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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第三章 薄亜麻色の地精霊
76/144

山百合の謎

こんにちは。

味醂です。


お待たせいたしました。

気が付けばエルフ 第76話『山百合の謎』公開です。


お楽しみください。

 山百合の謎



「うっわぁぁぁああ……」


 その見事なまでの城壁に、思わず漏れた感嘆の声。

 しかしその一方で、私の中の何かが訴えかけてくるのだけれど、その理由がハッキリしない。

 細くか弱い糸の先、結び付けられたその違和感の正体を、手繰り寄せるように思索を巡らせてみるものの、その時ソレに気が付くことは出来なかったのだけど。


「あれがダーハラの伯爵城館です」


 リオンやシリウスと違い平面的なこの街の中心に、ひときわ高い石詰みの城壁が築かれており、城館はその城壁に沿うようにそのまま白い壁が立ち上がっている。


「広いまち、なのにゃ」


「そうですね、ここダーハラは元々ノーザ国領ではありませんでしたから、併合前の規模は他の国に比べてもかなり大きかったようです」


「そこまで国力の有った国も併合されていたのね。私も少しずつ歴史を勉強しているのだけど、全然知らなかったわ」


「仕方ありませんよエリス様。歴史書はそれこそ王城にでも行かないと置いていませんから」


「でもリーリカは知っていたのよね?」


「わたしはグローリー男爵家に居たときに、メイドの嗜みとして教育を受けましたから。それにこの話に限っては、比較的有名な話なのです。ここは観光地でもありますからね」


 説明をしながらダーハラ城を指さしていたリーリカは、少し照れたような様子ではにかんで、注がれる私の視線にどう反応していいものか、迷っている様だった。

 次第に紅潮する頬と下がって行く視線に、可哀想だと私が発した言葉は――


「さすが私のメイドさんね。とっても頼りになるわ」


 微笑とともに自身に向けられるその言葉。言葉の意味を噛みしめるように聞き届けると、頬は紅潮させながらも、今度は「はい!」と嬉しそうに頷くリーリカに、なんだか胸の奥をくすぐられた気がしてしまった。


「あの。エリもリリも、おなかすいたって」


 すっかり見つめ合う私たちに割り込んで、どこか申し訳なさそうに尖った耳を伏せるのは柔らかい黒毛の被毛(コート)の猫人のミーシャだった。

 身長はリーリカよりも少し低く、私に比べると随分低い。

 獣人ということで小柄ながらに比較的がっしりとしているその16歳の少女も随分とお腹を空かせているだろう事はその様子から一目瞭然で、そんな彼女の様子に気が付いたリーリカはと言えば


「仕方のない猫ですね。――此処からは私が代わりますから中でこれでも舐めてなさい。こぼすんじゃありませんよ?」


 なんてポケットの中から砂糖菓子を渡して御者台へと上がっていった。


 私が構いすぎるミーシャをリーリカは猫猫と呼んでいることも多く、別に差別してるからというわけではないのだけれど、ありていに拗ねてアタリがきつくなったリーリカを眺めるのも、それはそれで私は好きなのだった。


 やだ、もしかしてツンデレのメイドさんが自分専属だなんて、元の世界の男子たちならどんな事を思っただろう? やっぱり彼ら()こう、キュンキュンと来るものを感じるんだろうか?


 脳裏には、やっぱり俺tueeeeeとか、メイドはツンデレが正義!だとか、ハーレムは男の(ロマン)!だなんて騒いでは、クラスの女子からよく冷たい視線を浴びせられていた男子グループの姿が思い起こされる。

 私も冷たい視線を投げかけていた一人ではあったものの、前に座っていたあの子は――そんな様子を、どこか困ったように見ていたっけな。


 私は楽しくやってるけれど――


 ――みんな元気にしてるかなぁ?




 ◇ ◇ ◇




「うっわぁぁぁああ……」


 その見事なまでの景観に、思わず漏れた感嘆の声。



 ――あれ? なんだかさっきもこんなことなかったっけ?


