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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
49/144

港町

#2017-10-11改稿 誤字ほか一文の表現を変更。

こんにちは。

味醂です。


大変お待たせしました。

気が付けばエルフ 第49話公開です。

お楽しみください。

 港町




「お嬢様方お食事の用意ができました」


 クレアさんのその一言でベッドの上でじゃれ合う私とリーリカは現実に帰ってきた。

 最後の方はもう、ただのくすぐり合いになっていたけれど、なんだか硬くこり固まった気分は幾分和らいで、緊張が和らげば食欲も出てくるというものだと思う。


 オーシャンビューのダイニングでのランチ。

 テーブルに座るのは三人だ。

 いつもは一緒に食事をすることのないクレアさんだけれど、用意された食事の多さにアレコレと理由を付けて無理矢理付き合わせているというのが本当のところだったけれど、それでも食事はやっぱりみんなで食べるほうが私は美味しいと思うのだ。


 テーブルの上には魚介のスープ。これは元の世界でいえばクラムチャウダーに近い感じで、乳酪(チーズ)をたっぷりと使われたそのスープに焼きたてのパンと一緒に食べるとよく合った。

 白身魚のほぐし身と、おそらくホタテに似た貝の貝柱。若干風味は違うものの、食感はほとんど同じだと思う。

 個人的にはもう少し、胡椒を利かせた仕立てのほうが好みだけれど、まずはありのままの味付けで食べるのが私の流儀だった。



 サッパリとした、やや酸味のあるドレッシングはフルーツの果汁入りなのか、アボガドのようなクリーミーな野菜か果物か判断に困るソレと香草をよく引き立たせており、ついつい後引く美味しさだった。


 全く違う世界だというのに、植物や動物にその差異はあまり感じられない。

 逆に言ってしまえば、その大きさを除いてしまえば本当に突飛なのは亜人位のものだろうとも思う。

 数こそ多くはないものの、獣人も街中ではちらほらと見かけるし、実際にこのリオンの街に来るまで一緒に行動していたミーシャちゃんも猫型の獣人だった。

 そもそも私に至ってはエルフだし、他にもファンタジーでお馴染みのドワーフなんかもいる。

 ビックリしたことと言えば、ドワーフの男性はまったくもってのイメージ通りだったことに対して、女性は背こそ小柄なものの、イメージとしてはよく日に灼けた小柄な女性 、ただしそのほとんどがグラマラス。という注釈が付く程度で深い皺と豊かすぎる髭に覆われる男性とはずいぶんと違って見えるのだ。


 もっとも酒精への耐性は男女差はないようで、夜にもなれば、或いは昼間から酒場を賑わすのは専ら彼らの役目だろう。


 私が持っていたイメージと違っていた種族といえば、ノームと呼ばれる地霊に連なる種族で、彼らは、いや彼女らは性別が女性しかいないのだ。

 大体が150センチから160センチの身長の彼女たちの最も大きな特徴は、頭頂部からカーブを描き、側頭部に生えるツノだろう。

 形状は様々あるようだけど、ごつごつとした羊のツノにそっくりなそれは、生まれてすぐはちょっとしたコブのような状態らしいのだけど、10歳前後くらいから伸び始め数年で立派な角になるのだという。

 彼女たちの中では角が立派に育つと一人前ということで自立するらしい。

 シリウスで何度か行った薬草等の採取では、非常に優れた感性を発揮するらしく、ノームにしか見つけることのできない薬草すらあるほどだ。


 どんな効果のある薬草かは知らないけどね。



 昼食を食べ終えた私たちは、当初の予定通りに王都観光をするつもりでいる。

 観光といえばやっぱり食べ歩きかしら?

