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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
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常闇の巫女1

こんにちは。

味醂です。


久しぶりに平日で追加投稿できました。

ごゆっくりお楽しみいただけたらと思います。

常闇の巫女1



あの闇との遭遇から数日。

ゴームさんを除く私達三人は言葉少なに王都へと戻ってきていた。


「近いですから」


そう言ってリオンの山百合に直接馬車をつけるとアリシアさんは王城へと戻り、今この部屋に居るのは私とリーリカの二人だけだった。


あの闇との遭遇以来、リーリカは無言でいることが増え、時折よこす縋るような視線も、迷いのうちに胸にしまい込んでいるかのようだった。


そんな彼女を見るたびに、私の胸はまるで焼けた鉄でも飲み込んだかのような疼痛を覚え、彼女と同じく迷いのままに言葉をかけてやることの出来ない自分の不甲斐なさが、その痛みをより強くさせるのだった。


彼女が抱えている何か。

彼女の人生を大きく狂わしてしまったであろう、二振りの退魔刀。

未だ彼女から聞くことの出来ないそれらについての話であることは、闇と彼女が交わした会話の断片からも十分推測ができる。


でも、そこへどんな顔をして踏み込んだらいいものか?

それはいつかは私も一緒に向き合わなければいけない事なのは間違いないということは直感で判るのだけど……。


静かに窓辺に佇むリーリカは、今にも闇に溶けて消えてしまいそうなほど儚くて、ひと時も目を離すのが躊躇われる位に精神を摩耗させいるのも明らかだった。



――彼女は今、葛藤しているのだ。


一滴の涙が零れ落ちるのを見止めたとき、私は意を決して行動に出たのだった。



近づく私に気が付くリーリカは、大きく瞳を見開くと、その小さな体を一瞬震わせて、目を伏せた。

私は出来るだけ優しくリーリカの肩に手を置いて、ゆっくりとした動作で彼女の首元へと指を這わせていった。

ゆっくりと、ブラウスのボタンをひとつ。またひとつと外していく。


全てのボタンを外した私は、はだけたブラウスの中へ手を差し入れて、抱き寄せるように背中の留め具を外せば、容の良い双丘を包み隠すそれは、パサリと足元に落ちていった。


リーリカを抱きしめたままそのまま背中を撫ぜおろし、背中側のコルセットの腰紐をするすると解いていく。

重みのあるコルセットスカートが、重力によって床に落ちれば、はだけたブラウスにショーツ姿の、なんとも言えない色香を放つ黒髪の少女が月明かりに浮かび上がっていた。


ああ、いけない。なんだか少しだけ男の人の気分が判ってしまったかも?


その破壊力を再認識しながら、私はリーリカに語り掛ける。


「リーリカ、温泉に入りましょ?一緒に入ってくれるのでしょ?」


そう言って私は顔をややつきあげるように、その首元を彼女の前に晒した。

おずおずと迫ってくるリーリカの細い手が、さきほどされたのと同じように、今度は私のブラウスのボタンをゆっくりと外していく。


いつもの違うその様子に、次第にリーリカの顔には上気の兆候が現れて、その息遣いを聞くたびに、私の胸は激しく高鳴っていった。

やがて一糸纏わぬ姿になると、手を繋いでテラスにある湯舟へと向かい、互いの存在を確かめるように身体の隅々まで清めると、二人で並んで湯船につかり、煌々と輝く月を寄り添いながらに眺めるのだった。



◇ ◇ ◇




エリス様に寄り添って、夜空に浮かぶ月を眺めているとエリス様はこんなことを口にしたのだ。


「あのね、リーリカ。私のいた世界では、あの月にまで人の手が届いていたのよ?」


「月にですか?」


「そう。あれは今いるこの星の周り付き従う従者のような星なの。」


「従者、ですか。」


「そう、従者。月が輝くのは太陽に照らされているからだけど、海の波を起こすのも、その月の力だというの。」


正直なんだか良く判らない。エリス様が他の世界からのビジターであることは知っていたものの、その世界がどういった世界だったのかということを、エリス様はあまり話すことはなかったからだ。