 王城から続く道を、王城とは反対側に進んでいくと、小高い丘になっている部分があった。

 馬車は螺旋を描くように続くその坂をゆっくりと上っており、二周ほどまわったとこで飛び込んできたのは、広がる街を見渡せる突き抜けたような景色だった。


 その風景に後ろ髪をひかれつつも、間もなく馬車は停車して――


 一人の若いスタッフがすっと進み出て、客車のドアを開けてくれる。

 エントランス前に続々と出てきては、整列をするその光景と、掲げられた看板に、やっぱり既視感を拭えなかった。


「「「「ようこそおいでくださいました。ダーハラの山百合へ」」」」


 馬車から降りた私を出迎えてくれたのは、やっぱり有ったかという高級旅籠チェーン。

「山百合」のスタッフ達。


 列の中から歩み出てきた若い男性に、私は二重の衝撃を受けることになる。


「エリスお嬢様でいらっしゃいますね?」


「あの、は、はい……エリスです」


 私が懐から取り出して、差し出す封書を受け取りながら――


「いやはや、噂の通り――いや、それ以上にお美しい。その数奇な運命が背負われていなければ、是非とも我が妻として、穏やかに滅びつつ我らがエルフの繁栄に貢献したかったものですが――」


 そんな事を突如として宣った――言いやがりました。


 大体繁栄に貢献って……。


 ガラガラと音を立てて瓦解するわたしのエルフに対してのイメージはさておいて、その時点で既に思考回路がショートしているわけで。


 突如として向けられる言葉と、私の背後から立ち上る黒い殺気らしきものに私はといえば


「え、あの、えっと――――」


 と口ごもり、涼しげな微笑みを向ける目の前の秀麗なエルフの男性と、いよいよもって飛び掛からんとする背後の気配が最高潮に達するというその直前――


「ユリアス、それはなかなか聞き捨てならないお言葉ですね?妻を前に平然と言ってのける態度も困りものですが、それ以上にお客様を困らせるとは、ほんとうにしょうもない方です」


 と彼の横に整列していた一人の女性が歩み出て、むんずと彼の長い耳を鷲掴み(・・・)にすると、グイっと力ずくで頭を下げさせた。


「大変失礼いたしました、エリスお嬢様。と、そちらはリーリカお嬢様ですね。御者の方はミーシャお嬢様でしたわね。この者はユリアス、当山百合の支配人でございます。わたくしはその妻、リゼッタです。少々このように茶目っ気が過ぎまして、お嬢様方には大変失礼を。どうかご容赦くださいませ」


 言い淀むこともなく、スラスラと謝罪の言葉を口にするその様子はどこか手馴れていて、案外こんなことが毎回のように繰り広げられているのかもしれないと思ってしまった。


 そんな間に解放された支配人ユリアスは


「ご紹介が遅れましたが当館支配人のユリアスです。どの様なご用命も何なりと」


 懲りない笑顔で告げるのだった。


 ◇ ◇ ◇



 最上階四階、その最奥にある特別な部屋。

 この位置には、なにか山百合共通の特別なコンセプトでもあるのだろうか?


 当然のように用意されていたスイートにはリビングと二つのベッドルームに給仕室。

 給仕室と言っても給湯室みたいなものではなく、きちんと簡易のキッチンとついている部屋付きメイドの為の部屋。

 これまで泊ったどこの山百合でも専属給仕は基本的にその部屋に夜間も詰めている。

 部屋を見回していると、ふとあることに違和感を感じ、そちらを眺めていると――


「お嬢様方のお相手をさせて頂きます、シーナです。お見知りおきください。それと、そちらの奥は展望の浴室になっております」


 案内してくれるシーナさん。

 テラスの先、周囲の死角になるように脱衣スペースと、浴槽が鎮座していた。

 にしても……これって新しすぎない?


 綺麗に削られたばかりの木の目隠し、既になみなみと湯を湛える浴槽は、鮮烈な檜の香りを放っていた。


「あの、お気に召しませんでしたか? ()()()()()()()()()()()()()ということで、山百合()()に急遽用意されたのですが……」


 ちょっと待った!

 いい加減にこの生活も慣れたと思っていた私でも――

 今聞き捨てならない事をさらっと言われた気がする。


 えっと――――浴室を用意? 全店に!?


 脳裏に浮かぶニヒルなダンディ。シリウスの山百合の支配人さんの笑顔。

 まるで、ふぉっふぉっふぉ。と笑っていそうなその幻想が頭によぎってしまった。


「ううん、違うの。ごめんなさい。その、あまりに嬉しくて、ちょっとびっくりしてしまったのよ?」


 なんとか平静を装いつつも、そう答えると話をごまかすために、昼食の用意をお願いするのだった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第76話をお読みいただきました皆様、有難うございます。

ご支援頂いてます皆様にも平に感謝を。有難うございます。


新都市です!キャラ増えすぎそうな気がするので自重しながら行きたいと思います。


それではまた次回、気が付けばエルフ 第77話でお会いしましょう。



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