閉じた世界
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ第52話を公開いたします。
お楽しみいただければ嬉しいです。
#6/20 誤変換と誤字がありましたので一文改稿しました。
閉じた世界
天井も壁も床も真っ白な通路に足音が響く。
足跡の主たちの姿も真っ白な白衣に身を包んでいた。
その彼らが歩く通路はその全ての面が白く光を発しており、光っていないのは進む先にあるやや金色掛かった無機質な扉だけだった。
「なんでもまた一人みつかったらしいな。」
「またか。最近少し多すぎるんじゃないか?」
「さあ、どうだろうな。そもそもどうやって見つけているかの方がよっぽど俺には謎だがな。」
「謎なんか気にしない事だな。知るべきことでない事を知ってしまったばかりに存在を消された哀れな奴らならもう見飽きたからな。」
「まったくだ。俺たちは与えられた仕事だけをしていればいいのだから。」
そういってドアの前まで歩いてきた二人は立ち止まり、ドアを挟んで反対側に立った。
「よし、カウントいくぞ。」
「「3」」
「「2」」
「「1」」
「「開錠」」
ドア横のプレートにそれぞれ手をかざし、オープンの掛け声とともにプシューっと音を立てて扉は上にスライドした。
厚さ30センチはありそうな扉を通り入った部屋は、廊下と同じく真っ白な部屋だったが、床の上にはたくさんの透明なカプセルが設置されている。
そのカプセル一つ一つに横たわるのは
亜人と呼ばれるソレが一糸まとわぬ姿で寝かされている。
種族も性別もまちまちで、創作物の中ではおなじみのその亜人達はただカプセルの中で永遠に寝かされ続けるのだ。
青い髪の人間
耳の長い人間
若々しい身体なのに、皺だらけ髭だらけな人間。
挙句にはやけに動物的な耳や、尻尾を持つ人間や
山羊や羊の角を持つ人間。
まさに亜人の博物館だった。
「よし、個体ナンバー26~88までは問題ないな。」
「了解した。個体ナンバー26~88までは問題なしと。」
男たちはカプセルについているディスプレイに表示されるステータスをチェックしながら設備の不備などがないかも確認している。
昔はずいぶんと非人道的な実験も行われたようだが、それらが禁止されてすでに久しい。
もっとも発見と同時に意識を奪い、生きた標本にすることが人道的であるかどうかなど、この施設に関わる一部の人間に問うだけ無駄なのである。
こうして存在しないはずの施設のとある場所に連れてこられた時点で、彼らに未来はないのだから。
◇ ◇ ◇
王城での晩餐会は和やかな雰囲気の中行われた。
いや、和やかすぎるというか、違う。気さく過ぎた。
確かに堅苦しいパーティーは正直勘弁してほしい所だったので、ある意味本望であった、筈なのに。
「リーリカ……大丈夫?」
「大丈夫です、とは言い難いですね、申し訳ありませんがもう少しだけこのままにさせてください」
ぐったりとテーブルに突っ伏しているリーリカ。
淡い菫色で大きくぼかし染めされたドレスには、沢山のスカラップ形状のフリルで飾られて、背中側には大きなリボンが腰のとこで結ばれていた。
現在はうつぶせになっているので見えないけれど、胸元のカットも大小のスカラップの組み合わせでカットされており、とても可愛らしい。
元々童顔なリーリカが可愛らしいドレスでまるでお人形のように着飾ったところ、他の参加者のツボにはまったらしく延々と、食べる暇もないのではないかという位に引っ張りだこだった。
私は私で、噂の下着についてや、ベロニカさんのドレスの事、伝説の夜会と称されたグローリー男爵家でのパーティーの話題で随分と振り回されたり、そのあまりの人気ぶりに感心した国王が、王宮のストック衣装に導入しようということもあり半ば仕事の延長と化していた。
途中女性陣に交じって下着の話題に割り込んできた国王が、近衛師団のレンさんに引きずって行かれるなんて事故があったりもした気がするけれど、そこは敢えて気が付かなかったという事にしておきたい。
見てないったら見てないんだから。
終始私の様子を気にしていたリーリカだったのだけど、周囲を取り囲むマダム方や、メイドさんたちに囲まれてもみくちゃ状態で過ごしていたので途中からはそれどころではなくなったようで、無事パーティーが終わった今、ぐったりと力尽きている。今ここ状態なのだ。
手持ち無沙汰に部屋の観察をしてみる。
ここは王都に来た際にはいつでも使ってよいと王城の中に割り当てられた私の部屋だ。
部屋を入ると左手側の壁には絵が描かれているのが特徴的で、最初の部屋には応接セットが置いてあり、丁度絵のある壁の裏側の部屋は寝室になっている。
優しい色調で壁に描かれた絵は森の中の泉と水辺に佇む妖精の絵だ。
