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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
50/144

布教活動

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第50話公開いたします。

おたのしみください。

布教活動




国王との謁見を、無事に済ませた私達。

ランチをすませて観光へ、街に繰り出し桟橋で、帆船見たあと散策に、匂いに寄せられ彷徨えば、見つけたソレは。


たこ焼きだった。


小麦粉を出汁でといてゆるい生地にする。

この際醤油なども少量入れると香ばしく仕上がるし、卵を入れる人もいるが、この場合はひっくり返すのがやや難しくなるのと火の通りが判りにくくなるのでやや上級者向けだ。


良く熱した鉄板に充分に油を引いたら、タコ、天かす、刻み紅ショウガ、お好みでネギなどを入れ、まとまる程度に熱したら、周囲の耳部分を寄せておく。

更に火が通り、底面が固まったとこでフチを強く擦るようにアイスピックみたいなもので引っ掻いてひっくり返す。

このとき無理に完全にひっくり返さなくてもいい。

染み出た生地が再び外周面を形成していくので、時間を置いてさらに返せば綺麗な球形にできるのだ。


そんな感じである程度固まった後は軽くフチを撫ぜるだけで鉄板の上をころころと回転するように綺麗なたこ焼きが完成する。


そのまま食べても良し。それでも王道はソースと削り節に青のりだろうか?


いや、そういう訳ではない。

そんな話じゃない。



回顧に浸る私はなんとか現実に帰ってくると、目の前の様子を改めて観察した。


独特な形状の真新しい鉄板。

並べられた具材はいいとして、問題なのはその店の主だ。


作ろうとしているもののイメージはありそうな物の、まったくダメだ。なってない。

ハッキリ言って下手すぎる。


「エリス様どうされたのですか?」


そんな手際の悪い様子を見ながら苛立っていると、リーリカは不思議そうに眺めていた。


「あの奇妙な食べ物なら、匂いはともかく、なんだか見た目がよくありませんね。試すまでもないでしょう。」


少々勘違いしたようだけど、リーリカのその言葉に私の心が決まる。


許せない、あんな下手すぎる、丸くもならないたこ焼きもどきでたこ焼きの名を地に落とすなんて。


「ごめん、リーリカちょっと行ってくる。」


つかつかと真新しい屋台のほうに近づいて、崩れる生地に四苦八苦する店主から道具を奪い取ると


「ちょっと貸してみなさい!ほら、もっと火力上げて、こんなんじゃ材料無駄にするだけよ!」


と手際よく手直しをしていくのだった。


突然の私の行動に唖然とするリーリカを見ながら。

ああ、なんか勢いでやらかしちゃったと思いつつ、なるようになれと私は開き直るのだった。


◇ ◇ ◇




険しい岩山に抱かれた静かな集落。


四季折々の自然の恵みがもたらす山の幸や貴重な薬草に支えられ、つつましいながらも豊かに暮らしてきたその集落の中を一頭の馬がその蹄を力強く踏み鳴らし、駆けてゆく。

途中通りすがった村人になにやら馬上から問いかけて、村人の指差す方向へと馬を走らせるのは、略式ではあるがここノーザ王国の正規の騎士の旅装の人物だった。


やがて目的の屋敷に騎士が到着した時、屋敷の庭にはちょうど主人と思しき人物が、職人らしき男になにやら指示を出しているところだった。


騎乗の騎士に気が付いて、何事かと話をやめて騎士に注目する二人。

本来ならば村内での早駆けは諫められるべき行為ではあったが、その相手が伝令騎士なのは見ればわかる。

その騎士は颯爽と馬から飛び降りると、村長に向かって


「その者この集落の村長で間違いないか?」


と確認した。


頷く村長を確認すると、騎士はたすき掛けにした革包を外すと中から一通の封書を取り出し村長に差し出した。


「封蝋を確認されよ。」


恭しく両手で封書を受け取った村長はその封蝋を見てゴクリと喉を鳴らす。


「確かに王の封、確認いたしました。」


そう言って頭を下げたまま封書を伝令騎士に返す。

伝令騎士は懐から取り出したダガーで封を割ると、封書を開いて朗々とその内容を読み上げた。


その内容は申し出にあった集落の命名についての返答で、希望のあった村の名前からは少し変更があること、同時に奇跡を起こしたという者の石像の制作の許可をすること、その費用を今期の税の免除をもって支援することが約束されたという内容だった。

