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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
64/144

常闇の巫女2

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第64話 公開です。

お楽しみください。

常闇の巫女2




月明かりだけが照らすその部屋の中、漆黒の少女は私に語る。


かつてアマハラとよばれ、今では東の果ての森と呼ばれるその故郷(ふるさと)の話を。

以前国王が話していた常闇の話を聞きながら、彼女は一体なにを思っただろうか?


物心ついたころより闇の中に生き、荒ぶる瘴気を祈りで抑える常闇の巫女。


「常闇の巫女であった私の話は今しばらく続くのです。」


彼女はベッドの上で改めて私に向き合って、再び静かに語り出す。

ゆっくりと流れる時間の中で、リーリカは自らの足跡を振り返るように語っていった。


時に彷徨い、時に這いずるように生きながらえて、それでも彼女は手掛かりを求め、東の大陸の各地を回ったのだという。

そして数年の月日が過ぎたころ、突如アマハラに有ったという封印石が北の大陸へ持ち込まれたという噂を聞きつけ、リーリカはこの大陸へやってきらしい。



そのころには既に冒険者として金枠を戴いていたというリーリカ。

それまでの数年の活動の中で身に着けた情報収集能力を遺憾なく発揮して、ついにはあと一歩というまで追い詰めたところで彼女は昔語りをやめたのだった。



翳りを増し、思い詰めるように唇を噛み、零れ落ちる涙は太腿で弾けて消える。

今からおよそ3年ほど前に起きた事件の後、悪意に蹂躙されたリーリカは保護されるようにグローリー男爵家に落ち着き、そのままメイドとしての職を得たのだという。

ほどなくして届けられる、東の果ての森の壊滅の報により、常闇の巫女はその役目から解放された。



心を氷で覆いつくし、ただ生ける屍のように黙々と、余計な事を考えず、ただ命令を遂行すればよい。


生きるために彼女が選んだ道は、氷に閉ざされ冷え切った、暗く悲しい道だった。



嗚咽を交えながら、それでも彼女は真っ直ぐとその瞳を向けると――


「こんな穢れたわたしでも、エリス様の月になっても良いのですか?」


様々な感情が込められたその言葉を紡ぐため、一体どれだけの葛藤を超えて言葉にしただろうか?

