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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
70/144

二章エピローグ

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第70話公開です。

お楽しみください。


遂に二章完結。

二章エピローグ





――翌朝


目覚めた私たちの元にやってきた一人の番兵が何か包みのようなものを持っていた。

彼がそれを広げると、そこにあったのは大量の(あおぐろ)い石と三つの革袋。


どこか見覚えのあるそれに真っ先に反応したのはリーリカだった。


「これは!! 一体どこで!?」


そのあまりの剣幕に怯みつつも番兵が告げたのは


「こちらの黒い石はスライムイーターの灰と共に見つかりました。そしてこちらの革袋ですが――」


言いながらに三つの革袋をそれぞれ開けると銀貨と銅貨の入った袋が一つ。

金貨の入った袋が一つ。

そして残ったもう一つには先程と同じ、(あおぐろ)い石片がぎっしりと詰まっていた。


「これは紫魂石の欠片! それも間違いない! 常闇様を封じていた石そのもの(・・・・)! でもどうして……。」


「紫魂石って、あの狼を繋ぎ止めていたアレよね?」


「そうです、あれは常闇様の物とはまた違ったものでしたが――この紫魂石は間違いない。間違い様がない――僅かに残るこの波動、14年間共に過ごした私に限って見誤るなんてあり得ません!!」


取り乱すリーリカの双眸からは大粒の涙が零れ落ち、驚愕、怒り、不安、悲痛といった様々な感情が混ざり合い今にも崩れ落ちそうなその様子に自分の事の様に胸が苦しくなった。


あまりに動揺するリーリカに、番兵は何度か言いかけてはやめ、数度繰り返すとやっと続く言葉を発した。


「革袋のほうは、今朝早くにエリス様に渡す様にと門番が預かったものだそうです。」


「私に、ですか?」


「そうです。言付けとともに。『行き違いになった友を追って西へ発つわ。その路銀であたしを追って来なさい。』そう言うように言われたそうですが。」


「それは一体誰だったのですか?」


「それが、名前を尋ねようとしたところ、既に目の前から掻き消えたように、居なくなっていたそうでして――ただ、薄亜麻色の髪の地精霊(ノーム)だったそうですが。」


「ノームの女性……」


出会ったことのない種族の女性。女性というのはノームという種族は女性しか生まれないそうで。必然的にそうなるのだけど。とにかく心当たりがないにも関わらず、私は何か心に引っかかりを感じていた。