最後につげられた村の名前は


聖地ラスティ


そこまで告げた伝令騎士は懐から一つの紋章が彫られた金属プレートを取り出し村長に言ったのだ。


「今よりこの村は 聖地ラスティとなり、この紋章が村のシンボルとなる。村長の変更の際は次代の村の代表へ継いでいくように。」



「謹んでお受けいたします。」


震える両手で、その紋章を受け取る村長。


紋章は木に祈りをささげるエルフの女性を意匠化したものだった。


そして紋章を配したということは、王の直轄都市となることを意味していた。


「世界樹の若木は世界の希望。聖地ラスティとなったこの地に住まう者でしっかり守るのだ。頼んだぞ。」


最後にそう言って伝令騎士は待機していた馬に跨り、颯爽と駆けていくのだった。



我に返った村長は慌てて集落の、いや聖地ラスティの住人達を招集することになったのだ。



その夜村長の屋敷に集められた住人達は、王都からの返答に大いに喜び、そしてすぐにエリス様の石像を世界樹の前に作ろうという話になり、誰に作らせるのか、材料はどうするのか、などの話が夜遅くまで続けられたのだった。


◇ ◇ ◇



海辺に作られた公園のベンチでリーリカと仲良く並んで熱々の戦利品(たこやき)を頬張る。


「はい、あーん。」


「あふ、あふいです。えりふふぁま」


「でも熱いのをはふはふと食べるのが美味しいのよ。」


そんな事を言いながら、警戒してなかなか手を出さないリーリカにたこ焼きを食べさせる。

食べ方をレクチャーしつつ、勿論自分がつまむことも忘れない。


なんでも先程の店の店主はある日夢にみたというたこ焼きを試行錯誤して作ってみたというのだ。

その為にわざわざ高価なたこ焼き鉄板を特注してまでやるなんて。

思うところはあるものの、簡単なレシピは教えたし、綺麗に焼けるようになったらきっと人気の屋台になるだろう。


去り際に弟子にしてくれとか騒がれたけれど、逃げるようにその場を後にした。


あ、勿論今食べているたこ焼きはきちんと貰ってきたものだからね。

もっとも焼いたのは私自身ではあったけど。


「リーリカどうだった?」


食べ終えたとこでリーリカに感想を聞いてみる。


「そうですね、独特ではありますが、思ったより美味しいものですね。」


どうにもリーリカが乗り気でなかったのは、こちらの世界でタコを食べるのには馴染が無いとのこと。


まあ、確かに見た目的に結構アレだもんね。タコって。

個人的には夢で見たというたこ焼きを再現したことでなく、鰹節を再現してしまったというほうが驚愕だったりした。

日本人には馴染の深い鰹節。

それでもそれを作るには非常に手間と時間が掛かるもので、水煮した鰹を骨抜きして、何度かの燻製ののちに整形したそれをカビを付けて熟成させて初めて完成だった筈。


こちらの世界でも燻製は比較的よく使われる、というか少なくともこの世界に来るまでは、自分で燻製なんか作ったことはないけれど、真っ先に冒険中の食材の保存ということで肉や魚を燻製することを、私はサラに教えられていた。

そこまではいいとして、カビによる熟成という手法もなにか確立されているのだろうか?


海外ならばチーズなのに、日本では麹カビなどを利用した熟成製品はそれこそ多かったけれど、異なりながらも似た文化がうっすらと交じり合う異世界間の謎は、案外転生者に隠されていたのかもしれないとなんとなしに思い至ったのだった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第50話をお読みいただきありがとうございます。

皆様のご支援のおかげでなんとか50話まで漕ぎつけることができました。


なかなか集中して作業を行う時間が取れず苦戦しておりますが、暖かく見守っていただけると嬉しいです。

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