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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
43/144

王都に咲く花も

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第43話公開です。

急遽午後の仕事がドタキャンされたので本日2話目の更新です。


ごゆっくりお楽しみください。

 王都に咲く花も



 翌日。

 山の上のキャンプ地を出発した私たちは、緩やかに下っていく坂道を、慎重に馬車を進めていた。


 ここから王都まではほぼ下り坂らしいのだけど、順調にいけば昼過ぎくらいには到着できるとのことだけど。

 当初聞いていた話よりは遅れてしまっている。


 それというのも、山の上のキャンプ地を出る際には、事故防止のために重い荷物を積んでいる馬車から順番に出発する決まりだそうで、私たちは結構待たされてからの出発になったためだ。


 確かに、この世界の馬車のブレーキときたら本当に申し訳程度の代物で、これならまだ自転車のブレーキのほうが信頼できるというものだった。

 かといって私にできることと言えば、妙なフラグを立ててお約束のように暴走馬車となってしまわない事を祈るくらいの事なのだけど。



 それにしても日差しが強い。

 こちらの世界も太陽は東から昇り、西に沈む。

 現在東に向かって馬車を進める私たちのいる山の斜面は午前中は延々と太陽に照り付けられるため、あっという間に気温が上昇するのだ。


 進行方向に向かっている時間よりも、左右どちらかから受けていることが多いのでより広い面積で馬車の客車は既にムンムンとした熱気が籠っていた。


 この世界に来てから、スキンケアといえば精々洗顔くらいしかなく、日焼け止めなど塗っていないにも関わらず、綺麗な白い肌を保てているのはいいとして、それ以上に気になるのはこの暑さの中もう二日もお風呂に入っていない事だった。


 これは乙女にしてみれば、由々しき事態なのである。


「ふう、暑いわね」


 弱音を吐く私に対してリーリカは


「エリス様、なんならあおぎましょうか?」


 なんて言ってくれるけど、私をそれを手で制して荷台の端に移動すると、手拭を手にして荷台の外に突き出して「ウォーターボウル・コールド」と唱えて冷水の玉を作り出して冷たいオシボリを確保した。


