとうございます。

おかげさまでもうじき6万PVとなりそうです。

まとめて読まれる際に、後書きが邪魔という方も多いかもしれませんので、次話より少し簡素化致します。

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