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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第三章 薄亜麻色の地精霊
88/144

連なる者達

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第88話公開です。

お楽しみください。

連なる者達



「――ふたりともなんで裸で寝てるのにゃ?」


そんなミーシャの声で目を覚ます。

見回せばベッドの上に薄掛け一枚を掛けただけで寝入っていた私とリーリカ。

まだ焦点の合わない視界に映るのは、暑さにやられて昨日はダウンしていた筈のミーシャが、ベッドに膝をつき私たちを覗き込んでいる姿だった。


「あれ、なんでだろう?」


温泉に入って、おなか一杯になって……


――そうだった。


次第に甦る記憶に一気に湧き上がる羞恥心。

共に堕ちた筈のリーリカは、幸せそうにまだ夢の中を彷徨っているようだった。


「もう、朝にゃ。おなか、ぺこぺこなのにゃ。」


そう言えば昨日は夕食を抜いてしまったのだ。

いや、おそらく充分すぎるほどの栄養は、しっかりと摂取させてもらってはいるはずだけど。

その証拠に猛烈な空腹などは感じていなかった。


生まれた直後まで退行して、気持ちよくお腹いっぱいになった私たちは、ベッドに誘われた後ぐっすりと眠ってしまったのだから。


そんな事を考えながら、待ちきれなさそうなミーシャの柔らかな耳をそっと撫ぜていると、彼女も気持ちよさそうにおとなしくしていた。


「メーテルさん、いますか?」


「はぁい。ただいま参りますよ。」


給仕室から出てきたメーテルさんに、思わず抱き付いてしまいたくなる謎の衝動を感じつつ、朝食の準備をお願いする。


「おはようございます、エリスお嬢様。ぐっすり寝れたようでなによりです。」


「え、えぇ。その、おかげさまで……」


無意識に下がってしまう視線をなんとか上に戻しながら応えるわたしにメーテルさんは、そっと耳に口を寄せ――


「また、あとで(・・・)


そういって耳朶に優しくキスをする。

それは淫猥とかそういうのではなく、母親が我が子にする、まさにそれで――

それ以上私は何も言えなくなってしまったのだった。


――私、変になっちゃったかも?


そんなおかしくなってしまった私を置いて、朝食の準備に行ってしまったのだった。


「…………」


ミーシャの無言の圧迫から逃れるために、私はもう一人の堕落者(リーリカ)を起こすのだった。



◇ ◇ ◇



部屋で朝食を済ませた後に、私とリーリカは例によってドレスルームへと移動していた。

待ち構えるドレスの数に一体山百合全体で何着のドレスを注文したというのだろう?


こんなに大量のドレスをそれぞれコストを回収できるのかとも、疑問に思うものの、その噂は口コミで広がって、貴族層だけでなく、一般層にも貸し出しが増えているのだそうだ。

特に王都を主に生活している者達は、シリウスで行われたあのいわば、オートクチュールといったイベントに参加していない者も多く、参加した他の貴族たちに触発されて、慌てて注文に走った者も多いそうなのだ。


しかし、実際には私が最後に装備化させなければならないわけで、私が王都やシリウスに居る間でなければ、新規の注文の品を収めることができないという、そんな事情もあり、急ぎの用立てには非常に重宝されているらしい。


黙々と装備化を進めるわたしと、そのサポートをするリーリカに、案の定付き添っているメーテルさんは、時折背後に立っては頭を撫ぜるなど、その母性を振りまいていたのだけど。