 その割にガッツリと昼食を食べてしまった気がしないでもないけれど、その時はその時である。


「ところでクレアさん、リオンならではの食べ物ってないんですか?」


「王都のですか、そうですね。港湾区側の商業区になくはないですが……」


 なんとも歯切れの悪い返答に首を傾げる私。


「いえ、独特の臭気を嫌って港湾区のほうへ行きたがらない方も多いのですよ。」


 説明してくれるクレアさんの言うのは俗にいう磯の香りが苦手というやつだろうとアタリをつける。

 でもまあ、百聞は一見にしかずっていうしね。



 ◇ ◇ ◇




「凄く大きいわ」


「そうですね、ですがこれでもまだ小さいほうですよ、エリス様。」


 折角王都に来たのだからとまずは食後の散歩も兼ねて私とリーリカは港に来ていた。

 丁度到着した帆船が入港する様子を見学しながら、私はちょっとした興奮に包まれている。


 だって、大きな船なんか乗ったことはないし、見たこともほとんどないもの。

 ましてそれが木造船で帆船とくれば、猶更だ。


 まるで古く付いたドアを開けるかのように、鈍く軋む音が時折聞こえてくる。

 なにやら大声で叫ぶ人々は、身振り手振りを交えて決まった信号を送っている様にも見える。


「あ、ロープを投げたよ?」


「あのロープで引き寄せながら固定するのですよ。」


 みていると確かにリーリカの言う通り、桟橋に待機していた作業員はそのロープを素早く拾うと手近な場所にあった、十字架を深く埋め込んだような柱に複雑に結んでいく。


 残念ながらコントロール性を上げるためか既に三本あるマストのうち二本は畳まれていたものの、最後尾にあるミズンマストと船首に突き出た衝角からフォア、メインのマストへと張られたジブが帆船であることを主張している。


「帆船なんて初めて見たからちょっと感動しちゃうわ。でも海の上では魔物は出ないのかしら?」


「いえ、海上でも魔物は出ますよ。衝角の付け根に(バリスタ)が設置されているのが見えますか?」


 リーリカに指摘されてよくよくその部分をみれば、確かに稼働式の弩が設置されているようにもみえる。


「あれね。」


「そうです。あれと同じものが船に数か所設置されていて、魔物が出た場合はそれで応戦しますね。」


 どうにもこの世界では海の上だろうが陸の上だろうが移動とは常に命がけで行うものらしい。

 そういえばドラゴンなんていたりするのだろうか?

 ファンタジーつながりで想像してみるも、聞くことまではしなかったけれど。


「それじゃあ、とりあえず船も見れたことだし少し街を散歩しましょうか」


「そうですね。そろそろ荷揚げも始まるでしょうから、邪魔になると気の荒い船乗りの事、何かあっては大変です。」


 そうして桟橋から引き上げた私たちは港湾区側の商業区に移動したのだった。



 流石港町という事もあり、商業区と港湾区の境界付近には魚を扱う店も多い。

 ほかに目立つといえば、木箱を売る店が異様に多い事だ。

 もっともそちらはリーリカに聞くまでもなくなんとなく想像はついていて、おそらくは荷揚げや荷積み等の為の梱包資材なんだろう。

 基本的に船に荷を乗せる際にはいくつかの木箱ごとに船賃がかかるようになっているそうで、そのために小箱、中箱、大箱、特大箱と決まった大きさの箱が使われるのだそうだ。


 勿論船側もそれらに合わせて船倉は設計されているそうで、綺麗に積み込むことが出来るのだそうだ。


 そんな風変わりな商業区を歩いていると、ふと懐かしい香りが漂ってきた。

 私はリーリカの手をがっしりと掴むと、その香りの出どころを求めてその歩みを早める。


 やがて路地を曲った先の角の店にいきついて、そこで私が目にしたものは、なんとも懐かしいあの食べ物だった。


「なんでしょうか?初めて見る食べ物ですが」


 リーリカは変わった形状の鉄板で焼かれるその食べ物を、胡乱な視線で凝視しており、更には焼きあがったそれに添えられ揺れる物をみて


「削った木を乗せて食べるなんて随分とおかしな食べ物ですね。」


 と感想を漏らした。


 そうじゃない、これはアレだ。

 学校帰りによく食べた懐かしの味。


「タコ焼きだわ……」


 ごくりと喉を鳴らし、私はその場から動けないでいた。


 たこ焼き タコ焼き たこ焼き タコ焼き……

 リフレインする脳内で、私はどうすべきかを考えていたのだった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第49話をお読みいただきましてありがとうございます。

皆様のおかけで昨夜偶然にも22222pvという随分キリの良いPVを目撃することが出来ました。

ユニーク読者はおよそ4000とちょっと。大体18~22%程度の推移をしているようです。


今後とも皆様の期待に応えられるように頑張っていきたいと思います。

それではまた次回、気が付けばエルフ 第50話でお会いしましょう。

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