禁断の装備品
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ 第73話 章間閑話 『禁断の装備品』公開です。
しょーもない話です。ゴメンナサイ。
禁断の装備品
――嗚呼神よ。
どうかこの卑しきわたくしをお許しください。
人目につかぬ廊下の奥、その小部屋には二重のドアが設けられ、小さなスツールが置かれた以外は、ただカーテンの掛けられた小さな小窓があるのみだった。
じっとりしたこもった空気は、まるで自身の邪念か煩悩か。
身にとりつくそれを具現したかのように内なる良心を攻め続けた。
「――迷える子羊よ、曝け出すのです。」
小さくも籠ったように響くその声に、私はは自らの卑しさを吐き出したのだ。
「わたくしは、知らなかったのです!まさかあのようなものがそこにあったなんて。」
それは彼女が客室から引き上げたタオルやシーツをリネン室へと持ち帰った時に起きたのだった。
シーツの中からもつれるように出てきた二組のそれは、晩夏に熟れ落ちた夏の果実のように、ぽろりと足元へと落ちてきた。
それが誰のものであるかなど、明白で、しばらくの間帰らない客人の、紛うことなきアーティファクト。
手にした瞬間その者の脳髄を嫉妬の炎で焼き尽くし、怨嗟の声で頭を埋め尽くすそれは、或いは呪われた禁制品であったのかもしれなかった。
「ただそのときのわたくしは、どうしてもそれを懐にいれ、その場を後にするほか考えられなかったのです」
たまたま夜勤番であった彼女は睡眠不足から思考能力が低下していたのだという。
その朝の仕事を終えれば、すぐにも自分の部屋へと駆け込んで、ぐっすりと眠るそれだけの筈だった。
朦朧とした意識が戻るにつれて、自らの行いの失態に気が付いて、慌ててこの部屋へと駆け込んだのだから。
「――迷える子羊よ、ならば差し出すのです。」
懺悔室の役割は、人に言えぬ悩みを語る、自己救済と、犯した軽微な罪を悔い、それを告白し、差し出すことによる免罪の二つの役割を持っている。
話を聞いていた神の代弁者はあくまで人ではなく神の御使いなのだ。
懺悔の内容が何かを掠め取ったという印象を受けた御使いは、そう言って寄進を促した。
「………」
おずおずと小窓から差し出される銅貨が2枚、そして丸められた二組のそれを見て
――ブフォ!?
と良く判らない効果音と共に、赤い血潮の飛び散った免罪符が渡された。
「――迷えりゅこひちゅじよ、汝のちゅみは洗われた」
くぐもる神託を受け、胸を撫で下ろした、罪を洗われたその者は立ち去って――
「ああ、神よ。今日も迷える子羊はやって参りませんでした。」
そう言って一人のシスターは鼻をおさえ、まだ重みを増している小さな何かを懐に入れ、いそいそと寄宿舎へ踵を返したのだった。
――――――同時刻、塩の街道
黄昏の空のもと、野営地へと急ぐ一台の馬車があった。
「ねぇ、リーリカ。なんだか寒気がしたんだけど?」
「夕方にはだいぶ気温が下がるようになりましたからね。客車の窓を閉めましょう」
そういって跳ね上げ式の窓を閉めると――
「風邪をひかれたら大変です、暖めますのでこちらに来てください。」
「――それじゃぁお願いしようかな?」
背後から聞こえるそんな会話に、御者の少女は「あぁ、またかにゃ。」なんて思ったのだった。
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ 第73話をお読みいただきました皆様、有難うございます。
章間閑話にしてもあまりな話なので、深く考えないでくださいませ。
第三章のほうは、エピソードの並び替え作業をしております。
今回道中が長いので、地図を作製したり、距離感を確認したりとそういった設定的作業に追われてますので今しばらく執筆までお待ちください。
それではまた次回、気が付けばエルフ 第74話でお会いしましょう。