フレスコ画というのだろうか?漆喰の壁に直接描かれたその絵は、独特の柔らかみを帯びており、周囲の部分は明確な境目がなく、そのまま白い壁へとなっているところが素敵だ。
キャンドルに柔らかく照らされるその絵は、まるで浮かび上がるかのように広がって、そのまま絵の中の世界に引き込まれそうな錯覚すら覚えた。
寝室は寝室で、やや暗めの赤い絨毯が敷かれた部屋に大きなベッドが置かれており、これまたお約束の様に天蓋までついている。
クッションのよく効くやわらかなベッドに大きな枕。
それはお姫様にでもなった気分で寝れることだろう。
王城に私室を用意されるというスケールのズレに私は軽く眩暈を起こす一方で、この部屋は結構気に入っていたりするのだ。
もともと誰の為の部屋だったのだろう?という素朴な疑問が湧いてくるのだけど。
きっとそれは知らないほうが心の安寧の為には良いような気もしていた。
部屋を眺めていると来客を告げるノックの音。
「エリス様よろしいでしょうか?」
「どうぞ。」
控えめなノックの後に、確認をして入ってきたのは私とリーリカの世話をするようにとつけられたアリシアという少女だ。
王城で働く給仕の中でも客室付きの彼女が着ているメイド服は、フリルやドレープが多く見栄えのするタイプだ。
「ご希望されておりました湯浴みの準備が整いましたのでご案内いたします。」
「ありがとうございます。リーリカも行くでしょ?」
私がそういうと、アリシアは申し訳なさそうに
「申し訳ございません、ご奉仕の都合がありますので順番にご案内致しますので、まずはエリス様からお願いいたします。」
と深々と頭を下げられてしまい、リーリカにも
「エリス様、私の事はお気になさらず行ってきてください。」
と言われてしまったので私はお言葉に甘えることにした。
「じゃあ、そうさせて貰うわね。アリシアさん案内をお願いします。」
と私が答えると、彼女はパァっと顔を明るくさせて、それではご案内いたしますと私を先導するのだった。
そして、王宮の中にある湯殿の中でも、王族にしか解放しないという湯殿で私は迎えられ……
廊下からドアを開けるとすぐに内廊下になっており、そこにまず一人メイドさんが佇んでいて、ドアを開けてくれる。
まあ、廊下からそのまま中が丸見えじゃ開けられたときに困るから当然の作りだったけれど、私が絶句したのはそのドアを進んだ先。
目測やや細長い十畳くらいのスペースの両側にずらりと並ぶ六人のメイドさん。
ようこそおいでくださいました。とピタリとあった挨拶ののちに、中央付近に連れ出された私は……
それでは失礼しますと大勢のメイドさんたちに囲まれて身ぐるみを剥がれていく。
ある者はティアラを外し、あるものはドレスを脱がせ、沢山の手が私の装飾品や衣服を手際よく剥いでいく。
ある程度予測してはいたものの、なぜか衣服を一枚脱がせるたびに
「まぁ。」とか「あら」とかやけに熱のこもった湿度の高い嘆息を浴びせられ、一体どんなプレイだろう?などと半ば思考が焼き切れたような状態に。
そしてついに下着姿になった私は、彼女たちの好奇に満ちたまなざしを浴びるのだ。
お願いだからそんなにマジマジと見つめないで、そんなに見つめられると……
「これが噂の新しい下着ですのね。」
誰かがそんなことを言う。
「そ、その。下着くらいは自分で脱げますから」
と言ってみたものの、それが了承されることはなく
「修練も兼ねておりますので、是非お手伝いさせてくださいまし」
と誰かの手が胸をそっと支え上げ……
違う手がそっと背中の留め具を外し
するりと肩紐が滑り落ち、ソレが露わになると
「なんと愛らしいことでしょう?」
などとみんなして頷くのだ。
くらくらとする意識をなんとか保ち、平静を装って。
「アッ……」
下を脱がされるときに触れられた誰かの指の感触に思わず変な声が漏れ、ガクガクと力の抜けそうになる足に必死で力を入れてなんとか耐えた。
「「「まぁ。。」」」
「ひゃぅっ!?」
目をぎゅっと瞑って、しっとりとした感触に耐えながらぐるぐるとする私はその後の事をあまり覚えていない。
しっかりと潤ったのは間違いないけれど。
身体中隅々まで多くの人の手で洗われるという稀有な体験に王族とは大変なものだなと、心の底から思ったりしたのだった。
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ第52話をお読みいただきました皆様、ありがとうございます。
あと数日で公開から1か月になります。
これもひとえに皆様のおかげです。
皆様からのブクマや評価を糧に今後とも頑張って、まずは2章の完結を目指します。
それではまた次回 気が付けばエルフ 第53話でお会いしましょう。