「後続の馬車の為にもあまり路面を濡らすのは感心しませんが……」


 と咎めるリーリカに対して、私は濡れていたはずの路面を指さすと、その熱気にあっという間に蒸発していくところだった。


「洗面器一杯分くらいあの通り。すぐ乾くわ」


 それもそうかと納得したリーリカとスーさんにも追加でオシボリを作って手渡して、私たちはなんとか暑さを凌ぐのだった。



 ちなみにミーシャはあまり汗をかかないらしく、オシボリは辞退された。


 ◇ ◇ ◇



 そろそろお昼頃かな?なんて思っていたころ、大きな岩を回り込むように山間路を抜けた私たちはついに王都リオンをその視界に捉えることが出来た。


 真っ直ぐになった街道、岬の先端のほうに大きく聳える3つの尖塔が美しいお城。

 なんでも話によれば、街道からまず城門を通り、その先海岸へ続く丘陵地が街になっているそうだ。


 籠城戦を得意としたリオンの城の両端からは、高い城壁がWの形のように建設され、城門前は狭くなっている。

 戦時に都市内に攻め込む敵兵を絞りつつ、周囲の城壁の上から攻撃ができるという利点なのだろう。


 平時においても通行はチェックされるため、城門前はちょっとした行列ができているようだけど、それはこの世界ではよくある光景らしく、城塞都市シリウスでも同じだった。


 まあ、私がみた都市といえば、シリウスと、これから行くリオンくらいなもので、中継地点としての意味合いが強いナラシーでは、城門すらなかったのだけど。

 その分治安が悪く、私達がナラシーに宿泊をしないように行程を組んだのは、それこそが理由だった。


 ほかにも冒険者ギルドがナラシーには現在は置かれていないなど、理由はいくつかあったものの、特段そこに泊まる理由もないのなら、敢えて反対する理由もなかったのである。


 つまりはそういう事だ。



 やがて都市への通行許可を取るための列に並び、やっとのことで王都リオンに入ったところでシバールさんとスーさんは依頼終了のサインを抱えて離脱した。

 勿論、その額が一部減額されていたのは言うまでもないのだけど、16銅貨の収入であの夫婦がいきなり路頭に迷うこともないだろう。


 同行者となったミーシャちゃんは良いのかと確認したところ、


「私がいないと、馬がいなくなるの。」


 と心遣いから残ってくれたようだった。


 やっぱりこの子はいい子だった!と私の中のネコミミちゃんの評価が上がったのは言うまでもない。


「エリスさんたちを送ったら、宿を探すから。」


 そういう彼女の言葉に、私たちは宿へと向かうことにする。



 そして、私たちは王都リオンでの宿泊先にたどり着き、馬車から降りた私たち一行の目の前には


「ようこそおいでくださいました。エリスお嬢様。王都にご滞在の間、どうかこの『リオンの山百合』を我が家と思いごゆっくりお寛ぎください。」


 なんて畏まるベルボーイを二人従えた、恰幅の良い『リオンの山百合』支配人さんの口上だった。




 一体なんでこうなるのかしら?


 ◇ ◇ ◇



 これは夢だろうか?



 揺らめく水面に銀色の髪を漂わせながら、滔々と注ぎこまれる湯に打たれる私が見ているのは、遠く続く水平線だった。

 横をみればリーリカが、その白い肌を僅かに桜色に染めて同じようにどこか遠くを見ている。

 湯に濡れた髪は、まるで烏の濡羽のように艶めいて、濡れると纏まるその髪型は、普段より幾分幼く見えた。


 この細く抱きしめれれば崩れてしまいそうな身体の一体どこに、超人的とも思える身のこなしを生む膂力が潜んでいるのだろうと、私は常々思っていたのだ。


「まさか露天風呂があるとはね。」


「御存じなかったんですね。王都の温泉は有名でしたからてっきり聞いていたのかと」



 そう、このお湯は温泉だというのだ。


 温泉に髪を漬けてしまうのはどうかと思ったものの、入るとしゅわしゅわと泡が立っているのに気が付いた私。

 つまりは炭酸泉。CO2が大量に溶け込んだその温泉は、弱酸性を示しているはずだ。

 厳密にはめまぐるしいイオン変化の過程の中で、海に近いその立地条件が合わさって、思ったほど酸度が高くなかったとして、気にするつもりもなかったのだから。



 私は打たせ湯にしていた湯口から抜け出して、仰向けに漂い出すと、青い空にぷかぷかと浮かぶ雲を眺めて至福のひと時を楽しむのだった。


「あの、エリス様?」


 いつの間にか湯口から傍にきていたリーリカが、なにやら申し訳なさそうに声をかけてくる。


「どうしたのリーリカ?のぼせちゃった?」


「いえ、そうではなく、どうしたらそのように浮かべるのでしょう?先程から試しているのですが……」


 なんてことはなかった。

 リーリカもどうやら私と同じように湯舟に浮かんでみたいのだという。


 私はリーリカの横に移動すると彼女のと腰に腕を回して、抱え上げるように寝そべらせた。


「空を見ててね。下を見ると沈むから」


 なんとか浮かぼうとするリーリカだったけれど、余計な力が入ってしまい上手く浮かぶことが出来なかったので、結局は座った私が下から軽く支えるようにして、浮遊気分を体感させてあげたのだった。


「空が、高いです。」


「そうね。」


「こんなふうに、空を見上げたことなんか、ありませんでした。」


「夜になればきっと星空も見えるわね。」


 彼女の呟きに、私が応える。


 いつも私に献身的に尽くしてくれるリーリカ。

 私が彼女にしてあげれる事と言えば、こんな些細な、当たり前の物を見せて、気が付かせてあげること位なのだから。


「そうね、納品するドレスは沢山あるもの。少し王都で過ごすのも悪くないわね。」


 言葉の真意にリーリカが気が付いたかは彼女のみ知るところだけど、彼女は確かに頷いたのだ。




こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第43話をお読みいただきました皆様、ありがとうございます。

ブクマや評価という特上の燃料(餌)を頂きました皆様にも、心よりお礼申し上げます。


やっと、いつにまして山場の少ない移動回を終え、王都に入ったエリス達ですね。

あー、温泉いいな。温泉。日本人は温泉だよ。(羨


それではまた次回気が付けばエルフ 第44話でお会いしましょう。

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