あるいは、そのことに触れるには、躊躇われる何かがあったのかも知れなかった。


――そんな語りや会話が幾度か繰り返されたのち。


「……だから、月を失った星もまた、滅びの道を歩むと言われているの。」


「…………」


「――あなたが共に歩んでくれるというなら、私はただ自分の後に付き従う影でなく、互いに必要としあう月でいてほしい。それが我儘な願望(ねがい)だと言われても、(絶望)に沈む影からあなたを希望の宇宙(そら)へ連れ出したい。」


とりとめもない会話の中に織り込まれたその願いに瞠目し、それが意味するところの月が私であったことに気が付いた時、私の中で何かが変化して、続く言葉に息を飲んだ。


「あなたが求める夜霧は、きっと私の進む道の先にあるわ。」


私を見つめる金の双眸が、静かに答えを待っている。


「……エリス様、私に勇気を分けてください。」


次第に距離を縮めるその双眸は次第に細く閉じられて、私の口は柔らかく温かなもので塞がれた。

青く光る月のもと、重なる影は融け合うように、ゆっくりとゆっくりと混ざり合っていった。



◇ ◇ ◇



――彼女を自身の月とするために。

――わたしは自ら望んでその一線を越えた。



「すっかりのぼせてしまったわね。」


「湯の中であんなことをするからです。」


ベッドの上で身を寄せながら、それでも少し嬉しそうに返事をする漆黒の少女。

やや潤んだその大きな開かれた瞳の中には淀みはなく、どこまでも澄んだ宇宙(そら)のように、深く静かにこちらを見つめている。


普段と違い丸く輝くそれは、彼女をより一層可愛らしく感じさせている。

やがてリーリカは一つ息をつくと、仰向けに天井を見つめ語り出したのだ。




これは闇に囚われた、千年の物語。



その昔、東の大陸の外れには周囲を山々で囲われたアマハラと呼ばれる地がありました。

険しい山々に囲まれたその中心は、一本の世界樹とそれを取り巻く豊かな森が広がっており、僅かな人々が世界樹と森を守って暮らしていたと伝えられています。


およそ千年ほど前、世界が溢れた闇によって滅亡の危機を迎えると、伝承の女神によって集められた勇気ある者たちはその闇に抗い、ついにはアマハラの地にその闇なる魔――常闇(とこやみ)と、のちに呼ばれるそれを封じ込めることに成功したのです。


常闇はその身を切り裂いたと言われる退魔刀・夜霧と、その邪悪な心を縫い留めたという影縫の二振りの刀で封じられ、世界樹のウロの中に作られた社の中深くに封印されていました。

そしてそれを千年もの長きにわたり代々守り通した者、それが常闇の巫女と言われるその社を守る一族――アハマラノミヤに生まれた女達でした。


常闇の巫女は任に就くと社から出ることを許されず、むろん候補者が里外に出ることも禁じられ、その狭い集落の中だけで決して長くない一生を常闇への祈りに費やしたと言います。

外光の一切入らない社の中、妙齢を迎えた巫女には新たな巫女を産むために里の男が宛がわれ、誰ともわからぬその者の子を宿し、産み落とされた赤子はすぐに引き離され次なる巫女として育てられます。

約束の時が近づいたおよそ20年程前に、それは起こったといいます。


その巫女は漆黒の長髪と、豊かな癒しの才を持ち合わせ歴代きっての巫女だったそうです。

しかし、その巫女は誰と通じることもなく、身籠ったのです。

それは里の者にとって看過できない事態でした。




一体だれが?


結局父親は判らずじまいのまま、巫女はやがて一人の女児を産み落とすこととなり、その赤子は忌子として母親と共に社に幽閉されました。


一切の闇の中、それでも赤子は育っていき、やがて14年の月日が過ぎたころ、巫女は突然現れた闇と共に姿を消しました。


()は突如夜霧を解き放とうとした巫女(はは)の胸を、その影縫で貫いて、確かにその命を奪った筈なのに、夜霧と共に虚空へと飛び去ったそれを追う旅へ。

アマハラノミヤを名乗るものの責任を果たすべく、影縫と共に死出の旅に出たのです。



リーリカ・アマハラノミヤ

それがわたしの真名(まな)なのです。





こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第63話をお読みいただきました皆様、有難うございます。

分量的に分割話になりますので出来るだけ次話も早めに書き上げたいと思っております。


それではまた次回 気が付けばエルフ 第64話でお会いしましょう。

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