だから向き合おう。彼女の覚悟を真っ直ぐに受け止めて、報いるために。



「どんなことがあったとしても、リーリカはリーリカでしょ?私の前ではそのままのあなたで笑っていて欲しい。」


首に回しされる両腕に、彼女は驚くこともなく、自らも迎い入れたのだった。



青い月に照らされて、二つの影は再び一つに融け合った。



◇ ◇ ◇




「おはようございますお嬢様方。」


すっかり陽も高くなったころに、クレアさんの挨拶で目を覚ます。


「おはようございますクレアさん。ほら、リーリカも起きて」


未だ夢の世界を彷徨う黒髪の少女を見てクレアさんは目を大きくした。


「おはようございますエリスお嬢様、リーリカお嬢様が寝てらっしゃるなんて珍しいですね。」


「う……ん――エリス様もっとぉ……」


「「…………」」


「ほら、リーリカ!」


ぺしぺしと頬を叩くと、ようやく覚醒したリーリカ。

クレアさんの顔を見て、状況が飲み込めたのか慌ててリーリカは私の影に隠れてしまった。


「その、おはようございます、クレアさん。」


コホン。と咳払いをして


「お嬢様方はそのまま湯殿にどうぞ。その間にお着替えも用意しておきますので。」


なんて、乱れたベッドの上を見ないように、湯殿を指して促した。


「そ、そうさせてもらおうか?リーリカ。」


「そうですね、参りましょう。」


二人で湯殿に向かい、そのまま(・・・・)入る。

明るく照らされる港町は、今日もその絶景で、朝日というには遅いけど、とにかく日に照らされるリーリカは、なんだかすっきりとした笑みを湛えていたのだった。



部屋の中ではクレアさんがシーツを剥いで丸めたりしながら、朝のベッドメイクをこなしているようで、てきぱきと仕事に取り掛かっているようだった。


「ねぇ、リーリカ?」


「なんでしょう?」


「今はまだ力が足りない。きっと、私も、リーリカも。あの時闇の出現に、間違いなく後れを取ったのは確かだもの。」


「そう、ですね……」


「だから、すぐとは言わないわ。もっとしっかり力を付けて、いつか過去を清算するために、アマハラへ一緒に行きましょう。」


遠く海の向こう、東の空を見つめながら、彼女は私の手をしっかりと握ると――


「エリス様の行かれるとこならどこまでも。私はエリス様に付き従う月なのですから。」



今度は力強くそう宣言するのだった。




◇ ◇ ◇



遅い朝食をのんびり摂って、食後の紅茶を存分に楽しむと、私達は王城へと向かった。

勿論ゴームさんを送り届けた報告と、その他諸々の報告も併せて行う為に。


城門脇の階段を登り切り、閲兵場に着いたとき、私達は思わぬ再会を果たすこととなる。



「エリス様、あれは……」


真っ先に気が付いたリーリカの視線の先に、憲兵らしき三人に連行される小さな影。

その特徴的なシルエットに、初めて王都に来たときのことを思い出す。

大きく尖った飾り毛の付いた耳。

それは嫌だと言わんばかりに頭の後方へ畳まれるように向けられており、臀部から長く伸びる尻尾といえば、項垂れるよう力なく垂れさがっていた。


「ミーシャ……ちゃん?」


人違い――あるいは猫違いの可能性はあるものの、彼女の着ていた服には見覚えがあり、どうやらその可能性は低そうだ。だとすると、何か捕まるようなことをしたのだろうか?



リオンの山百合前から脱兎の如く駆けだして、いや、ここはあえて脱猫のように駆けだして、私達と別れてしまった猫型獣人の少女。


「リーリカ、行くわよ!」


慌てて憲兵隊の詰所の方へ向かうその一行を追いかけて、声を張り上げる。


「すみません、そこの憲兵さん待ってください!」


「なんだ貴様。突然現れて怪しい(エルフ)め! さてはこの者の仲間か?」


「仲間……というか、多分知り合いだとは思うんですけど……一体何があったか教えてくれませんか?」


「そんな事を言いながら、この者を逃がすつもりであろう。そうはいかんぞ、貴様らも厳しく調べ上げてやる。来い!」


取りつく島もないどころか息もできないほどに乱暴に首元を掴まれて、詰所へと引っ張っていかれる。

咄嗟に飛び掛かろうとしたリーリカを視線を送って押し留め、ミーシャちゃんと共に詰所へと向かう。


「そこのメイドも王城に潜り込もうとした不届き者であろう。事前に服装くらい下調べをしておくんだな、馬鹿が」


やけに高圧的な衛兵は、そうやって詰所へとやってくると、簡易の牢に私達三人を乱暴に押し込めるものだから、投げ込まれたミーシャちゃんに至っては頭をぶつけて気絶してしまったようだ。



「おい、騎士団に王城に忍び込もうとしていた賊の一味を捕まえたと報せて来い。これで俺たちもついに騎士団に取り立ててもらえるチャンスが来たかもしれん。」


などと別の衛兵に偉そうに命令していた。


顔を覆うタイプの兜の為に、三人の区別はつかないものの、ろくに話も聞かずにいきなりこの扱いというのを鑑みれば、おおかたその能力の低さが窺えるというものだった。


「ミーシャちゃん大丈夫かしら? 頭をぶつけていたようだけど。」


その言葉に様子を窺うリーリカは


「気を失っているだけのようですが、エリス様も折角の新しいブラウスが台無しですね……」


私の様子を確認したリーリカは小声でそんな事を言っている。


「乱暴に掴まれちゃったから破れてしまったわね。残念だわ。」


胸元を飾る優雅なドレープは外れかけ、首元にはガントレットで強く掴まれたおかげで穴が開いてしまっている。

さらに新しいボレロまで巻き込んでしまったので、傷だらけになり、汚れた荒い石畳の上に放り出されたために、スカートもあちらこちらが傷ついてしまっていた。


暫くすると先程出ていった衛兵は、二人の人物を伴って詰所に戻ってきた。


牢の中で座り込んだまま、上目遣いにその人物に会釈をすると、衛兵の背後で顔を引き攣らせ、その時間をしばしの間停めていた。


ああ、三人はこの後どうなっちゃうのかしら?



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第64話をお読みいただきました皆様には尽きぬ感謝を。

素敵な燃料となるブクマや評価のほか、RTなどでご支援いただいております皆様にもこの場をお借りして。


有難うございます。


当初と大幅に話を変えた、この常闇の巫女2ですが主にリーリカが巻き込まれた事件について大幅に省略いたしました。

理由はあまりに過酷で残虐な描写となるためで、R15範囲に収まらない内容になってしまう為です。

その為に前章22話から伏線を張っていたのですが、そちらの回収は諦めることに致します。


それではまた次回 気が付けばエルフ 第65話でお会いしましょう。

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