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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
47/144

謁見

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第47話を公開します。

お楽しみください。


普段よりちょっとだけ長いお話です。


#誤字改稿

謁見



玉座に続く赤い絨毯の両端は金糸で豪華に飾られて、その歩き心地はまるで自分の心境を表しているかのように、どこか落ち着かない不安定さを感じた。


文官からの呼び出しの声に導かれ、なんとか転ばずに歩み出た私は数段ある段差の手前で立ち止まり、王宮式の礼を執る。

別に平伏したりはしない。やや頭を垂れて、会釈するようにと待合室で教えられたとおりにした。

私のやや後ろにはリーリカが控えており、表情こそ窺うことはできないものの、ピリピリとした緊張感はこちらにまで伝わってきている。



緊張で目が回る上に周囲の突き刺さるような視線に耐えながら少しばかりの時間を待つ。

正直体感的には五分はそうしていたんじゃないかと思う位に長く感じたのは、改めて言うまでもないだろう。


そもそも、なぜいきなり招聘状が私に届いたのかすら、まったくわからないのだ。

何を話して良いのかすら分かったものじゃない。



「其方、近々シリウスはじめリオンの夫人達を騒がしているエリスと名乗るエルフの冒険者で相違ないな?」


思っていたより若々しい声に、私は少々驚きながらも声がひっくり返らない事を祈りながら答える。


「はい。国王陛下の仰る通り、新しいデザインのドレスを拡げるお手伝いをしている冒険者のエリスです。」


もう少し良い返答はなかったものかと自問しながらも、なんとかそれだけを答える。



「城の女官たちの中でも色々と噂に事欠かぬ。聞けば大層美しいというのでこうして直に見てみたくなったのだ。どれ、もう少し顔を上げよ。」


そう言われて、さすがに嫌ですと言えないのが悲しい所。

私は言われるままに国王のほうを見た。


そこにいたのは、想像していた年を取った老獪な王ではなく、まだ若々しい身体に、ライトブラウンのサッパリとした髪、そして同じ色の顎鬚が似合うまだ若い王だった。


「ほう、噂に違わぬその容姿。悪しき習慣と後宮を取り潰す前であったなら、是非とも迎え入れたかったほどだな。」


そんな王の言葉に、どこからか、いかにもな咳払いが聞こえてくる。

きっとこれは国王流のウィットに飛んだジョークなのだろう。

もっともジョークで国王のハーレムに加わり夜伽番なんかに選ばれたら堪ったものではないのだけど。


というかセクハラよ、これ。


なんて心の内でこっそり批難の言葉を掛けた。

そんな私の悪態に気が付いたかどうかは定かではないけれど、国王はしれっとした顔で続けた。



「しかし、聞き及んでいる話によれば事はもう少しばかり複雑なのだ。まずはそちらを確認しなければならないが」

そこで一度言葉を区切り、国王は玉座の後方に声をかける。


「ラヴィナス卿。これへ。」


「はっ!」


そう言われ返事と共に王の傍に歩み出るラヴィナス卿。昨日山百合に招聘状を届けた近衛師団のレン・ラヴィナスだ。

王がなにやら耳打ちすると、彼女は私の前に歩み出て


「王のお近くに。」


と私を誘導した。


玉座の少し前で止り、私は片膝をつき控える。

おもむろに玉座から立ち上がった王は、私の前に歩み寄り


「其方には申し訳ないが、ステータスを確認させてもらわねばならん。無論ここでの秘密の事。不用意な情報が漏れない事を国の威信にかけて誓おう。」


と、やや小さな声で囁いた。


「わかりました。……ステータスオープン。」


浮き上がる文字列に王は視線を注ぐ。


「やはり、間違いないな。」



王はそんなことを呟いた。


「ステータスを閉じてよい。立ち上がり、少し待つように。」


「ラヴィナス卿。王剣をここへもて。」


その一言に、背後に黒い渦が立ち上る。


そんな状況に王は動じた様子もなくただ黒い殺意を放つ少女の方を見ると


「そこな者、はやまるでない。心配せずとも其方の主人に危害は及ばぬ。」


ただそんなことを言ったのだ。


やがて王剣と呼ばれた細身の剣を携えたラヴィナス卿が戻ると、王は人払いを命じ、それに伴って二十人ほどいた謁見の間には私とリーリカ、王とラヴィナス卿、六人ほどの文官を除いて、他の者は退出した。


謁見の間の両脇に控えていた兵士たちまでも、だ。


所在なく立ち尽くす私の前に王剣を受け取った王が近寄り対峙すると、王は驚愕の行動に出た。


その王剣を鞘からゆっくりと引き抜くと、なんと私の前に跪き、自らの前に王剣を置いたのだ。

困惑する私に王はその端正な顔だけをしっかりとあげて、告げたのだ。



「偉大なる女神ラスティの神子たる蒼き魂を持つハイエルフの王女よ。我らが世界へ平定をもたらす者よ、我等ノーザに連なる者の末裔。再び汝の剣となりて共に闇を祓うと誓わん。我が名はノーザ38世」


突然の事態に時間が止まる。

気が付けば、私以外のその部屋にいたもの全ての人々が、同じように片膝をついた状態だったのだ。

勿論先程まで黒々とした殺意の波動を迸らしていたリーリカも、すっかり黒い波動を収めて恭しく平伏している。



これはつまり、どういうことなの!?