「とにかくわかりました、有難うございます。確かに受け取りました。」


そういうと、番兵はどこか申し訳なさそうに敬礼をして持ち場に戻っていった。


――さて、と

私はいまだ涙を流すリーリカを両肩を抱きとめると、黒髪の少女に問いかける。


「ねぇ? リーリカ。あなたが背負っている枷を、私が代わりに背負ってあげることは出来ないけれど――手を取り合って、並んで立ち向かうこと位なら、出来ると思うのよ?」


「……」


「常闇の巫女なんかじゃなく、一人の女性、リーリカ・アマハラノミヤとして、過去の清算の為でなく、自分の未来に向き合うために、並び立つのは私じゃ役不足なのかな?」


「エリス……様?」


「だって、色々判らない事だらけだけど、どうせ向き合うなら、なし崩し的に――なんかじゃなく、きちんと自分の意志で向き合ったほうが、スッキリするじゃない?」



――ぷっ。


「ほんとにエリス様ときたら、どこまでもエリス様なんですねっ!?」


「ちょっと、ナニソレ。全然説明になってないじゃない!」


「あは、いいんです。わかりました。――大丈夫です。それは、一緒にお供するわたしだけ(・・・・・)がわかっていれば良いんですから。」


気が付けば、涙も乾かぬうちに破顔して、可笑しく笑う彼女には、もう常闇の巫女の面影はなく、ただ一人の黒髪の美少女が、今度は嬉し涙に朱く染めた頬を濡らすのだった。



◇ ◇ ◇



その後――


シリウスに戻った私達の元に一通の手紙が届けられた。

封蝋は貿易船、ノーザ王家の紋。


ナラシーの奴隷商に売られた三人の身代金は、私の服の代金として充てられ、不足分は王家より支払われた。

ところがその売却先の奴隷商は、何者かの襲撃を受け、一夜にして商品共々皆殺しにされたのだという。

やはりナラシーは治安が悪いという印象を強く植え付けた私だったけれど、今は日々ベロニカさんのお店に通っては装備化の日々を過ごしている。


相変わらず暑い日々が続くけど、蝉の鳴かないこの世界の夏も、もうじき終わりを告げようとしている。

猫耳ミーシャちゃんはといえば、御者の仕事が今はないのでベロニカさんのお店に一緒に行っては、新作のケモミミシリーズのモデルとなっており――


およそ冒険者として日銭を稼ぐより、なぜか遥かに良いその実入りに驚きながら、ここシリウスで早くも派生したタコヤキの姉妹品、たこ焼きスープの屋台に日々通うのが日課となっているらしい。


――てかそれって明石焼きっていうんじゃない?



◇ ◇ ◇


――――――。



晩夏の夜に降る雨を聞きながら、私はベッドの横に立ち――


「どう、かな?」


「新作、完成したんですね。凄くお似合いですよ、エリス様。」


月も隠れた暗闇の中、ナイトテーブルに置かれた小さな灯りが、私の身体を浮かび上がらせる。


「そうなの。なんでもやっと素材が見つかったとかで、ついに出来たのよ」


「その、随分と布地が小さいんですね。」


「スキャンティってタイプの下着なんだけど、柔らかくて履き心地も触り心地もいいのよ? リーリカも履いてみる?」


「いえ、今は――触り心地はエリス様ので確認させてもらいますから――」


「「…………」」


雨音に紛れるように響く水音に、痺れるように世界は次第に白みを帯びて、絡む吐息が世界から時を止めた。

柔らかく髪を撫ぜられる感触に目を覚ますと、そこには深淵の瞳が広がっており、静かに私に告げるように囁いた。


――愛してます。


――それはとても小さな声で。


――それはどこまでも真っ直ぐに、わたしを見て。


そう、わたしも。


――愛してる。



――この絡み合う指がいつまでも離れませんように。


二人は再び微睡の世界へと旅立った。





「おはようございます。お嬢様方。随分と湿度が高いですね? 窓を開けましょう。お嬢様方は汗をお流しになられてください。」


翌朝入ってきたクレアさんにより、浴室に追い立てられるように――むしろ追い出され、彼女は乱れたベッドをてきぱきと直していた。

なんだか襲ってくる既視感に首を傾げつつ、旅立ちの朝は迎えられた。



◇ ◇ ◇



「「「「「お気をつけて行ってらっしゃいませ、お嬢様方。一日も早いご帰還をお待ちしております」」」」」


お馴染みの風景となったシリウスの山百合の玄関前、気が付けばエルフとなってもうすぐ3カ月。

真新しい御者服に身を包むミーシャは既に馬車の準備を終えて、客車のドアを開けて待っている。


「それでは皆さん行ってきます。」



見送りの者にそう告げて、リーリカと共に手を取り合って馬車のステップに足を掛けたとき――

雨上がりだというにも関わらず、爽やかに吹き抜ける一陣の風に、そろそろ秋の気配を感じて……

私達は新たな旅へと出発しようとしていた。



―――薄亜麻色の地精霊を追う旅へ。





気が付けばエルフ 第二章 『消えた常闇の巫女』 完


こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ第70話をお読みいただきました方有難うございます。

おかげさまで無事に二章が完結いたしました。


お気に召しましたら評価など頂けますと続章の執筆が早くなりそうです。

章間で1話分も夕方前までにはご案内できるかと思います。

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