どういうわけか、それを嫌に感じるだとかは無かったわけで、目の前のリーリカも戸惑いながらにその行為を受容れていた。


時折香るメーテルさんの纏う香りは、昨夜の事を連想させて、つい視線を一点に誘引されてしまうのだった。


「もう、だめ。ちょっと休憩」


なんだかいつも以上に気力を使い果たしてしまった私がテーブルに伏していると、リーリカが横にきて、何やら小声で囁いてきた。


「その、また少し……飲ませてもらいますか?」


落とされた爆弾の破壊力は抜群で、それが何であるかなど、リーリカの視線の先にあるものが物語る。


「な、なんだか私、引き返せなくなっちゃいそうで――怖い」


「ですが、作業中も、その、とても意識してらっしゃいましたので、このままでは手に付かないのではないですか?」


痛いとこを突いてくる。リーリカのいう事も最もなのだから。

頭の中でリフレインする「あとで(・・・)」の言葉に急速に思考回路が熱を帯び、必死で抗う理由を考えていると――


「ふふ、エリスお嬢様? リーリカお嬢様のほうが、もう待ちきれないのですよ?」


いつの間にか私とリーリカの背後に立っていたメーテルさんは、そんな事を言いだした。


「わ、わたくしは別に……」


即座に否定しようとしたものの、すぐに声がどんどんその大きさを失って、屈むメーテルさんの胸部にその視線が吸い込まれていた。


ああ、リーリカは、すっかりと魅了されてしまっているのね。

だったらここは、仕方ないよね?

私が認めれば、すぐにリーリカは楽に――――


その行いを必死に正当化しようとしている私もまた、既に手遅れなのではないだろうか?


「あ、う……」


詰る言葉に漏れる呻きも、メーテルさんはそっと二人まとめて抱きしめて――


「さぁ、鍵は閉まってますので、安心して飲んでいいんですよ?」


包まれる香りに私とリーリカは――――抗う術など持っていなかったのは言うまでもない。


――――――。



結局途中一時間ほどの休憩と昼寝を挟んだ後に、すべての装備化が終わったのは、もう午後に入ったころだった。


「進んでいるかしらん?」


と入ってきたパメラさんは、出来上がったドレスの山を見て、大いに喜ぶとメーテルさんのように私とリーリカをハグして労をねぎらってくれたのだけど、


「メーテルもしっかりとご奉仕しているようね?」


そんな事を言われギクリとする私とリーリカ。


「はい~、お二人ともとぉっても可愛いんですよぉ? たーくさんお吸いになって。わたしもう、きゅんきゅんきちゃいます」


なんて、無意識に言葉遣いが素に戻りつつ、あっけらかんとその痴態を暴露した。


「あう。もうその辺で……カンベンしてください、恥ずかしくて死にそうです」


なんとかそう抗議したものの、パメラさんは不思議そうに


「あら、目の前に愛に飢えている子がいるならば、抱きしめるのが母親と言う者でしょ?」


なんてさらっと言われてしまう。


とどのとまり地精霊(ノーム)達は、本当に母性本能の塊なのだろう。

目の前に求める人がいたならば、それが誰であれ、抱きしめ、自らの母乳を与え、安らぎを与えたくなるのだろう。


この世界で信仰される神は様々で、伝承の女神ラスティは勿論のこと、そのほかにも多数の神と崇められるものが居る。

豊穣と慈愛を司る、デメーテルは地母神として、農耕や結婚といった行事に深く関りがあり、結婚の儀や結納の儀とは、つまり地母神へのその報告なのだという。


そしてその地母神の子たる大地の精霊に連なるとされる亜人こそ、地精霊(ノーム)達なのだ。


ちなみに、エルフに関しては、世界樹に連なる者として、緑や風といった精霊たちと強い繋がりがあるという。

そう言えば、確かに私が植えた世界樹も、神格化されてその村も聖地と呼ばれていたんだった。


話がずれてしまったけれど、私が言いたかったのは、この世界には、少なからず、前の世界と似た体系の、おそらく起源と同じとする、神話や伝承が語り継がれているという事で、その中に照らし合わせるならば、サラが追いかけるヴァンパイアすらも、エルフやノーム、などと同じく、闇の精霊に連なる亜人なのだ。

そう、ヴァンパイアは――魔物ではない。

ということだ。


こんにちは。

味醂です。



気が付けばエルフ 第88話をお読みいただきありがとうございます。

ご支援頂いている皆様にも尽きぬ感謝を。


87話のマーク部を読んでいない方の為の補完回となっています。

精霊や妖精に連なる者たちが持つ、衝動的欲求などの説明です。


それではまた次回、気が付けばエルフ 第89話でお会いしましょう。

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