◇ ◇ ◇




謁見の間から場所を移し、ここは王城にある秘密の貴賓室。

その豪華な内装と裏腹に、窓の一切ない多重構造のこの部屋は、重要な外交や国家機密を扱う際に使用されてきたのだという。

無論魔法などによる覗き見などを防止するような機構も備えているらしく、リオンで最も安全な場所という触れ込みだった。



唖然とする私がリーリカと共にこの部屋に連れてこられて、体感で二時間ほど。

恐らく今頃は11時くらいだろう。


その他の者の謁見を終えた王を迎えると、部屋の扉は静かに閉ざされた。


「混乱されるのも無理はない。まず其方に伝えなければならない事は、その名前についてだろう。」

そう言って説明を始める国王。


「其方、自身がビジターと呼ばれる存在であるのは認識しているだろうが……この世界においてステータスに刻まれる名は真名という魂に刻まれし名前だ。叙勲の際に儀式を伴うのも、その名を魂に刻み込むが故である。その名前の中でもラスティとは特別な意味を持つ氏族。つまりは女神ラスティの眷属たる者の証であり、その後に続く名は故郷となる世界に連なるものだ。」


国王はそこで区切ると、私が言葉の意味を咀嚼する時間を待っているようだった。

私は黙って頷いて、続きを促す。


「事の発端は、一つの名もなき村であった。その村には最近現れたエルフによって穢れを打ち払われ、更に驚くことに世界樹を芽吹かせ育てたという。村の者はそのエルフ、つまりは其方の事だが、その名前が伝承の女神ラスティで合ったことを思い出し、村にその名前を付けたいという申し出があったのだ。」


つまりは私とサラとリーリカがゴブリン退治に向かった村。

そしてつい先ほど、王によって承認され、聖地ラスティという仰々しい名前に決定した村の事だった。


「我らが先祖がこの国を興したのは、そもそも千年ほど前に遡る常闇の氾濫に対抗するためだった。そしてその時にも女神ラスティは眷属たるビジターを顕現され、世界に散るいくつかの王家の元となった者たちは、ラスティの神子と共に常闇を東の大陸でついに封じることに成功した。」


カチャリ。

と響く音。


「申し訳ございません、お続けください。」


うっかり音を立ててしまったリーリカが謝罪すると王はさらに続ける。


「うむ。結局のところ、常闇を討ち滅ぼすことはできず、封じるに留まったわけだが、本来ならばその瘴気は時と共に浄化され、分解され再び星の理によって還元される筈だった。千年かけてそれを成し遂げるのは世界樹の役目ではあったのだが、東の果ての森と呼ばれる東の大陸の閉じた森で最後の決戦が行われたのはその為だった。かの地は世界樹の森だったからな。」


「あの、よろしいですか?」


おずおずと手を上げる。


「うむ。」


「だった、という事は、今は違うのですか?」


なんとなく予感はあったものの、敢えて聞いてみる。


「そうだ、浄化は目前であったはずなのだが、今から二十と余年前に突如世界樹が枯れ始めたのだ。それはものすごい勢いで周囲の森をも浸食し、数年のうちについには世界樹は砕け、炭となってしまったそうだ。」



「「………………」」


不意に奇妙な感覚に襲われる。

何か大事なことを忘れているような。


「だが、常闇を封じたラスティと、ともに立ち上がった者たちは、その事を予見したか、はたまた保険だったのか、その伝承を子々孫々に伝えて、再びラスティの名を冠するものが現れたときには、その手を取り、協力するようにと、伝承者の役目を負ったのだ。各地に散り、興国することでどこにラスティの神子が現れても保護できるように。」


窺う国王に手を上げて


「そこまでは判った、というのとは少し違いますが、一応理解できますが、では私がハイエルフだということは?」


確かに世界樹にもそう呼ばれていたきがしたものの、私はエルフとハイエルフの差がなんなのか、そもそもその根拠がどこにあるのか気になったのだ。


「なに、それはもっと簡単な事だな。世界樹はハイエルフのエッセンスにしか反応しない。つまりはハイエルフなしに、種を発芽させることが出来るのは、女神ラスティだけだろう。」


「エッセンスですか……」


「そうだ、それはじきに解る時が自ずとやってこよう。我らよりも其方のほうが感じることのできる物だというしな」


「では、私はどうすれば良いのでしょうか?」


「それは、其方が欲することを、為せばよい。ラスティの神子はそういうものだと聞く。自らの意志と運命がその道を切り拓くのだそうだよ。無論必要とあればノーザは国を挙げてそれを支援することを約束しよう。時が来ればその時は其方の剣ともなろう。我らは其方の忠実なる僕なのだから。」


なんということだろう?

気が付けば、なんだか途方もないことになってしまった。

私がしたいこと、私に出来ること?

一体それは……?


思案に沈む私を、静かに見守る国王と重鎮たちの瞳。

何かをしろというのではなく好きな事をしろと言われると、却って思いつかないものだと私は暫くの間唸るのだった。





こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第47話をお読みいただきましてありがとうございます。

ブクマや評価をいただきました皆様にも重ねてお礼申し上げます。


連載開始から3週間。

やっと少し核心へ話を進めることが出来ました。


今後ともよろしくお願いいたします。


それではまた次回 気が付けばエルフ 第48話でお会いしましょう。

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